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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【防潮堤】難波先生より

2013-05-08 12:05:19 | 難波紘二先生
【防潮堤】BS/TVを見ていたら、東日本大震災で津波にやられた漁港に巨大防潮堤を作る計画に、反対している住民の話が出て来た。10m以上の防潮堤を長さ何キロか作って、居住地帯と漁港とを境するという計画のようだ。


 見ていて「伊勢湾の護岸堤防」を思い出した。旧大蔵省の幹部が「昭和の三大バカ査定」に挙げたあれだ。
 昭和34(1969)年、中東地区を襲った台風15号はちょうど伊勢湾の満潮と重なり、名古屋、桑名、四日市、津と暴風、高潮による大被害をもたらし、「伊勢湾台風」と別名を与えられた。死者行方不明7,500人、家屋の全壊と半壊15万戸、被災者153万人と台風としてはまれにみる被害を出した。
 その後に伊勢湾を取り囲むように巨大防潮堤が築かれた。15年以上前に、三重県の津市で学会が開かれた際に、マイカーで出かけ、この堤防を見て歩き、その後、紀伊半島を廻ったことがある。堤防は築後、30年も経っていなかった。


 志賀重昂が『日本風景論』(岩波文庫)で明治時代、つまりプレート移動論が提唱される前、に指摘したように「日本の太平洋岸は地面の自然隆起が起き、遠浅になる。」よって、海岸線の自然陸化が生じる。
 その結果、津市近辺の堤防は、100m以上の内陸に移動し、問題の堤防の外には家が建っていた。また堤防の外に多くの自動車道が作られ、堤防はあちこちで寸断されていて、とうてい「防潮堤」の意義をなさない構造物に変わっていた。むしろ「邪魔もの」である。


 関与した政治家や役人にとっては、完成したときに自分の功績なり、業績になればよいのであろうが、それでは「福島原発」を設計した技術者と変わらない。


 1000年に1回しか起こらない大災害のために、50年ももたない大堤防を築いても仕方がない。日本のいまのシステムでは作るときは国費、維持は地元自治体というが原則である。地元の費用では維持できないものを作っても仕方なかろう。どうして住民に高台への移住をすすめ、その費用を補助しないのであろうか?日本家屋の法定減価償却費は40年のはずだ。
 その間にも太平洋岸の陸地は、1メートルかそこら上昇する。だから防潮堤が陸化するのである。その時には、より便利で安全なところに移住したらよかろう。だったら、万里の長城みたいな防潮堤をつくる必要はあるまい。伊勢湾の防潮堤と同様に無用の長物になるだけだ。
 歴史から学ぶとは、そういうことではないだろうか? 福島県の人はぜひ「伊勢湾防潮堤」を見に行ってほしいと思う。
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