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ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【ノイズと信号】難波先生より

2012-11-06 12:22:40 | 難波紘二先生
【ノイズと信号】の比がデジカメでは問題になる。ISO感度を上げれば、一つの撮像素子をオンにさせる光子(フォトン)数は少なくてすむが(光量は少なくてすむが)、有効画素は減少するから画質が荒くなる。光が来なかったのにオンになる素子も出てくる。
 これは高感度フィルムの場合でも、潜像を形成する還元銀粒子の頻度の問題として、認められていた。
 超高感度フィルムだと、光だけでなく、微量の放射線にも反応する。環境中のノイズをひろってしまうから、逆に「フィルム・バッジ」は放射線業務従事者の被曝量測定に用いられる。


 DNAの断片を増幅するのにPCRという方法がある。一本鎖にしたDNAに複製に必要な塩基とDNA合成酵素を混ぜると、このDNAを鋳型にして新たなDNA鎖がつくられ、二本鎖DNAとなる。温度を50℃まで上げると、2本鎖はまた一本鎖2本に解離するが、普通はDNA合成酵素が熱で変性してしまう。
 このDNA合成酵素を、エローストーンの熱泉中にすむ細菌がもつ熱耐性DNA合成酵素(Taqポリメラーゼ)に置き換えたものがPCRである。高熱で二本鎖DNAを一本鎖に変え、温度を下げると2本が4本に変わる。温度の上下を繰り返せば1階毎にDNA量は倍に増えて行く。
 普通50回の反応で十分量のDNAがえられる。


 なるほど、この合成反応はデジタルで、増幅しているDNAが途中で別ものに変わることは原理的にはない。
 更科功「化石の分子生物学」(講談社現代新書, 2012/7)を読むと、古生物学者や古人類学者たちがとんでもないことをやっているのがわかった。
 彼らは化石中から抽出したDNA断片を増幅するのにPCRを3000回もまわしている、というのである。


 2の3000乗という数がどれほど恐ろしい数かは、考えたらわかろうに。この回数だと標本を出し入れするときに、空気中に漂っているホコリに紛れている、細菌のDNAだの、カビのDNAだの、ヒトのふけにあるDNAだのまで、ひろって増幅してしまう。われわれの銀河系宇宙の直径が、たかだか10の22乗メートルの大きさなのだ。


 だから3000回もPCRをかけたら、いったい何のDNAを分析しているのかわからなくなる。デジタルな反応でも、ノイズが信号を上まわるのだ。
この本はある種のペテン本で、「恐竜のDNAが同定された」という話が、クライトン「ジュラシック・パーク」の話と並んで書いてあるから、本当かと思って読んで行くと、「他の研究者によって追試できず、サンプルの汚染と判明」というようなことが、何十ページも先に書いてある。


 冒頭に、ネアンデルタール人の化石からDNAを取りだし、ヒトのDNAと比べたらアフリカ人とは共通性がなかったが、ヨーロッパ人とアジア人には同じDNAがあった、という話が1章を費やして書いてある。しかし、誰がいつどのようにしてやった研究なのか、具体的に書いてない。文献リストもついていないし、索引もない。
 調べ見ると、2010年にドイツ・ライプチッヒのマックス・プランク研究所進化人類学部門のS.ペーボ(Paeaebo)らが米科学誌サイエンスに報告したものだが、調べた現生人類の数も民族もちがう。(日本人は原著では調べられていない。)
 発表当時、NYTの科学記者ニコラス・ウェードは大変批判的な記事を書いている。
 上記のような「汚染したサンプルを分析してしまう可能性」を考えると、しっかりとした追試が出てこないと信用できない状態だ。


 このニュースは日本ではなぜか、大きく報道されなかったように思う。記憶にない。
 それにこの更科功という人物は、これまで著書が一冊もない。論文もない。何でこういうひとが、こんな本を書けたのか不思議である。
 http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_ss_i_0_3?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%8DX%89%C8%8C%F7&sprefix=%8DX%89%C8%8C%F7%2Cstripbooks%2C0 更科功
 
 東大博物館のカタログ「東大古生物学」(東大出版会)をみると、1999年に「ホタテ貝の貝殻基質における主要な可溶性タンパク質の一次構造」という論文で理学博士号を授与されている。1961年生まれだから、38歳。晩学である。


 最近は人間を対象とした学会の会員でもなく、ヒトを対象とした研究をしていないのに、竹内久美子だの、福岡伸一だの、中村桂子だの、柳沢桂子だの、長谷川真理子だのと、人間や病気について書きまくって、世を惑わすのが多くて困る。
 山中伸弥のノーベル賞受賞が、そういう軽薄な風潮を沈静化させる方向に作用してもらいたいと思う。

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