工芸館開館30周年記念展Ⅰ（東京国立近代美術館 工芸館）

工芸館ができてすでに30年の年月が経っているとは思っても見ませんでした。学生時代は美術史専攻で美術展を片っ端から見ていたのですが、その頃に開館したのですね。できてすぐに行った覚えがあるのですが、それが30年も前とは・・・。

30周年記念ということで、今までの企画展の総決算的な感じがある。今まで開催された展覧会の「目玉」が展示されていて面白いともいえるが、総覧的だ。今までの展覧会を多く見た来た人には楽しいかもしれないが、たった一度しか来ていない私には物足りないというか、めまぐるしい感じが残る。とはいえ、作品自体は大変優秀なものだけが並んでいるわけで、今までの展覧会のエッセンスの展示という意味で、超一流中の一流が勢ぞろいしてるともいえるから、お得ともいえるのだろうか？
どこまでが工芸で、どこまでが美術なのかという疑問は私にはいつまで経ってもなぞのままだが、工芸だろうが美術だろうが美を追求し、より完成度の高いものを作ろうとしてきた人々と、それを受け入れてきた社会や時代を追うことが面白い。作品も作家もなじみがある人が少なく自分の教養のなさも実感できたが、名前にこだわらず、ただ美しいものを見て目の保養をできたのはうれしいことだった。
また、近衛司令部だった建物が残された経緯について説明があり、こちらも興味深かった。玉音放送を妨害しようとした一部の将校たちによる事件があったのは、まさにこの建物だった。戦後はこの建物は取り壊されることに決定し、一時は廃墟と化したが、存続のための動きがあり、工芸館として補修・存続することになった。しかし、取り壊されることが前提だったため、首都高速道路が目の前にできてしまい、そのための地盤沈下が認められ、補修に手間取ったようだ。また、関東大震災のときの亀裂も発見されたとのことで、建物そのものにも歴史が刻まれていることも感慨深い。

画像は展示されていた作品の一部の写真。