トーキング・マイノリティ

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トップガン マーヴェリック(米)

2022-06-28 21:40:17 | 映画

 久しぶりに痛快な娯楽映画を見てきた。『トップガン マーヴェリック』はタイトル通り'86年作『トップガン』の続編で、前作から実に36年振りの公開。本作はコロナ禍のために制作もかなり遅れたそうだが、何とか今年上映されたのは良かった。
 前作が公開された時、日本でも航空自衛隊に入隊する若者が急増したと云われるが、本作でも同じような現象が起きるのやら。

 前作『トップガン』は封切で見た。主演トム・クルーズは今年60歳を迎えるそうだが、前作に比べれば老けても、やはりトップスターだけあって若い!肉体を鍛えていることは映像からも解り、若い俳優たちと引けを取らなかった。
 私は特にトム・クルーズのファンではないが、暫く前に彼がサイエントロジー教会に入会、高い地位についているというニュースを知り、トップスターが新興宗教の広告塔にされるのは米国でも同じらしい。

 あまり娯楽作品を紹介しない河北新報だが、本作は比較的大きめに取り上げていた。前作で事故死した親友グースの息子が登場することが載っており、これだけでも葛藤を抱えつつ、共に任務を成功させ、最後には和解するストーリーになることは想像がついたし、実際にそうだった。同行の友人に言わせると「ストーリーは単純」だし、それがハリウッド映画の良さでもある。
 公開前、マーヴェリックが羽織るジャケットに描かれていた日章旗と青天白日満地紅旗が消されていたことがネットで話題となっていた。いかにも中共資本に阿ったハリウッドらしいと感じたが、公開された本作では2つの国旗が描かれていたので安心した。

 前作では大尉だった主人公マーヴェリックは大佐になっている。あれだけ輝かしい戦歴を持つにも関わらず、昇進を拒み続けているのは事故で親友を死なせてしまったトラウマが消えなかったからだ。
 一方、前作でマーヴェリックのライバル、“アイスマン”は海軍大将、太平洋艦隊司令官にまで昇進している。いかにも出世街道まっしぐらの人物だったが、アイスマンこそがマーヴェリックに「トップガン」での教官に付かせる。クールなアイスマンだが、実は何かとトラブルを起こすマーヴェリックの後ろ盾になっていたのだ。アイスマンも病を抱えていて、マーヴェリックに助言して間もなく息を引き取った。

 それにしても、前作でのトップガンメンバーはもちろん海軍上層部は白人男性ばかりだったのに、今回はポリコレゆえか、黒人や女性が結構目に付いた。女性のトップガンなど私には違和感があるし、体力的にも疑問だが、こればかりは男女同権を謳う米映画だから仕方ない。
 前作だとトップガン関連者で登場した女性は主人公と恋に落ちる教官くらいだったし、女性教官“チャーリー”は同性から見てもさっそうとしていて実に格好いい。チャーリーに扮したケリー・マクギリスの最近の写真を先日ネットで目にしたが、見るべきではなかった……
 前作同様映画のBGMにはロックが使われていた。マーヴェリックの元カノが経営するバーで、「レッツ・ダンス」(デヴィッド・ボウイ)、「ゲット・イット・オン」(T・レックス)が流れた際、思わずノッてしまった中高年ロックファンもいただろう。

 上下関係が厳しいとされる軍隊だが、トップガンメンバーがマーヴェリックにタメ口じみた話し方をするのは驚いた。日本ほど敬語が喧しくなく、“サー”で済む英語の影響なのか、映画特有の誇張なのか。
 まだ冷戦中だった前作と違い、今回の「ならず者国家」が具体的に何処を指しているのか、特定が難しいようだ。敵地には雪や森林があったので、友人はロシアでは?と言っていたが、北朝鮮やイランでも当てはまりそう。

 F-14戦闘機は前作の主役でもあったが、今はすっかり骨董品となっている。それでもF-14で敵の第5世代ジェット戦闘機に立ち向かい、撃墜するというのはいかにも映画。ラストでマーヴェリックが元カノとプロペラ機に乗っていたのも、やはりノスタルジック。
 映画の途中では戦闘機乗りは消えゆくものといった台詞があった。無人飛行機が世界中で量産されている現在、大空で格闘を繰り広げた戦闘機パイロットは遠くない将来消滅するとすれば、戦闘機にまるで疎い私でも寂しく感じる。



 前作の本編オープニング映像の動画も公開されており、本作も空母から戦闘機が飛び立つオープニングで始まっている。不思議なのは戦闘機が発進する際、甲板員たちが未だに手信号を使っていること。技術の粋を集めた最新鋭戦闘機と、甲板員の手信号をミスマッチに感じたのは私のような軍事オンチだけだろうか?
 同じ軍事オンチの友人曰く、「返ってそれだからこそ、手信号が使われているのかも。赤や緑の信号だけではパイロットもやる気が失せると思う」。果たして真相は?



