指揮者 神尾昇の一言

日々の生活の中でちょっとした事などがあったら、ちょろっと書き留めて行く、そんなブログです。

チラシ裏面

2010年03月31日 | Weblog

「冬の旅」チラシの裏面用に作成した文章です。

 「冬の旅」はF・シューベルトが死の前年1827年に作曲した歌曲集だ。
 詩はドイツ人W.ミュラーによる。同じ詩人に作曲したものでは「水車小屋の美しい娘」がある。
 作品は二部に分かれているが、一度に作曲されたものではなく、シューベルトが一部を作曲した後に二部が発表され、間もなく作曲された。ミュラーは第二部を発表した時に第一部と第二部を合わせ、詩の順番を入れ替えたがシューベルトは必ずしもそれには沿わなかった。
 それは各曲の調性の問題があったことと、物語の進行にシューベルトが思う所があったのではないかと私は思う。例えばシューベルトの歌曲集ではDer Lindenbaum菩提樹、Wasserflutあふるる涙、Auf dem Flusse流れの上で、と続き、それぞれホ長調、ホ短調、ホ短調である。
 しかしミュラーはDer Lindenbaum菩提樹の後に Die Post郵便馬車を移している。シューベルトはこの曲は第二部の最初、13番目にもってきている。そしてシューベルトはこの曲を変ホ長調で作曲、つまり明るい曲にしている。もしホ長調のDer Lindenbaum菩提樹の次に持って来ていたら違和感があったのではないか。
 それにそれまで恋人のことを諦めようとしていたのに郵便馬車のベルの音でまたその心を取り戻す、というのは二部の最初にもってくるのにふさわしい順番だと思えないだろうか。 シューベルトは詩の持っている心情や情景を非常に巧みに音で表現している。
 例えば全曲を通して歩行のリズムが使われていることは有名なことだが、詩の解釈を、時には作詩者以上に主人公の心理を描き出している、と私は思う。そしてこの歌曲集の中にも随所に見られる。 
 私が生まれて初めてリサイタルを行うに当たりなぜこの、シューベルトの最高峰の曲をなぜ選んだか。それはこの歌曲集の音の中に、梅毒にかかり死ぬことを意識せざるを得ないシューベルトが自分自身を重ね合わせ、そして、だからこそ「死にたくない」と言う気持ちを爆発させている、と私は感じたからだ。
 例えばIrrlicht鬼火の最後にGrab墓、という言葉が出てくるがシューベルトは非常に印象深くこの言葉に音をつけている。
 他にもDas Wirtshaus宿屋。この「宿」というのも実は「墓地」のことなのだが、「部屋が一杯で自分は安らぐことが出来ない」と立ち去る、という内容であるのに、シューベルトは安らぎに満ちた非常に美しい曲を描いている。私はそこにシューベルトの悲痛な叫びを感じた。
 以上のような類いの事を私は一人の指揮者として、そして一人の音楽家としてシューベルトの音楽を一曲一曲解きほぐし、私の考える「冬の旅」を表現してみたいと思っている。

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作曲家のナショナリティ

2010年03月30日 | Weblog

私は朝はNHK-FMで目が覚めるようになっている。
7時20分からはクラシックカフェ。
そして今朝はイギリスの作曲家、ヴォーン・ウィリアムズの曲をやっていた。
高校の時に聴いて大好きな曲の一つ「あげひばり」も流された。
そして布団で聴いていて思ったことは、その作曲家のナショナリティが曲に出る、ということを改めて思った。
ドからシまでのたった12個の音で喜怒哀楽や、情景、物語を表現するのは凄いことだが当たり前として扱っていた部分があった。
そして、ローマ三部作やスペイン狂詩曲、パリのアメリカ人などの曲名に地方や国名が入っているもの、または「カルメン」のようにスペインが舞台のような曲は当然その「地方色」を出すように作曲される。
「地方色」が存在し、そしてそれを音で表現できる、というのも凄いが、それぞれの作曲家は意識か無意識かはわからないし、おそらく「無意識」な部分が多いのだろうけれどその作曲家のナショナリティが出るのは面白いし、凄いと思う。
イギリスに帰化したドイツ人のヘンデルはやはりドイツ人だし、ロシアから逃げたラフマニノフはやはりロシア人だし、アメリカに招かれて裕福な生活を送ったドヴォルザークはやはりチェコ人である。
生まれた土地によるものなのか、血そのものに含まれているのか。非常に興味深いものがある。

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最近の天気

2010年03月28日 | Weblog

昨日も今日も冬に逆戻りの天候ですね。今年買ったお気に入りのバッファローのコートはスタイル優先で買ったために何と! 前がしまりません!!つまり寒くてもオシャレ優先で超ミニを履いているオネエサンたちと同類、という訳です。しかも超ロングなのであまり春のポカポカ陽気にはそぐわない、ということです。つまり、着られる時期がものすごく限定される、ということです。しかしながら、この二三日はこのコートを着るのにちょうどいい。思わぬ所で天が味方してくれました しかししかし! 革なので雨の日には着られません 本当に限定された日しか着られない、貴重なショットですちなみにこのコートはバーゲンで何と!! 75%オフでした!!

