星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

「花の武将 前田慶次」備忘録(2)

2010-09-21 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)

とうとうあと2日になっちゃったよ。

見始めたら幕間まで、一騎がけ!
暗転の待ち時間も全く気にならない演出がいい。
前田慶次はそんな舞台。

シンプルな舞台装置。
段差のある舞台を回転させるだけの場面転換。
シチュエーションは背景の映像を見れば一目瞭然。
上の階から見たときは床に落ちる照明もきれいだったし、闇の
世界で暗躍する忍びたちの蠢きがほの明るいライトで浮かび上
がる瞬間もインパクト大。

映像だけではなく、人が背景映像と連動して登場することも。
前田利家・水風呂事件のエピソード。
秀吉の朝鮮攻め。
郭で床を用意する遊女たちが真っ白の大きな布を広げた途端、
血を意味する赤いマーブル模様が投影されていたり。
伽耶が故国を語る時、大陸の映像の前に往来する一族の女たち。

これで音楽がフルボリュームなら、新感線の舞台にかなり近い。
お二人連名なので、どのあたりが岡村さんの演出なのかは推測
するしかないけれど、いい意味でつかさんと新感線の両方のテ
イストが入り混じったような世界。カッコよさと笑える演出は
ほとんど岡本さんによるものでは?
また、横内さんが書かれていた、ご本人によるスーパー歌舞伎
のパロディはどのあたりのことをいうのか? そこがわかれば
さらに楽しめるんだけど。

ではまた、ネタバレ全開メモのつづき。



●愛馬「松風」
でかい!黒い!
顔はあまり長くなく、パッチリお目めが可愛い。
でも、松風がなついているのは慶次だけ。
松風は慶次にすりよって甘えたりもする。慶次が槍の置き場に
松風を使っても怒らない(笑)。
一方、慶次は松風の言葉がわかるらしい。あの大きな背を乗り
降りする姿はとても自然でカッコイイ。
松風は慶次を乗せたまま歩いたり、当然走ったりもする。
慶次は動く松風の背で自由に軽やかに槍を回しているようだ。
そんなとき、慶次と松風は完璧に一体に見える。
前後の足はいつもピタッとそろって駆けてゆく。

松風を演じている二人の役者さんのお名前は、秀太郎さんのブ
ログを通じて知った。それはありがたかった。
でも、せっかく松風になりきっている今、まだここに書きたく
ないと思う♪ 千穐楽までは。
愛之助さんが全幅の信頼を寄せる二人だからこそのあの一体感
なのだとあらためて思う。
慶次&松風の関係、舞台でも羨ましいぞ♪
<9/23追記>千蔵さんと千志郎さん、本当にお疲れ様でした!

●山上道及
着物に袖がない(笑)。一番ステキな衣装は、なんといっても
鍛えられた大胸筋と上腕筋だ。ちなみにそのデザインポイント
は刀傷!
とにかく角田さんの山上道及はその風貌からして、乱世にその
ままいそうな存在感を放っている。

それにしても初舞台なのに、役どころをしっかりつかんでおら
れる♪ 毎回違うアドリブにはリピーターのハートもキュンッ!
「お前、審判は得意だろう?」と振られて答える道及。
18日昼の部「ああ、来月も韓国で2連チャンだ。」
18日夜の部「大晦日まで審判に借り出されて大変」(たぶん)

筋肉ピクピク(1~2回)には客席から拍手拍手♪
また、慶次と兼続が響き合っている場面では、開幕当初なかっ
た部分が追加。強そうな男がスネて見せるギャップの可笑しさ
が大ウケ。これがあとの「平家物語」で響き合う場面にちゃん
とつながるところが心ニクイ。

●金蔵と慶次
一見ごく普通の主従関係に見える慶次と金蔵。
実は加賀を出奔した慶次を見張るために加賀の忍の頭領、四井
主馬が小次郎に命じて放たれた忍だった。
慶次がそれを知りながら側に置いてくれたと知り、いったん姿
を消すが、慶次の危険を察知し再び舞い戻る。

明るく振る舞っていても「お前の目は暗いから」という理由で
慶次に見抜かれていたと知るや、忍び本来の表情にもどってし
まう金蔵。うまい! 
金蔵を演じる石井さん、自分の置かれた危険な立場を瞬時に観
客にわからせ、以後、忍びの苦悩を随所で見せる。と同時に、
慶次という男の魅力を浮き彫りにする重要な役どころで、好演
が光っている。
特に名前、慶次への思い、小次郎への思いが前面に出る場面は
小次郎・慶次を巻き込んでウルウルポイントがいっぱい。

兄貴分の小次郎を慶次が捕えた時、自分が命を狙われ瀕死の状
態にも関わらず、助けてほしいと慶次に訴える金蔵。
「なんで、お前が、なんで」と信じられない表情で泣きそうな
慶次。傷ついた金蔵を腕に抱きかかえたまま「金蔵ーっ!」と
絶叫する声が痛々しい。

