叢雲会ブログ

叢雲会 刀匠達の四方山話

来る年に期待して             ひむかのクニマサ

2008-12-31 13:52:52 | Weblog
昨夜は中部空港発宮崎行きの便が札幌の大雪の影響で大幅に遅れた上、駐車場で預けた車が行方不明となりなかなか大変な帰路の旅でした。
その分待ち時間に思いがけない人と出会ったり、面白い話を聞けたりしたので、全く禍福は糾える縄の如し、ツキがないといっても心がけを前向きにすれば無駄な時間は生じないものです。

暗い世相の中、事故や犯罪も多く気が滅入りがちですが、今このときを大切に充実の気を漲らせて生き抜こうと、心を引き締めております。
新年が、皆様にとって実り多き一年となることを祈っております。

突然の訃報             國正

2008-12-28 22:40:56 | Weblog
人間の命運、いかにもはかないものです。
昨日突然倒れた遠方の親類があっけなく身罷り、葬儀のため明日早朝から出なくてはなりません。
驚きましたが、いずれは誰の身にも訪れる人生の「絶対」ですから、驚くほうが愚かですか...。

今年も何人か見送ってきました。
若い頃から時折生きている意味を己に問うていますが、もちろんきちんとした答えなど見つかるはずもなく、もう少し生きてみなくては、と思うばかりです。

旅だち          ひむかのクニマサ

2008-12-27 22:08:13 | Weblog
弟子1号、古山が今日で卒業しました。
バタバタ仕事をして最後に簡単に挨拶、うちらしいあっさりとした最後でした。
私がこの地に帰って独立開業したときとまあ同程度にはなっていると思うのですが。
私は技術よりも、前途に待ち受ける試練の日々を生き抜くしたたかなタフさ、みたいなものを叩き込んだつもりだけど、どうでしょうかね。
卒業後もフォローするつもりではありますが。

今年はことに弟子入り希望者が多かったようでした。海外からも何件か問い合わせがありました。きのうは韓国からもありましたよ。
日本刀は韓国刀のコピー、イミテーションである、などという乱暴な議論を展開している人々もかの国には存在しているようですので、技術の伝承は慎重に行わなくてはなりません。
それに、外国人だったら日本語で難解な刀剣用語や鍛冶用語、姿や刃文の感覚などを理解できる力を身につけてから門を叩くのが筋というものです。
ことに欧米人は「習ってやる」みたいな態度の奴が多くていけません。
「今、刀作りをならおうかどうしようか迷っているところだ」なんて面と向かってヌカした若いフランス人がいましたよ

通風? ビンゴ住人

2008-12-26 18:49:14 | Weblog
1ヵ月半ほど前、右足親指付け根に軽い痛みを感じました。以前から、検診のたびに、尿酸値が少し高いので気を付けなさいと言われており、ひょっとして通風ではないかと心配になり病院に行きました。血液検査の結果は、尿酸値がわずかに高かっただけでした。通風かどうかははっきりしませんでしたが、先生から、「薬を出しておきましょう。そのほうが安全です!」と言われてしまいました。しかし、薬を飲むのはいやだし、ダイエットで何とかできるのではないかと思い、薬を断りました。「痛くなっても知りませんよ!」と冷たく言われてしまいましたが・・・。

それから1ヵ月半、体重計に乗りながらの腹八分ダイエットで、5キロの減量に成功しました。先週の誕生日検診でも、尿酸値もコレステロール値も正常値内で、何の異常もありません、とのことでした。
何もしなくても異常に元気だった20代は、遠い昔のこと。健康管理と体力維持を心がけることが、目指す刀を完成させるためには一番重要なことだと感じるこの頃です。

松葉さんも、早めに専門医で精密検査を受けたほうがいいと思いますよ。
指の痺れは体の異常を知らせる信号かもしれません。なんか気になります。

世間では                 ひむかのクニマサ

2008-12-26 12:14:50 | Weblog
皆新年を迎える準備にかかっているようです。
私はなんとか太刀に納得の焼き入れを成功させましたが、ちょっと手間取ったので短刀、居合刀2振り、急いで作らなくてはなりません。
正月も3日くらいから仕事しようかな、と考えておりますが、首、手のシビレは相変わらずで、親指の感覚があまりないのが気持ち悪いです。疲れるとひどくなります。
頭の問題ではないと思うけど、脳ドックに行ってMRI検査が必要かも?

