「トーヨー新報」食客日記

豆腐などの大豆(加工品)、こんにゃくを中心に、日本・世界の食文化……その他諸々について、あれやこれやと夢想する日々です。

なんば

2012-02-29 17:00:47 | グルメ

なんば」と言っても、「ミナミ」の地名ではなく、
「鴨なんば」や「カレーなんば」の「なんば」。
標準語的に表記すると「鴨南蛮」、「カレー南蛮」となります。
では、この“南蛮”とは何を指すのか?と言えば、食材としてのネギ
       ☆
「中国料理の影響を受けた精進料理では(中略)とくに匂いの強い、
ニンニク、ノビル、ラッキョウ、ネギ、ニラの『五辛』は、
』として食べることが禁じられていた。
それに対してポルトガル人は、そうしたタブーにとらわれなかった。
そのためにネギを使う料理に『南蛮』の名が冠せられることになった」
宮崎正勝『知っておきたい「食」の日本史』(角川文庫)
       ☆
「葷」というのは、「葷酒 山門に入るを許さず」のアレですね。
(……ぼく自身は、「葷」も酒も好むところではありますが)
ちなみに、唐辛子の伝来(1543年)についても、
種子島に渡来したポルトガル人によるため、「南蛮胡椒」なる別名があります。
       ☆
本来、胡椒と唐辛子は、香辛料、スパイスとして一括りにされるにせよ、
植物学的にも無関係な存在であったはずが、あの大航海時代に
コロンブス辺りが、アメリカ大陸で唐辛子やピーマン、パプリカなど
ナス科トウガラシ属の植物を 胡椒の一種と誤認したことに始まるらしい。
       ☆
ために、英語でも現在、「唐辛子」は「red pepper」、
ピーマンは「sweet pepper」や「green pepper」と呼ばれることで、
胡椒(pepper)が見事に残存している形になります。
九州などでよく使用される「柚子胡椒」の「胡椒」が実際のところ、
「胡椒」ではなく「唐辛子」である事態と相似で、趣深い。
柚子+唐辛子=柚子+(南蛮)胡椒=柚子胡椒――という変化か。

歩くこと

2012-02-29 12:28:57 | 囁き

通勤しながら、考えた。
徒歩の際は、自分で歩くペースなどを決められるけれど、
一旦、電車(や飛行機)などに乗ってしまった以上は、
路線が決まっているし、どんなふうに気持ちが動こうと
到着時間などは、自分でどうこう決められるものではない。
(ハイジャックやら何やら、非合法的な手段もあるにはあるが……)
泰然自若と構えるか、肯定的にも否定的にも「諦める」か。
       ☆
格差社会」という問題の把握の仕方も、それと似ているように思った。
格差があるのは自然だ、当たり前だ――と訳知り顔な人らは流すのだが、
格差が世代間にわたり固定化されてしまうことが、本質的な問題なのだ。
予めレールに乗っていると保証されたつもりになれたり、あるいは、
金輪際そんなレールとは無縁だと絶望し、自暴自棄になる連中には関係ない。
でも、未来の“人間”であっても、まずは無知なる「子供」という形で立ち現れる。
彼らに枷を与えるのか? 彼らの自由を束縛するのか?という話なのだろう。
       ☆
安っぽいヒューマニズムや人道主義を説かれても、醒めるだけだろうし、
単に感傷癖、ぼくの個人的な趣味なのかもしれないけれど、
“現実”とやらを見て、知って、なおかつ、それらから目を背けて、
堕落以前の)無知に引き籠もることが出来るのかねえ、と。
政治、経済……雑多な情報がひっきりなしに押し寄せてくる
ように見えるけど、本当に知りたかったことには滅多に行き当たらない。
自分の足で、こちらから出向いて行くしかないのだろう。

見ること

2012-02-29 09:06:36 | 文学的な

なにごとも経験するより前に、そのことについて
書かれたものを見る前に、目で見るべきなのよ。

(高橋源一郎『恋する原発』)
       ☆
「べき」の当為をどう捉えるかで、深みは変わってくる。
何もかもを見尽くすことが、人間に許されているだろうか? 
また見ることと知ることの差や、ずれは常に意識されるだろう。

紙上展

2012-02-28 17:10:13 | 業務連絡

2012 豆腐フェア」(東京展)もいよいよ押し迫り、
現在は「紙上展示会」の掲載される「3月1日号」を鋭意制作中。
面数も通常より倍増ですが、明日正午過ぎまでに全面校了予定。
社長も兄貴も岡山へ出ているので、無事に留守を預からなくては。

