もう、半世紀ほども前の大阪に、
「題名のない番組」、通称「題なし」と云う「ちょっと変わったラジオ番組」があった。
ラジオ大阪と云う大阪でも弱小の局であったため、
電波がよく通らす、雑音に悩まされながら聞いていたことを覚えている。
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米朝 リスナーからね、
「先週の放送で『今日は最低の寒さですね』と言うたやろ、
最低の寒さとは最高の冬の暑さという意味である、
ようそれで、SF作家などと称しておるよなあ」と。
小松 つまり、寒さが最低やから暑さが一番やとゆう。
米朝 そうゆうふうに解釈せないかんと、こうゆう。
菊地 そういえばそうだけど。
小松 ゴチャゴチャ細かいこといいなはんな、あんた。
こないだもなんか知らんけど、暑かったあの日、
ウチの梅がみんな咲いて、バナナがなったぞ、ほんま。」
米朝 嘘つけ……(笑)。
菊地 嘘ばっかり、ようそんなこと。
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米朝と有るのは、現在、人間国宝の桂米朝師。
菊地はラジオ大阪アナウンサーの菊地美智子さん。
そして「小松」と有るのがSF作家の小松左京氏。
「べいやん」、「こまっさん」と呼び合う、
お二人の息も合って、やってる方も実に楽しそうだった。
SF作家仲間の星新一氏や、
まだ「小米」時代の桂枝雀師などが、
前触れなくスタジオに現れるなど雰囲気も自由だった。
博覧強記のお二人だけに、
砕けた大阪弁が弾む座談の内容は縦横無尽。
それにあわせてリスナーから届く葉書のレベルも高かった。
とくに楽しかったのがパロディーの投書で、
上は「終戦の詔勅」から、下は聞いたこともない「小学校の校歌」までなんでもあり。
その中のひとつ。
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菊地 もときさんからの「貧乏」と題するパロディーです。
障子破れて 桟(さん)があり
蜘蛛の巣張って シケモク吹かし
時に感じては 娘にも涙をそそぎ
別れを恐れては 妻にも心を驚かす
家賃は3ヶ月に連なり
契約 晩期にあたる
白頭かけば 更に短く
すべて貧に勝えざらんと欲す
米朝 これは、ようできていますね。
菊地 杜甫の「春望」。
小松 「障子が破れて桟があり」ちゅうのね。五輪書とか、彼のは高級ですよね
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「こまっさん」安らかに。