ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【格言】難波先生より

2014-08-04 18:41:06 | 難波紘二先生
【格言】
「すべての人間は生まれつき、知ることを欲する」。(岩波「アリストテレス全集12:形而上学」)
 アリストテレス「形而上学」第1巻冒頭にある有名な言葉だ。ハイデルベルグ大にはギリシア語を刻んだ銘板が立っているが、文句を忘れた。この言葉のギリシア語原文を知りたくて、「オックスォード引用句辞典」を引いたが、英語訳しか載っていなかった。
 “All men by nature desire knowledge.”
 (このスペルでネット検索すると790万件もヒットするが、「Wiki-Quote」にすらギリシア語原文がない。)http://en.wikiquote.org/wiki/Aristotle
 英訳は語呂がよい。「全集」の出隆による和訳は、意を訳すのが精一杯で、語調にまで気が廻っていない。岩波の『ギリシア・ラテン引用語辞典』は、ギリシア語の部とラテン語の部に分けて、引用句が頭からアルファベット順に並べてあるだけで、索引もない。高いくせにつまらん辞典だ。「anthropos」(ヒト、人類)という索引語があれば、すぐにアリストテレスの原文にたどり着けるのに…。
 「All men」のギリシア語は「Olos anthropos」だろうと見当をつけて、岩波「引用語辞典」のO (olosとフル標記してなく、Oだけがある)とanthroposの項を見た。どちらにもなく、「人は政治的動物である」というアリストテレスの有名な文句が、anthroposに3箇所、olosに2箇所出てきて、あきれた。重複がチェックされていない。
 これは編者田中秀央と落合太郎が、各種の洋書「引用句辞典」からバラバラに抜き出してきて、ちゃんと原典とのすり合わせをしていないからだろう。カード作成もしていないのではないか。「参考書目録」を見ると、英語とドイツ語の「引用句辞典」しかない。
 この辞書は1937(昭和12)年初版で以後、巻末に増補を2回行っているが、本編は一度も改訂されておらず、序文は旧仮名遣いのままだ。手持ちは1993年の第17刷だが内容は相当ひどい。
 アリストテレス研究は、「デカンショ節」でわかるように、昭和の初めにはまだ盛んでなかったから、彼の引用句については特にそれがいえる。どうも、「人は本来知ることを欲する」という文句は、この辞典には含まれていないらしい。
 後日発想を変えて、「Aristoteles Metaphysika」(アリストテレス+形而上学)と入力して原本をネットで探したら、オックスォード大学図書館の蔵書がGoogleで公開されていて、そこで1837年のImmanueli Bekker による「タイプ印刷本」というギリシア語の稀覯本が見つかった。
 この第1巻冒頭にあった。それによると原文は、
 Pantes anthropoi tou eidenai opegontai phudei.
(全て 人間は 知識を 熱望する 種属である。)=拙訳による逐語訳
 面白いことに語順は日本語と同じである。一時、日本語の起源をギリシア語に求める説があったのを思いだした。
 Touはeidenai(知識)にかかる定冠詞で、日本語では「源氏物語」に定冠詞らしきものが出て来るが、現代語にはない。
 念のためにpantesの項を「岩波・引用句辞典」で調べたがやはり載っていなかった。
 中央公論社「世界の名著8:アリストテレス」は田中美知太郎編で、「形而上学」第1巻が含まれていない。1972年初版のこの本は比較的ひろく読まれたのに、日本でアリストテレスのこの言葉がほとんど知られていないのは、田中の編集に問題があったと思う。
 パンは「パンアメリカン航空」(今はない)のpan-であり、「パナソニック」のpan-であり「パンタロン」(言葉自体がギリシア語)のpan-で「全て」を意味している。
 オックスォード辞典の頁を繰っていたら、同じくアリストテレス(英語はAristotle)の
 “The roots of education are bitter, but the fruit is sweet.”
 に出くわした。これも名言だ。
 意味は明瞭だが、日本語訳はどうなっているか…。これは「全集」にはなく、ディオゲネス・ラエルティウス『ギリシア哲学者列伝(中)』(岩波文庫)に含まれている。広島大文学部の教授だった加來彰俊氏の訳によると
 「教育の根は辛いが、その果実は甘い」
となっている。英訳ではルーツとフルーツが韻を踏んでいるが、和訳はそこまで行っていない。
 面白がって「オックスォード引用句辞典」をさらにめくっていると、
 “To be or not to be: that is the question.”
 というシェークスピア「ハムレット(Hamlet)」に出て来る有名なセリフに出くわした。
 福田恒在訳では「生か死か、それが疑問だ」になっている。確か高校の英語では、ここは「生きるか死ぬか、それが問題だ」と教わったように記憶する。
 Be動詞には「存在する」という意味がある。ラテン語やドイツ語では文末に来る重要な動詞だ。デカルトの「Cogito ergo sum.」のsumはbe動詞で、ラテン語の場合は動詞に「格」が含まれるからsum自体で「われ存在す」をあらわす。Cogitoが「われ思う」で、接続詞erogo(それゆえに)がcogitoとsumをつないで、一文をなしている。
 精神科医・作家加賀乙彦の「頭医者」シリーズに出て来る「小木(Cogi)先生」はこれをもじっているし、同じく精神科医・作家の「なだいなだ」は「nada y nada」 (null and null)というスペイン語をもじったものだ。昔の作家は学があった。

