スキージャンプ&スポーツ竹内元康発言

スキージャンプ選手、全日本コーチ、解説者、トレーナーを経て・・・今だから語れること。

第64回4ヒルズトーナメント(ジャンプ週間)

2016-01-11 14:41:40 | スキージャンプ


1953年から始まり、64回目の南ドイツ、オーストリアで繰り広げられる正月の風物詩!
とにかく熱狂的なジャンプフリークが多数集まる。
ここに出場し、いい成績を出すことがジャンパー達の夢でもある。

今季ゴールデンイーグルを手にするのは?!

予選の賞金は2,000ユーロ
総合優勝は20,000スイスフラン
賞金総額は約315,000スイスフラン

国別でいう総合優勝回数は
ドイツ16回(旧東ドイツ11回、旧西ドイツ2回、統合後3回)
オーストリア16回
フィンランド16回(アホネン5回)
ノルウェー10回
チェコ2回
ソビエト、スロベニア、日本、ポーランドが1回ずつとなっている。

最多総合優勝は
アホネンの5回、続いてバイスフロクの4回。
4戦全勝のグランドスラムはハンナヴァルトただ1人。


初戦はオーベルストドルフ(GER)
好スタートを決めるのは…
前評判ではプレフツ&フロイントの一騎打ちといった風向き。
比較的安定している風で1本目が進み上位は予想のつきずらい展開。
しかし、プレフツの内容が一番良く、他の選手がくらいつくには多少の好条件が必要か。
日本選手には不運にも厳しい条件が多かった。
2本目も風の状況は安定して進行していったが、トップ10に入ったあたりでこれまでずっと追い風だったのが一転して向かい風に。その恩恵受けられたのがフロイント、ハイベック、ガングネス、紀明。
しかし、その風も一時だけのもので、また追い風に。
風の優位さはゲートの変更では補えないくらいアドバンテージをもたらす。
あの状況下でジュリーは何故一時中断ではなく進行を急いだのか…?
時間的にも余裕があったし、イコールコンディションでいいゲームをするには適切な判断ではなかったように思う。
なんとも解せない判断だ。
ドイツに、フロイントによほど勝たせたかったのかと憶測されても仕方がない。
結果フロイントが逆転勝利を収める。
今のプレフツの力を持ってしても、勝つには余りにも条件が違い過ぎた。

プレフツは見事な大人の対応、「ジャンプには満足しているが結果には満足していない。ジュリーがゲートを変更した事については、それが彼らの仕事だから自分にはコントロールできない」と。
腹の中は想像つくよね。

これで自分が期待していた史上2人目のグランドスラムは早々になくなった…
フロイントに可能性があるがプレフツ相手にそこまでの調子ではないのを見極められたから。


1位フロイント
2位ハイベック
3位プレフツ

モータースポーツでいうスターティンググリッドが決定した感じになった。
ここらかプレフツがどう巻き返すか!


2戦目はガルミッシュパルテンキルヘン(GER)

150mまで飛べるとされてるジャンプ台

1戦目の憂さを晴らすプレフツの圧勝!

全てのラウンドを制しての完全勝利!

1位プレフツ
2位ガングネス
3位フロイント

この大会で大貴がようやくトップ10に、内容的にも充実してきてるので、今後も益々楽しみな状態に。
2本目に風当たりが良ければ、更に上の結果を残せただろう。
紀明は今回は風に恵まれていなかったが12位。
地元の選手、ヨーロッパの選手以上に声援を送られる紀明へのリスペクトぶりは、日本人として誇らしい限りだ。

この時点でオーストリアの8連覇には黄色信号が灯った。

ノルウェーもチーム力では強いが、個人タイトルでは遅れをとっている。

4HT総合はプレフツに遅れること、フロイントは8.6p飛距離にして4.8m。
3位のハイベックは21.1pで飛距離にして11.7m。
4位ガングネスは23.9p飛距離にして13.3m。

ドイツラウンドを終え、会場はオーストリアへ。


インスブルックのベイクィーゼルシャンツェは世界的なスター建築家ザハ・ハディド設計で、2001年に新しく完成した。
シュリーリの地元で、4ヒルズの中で最も飛距離の差がつかないジャンプ台。

KO方式の4ヒルズは対戦相手が決まる予選の結果も非常に重要となってくる。
予選でのトップはハイベック。
対戦相手は予選回避したプレフツ、初めて予選を飛ばなかった作戦はどういった結果をもたらすか…

今をときめくプレフツ3号機ことドメンが予選で1p差で2位、1号機の兄との直接対決というドリームカードを見たかった。

これまでもトレーニング、予選でも決して悪い出来ではない日本チームの択、翔平、憲斗、潤志郎、あとは本戦での結果が出れば上昇気流に乗れそうなんだが…

紀明vsシュリーリのカードもファンにはたまらないが、今のシュリーリは輝きを失ってしまってるのが残念。
もう一度憎らしいほど強いシュリーリが帰ってきてほしい。

トライアルラウンドではフロイントが転倒して心配されたが、大事はなさそうだったが、一歩間違えばといったシーンでもあった。それでも本戦には多少は影響はあっただろうけど…
そこは強靭な集中力で乗り切った。

ポディウムは
1位プレフツ
2位ガングネス
3位フロイント

この差のつきずらいジャンプ台で2位のガングネスに12.6pの差をつけてプレフツが又しても圧巻の勝利、全くつけ入る隙が無く際立っている。



だが、プレフツも多少ナーバスになってきているとコメント。
どの人も僕が上手くやり遂げることが出来ると言ってくれる。けれど最終戦まで、誰も何のタイトルも獲っていないのだから、まだ分からない。

