漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

「題なし」

2011年07月29日 | しみじみした話

もう、半世紀ほども前の大阪に、
「題名のない番組」、通称「題なし」と云う「ちょっと変わったラジオ番組」があった。

ラジオ大阪と云う大阪でも弱小の局であったため、
電波がよく通らす、雑音に悩まされながら聞いていたことを覚えている。
  
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米朝 リスナーからね、
   「先週の放送で『今日は最低の寒さですね』と言うたやろ、

   最低の寒さとは最高の冬の暑さという意味である、
   ようそれで、SF作家などと称しておるよなあ」と。

小松 つまり、寒さが最低やから暑さが一番やとゆう。

米朝 そうゆうふうに解釈せないかんと、こうゆう。

菊地 そういえばそうだけど。

小松 ゴチャゴチャ細かいこといいなはんな、あんた。

   こないだもなんか知らんけど、暑かったあの日、
   ウチの梅がみんな咲いて、バナナがなったぞ、ほんま。」

米朝 嘘つけ……(笑)。
菊地 嘘ばっかり、ようそんなこと。

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米朝と有るのは、現在、人間国宝の桂米朝師。
菊地はラジオ大阪アナウンサーの菊地美智子さん。

そして「小松」と有るのがSF作家の小松左京氏。

「べいやん」、「こまっさん」と呼び合う、
お二人の息も合って、やってる方も実に楽しそうだった。

SF作家仲間の星新一氏や、
まだ「小米」時代の桂枝雀師などが、
前触れなくスタジオに現れるなど雰囲気も自由だった。

博覧強記のお二人だけに、
砕けた大阪弁が弾む座談の内容は縦横無尽。

それにあわせてリスナーから届く葉書のレベルも高かった。

とくに楽しかったのがパロディーの投書で、
上は「終戦の詔勅」から、下は聞いたこともない「小学校の校歌」までなんでもあり。

その中のひとつ。
   
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菊地 もときさんからの「貧乏」と題するパロディーです。

    障子破れて 桟(さん)があり
    蜘蛛の巣張って シケモク吹かし
    時に感じては 娘にも涙をそそぎ
    別れを恐れては 妻にも心を驚かす
    家賃は3ヶ月に連なり
    契約 晩期にあたる
    白頭かけば 更に短く
    すべて貧に勝えざらんと欲す

米朝 これは、ようできていますね。
菊地 杜甫の「春望」。
小松 「障子が破れて桟があり」ちゅうのね。五輪書とか、彼のは高級ですよね


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「こまっさん」安らかに。






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