「なんば」と言っても、「ミナミ」の地名ではなく、
「鴨なんば」や「カレーなんば」の「なんば」。
標準語的に表記すると「鴨南蛮」、「カレー南蛮」となります。
では、この“南蛮”とは何を指すのか?と言えば、食材としてのネギ。
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「中国料理の影響を受けた精進料理では(中略)とくに匂いの強い、
ニンニク、ノビル、ラッキョウ、ネギ、ニラの『五辛』は、
『葷』として食べることが禁じられていた。
それに対してポルトガル人は、そうしたタブーにとらわれなかった。
そのためにネギを使う料理に『南蛮』の名が冠せられることになった」
宮崎正勝『知っておきたい「食」の日本史』(角川文庫)
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「葷」というのは、「葷酒 山門に入るを許さず」のアレですね。
(……ぼく自身は、「葷」も酒も好むところではありますが)
ちなみに、唐辛子の伝来(1543年)についても、
種子島に渡来したポルトガル人によるため、「南蛮胡椒」なる別名があります。
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本来、胡椒と唐辛子は、香辛料、スパイスとして一括りにされるにせよ、
植物学的にも無関係な存在であったはずが、あの大航海時代に
コロンブス辺りが、アメリカ大陸で唐辛子やピーマン、パプリカなど
ナス科トウガラシ属の植物を 胡椒の一種と誤認したことに始まるらしい。
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ために、英語でも現在、「唐辛子」は「red pepper」、
ピーマンは「sweet pepper」や「green pepper」と呼ばれることで、
胡椒(pepper)が見事に残存している形になります。
九州などでよく使用される「柚子胡椒」の「胡椒」が実際のところ、
「胡椒」ではなく「唐辛子」である事態と相似で、趣深い。
柚子+唐辛子=柚子+(南蛮)胡椒=柚子胡椒――という変化か。