トーキング・マイノリティ

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ロボット2.0 18/印

2020-08-04 22:40:13 | 映画

 今やネット配信が当たり前の時代だが、映画好きの地方在住者には今でもDVDレンタル店の存在は有難い。地元で公開されなかったため、行き付けのツ○ヤでこの作品を借りてみた。以下は映画.comでのストーリー紹介

ムトゥ 踊るマハラジャ」のラジニカーントが1人2役で主演し、大ヒットを記録したインド製SFアクションコメディ「ロボット」のシリーズ第2弾。インドの町からスマートフォンが消え、携帯業者や通信大臣がスマホに殺されるという謎の殺人事件が発生した。
 消えたスマホの行方を追っていたバシー博士と助手のニラーは、おびただしい数のスマホが合体して巨大な怪鳥に変身していることを突き止める。人々を襲いだした巨大怪鳥を目の当たりにしたバシー博士は人類を守るため、封印された伝説のロボット「チッテイ」復活を思い立つ。

 シリーズ第2弾目は1作目より質が落ちることも少なくないが、私的にはこの2作目の方が面白かった。上文では主人公バシー博士の助手はニラーとなっているが、助手は人間ではなく美人型ロボットなのだ。助手が美人ロボットという設定に、日本のアニメ『コブラ』のレディを連想した方もいるかもしれない。
 美人ロボット開発には当然博士の恋人は不満タラタラだが、家父長制の強いと言われるインドでも通りすがりのおじさんがぼやいたセリフは面白かった。「女房はいてもいなくても大事(おおごと)だ」

 歌と踊りに恋が付き物の娯楽作品がインド映画の定番だが、単なるおバカ映画ばかりではなく社会問題が挿入されることもある。本作はスマホによる電磁波がテーマとなっており、敵役は大量のスマホが合体した怪鳥である。「激闘!おじさんロボVSスマホロボ」のコピーがあるのはそのため。
 実は怪鳥の正体は自殺した鳥類学者パクシだった。彼は携帯電話の普及による電波塔増設の結果、発信される電波が鳥の生態を狂わせ死に追いやっている事実を突き止めた。そしてスマホの使用制限や違法な電波塔の削減を訴えるが、電力会社も政府機関も全く無視する。周囲からも理解を得られないパクシは絶望し、電波塔に登り、そこで首を吊る。

 パクシが携帯電力企業はインドより広大な国土の米国ではせいぜい4~5社、インドより人口の多い中国に至っては1~2社と主張していたのは興味深い。対照的にインドは10社ちかくもあり、自由競争と言えば聞こえがいいが、客層の奪い合いで違法な電波塔建設や担当高官への贈賄が蔓延っているようだ。
 昨今は日本でも雀の数が減っているが、インドも減少が止まらないらしい。尤もパクシに会った電気通信大臣が、「スズメはアレに効く」と笑いながら言っていたのはおかしかった。インドではスズメは強壮剤として食べられることもあるのか?

 自殺したパクシの生体エネルギーは鳥の生体エネルギーと融合、スマホを電磁波により操るオーラを身につけ、ついにスマホ巨大怪鳥が出現したという設定だが、この辺りはツッコミを入れるのは野暮というもの。あのスマホ合体怪鳥にウルトラ怪獣を思い出した人も少なくないだろう。
 怪鳥と化したパクシは人間を憎悪しており、スマホを使う人間は皆殺すと宣言、ジャワハルラール・ネルー・スタジアムでチッテイと激闘を繰り広げる。

 それにしても、電波塔増設による電磁波が鳥類の生態に悪影響を与えているという話を本作で初めて知った。この見解が正しいかは不明だが、電磁波のために方向感覚を狂わされ飛行できなくなる渡り鳥や、卵の殻が薄くなり誕生が難しくなるケースが本作で紹介されている。
 これらが電磁波に原因があるとすれば恐ろしい。被害を受けるのは鳥類に止まらず、やがて人類にも跳ね返ってくるのだから。ラスト近くでバシー博士がいう通り、地球は人類のためだけにあるのではないのだ。

 作品の制作費は実に7,900万ドル、制作時点でインド映画界最高と言われる。元からインドは映画大国にせよ、今の日本映画では到底不可能な製作費だ。悪役パクシに扮したアクシャイ・クマールが、『パッドマン 5億人の女性を救った男』では主役だったことをDVD鑑賞後にネットで知った。
 最近はポリコレのためにつまらなくなってきたハリウッド映画よりも、今はインド映画の方が見応えがある作品が増えてきたように思える。



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2 コメント

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Unknown (鳳山)
2020-08-05 23:29:24
インド映画は見たことがないですが面白そうですね。
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鳳山さんへ (mugi)
2020-08-06 22:44:00
 インド映画は上映時間が長い作品が多いですが、DVDなら家で気楽に鑑賞できます。試しにレンタル店で借りてみるのも一興だと思います。
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