演奏会をする時、実は私は「なぜ演奏会をするか」
いつも疑問に思いながらやっています。
昔は、演奏会をする事で報酬ももらえるし、
何より、ステージに立つ、ということが快感で、
その快感を得るためにやっていました。
でも今はそういう感覚はありません。
かと言って、嫌になったのか、というとそういうわけでもないのですが、
じゃあ、なぜ舞台に立つのか、実はわからないまま、舞台に立っています。
プロなら、やはり仕事として、入場料を頂き、報酬を得る手段、
としてステージに立っている人もいるだろうし、
アマチュアなら、日頃練習を重ねて来た成果を発表、
ということでステージに立っているでしょう。
私はこの事を考える時に、「花屋さん」を意識します。
商店街に行き、パン屋さんや、肉屋さんや、八百屋さんや、衣料品店や、雑貨店、
それぞれ生活に必要なものを売っているお店が並んでいますが、
その中で花屋さんは、生活必需品を売っているわけではありません。
極端に言うと、全く必要ない、といっても過言ではありません。
でも人は花を買って来て飾ります。
私もネコの花子ちゃんが家にくるまでは、毎日欠かさず花を活けていました。
なぜでしょうか…
生活の中の潤い、とひと言で言ってしまえば終わりでしょうが、
そんなに簡単なものでもない、とも思います。
啄木の歌で私の好きな一句。
「友が皆 我より偉く見ゆる日よ 花を買い来て 妻と親しむ」
花を買うお金があるんだったら、パンの一つも買う、
というところを花を買って家に飾る。
演奏会に出かける、ということも同じような事が言えるのではないでしょうか。
何千円も、時によっては何万円も出す、のなら、
レストランで美味しい料理を食べる、美味しいワインを飲む、
でも演奏会に出かける。
だから結局は、わざわざ足を運んでくださるお客様に対して、
真心を込めて、一音一音に「精神」を込めて、「情熱」を込めて、
演奏しなければいけないな、
と自分に言い聞かせて、結局は舞台へ上がります。