(その3)
珍さんの脇に埋まった不発弾が何時爆発するかとヒヤヒヤしていた珍さん、「酒が美味いから呑む」どころではなく、「恐怖心を無くす為」に焼酎をガブガブ呑んだアル。
あっと言う間に、焼酎の4合ビンはカラになったアル。しかし、これでは止める訳に行かないアル。せっかく隣に不発弾が在るアルに、これが爆発する瞬間を見ないで帰る手は無いのこと。
さらに、友人が「この店は、午後9時になると、客が呑んでいる脇で、椅子をテーブルの上に上げてしまう。客はテーブルの上に載せられた椅子と椅子の間で呑むんだ」と言ったのこと。プロの報道カメラマンとして、そのシーンを撮らないではいられないアル。
とは言え、もう(その3)になるのに、ロクな写真が1枚も無いアル。要するに恐ろしくて、パパラッチ魂が萎縮しているアル。まるで冬のキャンタマ状態のこと。果たして、そんな恐ろしいシーンを撮影する根性が残っているかどうかのこと。
その時、2のオバハンが、酔っぱらって、自分が呑んでいた日本酒のコップを倒してしまったのこと。慌てて、1枚のティッシュでテーブルを拭いていたアルが、どう見ても1枚では吸い取り切れないアル。テーブルは光っているのこと!
ア、ア、ア、アイヤー、このオバハン、時限爆弾のスイッチを押してしまったのこと!
そこへ、実にタイミング良く、(悪く?)看守Aが現れ、2のオバハンが頼んだモンゲソをテーブルに置き、ア、ア、ア、アイヤー、ことも有ろうに、酒を少しだけ拭き残していた部分に伝票を置いたのこと。
ドッカ~~~~~~~~~ン!
珍さんの目の前で七色の虹が炸裂したのこと。
「バッカ!伝票が濡れるじゃないの!書き直しさせる気?手間を掛けるんじゃないよ!子供じゃないんだから!」
看守Aは、ここぞとばかり怒りまくったのこと。オバハン1番、2番は不発弾が破裂する前に即死状態のこと!
一方、看守Aは、これで彼女らに対するストレスを発散しきったらしく、ニヤニヤしながら、
「酔っぱらうと誰でもやるんだよねー」
と急に優しくなったアル。どうやら、これが新参者に対する儀式らしいのこと。オー!こわ、次は珍さんの番アルか?珍さんのキャンタマは真冬にシベリヤの原野で立ちションベン状態、極限状態アル。
友人は、「まだモンゲソ来ていないよね。分かってるのかな?」
ヤバイ!今度は珍さんの右側に地雷原が出現し始めたアル!珍さん
「分かってる筈だよ。まだ頼んでから30分しか経ってないよ」
と、なだめたアル。友人は、「そうだね」と納得したアル。
しかし、次の瞬間、近寄ってきた看守Aに
「モンゲソまだ?」
友人は地雷の団体を踏んづけたアル!
「まだ北朝鮮まで獲りに行った船が帰って来ないんだよ!」
ア、ア、ア、アイヤー、さすがこの道20年、そんなに怒られなかったのこと。
家で怒られ、呑み屋で怒られ、気が休まる場所が無いよな。
珍国際の書斎はオジサンのオアシスだよ!
ここで新たな問題発生のこと!看守Aが「厨房からの動線」上で大声を出して
「ハイ!3つだけ!3つだけ!」
と叫んだアル。その途端、友人の血相が変わったのこと!。友人は
「ハ~~~イ!」と大声を出しながら立ち上がり、右手を高々と差し挙げたアル。何が起こったのかと珍さんは目を白黒。状況を把握出来ないのこと。
「ここではメシはこれしか無いんだ!あれを取り損ねると今夜は永久にメシにありつけない!」
総勢40人は座っている看守Aの監視地域に対して、この寿司が3皿しか配給されないのこと。
これではテポドンの国と一緒だ。まさに「テポ丼」アル!
まるで戦後焼け跡闇市にタイム・スリップしたようアル。
問題が起きたのはこれからアル。40人に対して3皿だけアルから、みんな血相を変えて、
「ハーイ」、ハーイ」、「ハーイ」とまるで幼稚園児の様に手を挙げているアル。看守Aはどうやら、友人には渡すつもりらしく、かなり足早にこちらに歩いてきたアル。
途中で2皿は欠食オヤジの手に渡ったアル。当然、看守Aは必死で手を挙げているオバハン1、2を無視して足早に友人の目の前に到着したアル。
看守Aは残った一皿を友人に向かって差し出しながら歩いてきたアルが、実は、友人の右側に、さっきから、もの凄い量の料理を喰っていたオバハンが座っていたアル。
このオバハンも必死の形相で、「ハーイ、ハーイ、オネーサ~~~ン!」と大声を上げていたアルが、看守Aがそのオバハンと友人の前に着くかどうかの瞬間に、友人は見事、残りの1皿をグイッと奪い取ったアル。
となりのオバハンは大声で、「エ~~~?」と叫んだのこと。オバハンと顔を見合わせた友人は仕方なく、「あげるよ」と言ったアル。オバハンは嬉しそうに、「じゃあ貰う」と連れの分を入れて2個の寿司を自分の皿に載せたアル。皿の右半分が空いているのは、そのオバハンが持ち去った後の空き地アル。
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ここで驚いたのは、オバハンの食欲でもあるアルが、もっと驚いたのは友人の素早さのこと。彼は珍さんと違って、最近は死語になっているDINKS(ディンクス)アル。
DINKSとは、「Double Income No KidS」、訳すと「夫婦共稼ぎで子供が居ない金持ち」のことアル。収入はタップリで稼いだ金を使い切れない人のことアル。
ちなみに珍さんは自称、「SIMKS」(シムクス)つまり「Single Income
Many KidS」アル。訳すと、「トーチャン一人の稼ぎだけで、家族4人が喰っている貧乏人」アル。
その、金に不自由していないから、勿論、食い物には全く不自由していないどころか、しょっちゅう海外旅行に行って美味い物は喰い飽きていると思われる友人が、目にも止まらぬ速さで、たった一皿の寿司皿を奪い取ったアル。
珍さん、「ヒャー、終戦直後に彼と一緒に居たら、生存競争に負けていた。一生珍さんは何も喰えなかったろうな」と思ったアル。
すっかり恐ろしくなった珍さん、恐怖心を取り除くために、枡酒を頼んだアル。出てきた枡酒が上の写真アルが、良く見ると、日本酒はマスの9分目までしか入っていないアル。
普通、このように、マスの下に皿を敷く場合、マスの上から一升瓶で酒を注いでくれ、客は、「オットット」と言いながら皿ごと持ち上げ、なるべく多く日本酒が皿に溢れるようにするのこと。如何にマスから多く溢れるまで注ぐかが、「店の良心度」を測る目安のこと。
ところが、この店は溢れるどころか、酒がマスの中で平然とユラユラ動いているアル。良心のカケラも感じないアル。
普通なら、マスの淵ギリギリまで日本酒が溢れ、手でもって呑もうとすると、こぼれるアルから、オジサン達は、「ウーム」と舌なめずりをしながら、まるで犬が水を飲むように、顔をマスに近づけて呑むアル。
それが、サラリーマンのささやかな楽しみアルに、これでは、「俺は何の為にここに居るの?」と、皿が手持ちぶさたに見えるのこと。
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