この映画を上映していた映画館のHPには、以下のように紹介されていた。
-東北のロックファンの皆様、お待たせしました。ストーンズとスコセッシによる本作、ようやく公開です!キャパ2500のビーコン・シアターで、自身もストーンズマニアであるスコセッシが20台ものカメラを使って撮影しました。音楽映画の中でも最高峰。ロックスオフ!
ストーンズのような大御所バンドなら、来日しても東北公演など絶対行わないので、ストーンズのライブを鑑賞できるこの映画は実にありがたい。マニアという程ではないが、私もストーンズはお気に入りのバンドのひとつ。その理由は日本の音楽雑誌がビートルズばかり取り上げ、持ち上げていたこともある。私がよく洋楽を聴いていた'80年代前半でも、音楽雑誌の特集は決まってビートルズばかりでウンザリしていた。そこでビートルズと違いバンドは健在にも係らず、日本の評論家達からは無視されがちなストーンズを聴いてみて、気に入った。やや甘くて感傷的に感じられたビートルズと違い、硬質でパワー溢れる音楽もよかった。
撮影されたライブ会場はNYのコンサートホール、ビーコン・シアター。収容人数2,800人、ストーンズのライブとしてはかなり小さな会場だが、それだけにバンドとオーディエンスの一体感がより強調されている。しかもゲストにはクリントン一家や彼と繋がりのある外国政府要人のような大物も来ている。会場でバンドメンバーと握手や抱擁を交わす合衆国元大統領は、同時に地球温暖化の言葉も口にし政策アピールも顕示する抜け目なさ。彼らに限らず大物政治家と大物バンドは相性が抜群なのだ。
ライブの第一曲目は「ジャンピング・ジャック・フラッシュ/Jumping Jack Flash」。ミック・ジャガーの派手なパフォーマンスは変わりないが、この曲に相応しくなく歌声が硬い。さすがに60代半ばで声量が衰えたのかと思いきや、二曲目で本調子となった。ミックのようなベテランでも立ち上がりや調子の悪いこともあるのが分る。そして、ミックの他キース・リチャーズやロン・ウッドも以前変わらぬスレンダーな体型。それだけにアップになると顔のシワが目立つも、あの体型をどうして維持しているのだろう?メンバーより年少でも、体重増加が気になる中年世代の私は、是非その秘訣を知りたい。
演奏されたのは往年のナンバーがやはり多かった。「ダイスを転がせ/Tumbling Dice」「ブラウン・シュガー/Brown Sugar」「悪魔を憐れむ歌/Sympathy for the Devil」…完全な懐メロロックだが、会場にいた若いファンもノッていた。
私がストーンズで一番好きな曲は、やはり「サティスファクション/(I Can't Get No) Satisfaction」。これを初めて聴いたのが映画『地獄の黙示録』を見た時だった。『地獄の~』の中盤この歌が流れ、よかったので記憶に残った。このライブ映画でも「サティスファクション」が演奏され、思わず首を振ってしまう。
この作品はライブばかりではなく、過去のストーンズメンバーへのインタビュー映像が何度も挿入されている。まだ'60年代で、若かった頃の表情もよいが、あるモノクロ映像のインタビュー場面は興味深い。ストーンズは麻薬やらその他トラブルでも有名だが、宗教でも問題視され、追及されていたことを初めて知った。イギリスの知識人がミックに宗教について問いただそうとする企画であり、TIMES紙記者や聖職者も居合わせている。ミックは宗教のことを話したくないと言っており、ストーンズのような世俗的なバンドも、宗教を無視できない欧州社会の側面を改めて知らされる。「悪魔を憐れむ歌」は神を冒涜するものだとされ、沢山のレコードが燃やされたこともあった。ジョン・レノンも「僕らはどの宗教やキリストよりも人気がある」と失言、同じ憂き目に遭っている。欧米の芸能人は神への感謝の念を表明するのが素晴らしいと書いていたカトリックのブロガー氏がいたが、レコード焼却騒動から私にはおぞましい限りだ。
残念ながら、今回のライブで「黒くぬれ/Paint It Black」は演奏されなかった。ネットでは便利なことに、You Tubeでこの曲のライブも見られる。改めていい曲だと感じ入るし、何度見てもストーンズのライブは見事。NYの美しい月夜の夜景を映した後、月がストーンズの唇ロゴに変わる映画のラストもニクい演出。
ストーンズといえば永遠の不良のイメージがあり、事実彼らは様々なトラブルこそ起こしているが、ミックやキースなど元々は中産階級出、前者は中退したにせよ大学で学んだインテリなのだ。当時のイギリスで大学入学者は極めて少なくエリートの卵だった。一方、優等生の印象の強いビートルズは元は労働者階級出身の不良青年たち。
代表曲「スタート・ミー・アップ/Start Me Up」も映画の曲目にあり、これも元気の出る歌。Windows 95のCMにも使われたので、憶えておられる方もいるだろうし、そのCMもYou Tubeで見られる。このCMも懐かしいが、ストーンズの1981年のライブ画像の方も挙げたい。今は平均年齢64歳のストーンズが、まだ若いオヤジバンドだった頃だ。
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2006年の来日公演時には、仙台でコンサートをやる可能性もかなり高かったんです。次回は実現するかもしれませんね。
Shine A Lightはビーコン・シアターで行った2日間のコンサートを映画にしたものですが、1日目は、ビル・クリントンのチャリティー・バースデーでした。
キースは大学行っていないです。当時のイギリスの教育制度では、アート・スクールから大学に進学するコースは、極めて希でした。
次回、ストーンズが来日公演をするのは何時になるのでしょうねぇ…
とかく東北は文化面でも過疎地帯です。
イギリスのアート・スクールって日本の美大とは違うのですか。私はてっきり同じ類の学校だと思っていました。 正しい情報を教えて頂いて、有難うございました。 それでもアート・スクールに行くほどなら、全くの非インテリではないですよね?