全く、よいのかわるいのか分からないこの一年でした。

さぶいねぇ  ビンゴ住人

2008-12-22 18:32:50 | Weblog
お久しぶりでやんす。
遅れに遅れた刀造りと、家の片付けに明け暮れていました。もう少しで片付きそうです。と言うより、明後日我が家でクリスマス会をするので、それまでには終わらせなくてはいけないのです。もうひと踏ん張りです。

前の家は築80年で、何度か雨漏りもしました。また、南側に窓が無く裏は山なので、日当たりが悪く、年中じめじめとしておりました。梅雨時はかび臭さでくしゃみが出るほどでしたが、借家なので勝手に直すわけにもいかず、とても住みにくさを感じていました。
今度の家もかなり古いのですが、私も大工を手伝いながら大規模にリホームをしました。雰囲気のある和室はそのまま活かし、状態の悪い部屋は、天井と土壁と床を剥がし、ザックリ作り直しました。まだまだ直したいところはありますが、じっくり考えておいて、次の機会に再リホームしたいと考えています。自分の家は、住みやすく作り直すことが出来るので楽しいです。

さて、話は終わったようですが、お守り刀展覧会について一言。
この展覧会は、まだまだよちよち歩きで改善すべき点も少なくないと私も感じています。でも、誰のお仕着せでもなく自分達で始めた展覧会です。知恵を出し合って、いい展覧会に育てていくべきだと私は考えています。松葉さんの言うように、鍛冶屋にとってかなりしんどい展覧会ですが、とにかく5回を目指してがんばりましょうよ。
行き掛かり上編集に関わっている「精炎」担当も、5回まではとにかく頑張ろうと思っています。この景気の悪い中、新しい広告も探すつもりです。これまで、現代に生きる刀職人を紹介する雑誌が、一般書店に並んでいなかったのは大きな損失だと考えています。

私たち刀鍛冶は、自分たちのことを人任せにし過ぎて来た様な気がしています。

相変わらず    杉田

2008-12-21 20:35:45 | Weblog
元気ですね。しかし、痺れは、要注意。
確かに体力の衰えは気になるところです。でも。心配御無用。
正確に仕事量を測定すれば、年々下降線を辿っているでしょう。体力だけでなく精神的にも。しかしそれは少しずつ緩やかなカーブでありますから、問題ありません。それを取り立てて気に病む、これが老化のはじまりなのです。体力は落ちても、技術がついてきています。益々、名工への道は、近付いてきます。
と、言うわけで、私頗る元気です。この秋口から、何がどうなったのか解らないのですが、次第に思う物が出来るようになりましてね。あれだけ困難極めた太刀、刀の長さが焼ける様になりました。まだまだ欠点の多い、完璧な作とはいきませんが。出来てきましたよ。昨年の今頃から、今年の2,3月頃本当に最悪でした。キャロルにも、アメリカに帰ってもらわなければならないところでしたね。もう少し頑張ってみましょう。

一進一退        國正

2008-12-20 23:08:51 | Weblog
焼き入れと首の故障、いずれもぱっとしません。
少しづつ快方にむかっているのは確かなようですが、左手の痺れだけはかえってひどくなっているような...
ま、焼きはなんとかなりそうです。もう、何百回もやってますので。

今日、ふと新しい剣の操法を思いつき、肩も痛いのに硬い半枯れの竹を数十回切り飛ばしました。威力がかなり増し思わず小躍りしそうでした
やはり日本武術は腰が要です!もう少し稽古したいけれども無理はできません。全くトシをとるとは、このようなことなのかとつくづくと思い知らされます。


不況と展示会

2008-12-17 06:49:29 | Weblog
サブプライムローンとか言う他国の問題から端を発した不景気風は、とても厳しいようです。
 松葉さんが前々回書き込まれた、お守り刀展のO先生への「 お守り刀展の審査員O先生の言われる伝統の上の現代らしい創造性みたいなものが果たして刀剣美に必要なのだろうか」「刀剣美の価値基準の乱れ・・・それが正に今崩れ去ろうとしている」という心配に対して、書き込んだつもりでしたが、その後の坪内さんの説明で納得されていたのですね。
それ以上言うこともありません。書かれている言葉を借りて言うなら、お守り刀展の審査では、「古作の「鑑定の基準」でもって、それに合致していれば高得点、外れたらダメ」的な姿勢を廃して、「先達の求めた美の表現を求め」る姿勢と同じ立場で挑戦してほしいというもので、それはイミテーション的な「古刀の真似」ではなく、今置かれた条件下での「刀剣美を創造」という表現に近いと思われます。
 とはいうものの、「創造」だから何でもありというのでは無いと言うこととは、言うまでも無いと思います。 

