星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

「偶然の音楽」の賛美歌

2005-11-12 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)

「偶然の音楽」をまだ引きずっています。観劇後時間がたって、原作には
なかった部分のことがとても気になり出しました。

ここからは、かなりネタバレです。

ポーカーの借金を返すために、毎日石を積んで壁を作る作業を続けること
になったナッシュとポッツィ。いよいよ期限が近づき先が見えてきた時、
娼婦のティファニーを呼んで三人でパーティーを開く、そのシーン。
ポッツィとティファニーが二人でじゃれ合う最中に、突然、何の脈絡もなく
ナッシュが賛美歌を歌い始め、あとの二人が驚くわけですが。
原作では詞の一部が書かれてあるだけだし、本なので当然、歌も聴こえては
こない。なので、歌は舞台だけの特典。あっ、これがあの歌!という感じ。

歌ったあと二人を残し、一人自分のベッドに向かうナッシュ。そこに女性が
登場。つまり、ナッシュの頭に浮かんだ女性、過去に愛したことのあるフィ
オーナなのですが、原作では単に彼女のことを思い出すだけ。
歌を歌ったりしないんですよね。でも、舞台のフィオーナは歌う。
(ここ、哀しいような、寂しいような、胸が熱くなる場面でした。)
なぜここでフィオーナが賛美歌を歌ったのか? 
ナッシュさえ久しぶりに歌ったこの「エルサレム」を。
演出上、ここで歌をリピートすることでより深く印象づけるとか、(原作通り)
パーフェクトに歌えなかったナッシュの代わりにきちんと曲を聴かせる必要
があったとか、そういう理由があるのかもしれません。
で、客席から観た印象は、ナッシュの心にいま一番近いもの、最も響き合う
ものとしてこの賛美歌とフィオーナが吸い寄せられるように現れ、心の中で
一体化したのかなあ、ということでした。

このときのナッシュはどんな思いだったのか?
ちなみに、舞台の歌詞は覚えてませんが、原作の詞の断片はこれ。
「燃ゆる黄金」「心の闘い」「暗い悪魔の工場」
もしかしたら自分を鼓舞してくれるものと、母親のように優しく包んでくれる
ものとの両方が欲しかったのかもしれないなあ。
自分が苦境に立たされたり、存在する意味さえわからなくなった時、思わず
口をついて出る歌は何だろう? 気持ちを盛り上げる歌か、あるいは癒して
くれる曲か? ただただ祈りに近い歌なのか? 
などと、あのシーンをときどき反芻しながら今もぼんやり考えています。

今回の舞台で実際に聴くことができた賛美歌「エルサレム」。
なんと映画「炎のランナー」で、ハロルドの追悼ミサの場面で歌われていた
ということが、検索していてわかりました。
映画の原題"Chariots of Fire"が、賛美歌「エルサレム」の一節からとった
ものだとか。ウィリアム・ブレイクの詞になる「エルサレム」は、英国国教会
の賛美歌でもあるのですね。


「偶然の音楽」の原作を読みました(このブログ内の関連記事)
偶然の音楽 □観劇メモ(このブログ内の関連記事)
「偶然の音楽」アフタートーク(11/8)リンク集(このブログ内の関連記事)


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