星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

吉原御免状  □観劇メモ

2005-10-25 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
 公演名 吉原御免状
 劇場 青山劇場
 観劇日 2005年9月10日(土) 18:00開演
 ◎座席 XB列
   
 劇場 梅田芸術劇場メインホール
 観劇日 2005年10月23日(日) 12:30開演
 ◎座席 12列
 


原作を引きずって

ただの色町だと思っていた吉原は、実は徹底的に組織化された自警団の
要塞だったというところが面白い! 
舞台では松永誠一郎が吉原を訪れるところから話が始まるが、遊郭とは
いっても単なる色恋沙汰や心中ものではなく、徳川家康、宮本武蔵、
幕府の政策、裏柳生までがからんで展開するから、最後まで全然飽きる
ことなく、汗びっしょりになりながら一気に観通してしまった。
さすがに中島さんの脚色。原作をスッキリうまく整理して本当に面白く
書いてる。わかりやすいから楽しい。

ただ、自分としては隆慶一郎さんが描いた吉原のイメージが強烈だった
ために、東京で初めて舞台を観た時はどうしても気になる点があった。
(イヤな客だ!)それも台本に書かれなかった部分・・・。
高尾太夫のお座敷シーン。そこから汲みとれる高尾の太夫としてのプライド
とか教養の高さ、誠一郎へのとっても健気で可愛らしい気持ちとか。
勝山太夫のエピソードがクローズアップされてる分、一方の高尾太夫の心情
がおろそかにされているようで、そこがイマイチ不満に感じてしまう。
舞台の途中、高尾太夫が誠一郎を見送るシーンで「しののめの~」と歌を
詠むところなど、高尾の魅力をもっと立たせて欲しかったな~。

でも、2回目の観劇では原作のことがまったく気にならなかった。
笑える場面はメチャ笑えるし、ブラックな場面は有無を言わせず真っ黒!!
もうすっかり新感線の「吉原御免状」なんだなあと。
そこで安心して、誠一郎と勝山太夫の物語にのめりこんでしまう。
誠一郎の堤真一さんと、勝山太夫の松雪泰子さん。ほんと!泣かせてくれました。
堤さん、若くてカワイくて色気がある誠さまを好演。ラストに向かっては
修羅と化す男の心模様をすごい形相で演じきり、引き込まれてしまった。
最前列で観た日、最後の場面で堤さんの目の下に涙のあとが・・・。
~山の民が住むところだから、ここも山に決まってるじゃないか~
誠さまが涙したのはそんな山の民の心根をしかと受け止めた時なのですか?
そして、やはり松雪さん。凛としていて、色っぽくもあり、ワルにもなり、
そのクセ惚れた男に弱点を全部見せてしまう。女も憧れるある種の女の魅力
が舞台でうまく引き出されてた。
初舞台の「夜叉ケ池」はこんな生々しいお芝居ではなかったので、今回の
情念の女、勝山太夫はハマったなと思う。
怖くて残酷な古田さんは憎たらしいし、じゅんさんはカッコよすぎ(笑)。
これからも新感線、ギャグなし路線でいくのだろうか?

舞台装置や演出のことなど

登場人物がやたら歩くのが今回は目立った。人物の移動に合わせて
回り舞台が変化するので、舞台なのに風景が飽きない。
最近観た「野田版 研辰の討たれ」でも、移りゆく街道の風景とか、宿の中
の広がりや奥行きを見せるのに回り舞台がうまく使われていたけれど、
「吉原御免状」もそのタイプ。華麗な花魁道中、吉原に出入りする路、遊郭
の長い廊下や、部屋への通路などに回り舞台がうまく使われ、シーンごとに
変化が楽しめて新鮮だった。

吉原の成り立ちを説明するところもいい。
おばばさまが誠一郎の上にまたがるという(きもエロチックな!)シーン
から昔へトリップするシーン。おばばさまの背中には入れ墨♪
後ろ姿が若い女性にしか見えないのもすごっ。(高田聖子さんだから若い
のは当然なんだけど、それにしてもキレイなプロポーション~!)
舞台が回って場面転換すると、もうその中に八百比丘尼おばばさまと
誠一郎が違う姿で登場しているところが、映画みたいで好きっ!
道々の輩のカラフルな衣装やロシア風の民族舞踊っぽいダンスとか、
ここは大事な見せ場であり、ビジュアルも楽しめた。

殺陣をチェック

誠一郎の殺陣は初めからオイシイとこは全部見せない(笑)。
最初は剣を持ってもただ、かわすだけ。
裏柳生の兵たちと闘うのにも1本だけで闘っている。
(オマエは武蔵の弟子なんだろー、二刀流はいつ見せるんだ!)
と客席をじらせる作戦?
やがて、決闘の場面が来て、義仙が誠一郎の出生の秘密を明かす。
それが腑に落ちた瞬間、誠一郎が2本目の剣をようやく抜く。
初めて3つの名前が舞台でそろう瞬間だ。
後水尾天皇(父)ー 宮本武蔵(養父)ー 松永誠一郎(子)の
美しい絆。この時の二刀流のシルエットにはゾクッとしましたー!!
私はどうもこういう形式美的なものにヨワイ。
堤さんの殺陣は腰を低く重心を落として、両脚を開く構えを多用(笑)。
誠一郎の時には回りながら横に斬る立ち回りが多いのに比べ、若き甚右衛門
の時には大刀を上の方で回す殺陣。見た目にも違いを出していた。
そして、虎乱の陣。相手を倒すためには手段を選ばず、自軍側にも死者が
出るようにあらかじめ考えられた捨て身の集団の剣。
(原作がいま手元にないので、まどろっこしい言い方だわ~。)
実際にビジュアル化されたのを観ると、ほお~っという感動。
これは2階席や3階席で観たかったなー!!

あー、また長文をダラダラと。
というワケで、「吉原御免状」が新感線の舞台になってやっぱりヨカッタ。

「吉原御免状」大阪千秋楽バージョン(このブログ内の関連記事)


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