先日のブログで私の今の心境を述べたところ、コメントを含め様々な反響があって私自身驚いてもいますし、また本当に嬉しく泣けてきました。
メールや電話もたくさん頂きました。
あまり知られたくなかったので言いたくないのですが、私はこう見えて結構涙もろく、何かというと直ぐに涙を流しています。皆さんもそうでしょうがここ数日TVや新聞を見ては涙を流す日々でした。
そして、自分の無力さを恨みもし、そして先のブログのように深く傷つき音楽をやる気力まで失せてしまいました。
私のところは一昨日、昨日と計画停電が行われ、一昨日はちょうど昼の時間だったので久しぶりにジョグングではなくサイクリングを、江戸川を60キロくらい走って来ました。
走る時にヘッドフォンでラフマニノフやブルックナーを聞きながら、色々考えました。
帰ってからもまだ停電だったので色々な本を読んだりもしました。
昨日は午前中に停電、読書をし、カインズの練習に。
今練習しているのは4月1日2日と長野のホテルでのロビーコンサートに向けてですが、正直これもどうなるかわかりません。
カインズも練習は危ぶまれたのですが鉄道が前の日より明らかに動いている事や午後という事もあり練習はやりました。
私自身も、これ以上塞ぎ込んでいては意味がなく思えたので練習を思い切ってやる事にしました。
結論としては自分が音楽をやっていて良かったと思いました。
ブログの記事を受けて私の友人の作曲家である水野真人さんからご自身の作曲された曲のMP3とともにメールを頂きました。
一部を転載させ頂きます。
被災地は勿論のこと、今の日本社会は混乱しています。
今すぐに音楽家が力を発揮することは困難かもしれませんが、
復興の時、音楽家の力は必ず必要になると思います。
これを医師に喩えるのであれば、今は整形外科医(救援隊)が活躍していますが、
やがて精神科医(音楽家)が必要になると思います。
「その時」に備えて、我々音楽家も心を整えておきましょう。
これにも本当に涙が出てきました。
送って下さった曲は
「オーケストラ組曲第3番」
第1曲:優しさと微笑みと熱意
第2曲:人の憂いと夢と
第3曲:田園と光と人間(生命の舞踏)
という曲です。ちなみにこの曲の初演も依頼されています。
今その曲を聴きながらこの文章を打っていますが先日の「砂を噛むような」感じは全くありません。
それはこの曲が素晴らしい、という事に加え、水野さんが「私に」送って下さった曲だからだと思います。
サイクリング中に私の過去にあった色々な事を思い出しました。
例えば童謡歌手の川田正子さんと、ある県へ演奏旅行に行き、そこで少年院の少年たちの合唱を聴いた時の事。
彼らはお世辞にも「上手い」とは言えなかったけれども、私は感動して涙をこらえる事が出来ませんでした。
今まで自分は音楽の何を勉強して来たのだろう、とショックも受けました。
音楽で大事な事は上手に演奏するテクニックでは無く、「伝える心」だという事に気付いたのです。
例えば以前に白馬合唱祭へ行った帰りに北安曇郡松川村に寄った時の事。
星野富弘美術館からスタッフが来られて、チャリティーコンサートと銘打って白馬帰りのコーロつるさしで星野富弘詩、小山章三作曲の「花に寄せて」を演奏しました。
私は指揮するとき一曲目の前奏から涙が出て来たのですが、それが団員に伝わり、やがて団員全員が涙を流しながら演奏、終了して振り返ると会場全員が涙に暮れていました。
例えば作家の志茂田景樹さんの「絵本読み聞かせ隊」の隊員として柏崎の地震慰安演奏に行った時の事。
街はまだまだ地震の爪痕がそのままで道路も波打っていました。
体育館でカインズで演奏しましたが子供たちは多いに笑って、大人たちは涙を流していました。
他にも色々ありますが、自分もそういう事に関わって来たんだなぁ、としばし感慨に耽ったサイクリングでした。
小澤征爾さんがガンから復帰され齋藤記念フェスティバルに向けての記者会見の中で「本当に音楽をやっていて良かった、音楽があるから頑張ろうと思えた」
と言われていた。
「今すぐ」に私達に出来る事は正直募金をする、節電をする、くらいしかありません。
いま避難施設へ行って「慰安演奏にきました~」と言ったってありがたがる人はいないでしょう。
それよりも食べ物を、水を、物資を、そして安否不明の人たちの一日も早い判明を、が先でしょう。
水野さんが言われたようにやがて私達の出番が来ることになります。
その時のためにいま自分の中に充分な充電をしておきたいと思います。
こんな私のためにご心配頂いた皆さま、全力で大丈夫、とはまだ言い切れませんが神尾昇は明日のために一歩を出し始めた事をここに報告致します。
合唱団員の皆さん、まだ一緒に音楽活動ができるのはもうちょっと先になるかも知れません。
しかしその日は必ず遠からずやってきますし、やって来なければなりません。
そして私の元で音楽をやるなら、単なる「自分の楽しみ」だけでなくもっと大局をとらえた深くて広い世界に足を突っ込んでいく覚悟で戻って来て下さい。
皆さんと一緒に音楽ができる日が本当に楽しみです。
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