 久し振りに「2Ch生物板」をのぞいたら、Nスペ放映後、状況が一変していた。「STAP細胞の疑問点」がPART 581(今8/1は585)まで進んだのに驚いたが、それだけでなく
 >216 :名無しゲノムのクローンさん:2014/07/30(水) 16:00:18.64 .net
>>203 できるよ。理研が動かなくても動くときは検察は動くよ。
 >291 :名無しゲノムのクローンさん:2014/07/30(水) 16:48:58.23 .net
 >>290 NHKはでかいよ。世論も混みで政治認識が変わってくると結構動き出すからね
理研が訴えないってからとか言ってても、理研そのものだって処分食らうときは食らうよ
凄い曖昧な話してると思うだろうけど俺が言いたいのは世論が完全に変わり始めたっていう事
 >290 :名無しゲノムのクローンさん:2014/07/30(水) 16:45:57.63 .net
他板見てきたけど想像以上に批判が過激だな
プラスとか何も知らなくて、まだ擁護多いと思ったがほとんど居ない
おぼちゃんこれは思ったより一般人に嫌われてるよ
581 :名無しゲノムのクローンさん:2014/08/01(金) 09:24:18.62 .net
初期の頃はノーベル賞5つぐらいの大発見だとか
いろいろ 理屈を述べて書いてる連中いたな
今思い返して 恥ずかしくないのかね
ああいう人は 今どうしてるんだろうね
586 :名無しゲノムのクローンさん:2014/08/01(金) 09:31:37.34 .net
>>581 この人はノーベル賞二個分の発見って別の放送で言ってました
【宮崎哲弥】小保方博士のSTAP細胞作製は日本の国立大学では不可能だった。理研だからできた。 http://www.youtube.com/watch?v=Kt2BTU8MSyA

 というような書き込みに見られるように、ネット世界の意見がすっかり様変わりしていた。
 以下のサイトでは最初の50スレくらいで議論の要約が行われていて、質も向上している。
http://ai.2ch.sc/test/read.cgi/life/1406648008/-100
 前に「集合知はまだ建設的な方向に作用することが未知数だ」と書いたが、ネット市民の間で自発的な交通整理が行われ始めた。
>296 :名無しゲノムのクローンさん:2014/07/30(水) 17:01:52.70 .net
>>226 スレ立てする人にお願いだけどこれも次からテンプレとして入れてほしい
気が付いた分はこちらに転記するようにしていますので参考にしてください。 
残したい投稿があればどうぞ。
「STAP細胞の懐疑点」に関するテンプレ・スレッド
http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/life/1399966447/
*狸さんにお願い=
記録用に使っているだけですので、出来れば書き込みは控えてくれると嬉しいです。
>300 :糞狸 ◆2VB8wsVUoo :2014/07/30(水) 17:05:47.96 .net
>>296 了解しました。加えて本スレだけは妨害しない事にします。 狸
>309 :狸 ◆2VB8wsVUoo :2014/07/30(水) 17:12:55.84 .net
>>306  但し『誰かがきちんと交通整理をする』という必要がありそうに見えま すが。とても議論が成立している風には見えないので。 狸