 

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チャイコフスキー交響曲第五番ホ短調作品64

2010年03月27日 | Weblog

今年の11月に柏交響楽団から指揮のオファーが来ており、メインの曲はチャイコフスキーの交響曲第五番をやる、ということなので、自宅にあるCDのうち、三枚を引っ張り出して聴き比べてみた。
1.1960年5月収録 L.バーンスタイン/ニューヨークPh
2.1984年3月収録 H.V.カラヤン/ウィーンPh
3.1998年7月収録 V.ゲルギエフ/ウィーンPh(ザルツブルクでのライブ録音)

面白いのは2と3は同じウィーンPhなのだが、当然と言えば当然かもしれないがやはり違う。
良く指揮者によって同じ楽団、合唱でも音楽が変わる、と言われるが、では何がどう違うのか。
まず大きく違うのがテンポ。例えば

一楽章1.14:41、2.15:46、3.14:48
二楽章1.14:19、2.13:33、3.13:22
三楽章1.6:11、2.6:26、3.5:29
四楽章1.12:38、2.11:59、3.12:25

表記方法を変えると
  一楽章  二楽章  三楽章  四楽章
1.14:41  14:19   6:11   12:38
2.15:46  13:33   6:26   11:59
3.14:48  13:22   5:29   12:25

一楽章はバーンスタインは1分近く長い。
三楽章はゲルギエフはバーンスタインより1分近くも早い。

そして、それぞれの細かいニュアンスが三人三様で、もちろんそれぞれの個性が非常に豊かに出ている。
この三人(とカルロス・クライバーを含め)は私はとても好きな指揮者でありモチロン尊敬もしているが、全く個性が違う。

カラヤンは音楽を芯から追求するタイプで、良くも悪くも非常に「模範演奏」というものを感じる。
バーンスタインは音楽の持っている美しさや情熱を非常に表現するタイプで、非常にロマンティック。
ゲルギエフは圧倒的なカリスマ性と集中力で、聴衆をグイグイ引っ張っていくタイプ。

私は音楽をとことんまで研究、追求し、圧倒的なカリスマで聴衆を引き寄せ、かつロマンティックに歌い上げある、そんな指揮者になりたい。

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変更のお知らせ

2010年03月15日 | Weblog

以前に告知させていただいた、カインズのディナーコンサートですが、思った以上に反響が大きく、一度に44席分しかとれないのにチラシが出来上がる前にすでに予約で埋まってしまいました。
つきましてメンバーおよびレストランと話し合いの結果、昼公演を追加、結果一日で二公演を行うことにしました。
昼の部は12:00開場、夜の部は18:00開場です。
いずれも会場から30分の間にご入場いただき、先に前菜を召しあがっていただき、30分後に開演、約30分演奏後にボルシチと壺焼き、再び演奏、演奏後メインからチャイ(ロシアンティーです)デザートで終了、というコースです。
チラシも鋭意製作中ですが、チラシが出来上がる前にソールドアウト、という事態になってしまうかもしれません。
ご予約はお早めにこちらn-kamio@mail.goo.ne.jp までどうぞ。
以下詳細です。

男声カルテットKinds~カインズ~
サマー・パーティ・コンサート
2010年 6月13日(日)
昼の部・12:00開場/夜の部・18:00開場
7,500円(お食事+コンサート/税込)

ロシアレストラン
チャイカ
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-26-5F1ビル2階
http://www.chaika.co.jp

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花粉症の治療法

2010年03月12日 | Weblog

今年も花粉症の時期がやってきている。
最初になったのはもう15年前。
指揮科の入試の終わった日の晩に突然症状が出た。
あれから15年。
何となくだけれど年々症状は軽くなっているような気がするが、特段何かをしているわけではない。
注射をシーズンじゃないときに打つとか、耳のつぼに針を打つとかもあるらしいが、そういう類のものは試したこともない。
蕗がいいというのでちょっと症状が重くなると味噌汁にそのまま入れていただくことはあるが、これは効果はあるようだ。
点鼻薬も手放せなかったが副作用も多いときき今は使ってない。
今年も症状が出ている。ジョギングやサイクリングをするときはおそらく大量に取り込んでいるから避けられないだろうけれど、しかしそんなにひどい症状ではない。
朝顔を洗った直後が一番ひどいけれど一時間もすれば収まる。
昨年までと顕著に違うのが鼻づまりがそんなに酷くないということ。
なぜか。花粉の量はそんなに少ないとは言い難いと思う。
そこで考えられる原因としては昨日のブログで書いた「リサイタル」にあると思う。
つまり毎日のように練習を重ねているのだが、今まではそういうことはなかった。
合唱指導で率先して歌っては来ていたが、ソプラノからバスまで歌うので喉をかなり酷使していたし、その上大声で喋らなければならない。
ところが今は「良い声」を出すことに専念して歌の練習をしているからその効果が出たのではないかと思う。
最近は痰が絡み易かったのもいつの間にか改善されている。
医学的な実証や、他の人の話も聞いたことが無いのでもちろん私だけの効果かもしれないが。
しかしやって損はないと思う。花粉症でお悩みの方、ぜひ「良い発声」を心がけてみては。

