星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

偶然の音楽  観劇メモ

2005-11-11 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)






公演名  偶然の音楽
劇場  世田谷パブリックシアター
観劇日  2005年11月9日(水) 19:00開演
座席  P列


○観劇を決めた理由
・好きな作家の作品だから(ポール・オースター)
○販売グッズ
 公演パンフレット1000円(B5サイズ 縦25.7cm×横18.2cm)、
 公演ポスター1000円、枚数限定公演Tシャツ2000円。
 ポール・オースターの原作文庫本「偶然の音楽」と「ムーンパレス」。
 小栗旬さんの本「同級生。」1680円。
 他に関連雑誌として「レプリークBIS」と「男優倶楽部」。

あらすじ
妻に去られたナッシュに、突然、行方知れずだった父親から遺産が転がり込んだ。その遺産で新車の赤いサーブを買うと、あとはすべてを捨てて目的のない放浪の旅に出た彼は、クラシック音楽を聴きながら、まる一年アメリカ全土を走り回り、“十三ヵ月目に入って三日目”に、謎の若者ポッツィと出会った。“望みのないものにしか興味の持てない”男ナッシュは、この博打の天才ポッツィに出会って、自分の旅を終わらせようとする。宝くじで一躍大富豪となった二人の男を相手に、ポッツィと共にポーカーで一山当てようと目論んだのだ。しかし、そこにはただ毎日石を運ぶだけの生活が待っていた・・・。
公式サイトより引用)

以下全部、激しくネタバレです!! ご注意。


面白い、でもなく。楽しい、でもなく。悲しい、でもない。
ただ純粋に熱いものが観劇後、久しぶりにこみあげた。
事前に原作を読み、舞台ではつまらなかったらどうしよう、と思ってた私の不安を裏切り、むしろ舞台でしか味わえない贅沢な感覚、幸せを一人かみしめていた。今回、公演時期に東京出張が入り、観劇できた偶然に感謝。

まずは原作者ファンのために

何より原作に流れているトーン、世界観がぐぐぐっと伝わってくるから、ポール・オースターのファンならきっとメロメロになると思う。私は観始めて1分で陥落してしまった。(なので今回は絶讃モード・・・。)
公演パンフレットの中に「偶然の音楽」の翻訳家である柴田元幸さんと、演出の白井晃さんの対談がある。それを読んでいると<作家→作家の作品を好きな翻訳家→翻訳を通じて作家を好きになった演出家>というとても幸せな流れを感じる。私が熱くなったのはその幸せ連鎖ビームを浴び続けたせいに違いない♪
もしも願いが叶うならば「ムーンパレス」を再演してくださーい。

舞台装置や演出など

キーワードである「壁」につながるものとして、床にはフェイクの大きな石が規則正しく敷き詰められている。場面によって、床に形状の違うくぼみが生まれ、掘った穴になったり、ビリヤード台のポケットになったりする。
床の上には椅子とバッグ、ときおりジオラマが登場するぐらいのシンプルさ。全体に暗めの空間に照明がピンスポット的に多用されるのも印象的。

さらに、演出についての私の勝手な感想。
私が最も感心したのは、背景としての人物の動きだった。
車で旅をする主人公は座席にすわったまま動かないのだが、その他の登場人物は台詞を言いながら縦横に忙しく動き続ける。客席から観ていると、過去の回想シーンが車窓の風景のようにナッシュの心の風景として次々と移り去ってゆくように見える。
ポール・オースターの作品を読んでいる時、主人公が自分の心をどんどん掘っていくような感覚とか、独白調の語りの文章に私は惹かれるのだけれど、そんな心の中がビジュアル化されたような演出に驚いてしまった。
それに人物の動きがとてもきれい!
登場人物がそのまま小道具になる演出もある。例えばトランプのカードとか、ビリヤード。特にビリヤードの球が最後に一箇所に集まるところは、これからの運命が決した瞬間のようでゾクッとする美しさだった。


おもなキャストについて

仲村トオルさん
一見、普通っぽい感じなのがナッシュのキャラに近いかも。
計算してるのかどうかわからないが、台詞の間が絶妙な時がある。原作だけでは気づかなかったのに、この人の口に乗せると可笑しさが生まれ、笑ってしまう。で、気になるのが最後のあの表情。原作の通りといえばそうともいえるが、仲村ナッシュのあのどっちつかずの顔が私を惑わせる(笑)。

小栗旬さん
本当にポッツィに見えた。子供っぽさを残した天才ギャンブラーの繊細な心の変化がきちんと伝わった。「あんただよ。あんたがリズムを壊したんだ」といういかにも勝負師らしい台詞をはく時のイライラした表情もいい。
それから細かいことだけど、椅子のすわり方(からみ方)のバリエーションとか、ギャンブラーらしい手指の動きとか、煙草の吸い方とか、とにかく小刻みに動いていて、見ていて飽きない。特にティファニーが帰ったあとの床に横たわる背中はあまりに美しすぎた~(ため息)。

三上市朗さん
所属のM.O.Pや阿佐ヶ谷スパイダースの舞台などで観ているが、本格的な翻訳ものでは私は初めて。いけてたよー、外国人。主役ふたりに一定のスタンスで関わる監視人の、引き寄せては突き放す波のような演技がうまかった。

大森博史さんと小宮孝泰さん
「エドモンド」の黒人役がちょっと怖かった大森さん。今回は太っちょの大金持ちフラワー役。アンバランスなおかしみを持った人物で、大森さんが演じるとやはりどこか怖い。ハナから外国人っぽい小宮さん。いるだけでストーンになっているような自然な存在だった。

好きなシーンを一つ

ポッツィが金網の外へ出るシーン。
外に出るためにポッツィが煙草をいったんナッシュに預け、外に出て再びナッシュから受け取るところ。それも二人を隔てる金網の穴から、だ。何気ないんだけど、二人が別れる前のキュンとするいいシーンだと思う。
仲村トオルさんと小栗旬さん。舞台の二人はここ、すっごくカッコイイ!もちろん、原作でも私はこのシーンが気に入っている。

偶然の音楽について

タイトルにある<偶然の音楽>ってどれ? 
舞台にヒントがあるのであえて書かないでおこうと思う。これについては翻訳者の柴田さんが書いた文庫本「偶然の音楽」のあとがきにつ・づ・く(笑)。



「偶然の音楽」の原作を読みました(このブログ内の関連記事)
「偶然の音楽」アフタートーク(11/8)リンク集 (このブログ内の関連記事)
「偶然の音楽」の賛美歌(このブログ内の関連記事)


コメント (4)
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