ももママの心のblog

猫が大好き。有料老人ホームで生活相談員をしています。映画が好きだけど、なかなか見られません。

おくりびと

2008-09-10 | 映画 あ行
友人のおかげで試写会に行くことができました。前評判が良いし、テーマが変わっていて興味があったのでお誘いに喜んでいましたが、観て感激。お勧めできます。その後モントリール世界映画祭でグランプリを取ったと知ってますます作品の質の高さに納得です。

2008年 日本 ヒューマンドラマ
2008年9月5日 試写会(有楽町朝日ホール)
監督 滝田洋二郎(阿修羅城の瞳、陰陽師~おんみょうじ)
脚本 小山薫童
出演 本木雅弘(Shall weダンス?シコふんじゃった)、広末涼子(花とアリス、WASABI、鉄道員(ぽっぽや))、山崎努(マルサの女、お葬式ほか多数)、余貴美子(椿山課長の七日間ほか)、吉行和子(佐賀のがいばあちゃん他多数)、笹野高史(母べえ、武士の一分ほか多数)、杉本哲太(嫌われ松子の一生ほか)
(出演作品などは私が観たものに限る)

チェロ奏者小林大悟(本木雅弘)の楽団は突然解散してしまった。自分の才能では新しい楽団を探すのは無理だと思った彼は、チェロをあきらめて故郷の山形へ帰ることにする。妻の美香(広末涼子)も着いてきてくれるという。さっそく職探しをするが、求人広告の「旅のお手伝い」とのことで旅行代理店だと思って訪ねた会社は、「旅立ちのお手伝い」の誤植で、納棺師の募集だった。即効で採用され、社長(山崎努)のアシスタントとして働き始めた大悟だが、妻に本当のことを言えなかった。

モックンは良い意味で年を重ねたなあと、感じる一作でした。この映画の発案者は彼自身とのこと。死を忌み嫌う日本で、こんなテーマの映画を作るのは大変だったと思います。しかし、見事に成功していますね。
モックンはチェロ奏者としても、とても美しいたたずまいを見せてくれました。どの程度本当に弾いていたのでしょうか・・・。かなり様になっていました。チェロの音色は温かく優しく、人間の声にとても近いトーンです。これだけ様になるには、相当な努力があったと思いました。
しかし、チェロ奏者より納棺師としてのたたずまいは、それを超えていました。まるで茶道のお手前のような様式美を、流れるような無駄のない所作として厳粛で崇高なものにまで昇華させているかのようでした。
人の命は人間ではどうにも出来ないものです。神様の領域です。生まれることも、死ぬことも・・・。厳粛で崇高なこの命の営みを、大切に向き合う納棺の時は、亡くなった方を大切にするだけでなく、家族に取ってもかけがえのない時間なのですね。
山形の素朴な自然を背景に、小林大悟の人生も垣間見えてきます。そのあたりのストーリー展開もとても良かったです。反発していた友人や妻も少々ステレオタイプな描かれ方でしたが、役者の技量で補われ、理解を示していく過程も丁寧に描かれたと思います。
悲しい、泣かせる映画かと(苦手なんです、こういうの)少々心配でしたが、笑いも織り交ぜられ、深刻なテーマでありながら「いかにも泣かせよう」というものではないのも、うれしかったです。
キャスティングがとてもすばらしく、納棺師である社長、銭湯のおばちゃん、その息子が特に私のお気に入りでした。ただ上手い役者をそろえたというのではなく、その役にぴったりだったのです。なにより、モックンがここまで上手い役者だとは知らず、「失礼しました」という気持ち。抑えた演技ながら、いろんな微妙な表情を見せてくれました。山崎努がいかにも役を楽しみながら、自由奔放に演じているのをはっしと受け止め、見劣りしない演技をしたのは見事でしたね。特に二人で食事をする場面です。「旨いんだな、困ったことに」と言いながら、本当においしそうにシラコを食べるんです。確かに私たちはいろんな生き物から命をいただいて、それで生きているのです。
死を厳粛に受け止めることは、生きることを大事にすることでもあります。自分自身が生きていること、生かされていることに意義を見出して大事に生きることを見つめなおす映画でもあると思います。