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決定しました!!

2010年03月11日 | Weblog

もう逃げられません。


リサイタルの場所と日時が決定しました。


2010年7月31日(土)
14:00開場 14:30開演
絵本塾ホール http://ehonjuku.com/hall/
〒160-0011 東京都新宿区若葉1-22-16 ASTYビル地階
最寄り駅:四ッ谷駅 (JR線・丸の内線・南北線) 徒歩7分
4,000円(全席自由)


F.シューベルト 歌曲集「冬の旅」全曲


100人位の小さいホールでの開催です。
PPPを出したくて敢えて小さいホールにしました。
受付はもう始まっています。

ご予約はこちらn-kamio@mail.goo.ne.jp までどうぞ。

それではよろしくお願いいたします。


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国会議事堂見学

2010年03月05日 | Weblog

ちょっと前になるが、国会議事堂見学へ行ってきた。
本当は「国会見学」になる予定だったが、あいにくその日は参議院や他の部屋でも審議が無く「議事堂見学」に。
合唱団ショコラの中に参議院議員の娘さんがいらして、その方のご手配で実現したことなのだが、国会が無かったためにかえって、お父様の議員さんにもお会いしてお話が聞けたし、秘書の方にも非常にご丁寧なご案内をしていただいた。
お名前は柳沢みつよしさん、民主党の議員さんである。
先ず議員会館でごあいさつ、それから早速議事堂へ。
最初に訪れたのは議長サロン。これもこの日に国会が無かったから見学が実現したし、普通の見学ルートでは見られないところ。
議事堂の中は写真撮影禁止の場所が多いのだが、このサロンの中はOKということで議員を中心に記念撮影。
合唱団ショコラの今後を烈しく議論した。

その後議員と一時分かれ、議員食堂へ。メニューは割に豊富にあったが、内容は俗世のものと変わりはなかった。
ここも写真撮影OK。

その後議事堂の中の見学。参議院議場はもちろん、ガラスの外から見るだけだが御休所や、図書館まで連れて行っていただいた。秘書さんとしては私たちをVIP待遇して下さったそうで、見学コースの丁寧さは今までで一二を争うほどだったそうである。とても幸せなことだ。
その後議員と合流、議事堂の正面で記念撮影、そして中庭に植えられている各都道府県の樹を見て回り、再び議員会館の議員の部屋へ。

そこでお時間の無い中議員の熱いお話を伺った。
まず議員の私たちに訴えられたことは「政権が交代したばかりで今は前の政権の尻拭いの時期、是非三年は民主党にやらせてみてください」ということだった。
予算にしても今来年度のものを組み立てているし、国会運営も昨年途中からだから仰ることはよく解るしその通りだと思う。
一方で小沢幹事長や、鳩山首相の「脇の甘さ」も民主党員としてご指摘なさっていた。
ご本人は長野県の村長の息子さんとして生まれ、大学ご卒業後はイトーヨーカ堂へご入社、労働組合連合会会長を経て、社に在籍中に国会へ立候補なさった。一度は落選なさり無職になられたがその間に全国を行脚され、今の日本の実態を見てこられたそうだ。
モットーは「無駄にしません、税と汗」ということで、とにかく正直者がバカを見る世の中はおかしい、働く人たちを大事にしよう、という気持ちを強く持っておられる。世襲議員が多い中、現場から議員になられた最大の特長だと思う。
仰っていることはどれも正論だと思うし、思われる通りに世の中がなって行って欲しいと思う。
しかし今の民主党、ひいては政府、もっというなら日本の国そのものが非常に厳しい状態にあると思う。そしてそれは実は国民は皆自覚していると思う。
だが、私たちにもできることはきっとあると思うし、一方で政治を政治家任せにしないで最低でも選挙には行く、という姿勢は非常に重要なことだと思う。
私は時々「政治家になったら」と言われることがあるが、こう答えている。
「私は根が正直者で悪いことができないから向いてませんよ」
しかし柳沢議員はこの言葉を打ち消すほどに、本当に「芯から」素晴らしい人だと感じた。

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