めいすいの写真日記

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サン・サーンス作曲「サムソンとデリラ」

2020-06-08 | オペラ・バレエ

 旧約聖書に基づくドラマティックな物語を絢爛たる音楽で綴った傑作、2009年《カルメン》で旋風を巻き起こしたE・ガランチャ&R・アラーニャのカップルが、再び誘惑する女&破滅する男に扮して激しくぶつかり合う話題作。オペラ史上最強の誘惑のアリア〈あなたの声に心は開く〉が聴きどころ

作曲:サン・サーンス
演奏:メトロポリタン歌劇場管弦楽団 指揮マーク・エルダー
演出:ダルコ・トレズニヤック
出演:デリラ・・・エリーナ・ガランチャ、
   サムソン・・・ロベルト・アラーニャ、
   大司教・・・ロラン・ナウリ、
   ヘブライの長老・・・ディミトリ・ベロセルスキー、
   ガザの太守アビメレク・・・イルヒン・アズィゾフ

上映時間:3時間20分(休憩2回)
MET上演日:2018年10月20日
言語:フランス語

《サムソンとデリラ》のあらすじ

(第1幕)
 紀元前12世紀、パレスチナのガザの街。ベリシテ人に征服されたヘブライ人たちが神に祈っていると、サムソンが現れ、神から霊感を受けたと告げて、人々を鼓舞する。ガザの太守アビメクレクがサムソンに切りかかるが、逆にその剣を奪い彼を殺してしまう。ペリシテ人はサムソンを恐れ、ガサを去るが、勝利の祝いの席に、ダゴンの神殿からデリラが現れアリア「春は目覚めて」を歌い、サムソンを誘惑する。ヘブライの老人がサムソンを諫めるが、サムソンは彼女の魅力にとりつかれる。

ガザの太守アビメクレク(右)がサムソンに切りかかるが、逆にその剣を奪い彼を殺す

デリラは「春が始まり、恋する心に 希望を運ぶ」と歌う

(第2幕)
 クレソの谷の家の前でデリラはサムソンを待ちながら「恋よ、弱い私に力を貸して」と歌う。
 大祭司が現れ、二人は復讐のために手を結ぶことにする。サムソンが彼女の家にやって来て神に背いても愛すると言うと、デリラは有名な誘惑の歌「あなたの声に心は開く」を歌う。彼女の家の周りをペリシテ人の兵隊達が取り囲む。デリラの執拗な要請により、サムソンは自分弱点である「長い髪にあること」を話してしまう。

「愛の神よ 弱い私を 助けに来ておくれ 彼の胸に毒を注ぐのだ 明日サムソンが鎖で繋がれますように!」とデリラは歌う

「私の心は 貴方の声に開くの 夜明けの口づけに 花が開くように!」とこのオベラの白眉の誘惑のアリアが歌われる。

デリラはサムソンから秘密を聞き出し、右手にサムソンの切り取った長い髪を持ってペリシテ人の兵隊を鼓舞する。「裏切られた!」とサムソンの声

(第3幕)
 サムソンは目を潰され、鎖に繋がれ、粉挽きをさせられている。サムソンを捉え、再び勢力を取り戻したペリシテ人は宴を開き、美しい合唱や「バッカナール」に合わせたエキゾティックなダンスなどが行われている。
 自分を犠牲にしてヘブライの民を救おうとサムソンは祈る。ダゴンの神殿でデリラはサムソンに真相を告げる。多くの屈辱的な言葉を浴びせられるが、神殿でサムソンが祈り続けると、力が蘇り、神殿の柱が崩れ落ち、ペリシテ人は下敷きになる。

目をつぶされて鎖につながれ、粉を挽くサムソン「われらのために何をした 彼は女のためにわれらを売った」というイスラエル人の天からの声が聞こえてくる

ペリシテ人の神殿では、「バッカナール」に合わせてエキゾティックなダンスなどが行われる

 サムソンが祈りを懸命に捧げると、祈りが主に通じ、ペリシテ人の神殿は崩壊する

 上演回数が少ないオペラでありながら、スペクタクルに演出されていたと思う。特に、デリラの衣装が豪華で見応えがある。宝石も多く散りばめられているようでガランチャも気に入ったようだ。衣装を担当したリンダ・チョーに拍手を送りたい。それが原因かどうかは分からないが、ガランチャの歌声も伸びやかで迫力十分だった。サムソン役のアラーニャも実力通り熱演し、このオペラを盛り上げる。
 ただ、ダルコ・トレズニヤックはブロードウェイでトニー賞の演出家ということだが、旧約聖書の時代を彷彿とさせるような重厚な舞台を設定してもらいたかった。ちょっと近代的すぎる感じがしたのは少々残念であった。

 幕間のインタビューでデリラも大司教も「私は悪役」といっていた。旧約聖書に題材を取っているので、ダコンの神を信じるベリシテ人は異教徒であると考えているのだろう。