星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

「花の武将 前田慶次」備忘録(1)

2010-09-20 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)
強くなければカブけない。
優しくなければカブいている資格はない。
ナンテネ。
フィリップ・マーロウかいっ!

この公演を知るまでは「前田慶次って誰?」状態だったくせに、
原作を読んだ途端、舞台の慶次よりも先に『一夢庵風流記』の
慶次郎に惚れてしまったワタクシ。
ごめんなさいーーーっ!
開幕3日目の観劇ではまだ原作のイメージがぬぐいきれなくて。
で、2週間ぶりの2回目。この観劇でフッキレタ♪
戦闘モードの武将・慶次はますます切れ味よく、一方、戦いか
ら離れている慶次はとても感情表現が豊か。

大きな目で相手を射るように見る鋭い視線も、他の人が真似で
きない目だけの見得も、武将としての慶次を強く印象づけるも
ので、今までの愛之助さんのイメージを塗り替えたのはたしか。
でも、本当の慶次の魅力の元は、むしろ戦っていない時の言動、
振舞いからきているんだと思うから。
なので、愛を知り、人の情けを知り、潔さを旨とし、惚れ抜く
ことのできる友を得て、人としての魅力がぐっと増した慶次に
舞台の上でようやく逢えた気がして、うれしかった♪

以下、18日昼・夜の印象に残った箇所をメモ。
内容を整理しているとどんどん忘れてしまうので、とにかく思
いつくままにダラダラと。ネタバレで全開です。



●庄司又左衛門
スッポンからマイクを持って登場するのが又左衛門。
一瞬、何が始まるんだろうと思い見ていると、どこかの呼び込
み風に解説が始まる。舞台に目をやれば、戦の真っ最中。
そこへ中央のセリから登場する慶次!
戦乱の世に生きた前田慶次を語るのに、マイク片手に音楽付き
で実況中継しちゃう演出が楽しい。

いつもニコニコ、田山さん、すごくいい味。
劇団新感線の『朧の森に棲む鬼』ではオオキミの役が印象深かっ
たけれど、場をなごませる座頭の役もノリノリで魅力満開。
カーテンコ-ルでは鬘の髪の毛を持ち上げて見せてくれるのが、
海原はるか師匠を思い出させてえらくウケている。

●吉原と伽耶姫と阿国歌舞伎
この3つを結びつけたのが、脚本の勝因だと思う。
今回の舞台では、のちに吉原に色里を築く又左衛門の若き日の
エピソードが入っている。旅芸人一座でもうけたお金で色里を
作ったという話。
これが前田慶次の原作者、隆慶一郎氏の著書『吉原御免状』に
つながっていくのだけれど、吉原を独立国家として表現してい
る又左衛門の台詞もそれとリンクしている点がうれしい♪
また、原作では全く別の話だった伽耶姫を又左衛門の娘にして、
阿国歌舞伎のルーツがカブキ者の前田慶次だったという展開が
妙に説得力があって、楽しい。
できれば、又左衛門の人形振りの踊りが見たかった。

●慶次の衣装と傾奇者のこころ
いったい何回着替えるんだろう?引っ込んでから次に登場する
たびに新しい衣装になっている。
鳥や花のモチーフ、無地などがほとんどだったと思うが、気に
なったのがやっぱり髑髏。

けっきょく髑髏模様の衣装は3回ぐらいしか着ないことが判明。
秀吉に謁見する場面。
傾奇者について語る場面。
あともう1つは戦の場面だったと思う。

いずれも死を覚悟した場面ばかり。特に、ハレの場である秀吉
謁見の場面で髑髏の衣装を身につけている慶次に驚く。

四井主馬との対決前夜。<青字箇所、千穐楽後に補足>
傾奇者としての慶次の死生観が出ている台詞がすごくいい。
うろ覚えだけれど、こんな感じ。
「おぬし、どうやって戦うつもりじゃ」と道及が尋ねると。
「前田慶次は傾き通す! 勝算もない。得もない。だがやらねば
ならん。それがかぶくということじゃ」

「死ぬ覚悟ならとうにできている。傾奇者のこのハデな装束って
いうのはな、すなわち、死に装束よ」
くううう~っ!!! ゾクゾクゾク~ッ!!!
(見終わってすぐにメモとったもんねー。)
「所詮、畳の上では死なれぬ。ならば、たとえ泥の中に倒れ込ん
でも、花のごとく絢爛と咲く屍となってみせる!」とも。
(↑足を前後に開き、両手を大きく広げ上体を低くして倒れ込む
ポーズ付き)

花の慶次ってそういうことだっのか。
華麗なのは生き方じゃなく、死に方のことだったのか。
は~、この場面の台詞。楽でもう1回しっかり胸に刻み込もう。

慶次がこの台詞を言い終わる少し前から、腰を落として後ろに控
えていた道及が、肘を曲げた片腕に顔を埋めている。涙をぬぐっ
ていたのかもしれない。暗くて見えないのが残念だった。


