その昔、大阪の「S新聞社」に勤めていた頃、
昼食時間になると、梅田の駅前第3ビルの向かいに
新御堂筋に面して、「
日本一おいしい親子丼」だとか銘打った
小体な店まで自転車を駆った。狭くて、薄暗い階段を下りた所にある
地下1階のカウンターだけの店舗で、
午前11時から午後2時までの限定オープン。
しかも、材料が切れた強制ら終了という強気の営業にもかかわらず、
それでも毎日、正午前から行列が地上まで湧き上がってきたものだ。
が、ダブル使いの卵から、ジューシーな鶏肉、鶏がらスープのどれもが
真剣に美味しかったのだから、憑かれた人の多かったのも、むべなるかな。

昨日(5月3日)、南山城の方からお呼びがかかっている気がしたから、
JR学研都市線(片町線)に乗り込んで、
JR三山木まで足を運んできた。
JR三山木駅は無人駅。駅周辺に、コンビニやチェーン店風の
飲食店はちらほら目につくが、閑散とした印象は否めない。
連休でなく、学生らが通学する平時ならば、もっとにぎやかなのかな。
古寺にブツを拝みに行こうという目論見なのだから、
そうそう贅沢は言っていられず、車道脇の舗道を登り始めた。
が、
同志社大学キャンパスを右手に眺めやりつつ、
本当に何も無いと索漠感。空腹を覚え始める正午過ぎだった。
☆
目的の寺もなかなか見当たらず、お腹も空いたし……と
若干ネガティブな気分に陥りつつあった時、
気合の入った「
地鶏料理専門店」の看板が! 店の暖簾や建材など諸々、
年季の入った料理屋の風情が、何とも言えず胃袋を刺激する。
迷うことなく「
ちきんはうす佐々木」の暖簾をくぐり、飛び込んだ。
どこに隠れていたのか?と驚くくらい、客が入っていて、混雑している。
手っ取り早く、日替わり定食(1,000円)をオーダー。
☆
チキン・カツもチキン・ステーキも噛み締めるたびに、
地鶏の滋味が口中にあふれてくる。ちゃんとした食材に触れられる多幸感。
ちょっと摘まませてもらった親子丼も甘くて、舌鼓を煽る、あおる。
そして、添えられた汁物が味噌汁でなく、鶏がらスープ。
(口中に含んだ瞬間、味わいは異なれど「日本一おいしい親子丼」を想起)
これですよ、これ! 間違いなく本物の鶏を使っているからこその味わい。
どうやら、この店では養鶏場を営み、自家飼育となる「
普賢寺香珍鶏」を
直接提供しているらしい(レジで精算する場所では生卵も売っていたよ)。
すき焼きや焼き鳥などのお品書きに、泊り込みで呑み喰いしたい……と煩悩に震えた。