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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (牛蒡剣)
2022-06-28 23:27:56
5月中に実は見てました。実は第1作はそれほど好きではないのですが(つまらないとは言っていないw)正直全く期待してませんでした。むしろ冷やかしで見に行きましたwトップガンの
の良さの半分はF14戦闘機のかっこよさが担保していただろうに、もう一つの主役が米軍から引退した今どーすんのとwがいい意味で裏切られましたw

良くも悪くも内容がなくて薄っぺらい映画!
しかし しかし!来場した人が見たいものは全部詰まってる!素敵な映画だと思いました。戦闘機のスペックやS-125対空ミサイル(うんざりするほど飛んできた4連装の対空ミサイルの制式名称)の性能が分からなくたって全然問題ない爽快感だったと思います。ツッコミを入れればきりがないがそんな野暮なことをしようと思わせない!力技で豪快に押し切ったなあとwこういうい意味で頭の悪い痛快娯楽はいいなあとw

敵国はわざとぼかしたのは明白ですね。F14を保有していたのでまあ本当はイランにしたかった(世界で唯一F14を使用している国)のでしょうがポリコレ的に面倒だったろうし本作はそういう設定は気にするだけ無駄だし気にしない方が楽しですからねえ。

 余談ですがイランのF14はロシアの援助でアメリカとロシアのいいところ取り戦闘機として進化してまだまだ現役を続行するようです。まだまだ骨董品とは言わせませんw米軍も本気で維持する気があれば十分拡張性はあったはずですが維持コストに撃墜されてしまいましたw

>元カノとプロペラ機に乗っていたのも、やはりノスタルジック。

乗っていたプロペラ戦闘機はコクピットシリーズでもよく出てくるP51ムスタング戦闘機ですね。
「ムスタング」は野生の荒馬のこと。此の映画、
昔の仲間から連絡がきて凄腕のカウボーイ
が問題を片づけて、「て馬に乗って最後去っていくという西部劇スタイル映画で、「戦闘機でやってる現代のシェーン」ということを暗に説明してるんだと思います。そして「自分も老いて骨董品に成り下がってもまだまだ輝ける」という意味もかなあと。
勿論そんな暗喩抜きで絵になるシーンでもありましたね。
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Unknown (牛蒡剣)
2022-06-28 23:39:25
>新鋭戦闘機と、甲板員の手信号をミスマッチに感じたのは私のような軍事オンチだけだろうか?

最終的には人間がチェックするしかないのです。以外かもしれませんが日本軍は甲板員の手信号に依存せず信号重視のやり方だったのですが、日米の空母運用を子細に検討した結果双方の長所を取り入れた結果です。着艦の信号方式は日本のミラーランディグシステムという青と赤信号で誘導する方式がとりいれられ、従来の米軍の手信号は補助的になったり。もっとも最近の着艦は全自動システムが開発されており、本作のメイン機体FA18も搭載されてます。自動化がどんどん進み甲板員の出番は減るでしょう。ちなみに空母の甲板員の手信号は口伝で各艦伝統のやり方らしいです。常に最適化を目指しているので日々やり方が変わっている職人芸でマニュアル化しずらい技術らしいです。
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牛蒡剣さんへ (mugi)
2022-06-29 21:32:19
 実は軍事に詳しい牛蒡剣さんからのコメントを待っていました(笑)。今回も丁寧な解説をありがとうございます!

 私のような戦闘機オンチでもF14戦闘機のかっこよさにはしびれました。大画面での戦闘機バトルはこの映画の見どころだと改めて感じます。この映画は世界的に大ヒットしているそうですが、何かと暗い世界情勢の中で爽快感たっぷりの痛快娯楽作品を求めていたことがあると思います。

 そして世界で唯一F14を使用している国はイランだったのですか!敵地ではミグも出てきたので友人はロシアかも、と言っていたのですが、私はそれがミグとは分からなかった(汗)。
 さらにラストに登場したのはP51ムスタング戦闘機でしたか。コクピットシリーズは見ていたはずなのに、それにも気付きませんでした。

>>馬に乗って最後去っていくという西部劇スタイル映画で、「戦闘機でやってる現代のシェーン」ということを暗に説明してるんだと思います。

 この一言で納得しました。何で21世紀になってプロペラ機?というツッコミへの回答です。

 日本軍は甲板員の手信号に依存せず信号重視のやり方だったのは意外でした。さすがの米軍も手信号は補助的になったり、自動化がどんどん進んでいるのでしたか。空母の甲板員の手信号が各艦伝統のやり方で、全艦マニュアル化されていなかったのも意外でした。

 戦闘機バトルはハイライトですが、私的には空母の甲板員の手信号シーンが一番好きです。
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Unknown (アミ)
2022-06-29 23:58:38
>女性のトップガンなど私には違和感があるし、体力的にも疑問だが、こればかりは男女同権を謳う米映画だから仕方ない。