夏のテンプレートを使っていましたが、さすがに秋めいてきたので変更しました。前にも使っていた仔猫です。きゃわいいですね~。


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (えい)
2008-09-10 20:42:35
こんにちは。

たたずまい
お手前
所作

ももママさんのレビューを拝見して、
この映画には、
いまの日本から失われつつある
美しい言葉がピッタリあう映画だと気づきました。

ほんとうに美しい映画でしたね。
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ウマイ演技 (メビウス)
2008-09-10 21:06:34
ももママさんこんばんわ♪ご無沙汰しております。TB有難うございました♪

山崎努のあのシラコの食べ方は卑怯ですよね。すっごい美味しそうに食べてるから、自分も自然と唾が溜まってしまいましたwその後本木雅弘も口に含みながら『うまいっすねぇ・・』とか言いながらとても美味しい演技をするもんですから、殆ど口にした事が無いシラコを食べてみたくなりました(^^;)

納棺師の洗練された様式美に始まり、山形の四季折々の風景、そしてチェロの音色。本作には『死』や『葬儀』と言う暗いイメージを持ち込まれていましたが、それ以上に自分も『美しさ』という要素がふんだんに盛り込まれていた点が好感持てました。
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えいさん (ももママ)
2008-09-11 09:31:18
日本的な美しさ満載の映画が、外国で高く評価されたと考えると、これはとても喜ばしいことですよね。
私的には、モックンにこれから注目かな~と、思っています。
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メビウスさん (ももママ)
2008-09-11 09:34:04
こちらこそ、ご無沙汰していました。
あのシラコの食べ方!好きではないのに、食べたくなっちゃいました。あの美味しそうな演技は、やはりプロの業ですよね。

死と言う扱いにくいテーマを美しく撮った映画ですよね。高感度が高くなります。
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お久しぶりです (rose_chocolat)
2008-09-13 12:00:44
いつぞやコメントさせていただきました。お元気ですか?

困ったことに、いろんなものが美味しく見えた映画でした。「命をいただいている」という感覚は失ってはいけないと思います。だから生きていることの感謝も見えてくるような。そんな1本でした。
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命をいただいている (ももママ)
2008-09-13 14:36:21
TBありがとうございます。

「命をいただいて」いる真摯なテーマが、まじめに扱われていても、笑いもあって肩のこらないものになっていたのが良かったですね。余貴美子さんのことを書き忘れましたが、雰囲気のある女優さんで素晴らしいです。
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こんにちは♪ (ミチ)
2008-09-15 16:58:02
モックンは完璧主義者かな~なんて思いました。
チェロも、音色はプロの方のものでしょうが、かなり頑張って練習したようですし。
納棺師のお仕事はもう見とれるほどの美しさでしたよね。
エンドロールの一連の動きも見入ってしまいました。
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モックンファンに (ももママ)
2008-09-17 08:03:55
なりそうでした。イケメンは変わりないですけど、演技や技術で見せていましたね。良い意味で中年になってきたのも感じがよかったです。
エンドロールも美しく、ず~っと見てしまいました。
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いただきます (たいむ)
2008-09-19 21:56:15
こんにちは。
ご飯をたべる時の「いただきます」とは、「命を頂きます」という意味とのことです。
神様に祈りを捧げるほどの所作ではないけれど、無宗教でもちゃんと感謝意を現すモノは受け継がれて残るものだと思い、感心するところです。

良い映画でしたね。
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感謝の意 (ももママ)
2008-09-19 23:35:23
>たいむさん
「いただきます」はそういう感謝の意だったんですね。命をいただいて生きている。・・・そんな死生観に、笑いをちりばめた良い映画でした。
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