ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【サンバガエルの謎】難波先生より

2013-07-29 12:12:50 | 難波紘二先生
【サンバガエルの謎】シーラカンスについて書いたら、いわき市立病院の浅野先生から、
 <当いわきの「アクアマリンふくしま」でも展示・研究していますが、私は近い所に居ますが見学しておりません。「アクアマリンふくしま」で、検索下さい。>
 と連絡があった。http://www.marine.fks.ed.jp/coelacanth/about.html
 ここにはマダガスカル種とインドネシア種の標本があり、後者は海底を泳いでいるビデオ映像もあるようだ。
 だが、1)卵胎生である、2)指が6本ある、という情報が含まれていない。


 日本語WIKIによると、「シーラカンス(Coelacanth)」の学名は、
 < これは 古典ギリシア語:κοῖλος (koilos) 「からっぽの」 + ἄκανθα (akantha) 「(植物の)棘、魚の骨」 に由来する合成語で、尾びれの鰭条が中空の構造をもつことによる命名という[3]。>とある。
 Coelomは「腔」という意味で、医学では「体腔」を指して用いる場合が多いが、骨髄腔、鼻腔、頭蓋腔など他にもある。
 魚の小骨を「棘」ともいい、これはacanthと英語化したギリシア語学名に対応する。
 ヒトの場合、Acanthoma (アカントーマ)は皮膚の棘細胞がんをいう。


 普通の魚(硬骨魚類)では骨は充実性で、中空構造をしていない。
 中空構造だと、力学的に骨の曲げ強度が強くなる。ヒトの大理石病では骨自体は緻密で厚いのに、すぐに骨折する。中空構造に乏しいからである。ヒトの骨では、中空部は骨髄により占められている。


 シーラカンスと近縁の肺魚では、造血の場は脾臓と腸管粘膜、肝臓、腎臓、性腺である。だからシーラカンスも骨髄造血していたとは考えにくいが、知られている最初の骨髄造血が両生類無尾目(カエル類)であることを考えると、機能性骨髄があった可能性も否定できない。


 シーラカンスには指が6本ある。これは前に示した図の拡大だ。左前の肉ヒレないの骨格を示す。(添付!)
 図の「Prepollex」は「親指前の指」の意味で、母指の内側にもう一本指がある。「Pre-」は「前」を、「Pollex」は「母指」を意味する。つまり肉ヒレ類が陸上に移住する前にすでに指が6本あった。


 ところが図2に示すように、両生類(カエルやイモリ)になった段階で、指を形成する6つの遺伝子に変化が起こった。
 前足の指は、カエル(左)は5本(但し母指は退化)、イモリ(右)は4本だ。
外観では同じように見えるが、骨を比較するとカエルではプレポレックス(母指前指)が、イモリではプレポレックスと小指(第5指)の2本が欠けている。骨が4本あるのが薬指である。
 
 しかしヒトの多指症が起こることは、この6つの遺伝子が消失したわけでなく、その機能発現を抑制する遺伝子が働いていて、それで普通の人は5本指になっている。多指症では、親指の内側に(シーラカンスのように)余分の指ができる人と、小指の外側に別の指ができる人がいる。


 カエルは水中で散乱する。その際にオスは後からメスにしがみついて、メスが産卵すると精液を出して受精させる。繁殖期になると、オスでは母指が肥大して、こぶを形成し、メスにしがみつきやすくなる。これを「婚姻瘤」という。
 身体が水中にあり、粘液でぬるぬるしているカエルでは婚姻瘤ができるが、ヨーロッパにいる陸生のサンバガエルではこれを必要としない。


 今日、「獲得形質の遺伝」は否定されているが、歴史的にはソ連のルイセンコ学説とウィーンの「サンバガエル事件」が有名だ。
 ウィーンの動物学者パウル・カンメラーはサンバガエルを水中で継代養殖すると、「オスに婚姻瘤ができその形質は遺伝する。よってこれは獲得形質が遺伝する証拠だ」と主張した。


 大腸菌でさえ、グルコース培地から蔗糖培地に移すと、すぐに蔗糖分解酵素遺伝子が活性化する。このばあい、遺伝子はすでにあり、眠った状態にあり、蔗糖培地により活性化するだけだから、だれも「獲得形質の遺伝」とはいわない。


 獲得形質の遺伝は、「社会主義による人間の変格の可能性」を信じるイデオロギーにとって都合がよかった。
 1909年に「サンバガエルに婚姻瘤を発言させた」と主張したカンメラーは、獲得形質の遺伝をめぐって、生物学会に大論争を巻き起こし、標本の捏造を疑われ、1926年に自殺した。


 この事件を取りあげたのは、『真昼の暗黒』で有名な、ドイツの作家アーサー・ケストラー「サンバガエルの謎:獲得形質は遺伝するか」(岩波現代文庫, 2002)である。ケストラーは問題のカエルを「爬虫類」と書いており、両生類と爬虫類の区別も知らなかったことがわかる。また訳者は日本女子大国文科の教授で、生物学者の岡田節人が「ノンフィション小説だ」と述べているように、ある種のトンデモ本である。
 1975年にハードカバー本が出たときにすぐ読んだが、文庫本で読むと、あれかr10年以上たつせいか、一層そういう感じがする。


 ところで、カエルとイモリの薬指には骨が4本ある。ヒトでも中指より薬指が長いヒトがいると聞いた、そういう例をご存じだろうか。骨が多いためか、基節、中節、末節とある骨のどれかが長いせいだろうか。ちょっと気になる。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【科学者不正】難波先生より | トップ | 【雑記】難波先生より »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

難波紘二先生」カテゴリの最新記事