 最近注目されているフィギュアスケートの審査を見ると、世界トップクラスの審査員が評価していると思われますが、審査員各位の点数が、全く同点とはかぎりまません。また、複数のコンクールがあり、それぞれに個性があると思われ、さらに、同じ選手でも体調やできばえで、順位は異なるのは当たり前のことです。
 体力や才能、経済的問題など選手の置かれた環境で挑戦できる人は、複数に挑戦するでしょうし、絞っての挑戦もあるでしょう。
しかし、優れた選手の優れた演技は、審査員の得点評価もさる事ながら、多くの人を魅了し、ファンが増え、大会が盛り上がり、新たな発表のチャンスが増え、それと共に更に競技人口も増えレベルも上がっているような気がします。
 これは、刀剣の世界とは違いますから、同じとは言えないかもしれませんが・・・。

 このブログに登場する松葉さんにしても、久保さんにしても、杉田仙人にしても、現在の各展示会でのトップを走っている人たちは、浅田真央さんや金妍兒(キム・ヨナ)さん達と同様な立場にいるとも言えるでしょう。皆さんには、審査員評価もさることながら、展示会に来られた見ず知らずの人がうなるすばらしい作品を期待したいと思います。
 しかし、真央さんやキム・ヨナさんだけでは、大会が成立しないというのは言うまでもありません。私たちの世界も同じです。

 私たちは、それぞれに輝きを持った作品の魅力を、少しでも多く伝えられるような舞台、展示を模索し、作り、提案するとともに、私たちの作った作品から感じていただきたいと思っています。出来たら日本全国で、やがて世界でも・・・夢かな(笑)。
廃刀令や戦後の所持禁止令、需要と供給のバランスなどから、多くの職人がやめていきました。今回の不況でも、同じ事が危ぶまれます。新作名刀展にしてもお守り刀展にしても、出品者が激減すれば維持できなくなるかもしれません。しかし、苦境の中でも、それぞれの立場で、ベストは尽くしたいですよね。それだけの魅力が日本刀にはある。そう信じています。

「これほどの苦しみを乗り越えて創造してゆかなくてはならない展覧会、その意味を自ら問うことは大切であると思います。」松葉さんの書き込みで、(すこし違うかもしれませんが、)刀匠会はどうあるべきか、展覧会はどうなのかと、常に問い続けていくことが、大切なのではと改めて思いました。
 
 恵まれた環境がよいということは言うまでもありませんが、恵まれた環境の中での作品が、常によい物が出来るとばかりは言えず、苦境の中で生まれた作品が、全て悪いとも、心に響かないとは限らない。視点を変え、工夫することで、お客様にも喜んでいただけるいい物が出来るかも・・・それって・・・
きやーこんな時間だ。とりあえず仕事場に行ってきます。



イミテーション?       國正

2008-12-15 11:45:15 | Weblog
私は今日までイミテーション(日本語で使われる意味での)なぞ作ったことはありません。
それに近づくのが嫌だ、と書いたつもりでしたが?
いくら御大のお言葉でもそれはないっしょ...
写し物、というのは普段耳にするイミテーションとはニュアンスがちょっと違うような気がしますが。

私が問題だと感じているのは、展覧会で賞が欲しい作家は、当然審査員の審美眼にかなうようなものを作ろうとするので、新作名刀展の凋落が進むとするなら、いままで築いてきた現代刀の個性、進むべき方向が変わってくる。
そのことが我々に計り知れない影響を及ぼすことは想像できます。というか、私自身がそうですから。
このままであれば、出品にかかわる大変な労苦、費用などを考えますと私もいつまで新作名刀展にこだわれるか、わかりません。
となれば、お守り刀展は一個の新しい展覧会ではなく、その審査を通じて現代刀の美の創造の方向付けにまで踏み込まなければ、刀匠会として主催する意味が少ない、と思うのです。
だから、いろいろあってよい、のはもちろんそのとおりですが、ギリギリでやっている私などにとっては、あまり呑気にかまええていられない。
お守り刀展にも今後、挑戦し続ける事がはたして自分にプラスであるのか、迷いもあります。

お守り刀展のコンセプトは非常に面白く、世間へのアピールも大きなものがあることはよくわかっています。
しかし、今回の売り上げはかなり厳しい情勢に陥りそうですし、昨今の経済状況をみると今後もこの展覧会によって経済的に潤うことは難しそうです。
これほどの苦しみを乗り越えて創造してゆかなくてはならない展覧会、その意味を自ら問うことは大切であると思います。