1975年東宝制作 NHK BSシネマ2020.6.29
三島由紀夫の青春小説「潮騒」の映画化。 山口百恵・三浦友和コンビ、西河克己監督による「伊豆の踊子」に続く第2作。舞台は、伊勢湾に浮かぶ小さな島、歌島(モデルは三重県鳥羽市神島)。
製作:堀威夫、笹井英男
監督:西河克己
原作:三島由紀夫
脚本:須崎勝弥
撮影:萩原憲治
音楽:穂口雄右 主題歌:山口百恵「少年の海」
時間 1時間34分
出演
宮田初江:山口百恵
久保新治:三浦友和
久保とみ:初井言栄
久保広:亀田秀紀
宮田照吉:中村竹弥
灯台長:有島一郎
灯台長の妻:津島恵子
千代子:中川三穂子
大山十吉:花沢徳衛
日の出丸船長:青木義朗
川本安夫:中島久之
ナレーター:石坂浩二
中学を出るとすぐ漁船に乗り込み、母と弟の生計を助ける逞しい漁師・新次と、村一番の金持ち娘で、婿取りをするために呼び戻された美しい少女・初江。若い男女の身分を超えた素朴な愛を爽やかに描いた青春映画。
嵐の夜、ずぶ濡れになった初江と新次が、島の小屋(観的硝)で互いに被服を剥ぎ取り、新次が初江に向かって燃えさかる炎を飛び越え、裸で愛を確かめ合うシーンが話題となった。(神島の観的硝とその周辺は、その後整備され、恋人の聖地として人気があるとか)
映画のストーリーは三島由紀夫の原作にほぼ忠実に作られている。小説は中編であるが重要な場面は全て盛り込まれていると言っても過言ではない。
山口百恵もみずみずしく好演している。また、三浦友和も素朴で逞しい役をこなしている。キャストも揃っている。
三島由紀夫の小説は、「金閣寺」を初めとして、難解な部分も多いが、「潮騒」は読みやすく、素直な恋愛作品になっている。
それは、「潮騒」を書く前に、三島が朝日新聞の特派員として約半年の世界旅行をしており、前々から行きたかったギリシャでの体験を書こうとしたことにもよる。
そして 古代ギリシャの恋愛物語『ダフニスとクロエ』を下敷きにした日本の漁村の物語として書いたのが、この「潮騒」である。そのため、とても健康的である。
この映画も、脚本や監督が小説を、素直に描写していて違和感はなく合格点である。
小説「潮騒」を読んだ後、この映画を見る人がいても納得し感動出来るだろう。
ナレーターの石坂浩二は安定していてとても良かった。最終シーンで小説の最後の文章をそのまま利用して語るのも好感が持てた。