トーキング・マイノリティ

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神は妄想である その五

2015-03-09 22:10:14 | 読書/ノンフィクション

その一その二その三その四の続き
 この本では米国のキリスト教原理主義者の狂信性が幾つも紹介されている。無神論を唱道した映画監督ブライアン・フレミングには、「火炙りにして笑ってやる」という表題の嫌がらせメールが送りつけられ、そこから一部引用する。
お前は確かにちっとばかし度胸がある。オレはナイフを手に持って、馬鹿なお前のはらわたを切り裂き、お前の内臓が目の前にあふれ出るのを見て、喜びの声を上げたい。お前は聖戦に火をつけようとしているんだ。聖戦が始まれば、何時の日か、オレやオレみたいな他の人間が、さっき言ったような行動に実際に出るかもしれないぞ…

 なぜ、神をそこまで凶悪な手段で護ってやらねばならないと考えるのか、私は驚きを禁じ得ない…とドーキンスは言う。続けて神が自分の面倒を見るくらいの能力は十分に持っていると想定してもいいはずではないか、とも言うが、狂信者には通じない理なのだ。ドーキンスの元にも2005年5月、英国の医学博士から手紙が送られてきて、そこには進化論ダーウィンへの激しい非難、世界の年齢は僅か八千年でしかない、と主張する本の勧めがあったという。著者自身、彼は本当に医学博士なのか?と疑問を呈していた。所謂「若い地球説」の支持者なのは確かだろう。

 近年の米国では、「アメリカのタリバン」という造語が出回っているそうで、米国の宗教指導者や宗教を基盤とする政治家の発言はタリバンそっくりなのだ。妊娠中絶に手を貸す人間を脅迫するための組織「オペレーション・レスキュー」創設者ランドール・テリーの言い分はこうである。
私、或いは私のような人間がこの国の実権を握ったら、あなた達は逃げ出した方がいい。何故なら、我々はあなた達を見つけ、あなた達を裁き、あなた達を処刑するからである。私は掛け値なしに言っているのだ。私は彼らが裁かれ、処刑されるよう取り計らうことをこれからも使命の一環としていく。
 私はお前たちの上に、不寛容の波がどっと押し寄せることを望む。そうだ憎しみは正しいのだ……我々が目標とするのはキリスト教国家の建設である。我々には聖書に定められた義務があり、我々はこの国を征服するよう神に命じられている。我々は敵に自分たちと同等の時間を与えるつもりなどない。我々は多元主義を望まない。
 我々の目標は単純でなければならない。我々は神の法、十戒に基づいて構築されたキリスト教国家を持たねばならない、言い訳は無用だ

「アメリカのタリバン」のメンバーには女もいて、アン・コールターの名が挙がっていた。彼女は一般に保守派評論家と呼ばれているが、この発言からはキリスト教極右としか見えない。
我々は彼らの国(アラブ諸国)に侵攻し、彼らの指導者を殺して、キリスト教に改宗させるべきだ
 この類の女がドーキンスを敵視するのは書くまでもなく、「私と同じ信仰をもつ者で、ドーキンスが地獄で焼かれるという考えを笑えないと私に言ってくる者は、誰であれ許さない」と放言していたとか。

 信仰は慰めをもたらすというイメージが流布しているが、第10章に載っている老人ホームに長年勤めてきた看護師の観察は予想外なものだった。彼女は死を最も恐れるのが、信仰を持った人間であることに気付いたという。その多くはカトリックで、煉獄を恐れていたのだろうか?
 また、安楽死に激しく反対するのは、信仰を持つ人がかなり多いそうだ。表向きは殺人は罪となるが、天国に旅立つ時期を早めているのだから、罪と見なすのは不可解だ。信仰深い人々が、この世の生にしがみつくならば、その信仰はニセモノだったのやら。ちなみに米国の全人口の約95%が、自分は死後も生き続けるだろうと信じているいう、世論調査が載っている。

 最終章で著者は、「宗教が慰めをもたらすからといって、宗教が正しいということにはならない」と断言する。また、「科学者として、私が原理主義的な宗教を敵視するのは、それが科学的な営為を積極的に堕落させるからである」(416頁)という。
 科学者でもない、タダのオバサンである私が原理主義的な宗教を敵視するのは、一神教、多神教問わずこれらが極度の男尊女卑傾向があるためだ。宗教による女性虐待は「イスラム国」だけではない。男尊女卑は男の願望だが、それの行き着くところは中世の狂信社会で、決して男性にとっても住み易い環境ではない。哀しいことに平和は何時までも続くものではないし、混迷の時代は原理主義宗教が蔓延る。

◆関連記事:「女とキリスト教
 「カトリックによる日本侵略
 「聖書の間違いを捜して悦に入っているバカども

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2 コメント

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また、やってしまった…… (のらくろ)
2015-03-13 03:48:33
宵の口寝。こんな時間のカキコは(私には)よくあるこういう原因です。(以前にも似たようなことを書いたかな……)

ところで、(日付が変わりましたので)一昨日、職場での出来事ふたつ。

1 一昨日から突然、こちらを含むgooブログに職場からのアクセスが不可となりました。昼休みにいきなり「ブロック」画面が登場。こちらだけでなくお気に入り登録のいくつかのgooブログが軒並みでしたので、そのように悟りました。

2 転勤の内示を受けました。

4月から名古屋勤務になります。

仙台のふた冬、なんとか乗り切りました。
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Re:また、やってしまった…… (mugi)
2015-03-13 21:07:05
>のらくろ さん、

 書込み時間のことはお気になさらずに。コメントは内容が全てであり、時間はどうでもよいのです。ただし、アラシは別。先日貴方が出入り禁止を提案した御仁、入り浸り先のブログで私が書込み時間をチェックして攻撃材料にしていると非難していましたが、gooブログのコメント欄ではタイトルの下に書込み時間が表示される。嫌でも目に入りますよ。
 尤も書込み時間を見るのは私だけではないはず。あるHPで、「この時間(平日午前)から書き込んでいるとは…」というコメントがあったし、2ちゃんねるでも平日連投している者には、ヒッキー呼ばわりでした。そう疑われても当然でしょう。

 勤め人ならば嫌でも休日出勤もあるし、その振替が平日というのは私も何度も体験しています。私が深夜にネットをしないのは夜更かしが苦手なだけであり、起床はAM6時なので出来ないだけです。そういえば、例の御仁のshiretoko氏への攻撃は凄かったですね。
「あるわけねーだろ、アホ!」「近畿・近畿って喚くんじゃねえぞ、このkinky野郎め!」など連続罵倒。完全にねらーのノリ。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/f01f18606c6ae79bef747e3a3026d288#comment-list

 今にして思えば、この時点で彼の本性や精神状態に気付くべきでした。「私は、過去におびただしい数の精神疾患者とお付き合いしてきましたので」と意味深なコメントもしている。朱に交われば赤くなる、類は友を呼ぶ、という諺がありました(笑)。

 貴方の職場で突然gooブログのアクセスが不可となったのですか??単に貴方の職場だけか、goo側のトラブルなのか。私お気に入りのブログ「Darkness」が今年2月、突然消されたのをご存知でしょうか?ネット世界も自由ではないのです。
http://www.bllackz.net/blackasia/content/20150218T0123160900.html

 来月には名古屋勤務に戻られるとのこと。2年間の仙台単身赴任、お疲れ様でした。
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