フロイントはプレフツとの差を埋めるにはビショフスホーフェンでミラクルを起こさないとと。
自分自身はただベストを尽くすことだけ、
とのコメント。
ヘッドコーチのシュスターもセヴェリンは自分に誇りを持っていいと、チームは全員健康で良い成績を出しているから満足だと。
高いプレッシャーをかけられているにも関わらず皆んな自分のやるべき事をとてもよくこなしていて、このチームを自慢に思っている。

オーストリアのヘッドコーチのクッティンもプレフツの業績は誰もが賞賛すべきもの。彼は際立ったジャンプを見せている。それにフロイントも転倒の後でもすごく上手くやって素晴らしかった。それにフロイントは総合成績でまだ負けたわけじゃない。と

紀明の7位、大貴も8位と、いいパフォーマンスが出せた。



いよいよ勝負は最終決戦の舞台、ビショフスホーフェンへ

モルギーと子供のスタートゲートのツーショット


最終戦を前にしての差は、トップのプレフツに対し2位フロイント19.7p飛距離にして10.9m、3位ガングネスが41.9p飛距離にして23.3m、4位ハイベックが43.1p飛距離にして23.9m。
今のプレフツにとっては十分過ぎるほどのアドバンテージ。
3位争いが非常に面白いポイント差。
フロイントはミラクルを起こせるか…

昨年のここの予選でクラッシュし脊椎損傷の大怪我を負ったアメリカのニック・フェアオールがビショフに訪れ、記者会見を開いた。
「現在もリハビリ中、4ヶ月間の集中リハビリ後は自分の好きなこと、楽しいこともどんどんやっている。例えば水上スキー、スカイダイビング、アルペンスキー、車椅子ラグビー、ゴルフなど。
気持ちの立て直しが特に重要だった。その経験は怪我をした人にも、もしくは目標を見失った人にも役立つかもしれないので、本を書こうかと思っている。
6歳からやってるスキージャンプは今でも大好き。もう一度飛ぶ希望は今でも持っている。飛ぶ事が大好きだから、パイロットのライセンスにも挑戦している。
脚の感覚は戻ってきている」

多くのジャンプ界関係者や選手達が彼の為に寄付をし応援してくれているし、再び飛べる事を願ってます。


ここのジャンプ台はアプローチの斜度が緩く、滑りのバランス、r1の通過の仕方、テイクオフのタイミングを取るのが非常に難度が高く難しいという特徴を持った台。

予選はガングネスがトップ、チャンスがあれば勝てるポテンシャルがあることを証明できた。
波乱を起こせるか…

フロイントはオフィシャルトレーニング、予選はスキップ。インスブルックのトライアルラウンドでの転倒の後遺症の回復にあてる。
無理して参加することは試合に向けて無意味と判断。
ジャンプ台にはフロイントなら上手く順応できと確信しているとシュスター。

プレフツは勿論の事、他のドイツ勢やノルウェー勢も好調。
オーストリアは不振のシュリーリが欠場、代わって2014の4ヒルズの覇者ディートハルトを投入したが予選通過できず。

試合は穏やかな追い風の状況で、現在の力関係がハッキリ結果として出そうなコンディション。

やはりプレフツの力は抜きん出てた。
フロイントも意地で着地を決めきるところはシビれさせてくれ、オーストリアの威信と意地にかけてか、ハイベックのジャンプも気迫が感じられた。
9位の紀明、10位の大貴と、この後トップ10の常連になって行きそうな期待と予感が益々高まる。





そして第64回4ヒルズトーナメントの覇者はプレフツ!
スロベニアとしてはペテルカ以来2人目。
グランドスラムを達成できなかったのが不思議なくらい強かった。


プレフツはインタビューで「緊張した。それも、ものすごく。ここ3日間は緊張して眠れなかった。でも今は力が抜けとにかく嬉しいだけ。今夜もあんまり眠らずお祝いすることになると思う」と

フロイントは「今回はとても多くの事が上手くいって、4つの表彰台も挙げることができて、かなり楽しい4ヒルズトーナメントとなった。自分は色々正しくできたのだと思う。今回はとても多くの喜びを与えてくれたし、もしかしたら次に続く楽しみも与えてくれたのかもしれない」

ハイベック「すごく厳しい戦いの末の3位だった。上の塔にもテレビがあって、ガングネスがどれだけ飛んだかよく見てた。だから余計グリーンラインを越えられたのが嬉しかった。今季の4ヒルズトーナメントは僕にとってこの上なく嬉しいものとなった。プレフツは信じられないほど凄い」

ガングネス「今日はかなりがっかりしてしまった。1回目でミスをしてしまい、それで表彰台をふいにしてしまった。総合的に見たら素晴らしいものとなった。この4ヒルズトーナメントの素晴らしい記憶を忘れることはない」


トップ争いのバトルは面白かったが、その他にも沢山の見どころがあった。
プレフツ3号機のアグレッシブぶりやフランス勢の躍進。
チェコチームのレベルの向上、シュリーリの苦悩やポーランドの失墜などと

チームジャパンは比較的良かったと思うが、択がいい条件での形が一度も無かったのと、憲斗は夏よりもパフォーマンスが少々下降していて、厳しい条件では辛かった。翔平は条件ごとでのスキルアップが課題だろう。潤志郎は闘うという気迫をもっと前面に出して周りを食ってやるくらいの気持ちでやってほしい。


中盤戦からどんな図式になって行くか!
目が離せない。


おまけ


















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