 このように「渾沌からの秩序」が生まれる可能性が見えてきた。「自己創発」とかオートポイエシスと呼ばれる現象だ。ネットという「人間分子」の世界でも、やはり「熱力学第二法則」が作動してエントロピー(渾沌)を減少させる方向に進む可能性がある。
 それでもまだ「STAP細胞はある」という意見の人も書き込んでいるが、もう感情的なやり取りはなくなったようだ。ネット市民の「成熟」と評価したい。
 で、上記のハムレットのセリフは「To be or not to be.」というbe動詞から成り立っている。そこで、STAP細胞事件についてパロディーを作ってみた。
「あるのか、ないのか、それが問題だ。」
 テレビのワイドショーやスポーツ紙は、これだけを話題にして「恋の空騒ぎ」(シェークスピア劇のタイトル)を6ヶ月間上演したわけだ。
 小保方が「STAP細胞はありまーす」とやったものだから、国民の多くが心理的トリックに引っ掛かってしまった。「あるかないか」で問題を立てたら、あたかも「ある」と「ない」の確率が半々であるかのように思ってしまう。もともと「ない」ものを「あるかのごとく」見せかけた詐術がSTAP騒動の根本だ。
 だから問題の本質は、「あるかないか」にあるのではなく、撤回された2論文の不正がどのようにして生みだされ、どうして関係者がまんまと騙されたかを、徹底的に調査・解明することにある。「再現実験」は、成功しなくても「ない」ことの証明にはならないから、世間のほとぼりを冷ますための、理研の時間稼ぎでしかない。
 8/2「読売」が日本生化学会の理研に対する「異例の集中批判」を報じている。
 http://www.yomiuri.co.jp/science/20140802-OYT1T50051.html?from=ytop_top
 好ましい「科学者の自浄作用」が働き始めたといえるだろう。
 2Ch情報によると、8/8(月)に丹羽氏による「再現実験」の中間発表が予定されているので、Nスペは放送予定を1週間繰り上げて放映したという。8/6は広島原爆忌、8/9は長原爆忌だから、8/8理研記者会見は妥当だろう。先日のNスペには丹羽氏の発言部分がなく、土色の顔色で歩いている姿しか出て来なかった。「再現実験」の困難さを暗示するようなショットだった。
 ということは、8/8前後にNスペ「続編」の放送があると期待して良いのではなかろうか。何しろ「2000頁に及ぶ資料を入手した」と説明していたから、1回こっきりの番組ではもったいなかろう。
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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-08-05 01:34:01
>Pantes anthropoi tou eidenai opegontai phudei.

最後の単語はphuseiです。phusisにはraceという意味もありますが、ここではnaturallyという意味でとるのが妥当と思います。physicsの語源ですね。
返信する
Unknown (Unknown)
2014-08-05 13:31:19
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/194492.html
返信する
いつの世も同じ、、、。 (老嬢)
2014-08-05 14:56:49
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必哀の理をあらはす。
奢れる人も久しからず。ただ春の夢のごとし。
猛き物も遂には亡びぬ.偏に風の前の塵におなじ。


只ただ、人間の命の儚さに、人の憐れを感じずにはいられません。


                    合掌
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もののあはれ (バイオ屋)
2014-08-06 01:32:49
ヨタ話のstapが実績あるスター研究者の破滅を導いた。追い込んだ政治家、ロビー学者もどき、理研幹部、役人などは猛省すべきである。権力で科学の真理を捻じ曲げ、屈服させようとした試みは自害という最悪の手段の犠牲を見るまでとめられなかった。研究者は残念である。これで犬公方は去り、生類憐みの令はなくなるであろうが代償と混乱は大きかった、
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