ももママの心のblog

猫が大好き。有料老人ホームで生活相談員をしています。映画が好きだけど、なかなか見られません。

ダウト~あるカトリック学校で~

2009-03-11 | 映画 た行な行
主要なキャスト4名と脚本がアカデミー賞にノミネートされました。オスカーこそ逃しましたが、中身の濃い脚本にぐいぐいと引き込まれ、演技合戦のがちんこ対決。火花が散る勢いです。105分とは思えぬ重量感のある一作になりました。見る価値ありのお勧めです。結局真実は明かされないまま、幕を閉じるのですが、こうい煮え切らないエンディングは嫌いじゃないですね。

2009年(公開) ヒューマン・ドラマ、ミステリー
2009年3月10日 bunkamuraル・シネマ
監督・原作戯曲・脚本 ジョン・パトリック・シャンリー(月の輝く夜に)
出演 メリル・ストリープ(マンマ・ミーア、大いなる陰謀、プラダを着た悪魔、めぐりあう時間たち、ソフィーの選択ほか超多数)、フィリップ・シーモア・ホフマン(M:I:Ⅲ、コールド・マウンテン、あの頃ペニー・レインと、リプリー)、エイミー・アダムス(魔法にかけられて)、ヴィオラ・デイヴィス
(出演作品などは私が観たものに限る)

1964年アメリカ。前年にケネディ大統領が暗殺され、公民権運動が盛んに行われ世の中が変わろうとしている時期だった。ニューヨーク、ブロンクスにあるカトリック学校の厳格な校長であるシスター・アロイシアス(メリル・ストリープ)は生徒たちに恐れられ、世の中の変化を必ずしも歓迎していなかった。それに対して、生徒たちに人気があり、親しみやすいフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマンIは進歩的で教会は開かれなければならないと考えていた。新任の教師・シスター・ジェイムス(エイミー・アダムス)はある疑惑を抱いてシスター・アロイシアスに相談した。フリン神父が学校で唯一の黒人男子生徒であるドナルドと、不適切な関係にあるのではないかというものであった。問い詰めるシスター・アロイシアスに神父は否定するのだが・・・。

元々が舞台だっただけあり、ほとんどが学校内の出来事です。出演者はほとんどシスターと神父、生徒たち。色彩感のなさが逆に印象に残ります。季節もクリスマスを準備する、枯葉の舞う秋。シスターですからノーメイク。メリル演じるシスターの化粧っ気のない白いこわばった顔が、すごい存在感なのです。最初は「マンマ・ミーア!」の印象が強く、「いつ歌い出すのか?」と思いましたが、あっという間にシスター役に引き込まれたのです。それはメリルが改めて大女優であり、変幻自在で引き出しをたくさんもっている人なのだと思い知りました。

フィリップ・シーモア・ホフマンにも言えます。悪役・あくの強い役の多い彼です。疑惑をかけられると「こいつ、きっと何かやってる」と思ってしまうのですが、これまた、彼の演技で私のその先入観を吹っ飛ばしてくれちゃいます。

エイミー・アダムスがこんな二人に圧倒されるかと思うと、そうはいかないのが、助演女優賞にノミネートされた所以ですね。これまた、最初は「いつ、お姫様が出家したのだ?」という私の「ダウト」を払拭してくれました。

ヴィオラ・デイヴィスは初めて見た女優さんですが、限られたシーンしか出演していないのに、抜群の存在感です。彼女が画面を引き締めてくれたとさえ言えるでしょう。

神父の説教場面が2回あるのですが、その説教もストーリーに絡み、どこも見落とすことができません。脚本のしかけもあって、「こういうことだったのか」と分かるあたりが、またうならせられます。疑惑に取り付かれ、大罪を犯したシスター・アロイシアスこそ、迷える人間の本質なのかと愕然とさせられてしまうのです。

1964年という時代背景がとても上手いらしいです。アメリカ大統領としては珍しいカソリック教徒だったケネディが暗殺され、人々は意気消沈していました。しかし、その絶望感が人々を結びつける絆だと神父は説きます。また、第二バチカン公会議が数年にわたって行われている最中であり、カソリック教会の中にも改革の嵐が吹き荒れていたことでしょう。実際、進歩派と保守派の対立があったかもしれないですね。

生徒がボールペンを使うことに反対しているシスター・アロイシアス。今では考えられないことですが、当時はこういう感覚だったのでしょう。一方、フリン神父がメモを取るのはボールペンなのです。それを見て顔をしかめるところ・・・。紅茶に砂糖を入れないアロアイシスに対して、3つも入れる神父。食事も質素でおしゃべりもしないシスターたちに対して、神父たちは血も滴るステーキにちょっと性質の悪いジョークまで言いながら、にぎやかに食べています。アロアイシスが礼拝中におしゃべりをしている生徒を、後ろからバシッと頭をたたくシーンも人となりを端的に表していて、うまい表現だったと思います。


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2 コメント

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こんばんは♪ (あん)
2009-03-12 22:23:16
>「いつ歌い出すのか?」
>「こいつ、きっと何かやってる」
>「いつ、お姫様が出家したのだ?」
あはは、ホントに~!エイミーは若く見えますね。
ホフマンは、疑惑をかけられてはいるけど、いい感じの役でしたね。
彼の説教は、聞かせてくれましたよ。
メリルは、ホントにホントに上手いですね!

あの黒人少年の母の告白、驚きました。
ここで、脚本にいたく感心してしまいましたよ!
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インパクト (ももママ)
2009-03-13 01:00:37
>あんさん
メリルの演技の幅には、尊敬です。それ以上に驚きでした。ヴィオラ・デイヴィスの演じた母親の役割は大きかったですね。あんな仕掛けがあるとは思わなかったです。インパクトありました。
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