【本田静六自伝】
最近読んだ本で感銘を受けたものに、「純粋知(総合知)」の重要性を強調した中沢弘基『生命誕生:地球史から読み解く新しい生命像』(講談社現代新書)がある。誕生から46億年を経た地球史の中に無機物から有機物へ、有機物から原始的生命体へ、原始的生命体から細胞の誕生へという進化の過程を、数学、物理、化学、生物学の知識を縦横に駆使して、ひとつのあり得た壮大なシナリオとして提示したものだ。著者は1940年生まれの東北大理学部地学科卒の地質学者で、元東北大教授。粘土の専門家だ。
榎木さんが「殿様生物学2.0」とか「自宅でバイオの研究ができる時代」と述べているが、老後の生活さえメドが立てば「知的好奇心に生きる」ということは、ネットのおかげで可能になった。中沢氏の例をみれば、年老いてもなお刺激的な知的著作を世に問うことができる。
ただ問題になるのは、社会保障制度の先行きが見えないなかで、長期的な生活設計だろう。それは一朝一夕には達成できない。
これについては米国には『フランクリン自伝』、『カーネギー自伝』のようなすぐれた自伝があるが、日本では『本田静六自伝:体験八十五年』がそれに匹敵するだろう。私はこの本を、『世界ノンフィクション全集36』(筑摩書房, 1962)中に見つけて読んだが、彼の著作は、没後50年以上経った21世紀になって見直されてきたようだ。『私の財産告白』、『私の生活流儀』はいずれもKindle版で読んだが、財産形成法と合理的な時間の使い方を述べたもので、もっと若い時に読んでいればな…といささか口惜しい思いをした。
日本の林学の創始者で、ドイツに留学して東大農学部の教授となり、「月給の四分の一を貯蓄する」という生活を続け、貯まった金を株や土地などに分散投資した結果、停年退官(60歳)の頃には「教授の月給よりも利子・配当金の方が多い」という状態になったという。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E5%A4%9A%E9%9D%99%E5%85%AD
当時は、医療保険制度もなく、「恩給」はあったが、蓄えがないと民間人は退職金だけで生活しなければならなかった。
本田静六のライフスタイルは、スマイルズ『自助論』(竹内均訳、三笠書房、2013、有名な中村正直訳のタイトル『西国立志篇』は 岩波文庫にある。)や福沢諭吉『学問のすすめ』、『文明論の概略』(共に岩波文庫)の影響をつよく受けている。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_ss_i_0_4?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%E6%9C%AC%E7%94%B0%E9%9D%99%E5%85%AD&sprefix=%E6%9C%AC%E7%94%B0%E9%9D%99%E5%85%AD%2Cstripbooks%2C354
日本では清水幾太郎『論文の書き方』(岩波新書,1959)、梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書,1969)といった主に非実学系の「情報処理術」が人気を呼んだが、私の知るかぎり本田静六の自伝が広く世間の注目を集めることは、これまでなかったと思う。
もっとも彼の資産形成法は、株式と不動産への分散投資にあり、それには他人に先んじた情報の入手が大事だった。(バブル期には多くの人がこれらに手を出し、ほとんど損をした。)東京帝大教授であっただけでなく林学や造園学の専門家であり、後藤新平や渋沢栄一などとの交流もあったから、質の高い情報を入手でき、間違いの少ない投資が可能になった。ここを真似しないでうっかり、投資により富を増やす方法だけを真似すると、大変なことになるだろう。
献本お礼が妙なところに話がそれたが、私は書物を読む楽しみと、時おり、庭に出て草むしりをしながら、動植物を観察・撮影するという楽しみを大事にしたいと思っている。
最近読んだ本で感銘を受けたものに、「純粋知(総合知)」の重要性を強調した中沢弘基『生命誕生:地球史から読み解く新しい生命像』(講談社現代新書)がある。誕生から46億年を経た地球史の中に無機物から有機物へ、有機物から原始的生命体へ、原始的生命体から細胞の誕生へという進化の過程を、数学、物理、化学、生物学の知識を縦横に駆使して、ひとつのあり得た壮大なシナリオとして提示したものだ。著者は1940年生まれの東北大理学部地学科卒の地質学者で、元東北大教授。粘土の専門家だ。
榎木さんが「殿様生物学2.0」とか「自宅でバイオの研究ができる時代」と述べているが、老後の生活さえメドが立てば「知的好奇心に生きる」ということは、ネットのおかげで可能になった。中沢氏の例をみれば、年老いてもなお刺激的な知的著作を世に問うことができる。
ただ問題になるのは、社会保障制度の先行きが見えないなかで、長期的な生活設計だろう。それは一朝一夕には達成できない。
これについては米国には『フランクリン自伝』、『カーネギー自伝』のようなすぐれた自伝があるが、日本では『本田静六自伝:体験八十五年』がそれに匹敵するだろう。私はこの本を、『世界ノンフィクション全集36』(筑摩書房, 1962)中に見つけて読んだが、彼の著作は、没後50年以上経った21世紀になって見直されてきたようだ。『私の財産告白』、『私の生活流儀』はいずれもKindle版で読んだが、財産形成法と合理的な時間の使い方を述べたもので、もっと若い時に読んでいればな…といささか口惜しい思いをした。
日本の林学の創始者で、ドイツに留学して東大農学部の教授となり、「月給の四分の一を貯蓄する」という生活を続け、貯まった金を株や土地などに分散投資した結果、停年退官(60歳)の頃には「教授の月給よりも利子・配当金の方が多い」という状態になったという。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%AC%E5%A4%9A%E9%9D%99%E5%85%AD
当時は、医療保険制度もなく、「恩給」はあったが、蓄えがないと民間人は退職金だけで生活しなければならなかった。
本田静六のライフスタイルは、スマイルズ『自助論』(竹内均訳、三笠書房、2013、有名な中村正直訳のタイトル『西国立志篇』は 岩波文庫にある。)や福沢諭吉『学問のすすめ』、『文明論の概略』(共に岩波文庫)の影響をつよく受けている。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_ss_i_0_4?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%E6%9C%AC%E7%94%B0%E9%9D%99%E5%85%AD&sprefix=%E6%9C%AC%E7%94%B0%E9%9D%99%E5%85%AD%2Cstripbooks%2C354
日本では清水幾太郎『論文の書き方』(岩波新書,1959)、梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書,1969)といった主に非実学系の「情報処理術」が人気を呼んだが、私の知るかぎり本田静六の自伝が広く世間の注目を集めることは、これまでなかったと思う。
もっとも彼の資産形成法は、株式と不動産への分散投資にあり、それには他人に先んじた情報の入手が大事だった。(バブル期には多くの人がこれらに手を出し、ほとんど損をした。)東京帝大教授であっただけでなく林学や造園学の専門家であり、後藤新平や渋沢栄一などとの交流もあったから、質の高い情報を入手でき、間違いの少ない投資が可能になった。ここを真似しないでうっかり、投資により富を増やす方法だけを真似すると、大変なことになるだろう。
献本お礼が妙なところに話がそれたが、私は書物を読む楽しみと、時おり、庭に出て草むしりをしながら、動植物を観察・撮影するという楽しみを大事にしたいと思っている。
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