ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【映画=ガダルカナル戦】難波先生より

2017-10-02 13:03:43 | 難波紘二先生
【映画=ガダルカナル戦】 下前先生が来てくれたお蔭でノートパソコンと大型68センチ液晶モニターとの接続が回復できた。一端外したら、ノートPCのどこに映像ケーブルを接続するのか忘れていたのだ。それで彼が帰った夜、久しぶりにDVD映画を観た。机上80cmの距離で、大画面の映画を観るとなかなか迫力がある。(製図用コンパスと分度器で視角を測定すると、約100度ある。)
 これは広大生協の谷野さんに相談し、机上のMacBOOK-PROのDVDドライブを活用し、映像・音声信号を新規購入の大型モニターで再生できるようにしてもらったものだ。DVDの出し入れや日本語・原語の切り替えなどは、手元で操作できるから便利だ。

 ガダルカナル戦は「餓島」という言葉ができたほど、この島の戦いでは日本軍の陸海軍は徹底的に敗退した。島からの撤退を「転進」と大本営が誤魔化したのはこの時からだ。この戦いの日本映画はない。米国では何作かあるが、未見だ。手元のDVDコレクションから「ガダルカナル・ダイアリー」(監督ルイス・セイラー、主演アンソニー・クイン、米1943)という作品を見つけて、土曜日の夕方観賞した。
 映画は当然ながら徹底的に米側の視点で描かれている。1942年8月7日に米沿岸警備隊と海兵隊がガ島にほぼ完成していた日本海軍飛行場付近の海岸に奇襲上陸し、12月10日に島占領の任務を終え、本国に帰還するまでの戦闘と兵士たちの日常を描いている。映画が1943年に公開されたと知り驚いた。8/6の原爆投下と12/8の真珠湾攻撃が折り込まれたような、わずか4ヶ月間の戦いだったと初めて知った。この間に日本軍は約2万人の戦死・戦病死・餓死者を出している。

 見ていて「これは敵わないな」と思った箇所がいくつかある。
 上陸の前夜、輸送船内で指揮官が地図を示して上陸作戦の説明をする。それを聞いている兵士たちにはタバコを吹かしている者もいる。会場には従軍牧師もいる。士官待遇だ。日本軍が占領して飛行場に変える前に、そこで農場を経営していた地主もいて、上陸後の地理の説明をする。兵士たちから敵兵力と原住民数について質問が出る。くだんの元地主が「原住民は約1万5000人」と答えると「彼らは人食い人種か?」という追加質問が出る。地主は「ノー」と答える。
 ここで牧師が「それに上陸日は金曜日だ」と答える。字幕は「文字面(もじづら)訳」になっているが、これは痛烈なジョークで、「金曜日には魚を食べる(肉を食わない)」というクリスチャンの風習を踏まえたものだ。字幕では牧師の台詞の当意即妙性が伝わらない。ナーバスになっている兵士たちの緊張を融こうとする、牧師の真意が伝わる字幕になっていない。

 米軍の上陸兵力は約1万1000人。これで完成間近の飛行場は奪われてしまい、日本軍は一挙に制空権を失った。上陸用舟艇は前にまだ開閉ブリッジが付いておらず、海岸に乗り上げた後、舷側から海に降りて兵士たちは上陸している。(つまり前開きの上陸用舟艇は後に開発され、ノルマンディー上陸作戦ではこれが使用されたということだ。)

 島の中央にある山には鍾乳洞が多く、日本兵が立て籠もっている。それを迫撃砲と手榴弾で攻撃する。それに峰からロープで降下し、洞窟内に点火したTNT火薬箱を投げ込み洞窟ごと破壊してしまう。日本兵はヤシの樹や枝のある樹に、多くの狙撃兵が登っていて、そこから撃ってくるから戦車で樹木ごと倒壊させる。火炎放射器はまだ登場していない。
 捕虜にした日本兵から印刷した日本語の「宣伝ビラ」を回収し、部隊の日本語通訳が米兵たちの前で、書かれている内容を即座に英訳して伝える。つまり第一波上陸部隊の中に、日本語に堪能な情報部員がすでに加わっているのだ。おそらく日本兵の日記なども収集・解読作業が始まっていたと思われる。

 日本では「物量作戦に負けた」という言い方をするが、あれは負け惜しみだ。
 味方の損害を最低限に食いとめるために質の高い兵器をもち、将校と兵士との一体感を保ち、万一の場合は完備した野戦病院があり、従軍牧師がいる。明らかに軍隊の質が異なっている。諜報部があり、日本語の翻訳や日本軍情報の解読に当たっている。
 それに部隊に真空管式だがポータブルラジオがあり、兵士たちがニューヨーク・ヤンキースの試合結果の速報をニュースで聞いて歓喜しているのにも驚いた。食糧・武器・装備だけでなく、兵士のQOLを高める努力が払われている。
 物量に負けたのではない。兵を大事にしなかったから負けたのだ。1942年8月7日から始まった4ヶ月の戦いを映画にして、1943年には一般上映できた米国の底力も決して見逃せない。
元もと日本が米国に戦いを挑んだのは、今の北朝鮮が米国を相手に核戦争をするのと同じレベルの話だ。勝てるわけがない。

 この映画以外に「大突撃」(1969年、アメリカ映画)、「シン・レッド・ライン」( 1998年、アメリカ映画、20世紀フォックス)という、ガダルカナル戦を扱った映画もあるようで、これらも観たいと思った。



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