当時は、アートスクールやテクニカルスクールから美大や工業大に進学する人は少なくて、卒業したらすぐ職業につけるような、専門学校的な教育機関だったようです。イギリスの教育制度を調べたわけではなく、ストーンズのメンバーのインタビューからの推測なので、正確ではないかもしれません。
イギリスの教育制度を教えて頂き、有難うございました!
ならば中退したにせよ、奨学金をもらい大学に通ったミックは優等生だったのですね。国税局に就職するか迷ったほどなので、若い頃から金銭感覚は抜群だったようで。
ローリングストーンズですか~。Brown Sugarとか好きです。まあ私は、その世代で生まれた訳ではないので当時の洋楽はどんなのがヒットしていたのかわかりませんが(最近はまりましたよ)
絵柄や描写などで好き嫌いが別れる作品かも知れませんが少年漫画『ジョジョの奇妙な冒険』で様々な洋楽(たまに邦楽)のバンド名、アーティスト名を使ったキャラクターが登場するので、この作品を読んで、興味を持って、はまったって感じです。プログレなどが気に入ってます。
>「悪魔を憐れむ歌」は神を冒涜するものだとされ、沢山のレコードが燃やされたことも
ほんっとにクリスチャンはこう言う所過敏ですよね。「マリリン・マンソン」みたいなのはバンド活動禁止地域まであるそうで。(アレはアレで強烈なバンドですが・・)
私がよく見るクリスチャン系ブロガーも相変わらずなコメントを見せ付けます。
>ナチスの宣伝相であったゲッペルスは、民衆とはおろかなもので、嘘でも3度繰り返せば彼らにとって真実になってしまうと言いました。繰り返し繰り返し聞いていることは、知らず知らずの内に信仰になってしまうのです。
この人に、かかれば「自分の同期の伝道師は何度も失恋している。この人は切ない恋の歌をよく聴いていた。だからこうなった」「世間批判の曲を聴き続けた、ある女性は鬱になってしまった」「やはり神への信仰は大事だ」と断言してしまう。
この人の意見に賛成気味なコメントでは『へルタースケルター』を聴いてムシャクシャしたと言い殺人事件が起きた、と言う例を挙げてますが、おたくらは聖書の言葉に従って聖絶と言う名の殺人やらかしそうで怖いよ、って感じです。
ビートルズもボン・ジョビもプリンスも反聖書的で歌詞を思い出すだけでゾッとするそうです。まあ、この人達、陰謀論信じ切ってますから。ロックなんて大衆を洗脳する為のタヴィストック研究所の回し者だと論じてます。
記事にも書いたように、私はやや感傷的なビートルズよりもストーンズの方が好みです。Paint It Blackを初めてラジオで聞いた時、本当にゾクゾクしましたね。私もずっと後で聞いた世代ですが、いい曲は時代が変わっても受け入れられます。『ジョジョの奇妙な冒険』は初耳ですが、結構日本の漫画では洋楽キャラが登場しますね。
「マリリン・マンソン」など、米国の保守クリスチャンから目の敵にされていますよね。「聖飢魔II」さえコミカルバンドに見た日本人からすれば、マリリン・マンソンは特に問題はないとしか思えませんが。
『へルタースケルター』ならU2もカバーで歌ったことがありますが、彼らはあまり批判されませんね。ライブではイエスを讃えたりするので、聖職者からも受けが良いのでしょう。
「誇り高き独身男」のクリスチャン系ブロガーですが、これは「求められぬゆえの貞操」が実態なのではないでしょうか。つまり、モテない男の強がりにしか見えません。俗物根性の私としては、女と関係した破戒僧の方に好感が持てます。異性がほしいけど、それが得られぬゆえに信仰に逃避した?
陰謀論は結構左派にも人気がありますが、大衆を洗脳するなら宗教くらい効果的なものはないはずですよ。キリスト教の歴史がそれを実証している。
http://kirisutoinochi.seesaa.net/article/115126952.html
とかで自己紹介してますが、この人自身色々苦しい環境に生まれたそうで
http://kirisutoinochi.seesaa.net/category/5979680-1.html
しかし女は男とコミュニケーションを取り神への愛を証明する為の生き物として扱ったり(女の役割を聖書的にしか割り当てられない)して何か失礼な気がします。
またキリスト教に、のめりこみ過ぎだ、と思った内容もありました。
http://kirisutoinochi.seesaa.net/article/131498980.html
奇妙な食癖すら神への信仰の言い訳に出来る。この精神は正直異常に感じました。
意外だったのは、若い頃はキリスト教に敵意を持っていたこと。それが何故、熱心な信者となったのか不可解です。
キリスト教にのめり込めば、女の役割を聖書的にしか割り当てられないのも当然でしょう。以前トラックバックされたブログ記事もとかく女性蔑視が鼻に付きましたね。性的被害に遭ったのも、隙を見せた女が悪いと強調されており、不愉快でした。
http://ameblo.jp/littleyohane/entry-10555621844.html
ダイエットを必要とするくらいドカ食いをするのは、七つの大罪の「暴食」になるのでは?神学者ならその程度知らないはずはないし、神の愛を知ったことで、暴食が治りましたというなら納得できますけど、キリストと一体となった自己陶酔としか思えませんね。