薔薇という不自然

薔薇の棘ってのは
攻撃の為なのか
防御の為なのか


攻撃であれ　防御であれ
誰に対して　何に対して　なのだろうか


棘に　戦意を感じることこそが
そもそも
人間の拙さ　愚かさなのかも知れない


自然は　無駄なことは　しない


無駄という概念こそ
人間だけが　持っているのだろう
本当の無駄とは
無駄を定義しようとすることかも知れない


薔薇に　棘があっても　なくても
どちらにしても　僕は　薔薇が嫌いだ
薔薇を愛でる人も　嫌いなことが多い


薔薇を愛でている自分を　愛でている
薔薇を愛でている自分が　愛でられると信じている
そんな人に　よく会うからかも知れない


僕は　生きた植物を　部屋に置かない
以前　出張中に　レモングラスを枯らしてしまって
それ以来　花でも　草でも　植物は置かない


でも　工房には　僕よりも　はるかに年配な樹木が
製材されて　戯れてくれる
死んだ植物は　楽器になって　来世を生きてくれる


自然保護で　保護されている自然は
果たして　自然なのだろうか


僕は　薔薇の造形より
樹木の中の　音の方が好きだ


僕は　薔薇の香りより
樹木の　匂いの方が好きだ


僕は　薔薇という漢字より
楓という漢字の方が　好きだ