トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

惨い最期を迎えた歴史上の女性 その一

2015-01-31 20:40:10 | 歴史諸随想

 読んで面白く、インスピレーションの湧くブログ記事がある。先日見た「絶対にイヤだ!最悪な死に方をした歴史上の人物7人」という記事もそのひとつで、とびきりイヤな死に方が紹介されている。ただ、この記事は1人を除き全員男性であり、紅一点の女性も「夫とウィリアム・テルごっこをやって死亡」だから、笑劇に近い。
 そこで私も惨い死様だった歴史上の女性5人を挙げて見たくなった。ただし、ユーモアのある先の記事とは違い陰惨なケースばかりだし、とびきり嫌な話となるのはご諒承のほどを。

1.ヒュパティア
 415年3月、キリスト教徒に惨殺されたアレキサンドリアの女性数学者・天文学者・新プラトン主義哲学者。以下はwikiからの引用。

415年、四旬節のある日、総司教キュリロスの部下である修道士たちは、馬車で学園に向かっていたヒュパティアを馬車から引きずりおろし、教会に連れ込んだあと、彼女を裸にして、カキの貝殻で生きたまま彼女の肉を骨から削ぎ落として殺害した。ギリシャ語で「カキの貝殻(ostrakois;oystershells)」という言葉が使われているが、これはギリシャではカキの貝殻を、家の屋根などのタイルとして使用していたことに由来する。 英語では、「タイル(tiles)で殺され、体を切断された後、焼却された。」と訳されている。

アシモフの雑学コレクション』(新潮文庫)で私は初めてヒュパティアの名を知ったが、いかに5世紀でもこの殺害方はショッキングだった。「牡蠣で異教徒を殺すキリスト教徒とは」というブログ記事で、管理人さんはこんな問いかけをしている。
最初に、彼女のどの部分に牡蠣の貝殻を差し込んだのでしょうか、臀部でしょうか、あるいは乳房、腹部、太もも、ふくらはぎ、性器、耳、鼻、眼球、どこだったのでしょうか…

 この疑問は尤もだ。はじめに貝殻を差し込まれたヒュパティアの部位だが、私は頬または口を想像している。彼女は美人だったそうで、ならば殺戮者たちは容貌を台無しにするため、顔を真っ先に切ったのかもしれない。著名な哲学者で男を前に哲学を説いていた彼女は、キリスト教徒には魔女と見なされており、悪魔の教えを説いた口を貝殻でこじ開けたことも考えられる。
 次は乳房、性器の順だろう。現代でもアフリカの紛争地域では敵側の女性に対し輪姦は当たり前、裸にして乳房や性器を潰すリンチは珍しくないという。しかし、現代の紛争地域のアフリカでも、カキの貝殻で生きたまま切り刻んだ話は聞いたことがない。惨たらしい殺害は歴史上では多々あるが、ヒュパティアの死は私の知る限り最も悲惨なケースだった。

2.戚夫人
 もしかすると戚夫人は名前よりも、“人豚”で記憶されているのかもしれない。そして加害者の呂后の名のほうがより知られているはず。側室でありながら自分の産んだ子を皇太子にするよう劉邦に度々懇願したため、正室・呂后から酷く憎まれ、劉邦の死後は恐ろしい報復を受ける。
 踊りの名手といわれた戚夫人、その美しい両手両足は切断され、目玉はえぐられ、耳は焼かれ薬で声は潰された。その後便所に置いて人彘(人豚)と呼ばせた…と史書にはある。両手両足を切断された時点で出血ショック死しなかったのか?と疑いたくなるが、“人豚”は暫く生きていたとされる。権力闘争に破れた後宮の女が暗殺されるのは何処でもみられる現象だが、中国史ほど残酷な処刑は他に類を見ない。中国史上唯一の女帝となった武則天も呂后に倣ったのか、寵愛を争った皇后や淑妃の四肢を切断後、酒壺に投げ込み、「人間酒」を作ったと云われる。

3.ファーティマ
 イスラム世界では現代でもムハンマドの娘ファーティマにちなみ、女児にこの名を付ける親が多いが、以下はモンゴル帝国第2代皇帝オゴデイの皇后トレゲネの侍女だったペルシア女性ファーティマの例。血塗れの果てに絶命したヒュパティアや戚夫人とは違い、ファーティマの処刑ではさほど流血はなく、直接の死因は溺死。しかし、苦痛や恥辱は劣らないはずだし、世界史上で最も奇妙な処刑のひとつだろう。何しろ人体の穴という穴をふさがれたのだから。
「人体の穴をふさぐ刑」を受けたのは、13世紀のファーティマが初めてではない。古代ローマ皇帝ティベリウスも囚人に対し同じ刑を下している。だが対象は男であり、女性にそれが執行されたのはより陰惨な印象を受ける。
その二に続く

◆関連記事:「悪女
 「キリスト教の聖人
 「アレクサンドリア

よろしかったら、クリックお願いします
人気ブログランキングへ   にほんブログ村 歴史ブログへ


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
チトーパルチザン (巨大虎猫)
2015-01-31 22:06:09
アカ先生たちが大好きなユーゴスラビアのチトーパルチザンは、元々が戦時国際法違反の組織であるためもあり、戦時国際法を一切守りませんでした。彼らの捕虜になってしまうと、男は性器を切断され(鉄条網切断用の工兵用ワイヤーカッターなどで)、眼球を銃剣でえぐられ、身に付けていた勲章で顔面をズタズタにされたそうです。女の場合は、もちろん輪姦です。(気に入った女性は拉致して性奴隷に。)
カトリックの聖職者は、全身が打撲痕で黒人のように真っ黒になった撲殺死体で発見されたことも。
チトーパルチザンはセルビア正教徒が主体で、対立側のウスタシャはカトリックとイスラムの連合でしたので、この戦いは宗教戦争の一面もありました。ところが、日本のチトー愛好家たちは、「ファシズムと自由主義の戦い」だとか言って、チトーパルチザンを礼賛するのです。特に、クリスチャンの場合が滑稽です。「セルビアのクリスチャンたちが無神論のファシズムに対して立ち上がった」と勘違いしていたりします。実際は、宗派の異なるキリスト教徒が敵対して憎み合って戦ったのです。
返信する
Re:チトーパルチザン (mugi)
2015-02-01 21:00:16
>巨大虎猫さん、

 いわゆる“有識者”はアカ先生ばかりのためか、日本でのチトーの評判は良かったですよね。しかし、コメントにある蛮行を働いていたことは初めて知りました。戦後の英米がチトーを持ち上げたのも、旧ソ連に対抗していたからだったとか。ウスタシャはナチスも青くなるほど残忍でしたが、チトーパルチザンも劣らない。クリスチャンにチトーパルチザンの実態を教えても、絶対に信じないでしょうね。

 これでは毛沢東の八路軍と同じです。これまた毛沢東愛好者のアカ先生は、「八路軍は例え敵方であっても、子供は殺さない」と言っていたのだから、今ではお笑い草です。少し前に話題となったユン・チアンの『マオ』では、凄まじい粛清と虐殺が明記されていました。もちろん子供さえ虐殺の対象だったのです。
返信する