●秀吉に謁見する場面
ここが花道近くで見られなかったのが残念。出と引っ込みの両方
とも見応えあって、それが2回もあるオイシイ場面だ。
登場してから帰るまで、秀吉が利休にイチイチ解説を求めながら
判断をしているのもヘンな謁見だ。

スタスタちょっと乱暴気味に花道をやってくる慶次。
死を覚悟の髑髏紋の着物に、虎柄の裃と袴。盆栽みたいと称され
る髷は横向きに立っている。
花道七三で座礼をするのだが、まず首をクイッと思いっきり右に
向ける。で、そのままおじぎ。
3階右列からオペラグラスで覗いていた時、顔がいきなりこっちを
向いたのでビックリした。(聞くところによれば、おじぎをする
と1階席花道右側にすわっている人と目線が合うらしい。)
首が疲れる、と秀吉に訴える慶次(笑)。どこまでふてぶてしい。

前に出るなり、算盤ボードに飛び乗る。
(先日のラジオ番組の愛之助さんの解説によると、これは演出の
岡村さんのリクエスト。慶次は傾奇者だから、武士たちがはじい
ている算盤をバンと倒してスケボーのように走ってほしい、と言
われたそうな。やるほうは大変なんですよー!と愛之助さん。)
デッカイ算盤にひょいと乗って横にサーッと進み、ひらりっと、こ
ともなげに舞台に降り立つ慶次。す、すごっ。
この身体能力の高さはやっぱり歌舞伎役者!さすがは愛之助さん♪
拍手する時間はないけれど、カッコイイ!と心の中で叫んでます。

※慶次の算盤ボードテク♪<千穐楽後に追記>
秀吉が自分のために集まってくれる軍勢の数を胸算用。その際に
2人の家臣が軍勢の数を大きな算盤に入れており、その後伏せて置
いてあった。そこへ慶次がやってきて前に進み出る時に算盤を拝借。
最初は左足だけ乗って、右足で2回蹴って助走をつけ上手方向へ。
両足が乗った時に、上手にいた誰かが止めて逆方向に押し返す。
そのまま下手に滑って来てプチジャンプで飛び降りる!
着物着たまま、舞台の上ですごいバランス感覚。ほんの数秒だけど
涼しい顔で飄々とやってのける慶次殿にホレボレ~♪


いよいよ、自分が傾奇者であることを証明して見せる場面。
何度見ても見とれてしまう。ウットリ~♪
唄いながら舞うのは「築城せよ!」でも嬉しかったけれど、これ
は毎回ナマよ~♪
演目は狂言の「靭猿(うつぼざる)」。
袴の後ろの丸い大きな赤はお猿のお尻という、衣装の凝りよう。
「一の幣立て二の幣立て 三に黒駒 信濃取れ」とうたうべきを
「三の関白、猿踊り。キキキッ!」で猿になって飛び回る。
よく通る声に美しい舞姿。手首を曲げ、猿になって踊る時は胸が
すく思い。その猿さえ身のこなしの軽くてなんて洒落ていること。
まさに歌舞伎役者の面目躍如。
(※こちらのサイトを参照させていただきました。どうもあり
がとうございました。私自身、原典は未読です。)


そして、秀吉を道連れにするかのような動きを見せ、鞘から抜いた
刀の先は・・・・・・なんとflower♪
あっけにとられた秀吉が、ついに笑ってしまうという場面。
命賭けの慶次にアッパレと「傾奇御免状」を与えることに。
ほっとして帰ってゆく慶次の心中は、安堵の思いと、
秀吉への敬意で清々しさに満ちていたはず。

再びお目通りを願い出た慶次が花道から再登場。
あ~、かぶいている姿もいいけれど、こっちの姿もたまりません♪
高くまっすぐ上に立てた髷に、若草色の衣装がまぶしくて。
やっぱり男前やわぁ~♪ 
こんどは正しい所作での座礼。見とれているうちに引っ込み~。

・・・ヒャ~、長くなったので、続きはまた。
(この調子で書いて大丈夫か・・・?)


●このブログ内の関連記事(観劇メモ一覧)
「花の武将 前田慶次」備忘録(4)
「花の武将 前田慶次」備忘録(3)
「花の武将 前田慶次」千穐楽カーテンコール
「花の武将 前田慶次」備忘録(2)
「花の武将 前田慶次」備忘録(1)
「花の武将 前田慶次」2・3回目観劇
前田慶次の髑髏
「花の武将 前田慶次」1回目観劇


●このブログ内の「前田慶次」関連記事(主要記事をピックアップ)
9月前田慶次上演中の「気まぐれ日記」より
ラジオ関西「三上公也の情報アサイチ!」より
録音成功♪前田慶次@おはようパーソナリティ
産経新聞朝刊に愛之助さん@前田慶次
本日は掲載なし&読売夕刊&永楽館演目発表!(訂正追記版)~
瓦版で前田慶次の宣伝がはじまっていた!(追記版)
『花の武将 前田慶次』制作発表のコメント
七月大歌舞伎、の前にちょこっと前田慶次。
前田慶次ポスター@松竹座前
男も惚れるぜ、女も惚れちゃう、慶次さま!
TVで前田慶次♪

