4時30分就寝、11時起床。
昨日、NHKの『クローズアップ現代』で
「快音化」を取り上げた
心地よい音をめざせ~室内騒音 対策最前線~
という特集が組まれていました。
「快音化」とは、日常の心地よい音を目指すといった試みで、
「防音・遮音」の考え方を一歩進めたものです。
これまでの住宅環境では、「騒音」と言うと
たいていは車だとか、近隣の楽器だとかが主でしたが、
最近の住宅は遮音性能が向上したために、
ほとんど外部からの騒音が気になることがなくなり、
逆に自宅内の騒音が問題になってきているそうです。
その代表が、掃除機や洗濯機、冷蔵庫、空調などです。
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しかし、ただ音をなくせばいいという問題でもないようなのです。
約10年前に某メーカーから、
当時としては画期的な静音性能を実現した
『静音』掃除機を発売したのだそうですが、
あまりの静かさに「本当にゴミを吸い取っているのか」
というクレーム(問い合わせ?)が相次いだのだそうです。
これは、デジカメでシャッター音がしないと、
本当に撮影できたかどうか不安になる、というのと同じ現象ですね。
そこで、
音を消すのではなく、心地よい音を出す
という方針に変更したということです。
具体的には、「耳障り」と言われていた掃除機には
4.8kHzと9.6kHzにピークがあって、
それをピンポイントで周波数をカットできるノッチ・フィルターで取り除けば
音をすべて消さなくても耳障りでなくなる、ということを、
中央大学の戸井研究室の研究が突き止めたのだそうです。
その結果に従って、掃除機のモーターの下に、
それぞれの帯域を吸収するシートを取り付けた『快音』掃除機は、
なんと通常の1.5倍の売り上げを記録したのだそうです。

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また、育児ストレスの原因となる赤ちゃんの鳴き声。
しかし、これも赤ちゃんの鳴き声そのものよりも、
部屋の残響時間が大きく影響しているのではないかということを
埼玉大学教育学部の志村洋子教授が研究しているんだそうです。
その結果、以前の一般的な住宅の残響時間が0.5秒だったのに対し、
最近の住宅は約1秒と倍になっていることがわかり、
いろいろな実験の結果、残響時間が短い部屋の方が、
いろいろな物音に対するストレスが少ないことがわかったそうです。
#コンサートホールは「残響2秒!」ってよく言われますよね。
このほかにも、子供が集まる保育園の音の大きさを調査している
東洋大学工学部の藤井弘義講師なども紹介されていました。
ちなみに、
同じ規模の保育園で音が最も快適なレベルだったのはスウェーデン(63dB程度)で、
日本は最も音が大きい75dB(地下鉄相当)だったそうです。
そこで、天井を吸音して音のレベルを下げたところ、
保育士のストレスが軽減したとのこと。
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最近は、このような「周波数のピークをなくす」とか
「快適な残響を加える」って話を聞くと、
どうしても「EQでカットしちゃえ」とか「リバーブを上手に使おう」
なんてレコーディング関係の発想ばかりしてしまうのですが、
実際にピークを吸収するシートを開発して、
物理的にフィルタリング(EQ)する発想や、
日常を過ごす部屋の残響時間を調整して、
ストレスを減らすっていう発想は、
個人的にかなり新鮮でした。
#同じように部屋を吸音すると言っても
#いつもは「低域が溜まるのを解消する」とか
#「宅録する時は部屋をデッドにする」ってな内容ばかりですから。^^;)
う~ん、
久々に芸術工学士の血が燃えました(^◇^)