トーキング・マイノリティ

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少女ヘジャル

2005-06-29 20:46:32 | 映画
 珍しいトルコ映画を見た。映画の子役が可愛いのはどの国でも同じだが、「人形のように愛くるしい」の表現がまさにぴったりの少女だった。元判事のトルコ老人とクルド少女の交流の物語。

 感動作ではあっても、その背景はかなり重い。ヘジャルの両親兄弟は殺害され、身を寄せた親戚すら武装警官に襲撃されて一家が皆殺しにされる。実はトルコ老人の家政婦もクルド人で彼女は出自を隠していたが、クルド語しか話せぬヘジャルの世話に一役買うことになる。ヘジャルの意味が“虐げられし者”なので、この映画の主役に相応しい。
 初めは老人の家でクルド語使用は厳禁で、彼はクルド少女にトルコ語を教え込もうとするが、彼女は頑固に母国語を繰り返す。反発しあっていた二人だが、トルコ老人がクルド語を家政婦に習い始めてから少女もなつくようになるのだ。

 元判事といえ、老トルコ人が実に礼儀正しいのには驚いた。彼に限らず周囲の人々の言葉遣いもよい。わが国もかつては「礼節の国」と呼ばれていたのだが、今時は書く気にもなれない

 トルコに取りクルド問題はかなりやっかいだ。分離独立を目指す民族武装派がテロを繰り返し、軍や警察が徹底弾圧をするという断ち切れない泥沼状態。'90年代初めまでトルコ政府はクルド人の存在さえ認めず、「山岳トルコ人」と呼んでいたのだ。EU加盟を目指すため、最近やっとクルド人やクルド語を認めるようになったが、先の見通しもつかない。クルド側も全てが独立闘争を目指しているのではなく、同じ民族武装集団とトルコ軍との板ばさみ状態なのだ。

 トルコではこの映画の上映に当局から様々な圧力が掛けられたと言う。特に武装警察の描き方にクレームが付けられたそうだ。

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2 コメント

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TBありがとう (ヒロポン)
2005-08-02 16:41:56
知人が、クルドについての評論を出しています。



http://www.nanpou.com/book/bok_060.html
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コメント、ありがとうございます (mugi)
2005-08-02 20:32:38
クルドは日本であまり知られてないので面白そうな本ですね。

紹介ありがとうございました。
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