漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

塩鮭と熱中症

2010年08月03日 | Weblog
「塩鮭」は、今でも人気のある食材で
「日本人の国民食」と言えるほど、庶民に親しまれているが、

「昔の塩鮭」と「今の塩鮭」とでは、まるで別物の観がある。

なにしろ昔は冷蔵庫がないから、
鮭やタラなど大量に取れた魚を保存するには、干物にするか塩漬けにするしかない。

ただし、今どきの塩鮭のような、
「やさしい塩」の仕方では、真夏など一日も持たない、

何ヶ月も常温で日持ちさせるには、
魚の姿が見えなくなるほどの塩を使うから、
当時の塩鮭や干したタラは、軽くて硬くて、猛烈にカライ。

今の人の感覚なら、塩のカタマリを食うような味。

私が子供のころ、
下枝の伐採や下草刈などの「山仕事」に向かう男たちの弁当は、
水なら1ℓ以上も入ろうかと云うアルマイトの弁当箱に、
メシをぎゅうぎゅう詰めに押し込み、

おかずは、塩のカタマリのような「干タラ」が一切れ、あとは梅干しと漬物が少々。

その干タラはカチンカチンだから、
まずこれを、弁当箱のフタに入れ、上から焚き火で沸かしたお茶を掛ける、

暫くすると、スルメのような状態だったタラが少しやわらかくなる。

それをおかずに、
先ほどのギュウギュウ詰めのメシを食い、干タラを戻したお茶を飲む。

昔の山仕事は人力が基本、
体力を消耗する重労働だから、
大量のエネルギーと、汗で失われた塩分を補給する必要がある。

生活の必要から出た「大メシと塩」と云う食事だが、
もちろん、今の栄養学から見たら、問題が多い。

塩の取り過ぎは、
高血圧や脳溢血の遠因ともなるし、胃ガンの発生も助長する。

そう云うこともあって、
戦後、ずいぶん長い間、食生活の改善が叫ばれ「メシと塩」だけの食生活は殆ど消えた。

それはいいのだが、
塩を「健康の敵」のようにキャンペーンを張った結果、
人々の意識に、塩を摂取することは罪悪のような知識が広がった。

結果、スーパーの棚には、
減塩食品が並ぶ事になり、塩は食卓から減る一方。

しかし塩は、人間に必要な基礎食品、

ウィキペディアにもこうある。
  
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(塩の取り過ぎの危険が叫ばれた結果)、しかし、現在では、

塩分の過剰摂取を恐れるあまり塩分を控えることが常識となってしまったため、
極端な塩分の制限により塩分の不足が起こり、
昏睡状態となって病院に運ばれる者や死亡する者も出ている。

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まぁ、ここまでは行かなくとも、
知らず知らずのうちに塩不足になってしまうことはあろうかと思う。

例えば、パン、
昔は、製造過程で使う塩やバターなど大量の塩分を含んでいたが、
時代の要請に応えた結果、今では塩の使用量は随分少なくなっているとのこと。

このごろ頻繁に報道される、
熱中症による「老人の死亡事故」の原因のひとつに、

塩不足があるのではないかしらん、

などと思いながら、
「塩分0%」と書かれた「トマトジュース」を飲んでいる。






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