トーキング・マイノリティ

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LETS SPEND THE NIGHT TOGETHER 82/米 ハル・アシュビー監督

2011-09-01 21:11:24 | 映画

 邦題はThe Rolling Stones、副題はLETS SPEND THE NIGHT TOGETHER だが、文字通りザ・ローリング・ストーンズのライブ映画。 LETS SPEND THE NIGHT TOGETHER も'67年のヒット曲「夜をぶっとばせ!」の原題。【HDリマスター版】全米コンサート・ツアー30周年記念作品、がチラシのコピー。そして、チラシには以下の解説があった。

-'81年10月9日と11日、ロサンゼルスのサウスフィゲロアにあるメモリアル・コロシアムはあと数時間後に迫ったコンサートの前に色めきたっていた。10万人の人波で埋め尽くされた巨大な競技場。ロサンゼルス中のロック・ファン達がこの世界最強のロックン・ロール・バンドを一目見ようと民族大移動を起こしやって来たのだ。
 撮影されたのは
アリゾナ州のサン・デビル・スタジアムの屋外ショーと、ニュージャージー州のメドーランズ・ブレンダン・バーン・アリーナの屋内ショーの2ヵ所で、サン・デビル・スタジアムでは20台のカメラと34万フィートのフィルムを使用。さらに上空からのスペクタクル・ショットを撮るためにヘリコプターが使われた…

  '81年、ストーンズはデビューから18年目を迎えており、当時でも既にロック界に君臨する大御所バンドだった。これだけのビッグバンドは東北には絶対に来ないため、せめてライブ・ドキュメントを見てコンサート会場に来たような気分を味わうほかない。さすがストーンズのツアーだけあり、演出がとにかく派手。大量の色鮮やかな風船が使われ、ラストには花火が何発も打ち上げられる。屋外ステージ・デザインがカズ・山崎となっており、日本人デザイナーだそうだ。あれだけ大量に飛ばされた風船は、環境面からその後どうなるのか気になるが、当時はあまり問題にされなかったようだ。

 ミック・ジャガーは1943年生まれだそうで、このツアーではまだ38歳だったことになる。今からちょうど30年前なので、やはり若い! 2年前に見たライブ映画『SHINE A LIGHT』に比べ、とにかくミックの運動量がスゴイ。会場を駆け回り、動きが目まぐるしいのは若さゆえ。今回の作品で初めて気付いたが、ミックの髪は明るい栗色だった。それまでの映像ではダークブラウンに見えたが、屋内では髪の色は濃く見えると聞いたことがある。まさか、染めたのだろうか。
 また、ミックの特徴ある唇が異様に赤く、完全なピンク色となっており、かなり人工的な色だった。ステージ映えするため、口紅を塗ったのだろうか。ショービズ世界では男のメークも珍しいことではないが。

 ライブ映画だと会場の後ろからも撮影するし、ドラムのチャーリー・ワッツの後頭部の数センチはありそうな禿まで映されていたのは笑えた。正面からではまず分からなかっただろうし、ワッツの禿げ頭をキース・リチャーズが小突いていたのはおかしかった。禿げたミックやキースなら想像もつかないが、地味なドラマーならファンも気に留めないだろう。当時はまだベーシストのビル・ワイマンも在籍しており、黙々とベースを奏でていた。

 40前なのでミックも最高に格好いいが、キースもキマッている。くわえ煙草でギターを演奏するだけでなく、歌も結構うまい。キースの衣装でネクタイを緩めた白いシャツにベストを羽織り、細いジーンズというスタイルだったのはいささか気になった。実はクイーンのギタリスト、ブライアン・メイも同じファッションをしていたことがあり、単なる偶然だろうか。キースの方が先なので、ブライアンが真似たのか、或いは英国人ギタリストが好むスタイルなのだろうか?

 他にもクイーンとの共通点で国旗を使ったパフォーマンスがある。ミックがコンサート終盤で、星条旗とユニオンジャックが描かれた大きな布をまとって登場しており、クイーンも同じことをしている。1985年5月11日、クイーン最後の日本公演となった国立代々木競技場コンサートで、英国国旗をマントのように掲げてフレディ・マーキュリーが登場する。イギリスのロックバンドだから当然と思いきや、後ろ向きになるとユニオンジャックの裏には日の丸。観客から歓声が沸き上がったのは書くまでもなく、この様子はライブDVDでも見られる。
 初めて国旗パフォーマンスを行ったバンドは不明だが、実にニクい演出だと思う。国旗でガタガタ言っているろくでなし教師の醜悪な裁判沙汰よりも、ロックバンドの映像の方が遥かにマシだ。

 とかくビートルズばかりを持ち上げ、ストーンズを低評価する日本のマスコミだが、私が断然気に入っているのは後者。音楽も硬質だし、ライブはパワフルだが滅茶苦茶格好いい。演奏曲目は25曲、残念ながら私お気に入りの「Paint It, Black」はなかったが、「Start Me Up」が流れたのは嬉しかった。浮き沈みの激しいロック界で今なお君臨しているだけで大したものだが、ストーンズはエンターテイナーとしても最高のバンドだと改めて思った。



◆関連記事:「The Rolling Stones~SHINE A LIGHT

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6 コメント

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STICKY FINGERS (のらくろ)
2011-09-02 00:03:34
>とかくビートルズばかりを持ち上げ、ストーンズを低評価する日本のマスコミだが、私が断然気に入っているのは後者。

