ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

毎日新聞「特集ワイド」担当  田村彰子記者さまへ 難波先生より

2013-09-26 12:55:56 | 難波紘二先生
毎日新聞「特集ワイド」担当
 田村彰子記者さま:
 9/24付貴紙記事をネットで拝見しました。http://mainichi.jp/feature/news/20130924dde012040074000c.html
 意見を寄せるようにメルアドがありましたので、意見を述べさせていただきます。



 400t/dayに及ぶ地下水が福島第一の原子炉建屋地下まで及ぶのが、汚染水処理の最大ネックであり、これを何とかしなければ問題は解決しません。
 1)京大今中教授の意見は、「福島はチェルノより対処が難しい」と述べているのみで具体案がありません。
 2)コンサルタント佐藤氏の案は「原子炉格納容器上部の屋根に穴を開けて空冷する」というもので、地下水流入とそれによる水汚染の打開策にはなりません。
  原発敷地内にコの字形の深い掘を作り、地下水を迂回させて海に流すという案も、地下水そのものを減らすのでなく、対症療法にすぎません。
 3)産業技術総合研究所の丸井案は、原発敷地の西側境界に濃厚石灰水を注入して「地下ダム」をつくり、地下水をブロックして、「敷地の尾根」の反対側、つまり原発敷地の北側と南側に地下水を迂回させ、海に排出させるというのもの。しかし、地下40mの深度までこの方法で防水壁が作れるかどうか、できたとしても、予定通りに地下水の流路を変えられるかどうか、疑問が残ります。
 
 「モグラ叩き」のような原発事故処理を見るにつけ、地下水に対する根本的な処理が必要だと痛感し、これまでも「原因療法」案を唱えてきましたが、ひろく関心を引かないようです。
 http://blog.goo.ne.jp/motosuke_t/e/00fceada1139e72b85c594ee60aec6ca


 ご承知のように地下水は地形によりその流路が決まります。敷地内に流れ込む地下水の流路とそれが発生する要因を明らかにしないと、地下水はシャットアウトできません。
 もともと福島原発の地は、西側に海抜20~10mの長者原という原野があり、その東に海抜50mの南北に走る丘陵がありました。この東側斜面は幅約1000mで東端は高さ30mの絶壁になっていました。そこには深く切れ込んだ谷が内陸に向けて、3~4本入り込んでいたのです。
 福島第一の敷地造成は、この東側斜面を削り深い谷を埋めてできたものです。表面がどう変わろうと、地下の構造が変わらなければ、地下水は元の流路を流れます。これが汚染水が発生する最大の要因です。


 そうすると、何よりも地下水の流路を変え、敷地内に大量の地下水が流れ込まないようにしないと、根本療法にはなりません。今取りあげられているのはみな、「対症療法」です。
1947/4に米軍が撮影した航空写真(添付1)には、現在の福島第一敷地内に、直接海に注ぐ4本の川があります。また北原地区から南に流れる谷川があったこともわかります。当時この土地は戦争中に陸軍が飛行場として使用していたものを日本国土開発が払い下げを受け、塩田として利用していました。後に東電に転売されたのです。
 東電は土地を買収した後、土地を造成し、谷を埋め、溜池を埋め、現在の地形に変えました。(添付2)これは1975年の航空写真です。1~4号炉が完成し、5~6号が建設中です。以後地形は現在まで大きく変化していません。
 従って現在の地下水流路と水量は、この時点でもうおよそ決まっていたのです。それが問題にならなかったのは、事故が起き建屋地下にひびが入りメルトダウンした燃料が地下水に接触するようになったからです。原発に必要な多量の地下水が、いまやその弱点になっているにすぎません。


 従って福島原発の地下水問題を根本的に治療するには、原発立地地域の地形と地下の地質構造を把握し、地下水流路の向きを変え、地下水を立地西側の長者原に流せばよいのです。(添付3)長者原の海20mの地点から東に向かって、北原地区の下に5~10本の太い水抜きトンネルを東に向かって掘ればよい。この地下水は汚染されておらず、そのまま長者原を流れる小川に放出することができます。後、北原地区東面の平地部分は防水シートで多い、汚染されない雨水はそのまま既存の排水溝に流せばよい。要は地下水を発生させないこと、汚染される前に迂回させて既存の川などに流すことです。
 地下トンネルは自動掘削機を用いて、24時間掘ることができますから、作業員の被曝も少なく、対費用効果も大きくなります。江口工氏によると1ヶ月で20キロメートル掘削可能だそうです。(「地下水放射能汚染と地震」, オークラ出版, p.75)
 長者原地区は原発敷地内ほど汚染されていません。まず足場を築き自動掘削機で試掘トンネルを掘り、地下水の存在位置と流量を把握し、予期されたように西側に排水できることが確認されたら、流路を完全に切り換えられる台数の掘削機を配置し、一斉に排水トンネルを掘れば、数週間でカタがつくはずです。


 現地の地形はこうなっています。これは友人の地理学者N氏が立体図にしてくれたものです。(添付4)
 原発敷地が多くの深い谷を埋めて造成されています。また北原地区の東にあった谷川が埋められたことも明らかです。現状では地表の汚染水が原発南側の排水溝から直接海に流れ込んでおり、安倍首相のいうように、原発東側の0.3平方キロのプールに完全に閉じ込められていないことも明らかです。そのほかにも、地形から見ると5~6号炉の北側からも海への流入があるはずです。
 さらに今、汚染水を溜めるタンクを、北原地区を南北に走る道路の東側台地に集中させていますが、この東端は元の崖です。20万トンタンカーを何隻も並べたような過重をかけると、地盤が崩壊する可能性があります。また地盤の歪みにより、タンクの汚染水が漏れたり、タンクが倒壊してドミノ現象により大惨事が起こる可能性があります。(添付5)地盤のゆるみや崩壊は、集中豪雨や地震という要因が負荷されると一層危険性が高まります。こうした大事故が起これば「オリンピック返上」ということにもなりかねません。


 「唯一の被爆国」日本が、このままでは「唯一の原発加害国」になってしまい、世界中に迷惑をかけてしまいます。ドイツのメルケル首相が脱原発に踏み切ったのは、「日本でさえも原発事故を処理できない」という事実認識からだそうですが、世界にネガティブ・モデルを示し、脱原発を加速しようというのならともかく、福島事故は早急に終息させないといけません。
 私は原子物理にも原発にも地震にも素人ですが、病理学という学問の考え方はすべての災害や事故に通じると考えていますので、あえて意見を述べさせていただきました。
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