
僕がタレントとしてテレビに出倒すようになったのは
『ごきげんよう』に呼ばれてした話がきっかけだったと思います。
ある時、日比谷野音で(中略)ライブがあったんですよ。
その頃まだ実家暮らしだったから、バッグに衣装を詰めて
出かけようとしていると母親に呼び止められたんです。
「ケンちゃん待ちなさい! 油揚げ焼いたから 食べてきなさい」
「いやいやお母さん、息子は今からロックバンドのライブで
オーディエンスをフィーバーさせに行くんだよ。
そのロックンローラーの息子に対して、ケンちゃん 油揚げはないだろう!」
「何だか分かんないけど、そんなことより 油揚げ食べてきなさい! 焼いたから」
この のほほんとした どうでもいい話をテレビでしたら無茶苦茶ウケたんですね。
それから本当に沢山の出演依頼が来るようになりました。
――大槻ケンヂ『サブカルで食う』(白夜書房)