今日、麩の味噌汁

2005-02-03 20:04:31 | Weblog
「お前この世でいちばんこわいものはなんだと思う?」
「俺は島倉千代子がロックンローラーになったらこわい
と思うよ」
           (いがらしみきお「根暗トピア」)

 人間である以上、「苦手」「こわいもの」というのはたい
てい存在する。地震、雷、火事、オヤジ。ゴロがいいので人
口に膾炙しているが、天災とオヤジを同一視するのはオヤジ
に対するゴマスリである、という説もあるらしい。もっとも
ブリーフひとつで片手に包丁、「電波が電波が」とつぶやき
つつ街を彷徨するオヤジがいれば、このこわさは天災を凌駕
するとは思うが。

 わたし自身は高所がダメだ。かつて工場の見学で、100m
近い高さの煙突にのぼったことがある。エレベーターで数分間、
ドアが開いて、「さあ見晴らしいいですよ」
見晴らしいいのはたしかであるが、床がグレージング(鋼鉄製
の網みたいなやつね)で下が丸見え、眼下に広がる広大な風景。
誇張でもなんでもなく、あの時はマジで膝が笑った。小便漏ら
さなかっただけみっけものである。

 生き物ならばムカデがダメ。前にも書いたが忘れもしない高
校二年の世界史の授業中、どうも脚に違和感を感じるのでズボ
ンをまくったところ、15cmはあるムカデが脚に貼り付いて
いた。それ以来あの足の多い生き物を、目にするだけで耐えら
れない。一度家の湯舟につかっている時、ふと壁を見ると妙な
棒状のものが貼り付いている。裸眼0.1の両目を近づけ、正
体を見極めたらそれがムカデであった。全裸でムカデに対峙す
るこの経験、ムンクの叫びの如く絶叫したのは言うまでもない。

 落語の「饅頭こわい」にも見られるように、「こわいもの」
ネタの話は盛り上がる。フロイト理論を振り回すつもりもない
が、「あるものをこわがる」というのはその人間の人生経験を
語ることに他ならないかもしれない。抗菌グッズの多さを見る
に、いまの人間はそんなにもばい菌がこわいのか、とトイレに
はいっても手を洗わない脂ハゲは考えるのだ。