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「花の武将 前田慶次」2・... | トップ | 「花の武将 前田慶次」備忘... »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
痛快そうですね (とみ(風知草))
2010-09-20 16:31:14
>ムンパリさま
吉原御免状の前のお話なんですね。昨年のその男と反逆児以外、痛快娯楽時代劇はあまり存じませんが、隆慶一郎氏の原作を劇画化したものの舞台化なら、おもしろくないわけなさそうです。
決めた!見ます!
南座はもう御覧ですかぁ。そちらも沸いてます。
返信する
とみさま♪ (ムンパリ)
2010-09-20 22:30:22
> 決めた!見ます!
きゃああ~、すってき~♪
その潔さ、女将軍と言われたまつ様みたいですよ。
痛快なこと、このうえないです。
実在の人物でありながら、なぜ今まで映画やTVドラマ
になっていないのか不思議なくらいです。
新感線のテイストが好きな人なら間違いなく楽しめます。
私もあと23日の千穐楽にまいります。
ぜひぜひ、とみさまも一度いらっしゃいまし♪

南座は夜の部だけですが、拝見しました。
上方の役者さんはいまここに大集合ですからね。
四の切と最後の蔵王堂が特に見応えがありました。
海老蔵さんにはやっぱり荒事が似合いますね。
我當さんの天晴な立ち姿、はりのあるお声には
胸打つものがありました。
返信する
死生観 (puspitasari)
2010-09-20 23:39:34
<傾奇者としての慶次の死生観

そうなんですよ。
私もこの思いに最も心打たれました。

感動しすぎて(?)
言葉の具体的な記憶がほとんど
飛んでいってしまいました。
ムンパリさんのおかげで
「そうそうそんな感じだった♪」
と感動を反芻(?)することができました。
ありがとうございました。

第2弾も楽しみにしておりますよ
返信する
甦りました (ぶーぶ)
2010-09-21 12:19:16
ムンパリさん
いつも楽しく拝見しています
そして、いつも詳細かつ楽しい観劇メモ
感心するばかりです
私は4日に観たっきりなので、殆ど忘れていて・・・こちらをみて「あ~あそうだった!」って思い出すこと多数
情けない・・・
今度は楽に行きます。しかもかぶりつき
結局「蝉しぐれ」と同じかもう一回ぐらい多く観たかったのですが、叶わなかったので、次回はもっともっと真剣に?観たいと思います
返信する
ありがとうございます! (sasa)
2010-09-21 21:02:57
いつも愛之助さんのステキな情報ありがとうございます!
体調は回復されましたか?
さて、やっと明日あさってで、慶次様遠征です!
ブログ拝見しながら、すでに興奮状態です☆(笑)

それから、たぶんご存知かとも思ったのですが、今日ぴあのメールで以下の愛之助さん情報が入りましたので、URL貼ってみました。(ご迷惑だったらごめんなさい。)
http://ticket.pia.jp/pia/event.do?eventCd=1044813



返信する
puspitasariさま♪ (ムンパリ)
2010-09-22 01:38:47
あそこの台詞はもちろん最初からあったんだけど、
2週間ぶりに見て、愛之助さんはもうすっかり
自分のものにされたんだな、と確信しました。
当たり前ですよね。もう楽前ですもん!
乗り移った?(笑)

覚えることさえできれば、慶次語録を書きたいぐらい(笑)。
ブルッ、ゾクッとくる台詞、散りばめられていますね。
どうやらネタバレ3まで突入しちゃいいます。
返信する
ぶーぶさま♪ (ムンパリ)
2010-09-22 01:39:43
私も一度観たきりの時はかなり忘れてました。
2回、3回見ると、少しはマシですね。
秀吉とのあの対決場面は、ナマで見られて本当に
よかったと思います。
ファントとして語り継ぎたいシーンですよね。

かぶりつきはかなりのものが見えますよ。
いろんなものを見つけて楽しんでくださいね♪
返信する
sasaさま♪ (ムンパリ)
2010-09-22 01:43:48
ようこそ。コメントをいただきありがとうございます。
体調はかなり回復しましたので、もう大丈夫です。
お気遣いいただきうれしいです♪
2日連続ですか!
慶次殿のカブキパワーに存分に浸ってくださいまし。

トーク&ピアノショーのこと、どうもありがとうございます。
公式サイトで発表されないので、まだごぞんじじゃない方も
おられると思いますから、このまま置かせていただきますね。
もしかして参加されるようでしたら、ぜひそのレポを。
(ちゃっかり!)
金沢の朗読会 → トーク&ピアノショー
ぜんぜん違いますね♪(笑)

他の情報もたまってますので、まとめてアップしたいと
思っているのですが・・・。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

観劇メモ(演劇・ダンス系)」カテゴリの最新記事