鎌倉時代の説話集「沙石集」から。
なお、「唐人」は、中国の人。
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大和(今の奈良県)にてありしかと聞きたる話。
ある男、豊かにして財もあるに、
浅ましき程に欲の深ければ、
よろず利益を先とし、すべての事に於いて、商いの心 先に立つなり。
近くに、歯を抜き取る唐人ありき。
この人、
虫の食いたる歯を取らせんとて、唐人がもとに行きぬ。
歯一つ取るには、銭二文に定めたるを、
いつもの商い心にて、「一文にて取りたべ」と云う。
わずかの事なれば、ただにも取るべけれども、
小銭をも値切る客の心様の憎さに、
「ダメだ、一文にては絶対に取らぬ」と答える。
しばらくの間、云い合いしが、
唐人、歯取る素振りも見せぬを見て、
「さらば三文にて、歯二つ取り給え」とて、
虫も食わぬ良き歯と共に、二つ抜き取らせて、三文を支払いけり。
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これ、以前に書いたかもしれない、
記憶があるぞ、と云う方が居られたらば御免あれ。
なお、「唐人」は、中国の人。
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大和(今の奈良県)にてありしかと聞きたる話。
ある男、豊かにして財もあるに、
浅ましき程に欲の深ければ、
よろず利益を先とし、すべての事に於いて、商いの心 先に立つなり。
近くに、歯を抜き取る唐人ありき。
この人、
虫の食いたる歯を取らせんとて、唐人がもとに行きぬ。
歯一つ取るには、銭二文に定めたるを、
いつもの商い心にて、「一文にて取りたべ」と云う。
わずかの事なれば、ただにも取るべけれども、
小銭をも値切る客の心様の憎さに、
「ダメだ、一文にては絶対に取らぬ」と答える。
しばらくの間、云い合いしが、
唐人、歯取る素振りも見せぬを見て、
「さらば三文にて、歯二つ取り給え」とて、
虫も食わぬ良き歯と共に、二つ抜き取らせて、三文を支払いけり。
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これ、以前に書いたかもしれない、
記憶があるぞ、と云う方が居られたらば御免あれ。