比企の丘

彩の国・・・比企丘陵・・・鳩山の里びと。
写真、文章のリンク自由。

宝永の富士大噴火からの再興と・・・東日本大震災を重ねあわせて見る

2013-03-13 | 2011東日本大震災
3月6日22:00~22:43、NHKテレビの歴史秘話ヒストリアシリーズで次のような番組が放映されました。
江戸の復興代官 奇跡の4年  巨大地震・富士大噴火からの復興」
※写真コラージュはテレビからの抜粋。


東日本大地震から2年を迎えるころの時期を得た番組だったと思います・・・深夜放送であったことが残念です。

さて3月6日の放映日以来、私が2012年8月23日にブログアップした怒る富士・・・神様になった関東郡代・・・伊奈忠順に閲覧者が訪れるようになりました。初日は161PV、7日121PV、以後はわずかですが今日まで続いて合計400PVを超えています。拙ブログではありますが読んでくれたことはうれしいことであり訪れたかたがたにお礼申し上げます。。

この話の主人公は伊奈半左衛門忠順・・・徳川家4000石旗本、大老、老中などの政務中枢閣僚ではなく、関東郡代・・・実務官僚です。宝永大噴火で小田原藩領の富士山麓が壊滅的被害を受けたとき復興担当を命じられ、さまざまな苦難ののち復興の糸口を開きますが謎の死を遂げています。
この話に興味を持ち昨年8月、富士山麓須走の伊奈神社を訪ねました。

伊奈神社の一隅に立つ伊奈忠順の彫像です。「御厨の父 伊奈半左衛門忠順公之像」と書いてあります。
御厨とは・・・中世平安時代における皇室、有力神社の荘園(神領)、いまも地名で残る地区もある。御殿場、小山地区は中世は御厨荘園だった?

須走の中心街の北側の裏通り、徳川家康江戸入府以来の関東郡代七代目伊奈忠順(ただのぶ)を祀った伊奈神社です。いまから400年くらい前の生身の人間、しかも体制側の人を神に祀り上げて民衆側の人々が作った神社です。

話の内容はNHKテレビ歴史秘話ヒストリアで詳しく紹介されましたが、番組を見ていなかった人、違った見方で知りたいという人のために昨年の私のブログをダイジェストして紹介したいと思います・・・といっても・・・新田次郎の小説「怒る富士」の紹介ですが。

小説は1707年「宝永の大噴火」から始ります。噴火は小田原藩大久保家の領地の御殿場、須走、小山などの駿東59ヶ村から相模の足柄下郡、上郡に甚大な被害を及ぼします。幕府は大久保家の被災所領地を直轄領に変更(大久保家には幕府の他の直轄領を代替地に与えます)。被災地の復興に向けて関東郡代伊奈忠順を任命。
復興資金として全国の士分に対して禄高100石につき2両の義捐金(強制的)を上納させます。全国の士分から集めた義捐金は40万両、そのうち16万両を復興資金に回し、残りは使途不明金に。大奥の運営資金、朝鮮通信使の接待費用、皇室勅使の接待費用に流用されたといいますが定かではありません。
駿東地区で除去した降砂は雨が降れば鮎沢川から酒匂川に流れ出し河床を上げ、大雨が降れば川が氾濫、二次被害を起こします。大規模な川攫い工事も復興のための公共事業になります。この公共事業の請負は伊奈忠順の手の及ばないところで江戸の商人が入札していきます。
さらに幕府の直轄領とした被災地を亡所宣言します。亡所とは領民に税金は取らないから好きなようにせいということです。行政放棄され飢えに苦しむ百姓の悲惨な状況を見て忠順は駿河の幕府米倉から米を持ち出し被災農民に与えます。

震災から5年後の1712年に忠順は死亡します、病死であったか幕府から切腹を命じられたか自ら死を選んだかは不明です。
小説では自ら死を選び、幕府は病死として伊奈家は跡目を認められます。

忠順がお倉米を持ち出し領民を救ったということも切腹したことも記録には残っていないそうです。「徳川実記」には「忠順死ければ養子十蔵に家を継がしめ父の原職を命ぜられる」と書いてあるだけだそうです。忠順が死したのは1712年、それから江戸中期、後期、駿東の民百姓は忠順を神と崇め祠をつくりひそかに詣でてきました。忠順公は記録にはなくても記憶に残り農民の口から口への伝説となりやがて伊奈神社の祭神になります。

忠順の自死が犬死であったか。その後、駿東地区は年に数町歩の田畑が復帰されていったそうです。元に復帰するまで数十年の年月がかかったそうですが百姓は強かに生き延び亡所にはなりませんでした。

義捐金の流用、復興公共事業の指名入札、被災で飢えに苦しむ農村を亡所にして政争、派閥争いに明け暮れる幕府閣僚、高級官僚。
もう30年も前に書かれた小説ですがいまの社会に問題提起しています。

亡所・・・ふるさとを離れるしかない状況の場所のことを言います・・・帰りたい・・・帰れない


関東郡代伊奈家のについての私の過去のブログ・…こちらクリック

※コメント欄オープンしています。
・URL無記入のコメントは削除します。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