白い雲

2012-02-28 08:54:30 | 文学的な

学生の頃京都に住んでいた。(中略)
近くの人との交流というと豆腐だけだった。
店で買う豆腐がなまぐさいといって
ずっと自分で豆腐を作っている婆さんが銀閣寺のそばにいて、
飲み屋で会った人の紹介で週に一度でかけていき、
婆さんからじかに豆腐を買うということを二年ばかりつづけた。
時には庭の伸びた夏草をかがみこんで抜いてやったり、
粗大ゴミを運んでやったりしたことはあるが
殆ど話らしい話はせず、ただ豆腐だけは白い雲を食べているようで
口の中でスワァーッと消えるのだ

婆さんひとりで他の人が立ち入らず家の人や親戚の姿も一度も見なかった。
豆腐をつくりつづけて千年くらい年をとったというような人だった。

(いしいしんじ「住んでいた町」)
       ☆
京の都にひっそりと根付く、まさに地域の豆腐。
「白い雲を食べているようで口の中でスワァーッと消える」
豆腐が最高。京都に限らず、日本各地の思わぬ場所に、
豆腐作りの名人が住まっていたら、よろしいなあ。

内臓

2012-02-28 08:28:11 | 囁き

どうも先週末から腰が痛む。
背中側で、腰椎などではなさそうだから、
肝臓か腎臓がへたっているかなあと自己診断。

リストラでんこちゃん

2012-02-27 12:02:24 | 囁き

「東京電力」のマスコット・キャラ、
分電でんこちゃんがリストラされてしまうようだ。
内田春菊の胸中はどうかしら?)
世知辛い世の中だねえ。
確か、でんこちゃんは人妻だったはず。
当面、旦那(=分電盤太)の稼ぎに頼るしかないだろうけど、
東電の技術職の多くが中国などへ流出していると聞くから、
でんこちゃんもこっそり、大陸へ渡っているのかもしれないなあ。

レジ

2012-02-27 09:31:12 | 日記

梅田のチケット・ショップへ足を運んだ帰り、
某安売りスーパー店に寄り道する。
適当にジャンクな食品を買い求め、混雑するレジに並ぶ。
スキャナーの調子が悪いのか、首を傾げながら
疲れた表情の中年女性がのろのろと精算する。
黄色い買い物かごと薄っぺらなポリ袋を持ち、
レジから離れるけれど、妙に予感が働いて、
レシートをざっと一瞥すると同一商品が2個分請求されていた。
なるべく不機嫌そうな表情に見えないように注意を払い、
レジに戻ったところで、穏やかに間違いを指摘した。
その系列のスーパーで働いているパートの人らを見かけるたびに
胸が痛むと語った心優しい女性のことなどを思い出しながら。

場所

2012-02-27 09:11:31 | 日記

日頃は見えないものが浮かび上がってくる夜の中へ潜り込む。
いつも近辺を通りかかっているはずなのに、
見覚えのない店舗がぼんやりと明かりを洩らしている。
するりと身を滑り入れると、
「ここは貴方のような人が訪れる場所ではない」と警告が聞こえる。
カウンターの前に一人、隣に身を寄せてくるもう一人は
何度も整形を施したように、つるつるとした表皮で
いずれも還暦を迎えていると知らされ、
腹の底にじっとりと粘り付くものを感じる。
横に付いた女は瓶ビールを所望し、念のために確認すると
「一本千円」とのたまう。勝手に呑めばいいさと鷹揚にあしらえば、
「ここは貴方のような人が来る場所ではない」と繰り返す。
ならば、ぼくの行くべき場所とやらは、どこに在るのだろうね。
ぼんやりしている間に、カウンターを挟んで二人の女が口論を始める。
韓国語の諍いが激しくなるうちにも、ぼくのボトルは空きつつある。

前倒し

2012-02-24 12:09:20 | 業務連絡

来月、前田なな画伯がイタリアに出掛けると聞き、
連絡が取りづらくなりそうなので、
四コマ漫画「熱血サラリーマン豆畑耕作」のネームを
前倒しで3本ばかり拵えているところでござるよ。
最近、ご無沙汰しているキャラはいないかなあ?
と、過去の登場回を振り返ってみたりもする。