こればかりは好みの問題なので、何とも言いようがないが、ロックのカテゴリーから生涯現役のまま後進に対峙し、時には助け、時には競ってもう50年というのは、確かにすごいと思う。

さて、私がストーンズについて真っ先に思い浮かぶのがこのアルバム。曲ではなくて↓
>ジャケットには本物のジッパーが取り付けられ、それを開くとブリーフが印刷されたカードボードが出てくる。―wiki
のこと。

LPレコード全盛時代だからこそできた「大技」と言えるだろう。CDや、ましてネット配信の現代世界では、ミュージシャンたちもジャケットも表現の一部に加えるということは思いもよらないことに違いない。
教師ごときが (哲)
2011-09-02 01:41:41
> 国旗でガタガタ言っているろくでなし教師の醜悪な裁判沙汰よりも、ロックバンドの映像の方が遥かにマシだ。

そう思います。教師ごときが『聖なる』子供達を汚しているのは許せません。

すみません
RE:STICKY FINGERS (mugi)
2011-09-02 21:28:21
>のらくろ さん、

 逆説的ですが解散したからこそ、ビートルズの評価が今なお高いのかもしれません。知識人や文化人もとにかくビートルズ一辺倒で、ストーンズは低評価。結成時からずっとオリジナルメンバーだったクイーンも、評論家の評価は低いままでした。その評価が高まったのはフレディの死後というから皮肉なものです。メンバーチェンジはあれども、解散せずあれだけ続いているストーンズこそ、ロックバンドの鑑ではないでしょうか。

『Undercover』のジャケットも個性的でした。「オリジナルジャケットは女性の裸体をステッカーで隠した物で、アメリカ盤ではそのステッカーを剥がすことができるようになっていたが、イギリス盤ではステッカーではなく印刷となっていた…」(wikiより)
 サイズの大きなLPジャケットはそれだけでも独自の表現ができましたが、今のCDでは望み薄。リスナーも一旦CDの扱いやすさに慣れれば、LPには戻れない。
RE:教師ごときが (mugi)
2011-09-02 21:30:10
>哲さん、

 日の丸を否定しても、隣国の国旗は肯定、中には掲げた公立学校まであることをネットで知り、愕然とさせられました。中には日本史授業でハングルを教えた宗田千絵(神奈川県)という女教師までいたそうですね。このようなことを新聞ТVでは絶対に報じない。
http://deliciousicecoffee.blog28.fc2.com/blog-entry-4354.html

 まさに洗脳ではないでしょうか?これって、戦前の「軍国主義教育」とどこが違うのでしょう。やはり教師の発言は絶大です。ネットでも教師や教育者と名乗る者がいますが、詐称もあり、その一人の言葉を借りれば「(社会の)役に立たないクズ」そのもの。
今のストーズの原型かも (エルマ)
2011-09-07 01:58:38
突然ですがこちらの記事にも興味がありまして。
懐かしいです。
この映画、私、浪人時代に予備校の授業さぼって映画館に入り浸って見てました(笑)。
ミックがフットボール選手みたいな格好をしてひたすら動き回るんですよね。非常に明るい印象があります。
麻薬問題が長引いてキースがずっとステージに立てなくて解散の危機かと言われていたじゃないですか。キースも元気ですよね。70年代の怪しい暗さとおさらばし、今の明るいストーンズの原型がここにある気がします。

「A列車で行こう」のイントロが静かに流れ、ステージ上のポップなカーテンが開いたら、地味なunder my thumbが始まるという斬新な幕開け。衝撃的でした。


ストーンズはこの後商業ロックの典型のように言われて、彼らなりにアコースティックライブ風な飛び出しステージもつけて批判をかわしたりするけれど、国旗のパフォーマンスといい(ジミヘンの「星条旗よ永遠なれ」で終わるところもニクイ)一つとってもアイデアが個性的だと思います。音的にも今なおストーンズ風なリバイバルが多々繰り返されるし、結局、新しいバンドも彼らの後追いでしかない気が。

そうそう、一時RCサクセションが傾斜のあるステージを作っていましたが、もしかしたらこの映画の影響かもしれませんね。間違っていたらごめんなさい。
この映画から影響を受けたミュージシャンは多かったと思っています。
ご紹介、楽しく読ませて頂きました。
RE:今のストーズの原型かも (mugi)
2011-09-08 22:05:05
>エルマさん、

 私は予備校には行きませんでしたが、映画好きなので“本校”時代にもよく通っていました。当時は料金の安い名画座でよくリバイバル映画が上映されており、映画好きの学生には有難かった。
 この作品は今回初めて見ましたが、地方ではあまり上映されないので、大画面でストーンズが見られて感激しました。それにしても、貴女もストーンズファンだったとは驚きました。他のインドオタクの女性ブロガーにも、熱心なストーンズファンがいました。

 ストーンズに限らず大物バンドには決まって解散説が付きまといますよね。まるで解散させたがっているかのように、芸能誌はゴシップを書き立てるし、実際にそのプレッシャーで解散してしまうバンドも少なくない。バンドを長く続けただけでも大したものだと思います。
 大御所故に商業主義やアナクロさを嘲笑されがちですが、↑で「のらくろ」さんがコメントした通り、「生涯現役のまま後進に対峙し、時には助け、時には競って」いる。ストーンズの存在こそが新人バンドの意欲の元となり、創作にも影響を与えていると思います。

 RCサクセションを「日本のストーンズ」と呼ぶ評論家もいたし、影響は絶対に受けていると思います。実はRCサクセションも好きでした(笑)。だから2年前の忌野清志郎の訃報には凹みました。