日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

本日の晩酌 -翠露-

2013-08-27 23:16:07 | 晩酌
清酒の旬といえば何といっても一夏の熟成を経た酒が出揃う秋、次いで新酒が蔵出しされる冬ということで、まず異論がないのではないでしょうか。それでは残る二つの季節はどうなのかと考えるに、比較的連想しやすいのが夏の酒です。度数を下げて旨味も抜いた、酒なのか水なのかも分からない軽質な酒はともかくとして、旨味を残しながらもさわやかな香気と舌触りで夏らしさを演出する酒が少ないながらもあり、これはこれで悪くありません。これに対し、最も想像しにくいのが「春の酒」です。直截に考えるなら、鮮烈で若々しい新酒と、さわやかな夏の酒を足して二で割ったようなものになるのでしょうか。本日紹介するのはその名も「春しぼり」の名を冠した「翠露」です。
この酒が特徴的なのは、鼻をくすぐるような含み香です。吟醸香とは違う心地のよい香りは、最初の一口を含んだ瞬間に最もはっきりと感じられ、それを再びかぎ分けようと二口三口含んでも、最初の一口に比べて輪郭はおぼろげになり、ほのかに甘い舌触りと適度な余韻が残ります。この何とも形容しがたい複雑な味わいで思い出すのは、「飛露喜」の特別純米酒です。本当によい酒は、甘い辛いといった分かりやすい言葉で表現できるものではないと仲間の一人はいいますが、この酒もまさにその手の部類に属します。春らしい酒かと問われれば特にそのような印象はないものの、この酒が毎年蔵出しされる定番商品だとすれば、自分の中では押しも押されぬ春の風物詩の一つになるかもしれません。

★翠露 生原酒 春しぼり
舞姫酒造(長野県諏訪市)
精米歩合 70%
アルコール分 16度
長野県伊那市 酒文化いたやにて購入
コメント