米軍では、以前から女性の戦闘機パイロットが存在し、我が国の空自でも女性の戦闘機パイロットが誕生しています。しかし、男性ですら、志願者の9割が弾かれる世界ですから、体力的には女性にはさらに難関でしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=ne2rNzcjUtE

>無人飛行機が世界中で量産されている現在、大空で格闘を繰り広げた戦闘機パイロットは遠くない将来消滅するとすれば、戦闘機にまるで疎い私でも寂しく感じる。

新谷かおる氏の「ファイター2119」(1977年)という短編漫画があります。22世紀では無人戦闘機が戦場へ出て戦い、生身の人間が戦場へ行く必要がなくなり、戦争当事国の戦死者がゼロになっている世界が描かれています。
今、軍事研究者の間では、「50年後の戦場に人間がいるかどうか」が議論されていると言いますが、どこの国も少子化で兵力の確保が困難になっていることに加え、表現は良くありませんが、人間の生命の値段が昔より高くなっている事も戦争の機械化、自動化に拍車をかけているのでしょう。

新谷かおる氏は、松本零士の弟子であり、飛行機マニアであり、代表作の「エリア88」では、多種多様な戦闘機を登場させ戦わせており、F-14もお気に入りですが、映画やアニメで観る分なら、戦闘機同士の格闘戦は「カッコイイ」と感じますが、当事者にとっては、生命を懸けた戦いですから、人命尊重の観点から、そうした戦いはなくなっていくのも時代の流れかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=EP07o8XezIw&t=332s
ちなみにエリア88のアニメ版には、アンドレの声を担当した志垣太郎氏も出演しています。
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アミさんへ (mugi)
2022-06-30 21:09:10
 映画に描かれていましたが、訓練中のG体験だけでも重圧のスゴさが伺えました。まして体力の劣る女性なら女性のトップガンが難関なのは素人でも分かります。それにしても、日本初の女性戦闘機パイロットの表情は素晴らしい。このような女性を「名誉男性」と蔑む同性がいたら、本当にぶん殴りたくなりますよ。

 漫画は殆ど見ないので「ファイター2119」は未読ですが、22世紀での戦争の描き方は興味深いですね。現代でも「50年後の戦場に人間がいるかどうか」が議論されているようでは、トップガンは今世紀中に絶滅しているかも。

 名前だけは知りながら「エリア88」も未見ですが、作者が松本零士の弟子だったことは知りませんでした。「砂漠のイリュ-ジョン」は手書きだそうですが、映像は素晴らしい。コメントにもあるとおり、ヘルメットから血が溢れ出るシーンは迫力がありました。
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Unknown (鳳山)
2022-07-02 21:58:39
私の名を騙った荒らしコメントがあったそうで、どんな基地外発言をしているか楽しみに見に来たんですが、よく考えたら承認前に削除されたはずですよね。失礼しました。

記事と全く関係のないコメントで申し訳ございません。URLを入れたら区別できるかと思ったんですが、悪人が私のブログのアドレスを騙ったら見分けがつかないかもしれないので困りました。いったいどうしたら良いでしょうか?もし私と区別が難しいなら第1次大戦中で私が一番好きなドイツ海軍巡洋戦艦のクラスを尋ねてみてください。偽物は答えられないでしょうから。もし適当に答えた時は私のブログにご一報ください。それで分かります。

それにしても私の名前を騙るくらいですから、mugiさんと私のブログを共通して荒らしている者ですよね?最近基地外が湧かなくなったので気になります。

一人思い浮かんだ人はいるんですが、mugiさんのブログに来ているかどうかは不明なので分かりません。あの人は保守側ではあるんですが過激発言が多く困った人なんです。ただそういう卑怯なことはしない人なので違うかな?

いったい誰なんでしょうかね?謎は深まるばかり。
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鳳山さんへ (mugi)
2022-07-03 21:10:41
 お気遣いありがとうございます。いくらHNを変えても、コメント文のはじめだけで鳳山さんとなりすましのニセモノは一発で分かりますよ。mugiというHNまで使っていた(笑)。mugiというHNでURLを入れ、私に成りすます最悪の下種です。
 数分内に連投しており、方々のサイトを荒らすことが日課となっている暇人です。当人の言葉を借りれば多重偽名ネット・ゴキブリ。尤も自然環境に貢献しているゴキブリさんに失礼ですが。

 文は人なりで当人の性格も浮かび上がってきます。暴言を吐く者に限ってささいなことを言われると傷つきやすい。13日前の私のコメントに、やっと「で?だからどうなんですか?」と一行レス。自宅警備員の正体などこの程度です。根は小心者で弱い犬ほどよく吠える。

 鳳山さんのブログを荒らしている基地外のことは分かりませんが、私の元に来ているのは完全なパヨクだから別人でしょう。荒らしと成りすましはパヨクの十八番。多重偽名でもF爺(ひろゆき論争者)支持者なのは確か。但し心酔者ではなく利用者です。
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