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『ぐるりのこと。』 DVD

2009-03-24 15:18:17 | movie
監督:橋口亮輔
主演:木村多江、リリー・フランキー

【ストーリー】
1993年7月。ふたりの部屋のカレンダーには「×」の書き込み。妻・翔子(木村多江)が決めた週に3回の夫婦の「する日」の印だ。しかし、その日に限って、靴修理屋で働く夫・カナオ(リリー・フランキー)の帰宅は遅い。女にだらしないカナオが遊び歩いているのでは? 彼の手の甲をぺろりと舐め、浮気かどうかチェックする翔子。カナオは先輩の紹介で、新しく法廷画家の仕事を引き受けてきたところだった。「はあ!? 靴屋は? とにかく……決めたことやってから話そうか」苛立った様子で寝室へ消える翔子。カナオはぼやきながら、渋々寝室へ入っていく。

ふたりはどこにでもいるような夫婦。翔子は女性編集者として小さな出版社でバリバリ働いている。一方、カナオは法廷画家の仕事に戸惑いつつ、クセのある記者・安田(柄本明)や先輩画家らに囲まれ、次第に要領を掴んでいく。職を転々とするカナオを、翔子の母・波子(倍賞美津子)、兄・勝利(寺島進)とその妻・雅子(安藤玉恵)は好ましく思っていない。しかし、そんなカナオとの先行きに不安を感じながらも、小さな命を宿した翔子には喜びのほうが大きい。「お、動いた!」カナオと並んで歩く夜道で、翔子は小さくふくらんだお腹に手を触れる。カナオのシャツの背中をぎゅっと掴んで歩くその後姿には、幸せがあふれていた──。

1994年2月。ふたりの部屋に掛けられたカレンダーからは「×」の印が消えている。寝室の隅には子どもの位牌と飴玉が置かれていた。初めての子どもを亡くした悲しみから、翔子は少しずつ心を病んでいく。

法廷でカナオはさまざまな事件を目撃していた。1995年7月、テレビは地下鉄毒ガス事件の初公判を報じている。産婦人科で中絶手術を受ける翔子。すべてはひとりで決めたこと、カナオにも秘密である。しかし、その罪悪感が翔子をさらに追い詰めていく。

1997年10月、法廷画家の仕事もすっかり堂に入ってきたカナオ。翔子は仕事を辞め、心療内科に通院している。台風のある日、カナオが家へ急ぐと風雨が吹きこむ真っ暗な部屋で、翔子はびしょ濡れになってたたずんでいた。「わたし、子どもダメにした……」翔子は取り乱し、カナオを泣きながら何度も強く殴りつける。「どうして……どうして私と一緒にいるの?」そんな彼女をカナオはやさしく抱きとめる。「好きだから……一緒にいたいと思ってるよ」ふたりの間に固まっていた空気が溶け出していく──。


【感想】
愛と再生の物語。
前半は、まだ何の問題も起こっておらず、生まれてくる子供も含めて希望に満ちたストーリー。

場面転換し、部屋に静かに置かれた位牌。
静かで脆く、いつ壊れてもおかしくないような空気。
凪のように穏やかに、そっといつも翔子に寄り添うカナオの優しさにグッとくる。

翔子が泣きながらカナオにぶつける「ちゃんとしたかった」という言葉がすごく印象的だった。
うつ状態になる翔子の描かれ方、木村多江さんの演技がリアルで、監督自身がうつを経験したからこその描写だなぁと思わざるをえなかった。
翔子自身が一番、理想と現実の落差に耐えられないんだろう。理想というか、「ちゃんとした」状態というか。
ちゃんとしてない自分をどうにかしたい、こんな自分なんか、、と思うからこその
「どうして私と一緒にいるの?」

木村多江さんとリリー・フランキー。とりたてて目立つわけでもない二人。
カナオの人柄が、演じるリリーのまるで緊張感のない身体にぴったりでした。褒め言葉です。


翔子演じる木村多江さんがカナオに泣きながら想いをぶつけるシーンが、ほんっと上手かった。木村さん過去にそういう状況に陥ったことあるんですか!?と言いたくなるほど。役者ってすごいなぁ。


結構チョイ役に「おっ」と思わせる人が多く出てくる。加瀬亮、田辺誠一、新井浩文、菊池亜希子etc。


橋口監督は前作「ハッシュ!」の評価がよくて、次を期待してましたが今回の作品に至るまでに6年もかかりました。
「ハッシュ!」の前は「渚のシンドバッド」。これは浜崎あゆみ目的で観ました。どちらも主人公はゲイでした。監督自身すでにカムアウトしてます。
でも「渚のシンドバッド」は高校生が主人公で、決してゲイを普通の日常とした上でのストーリーではないので、やっぱり作品として面白いのは「ハッシュ!」だと思う。


今年の日本アカデミー賞は、とにかく「おくりびと」が独占みたいな感じだったけど、主要部門で唯一主演女優賞だけは、本作の木村多江だった。
もし主演が広末さんだったら完全に日本アカデミー賞を信用しなくなるところだった。


後にリリーさんが、翔子を演じた木村多江さんが最優秀主演女優賞に選ばれたことについて、「まさか受賞するとは思っていなかった。吉永小百合さんらと並んで、翔子が貧乏臭く立っているだけで涙が出そうだった」と冗談まじりにコメントしていて、笑ってしまった。

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