でもね、自分の命を狙う相手に情愛を示すやり方は、慶次!
あなたが金蔵にしていることと同じじゃないの?
とツッコミを入れてみる(笑)。

慶次も金蔵が好きなんだね。
金蔵が兼続の前で「だんな様があっしに名前をくれたんです」
とうれしそうに話すとき、「当たり前だ、捨なんて名前があ
るか、人間は生まれた時から金の蔵だ」という二人のやりとり
が微笑ましい。

●小次郎、忍
金蔵のたっての願いで再び解き放たれた小次郎。
加賀を裏切っているのは頭領の主馬だと慶次に言われても全く
信じない。
慶次と主馬の対決によって、主馬が家康と通じていたことを知
り、自ら主人の主馬を刺してしまう小次郎。「忍にも意地もあ
れば誇りもある」と自刃する場面が凄絶。それを慶次が介錯。
潔いのは慶次やまつだけではない。
小次郎の筋の通し方には何回見ても号泣。

「蝉しぐれ」でもたっぷり泣かせてくれた、野田さんの今回は
小次郎。やっぱりうまいなあと思う。
冷徹さを持ち続けないと自分さえ崩れてしまいそうになるのか、
あえて表情を押し殺し、独特の台詞回しで語り通すことによっ
て、悲しい境遇を強く印象づける。
忍が生き続けていられる理由はただ一つ、「恨みぞ!」。
くうう~! 強烈に突き刺さる言葉だ。

●家康
秀吉謁見の場面で、ネチネチ秀吉にいじられては壇上からころ
がり落ちる家康。
我慢強い三河のおひと、などと利休に言われたり。
その実、闇の世界の人間を巧みに操る黒幕だったりする。
じっと耐え忍びながらチャンスを待つ徳川家康を、胡散臭さを
プンプンさせながら演じるのは新藤さん。

新藤さんを見るのはZIP探偵団以来。
正直いって、あの爽やかクンにこんなタヌキな役ができるとは
思わなかった。ミョウに今回ハマっている♪

●見物人
3回目にしてようやく愛之助さんの弟子、愛一郎くんを発見!
おそらく間違いないと思うんだけど。
深草重太夫との果たし合いのとき、見物人の最前列にいる。
男性とは意外だったけれど、なかなか似合ってる。
重要な台詞もひとことある。
舞台下手を見て指差し「見ろっ、慶次様だ!」

●郭の慶次の会話
おかめの面をつけた遊女が二人。慶次に呼んでもらって喜んで
いる。「おまえ、面を取れ」「いやあ、これ素顔どす~」等の
やりとりがあった後、すわって遊女と会話する慶次。
最前列でこっそり聞き耳を立てた。
最初のひとことは「ぶっさいくだなあ、お前。ぶっさい~!」
だった♪ ストレートすぎるやろっ!(爆)
ちなみに、この遊女役は「赤い城 黒い砂」にも出演されてい
この方ですね。


ありぃ~。まだ慶次と兼続、慶次とまつの話が残ってる。
もっともハートストリングスをかき鳴らすあの場面も!

続きは・・・楽のあとか、先か~。


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4 コメント

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とみたさま♪ (ムンパリ)
2010-09-22 23:37:41
ついについに千穐楽になっちゃいました。
諸事情がゆるすならずっと通い続けたかったです~♪
明日はしっかり見届けてきますね。

> あの2人の馬は、歌舞伎座で見た孫太郎という馬
赤い陣羽織で花道の水たまりをヒョイと飛び越えた
あの孫太郎!ですか?
すっごい愛嬌があって、体もきれてましたよね。
あのお二人による馬だったんですね♪

慶次の肩のキツネさん、はいはい、見ました。
カワイイといえばいいのかどうか・・・。
舞台の一員としてちゃんと存在感ありますよね♪
返信する
とみさま♪ (ムンパリ)
2010-09-22 23:36:37
私の感想はダラダラですが、舞台はテキパキ!
メリハリがあって変化に富んでますから。
でも、気持ちだけは通じてうれしいです♪
いえいえ、千穐楽だけでも参加できてよかったと
感じていただけると思います。
では、明日、劇場で!(笑)
返信する
明日の昼の部が千秋楽なんですよね (とみた)
2010-09-22 12:39:42
ムンパリさん、こんにちは。あっという間に千秋楽ですね。

暗転なんか、たった一度の観劇では全く記憶に残らないくらいスピーディな舞台でした。
そうそう、松風は、顔あんまり長くないんですよね。乗る人の顔に合わせたのか、馬としては丸顔なのが余計可愛かったです。
あの2人の馬は、歌舞伎座で見た孫太郎という馬もそうだったと思うんです。錦之助さん、孝太郎さんの夫婦が飼っていた農耕馬で、なかなか存在感がありました。

千秋楽には、ぜひ慶次の肩のキツネさんも見てやってください。
返信する
新作舞台を作り上げるのは凄いことなんですね (とみ(風知草))
2010-09-22 12:37:42
>ムンパリさま
すんません。全部は読めてませんが期待十分とわかりました。見るぞー。
楽の一度きりになりますので後悔するでしょうね、きっと。
返信する

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