今日は疲れてるし、ブログは書かないで寝る予定だったのだが、
「鍵持ってくの忘れたから起きてて!」と言って、パーティに出かけたルームメートのYEが、
約束の時間になっても帰って来ないので、待つついでに短い記事を更新することにした。
アメリカの大学のトップ校って、学費がすごい高いんですよ。
まあ、トップ校はどこも私立だから、って話もあるけど、年間300万円とか400万円とか普通である。
そんなに払える家庭がどこにあるの?
あー高等教育は金持ちだけ受ければいいって発想なのね、とか思うでしょ。
そうじゃないんです。
学費免除などのファイナンシャルサポートが非常に充実してるんです。
例えばMITの場合だと、半数以上の学生が、何らかの学費免除を受けてるらしい。
(じゃあ残り半分は金持ちか、っていうとそれもあるけど、実際はもらってない多くの人は教育ローンを活用しているのでしょう。)
免除のレベルは色々で、20%くらいの補助から全額免除まで。
"Need basis"と言って、サポートを受けないと生活できないことが分かれば、誰でも少なからず受けられる仕組み。
もちろん全額免除は、入学時の評価や成績が非常に良いひとだけ。
それから、足りない分はみんな、教育ローンとかで補う。
要は、400万円とか高い金額をチャージして、払える人にはそれで払ってもらう。
払えないけど優秀で是非来てほしい、という人にはどんどん免除して実質安くする仕組み。
もうひとつ、大学とは別の「取れるところから取る」話。
以前紹介した話なんだけど、アメリカの一部の病院とかも、そういう価格設定してるらしい。
私の友人でアメリカで出産した人が、病院から500万円請求されたそうだ。
で、「こんなの払えない!」とものすごい苦労して交渉したら、サポートプランを色々出してきて、結局100万円くらいまで下げられたという。
これって逆に、交渉する労力を払いたくない(かなり大変)、お金を払える人からは500万円取ってるってことなんだよね。
まさに、取れるところからお金を取る仕組み。
アメリカに住んでると、あらゆるところでこの考え方が流通してるのが分かる。
(だから常に交渉が求められるんだけどね。過去記事参照。)
こういう「取れるところから取る」価格設定の考え方を、経済学ではPrice Discriminationという。
ひとつの商品・サービスに対して、人によって感じる価値(効用)が異なる。
例えばある人は、MITに来れるなら400万払ってもいいと思うし、ある人はどんなに優秀でも50万しか払えない、と思うだろう。
大学としては、お金は無くても優秀な学生は欲しい。
さてどうするか?
ここで、一律50万円に学費を設定し、50万しか払えなくても優秀、という人を取るのが日本的なやり方。
アメリカの場合は、400万円の価値がある、と思う人には400万円チャージし、50万しかどうしても払えない、という人には50万しかチャージしない、と言う方法で、優秀な人を取るわけだ。
50万しか払えない人は、いろいろ面倒なApplication書いたり、それなりに成績がよくないといけなかったりする。
同じ優秀な人を取るとしても、後者のほうが儲かるよね。
「大学とか病院が儲けるって発想がおかしい」と思う人もいるかもしれない。
でも、実際のところ、日本の場合、足りない分を補うため税金だの保険だのが投入されてるわけです。
それなら、400万、500万ぽいっと払える金持ちから取った方がいいんじゃないですか?という話だ。
もちろん、これは競争が激しい市場では出来ない。
競争が激しく、選択肢が他にあれば、たとえ沢山払える金持ちでも、安いオプションを選ぶから。
病院とか、大学のトップ校とか、実質、選択肢が無いわけで、事実上独占になっている市場では、こういう価格設定が出来るのだ。
日本の大学のトップ校は国立大学だから、こういう考え方はなかなか難しいかもしれないし、
アメリカの場合、教育ローンの仕組みが充実してるからできるってのもある。
(成績が悪かったりして援助をもらえないときは、教育ローンに頼れば良いから)
が、400万なんて極端にせずとも、一律50万円で学費免除も余り無い、というのはひどい気がする。
もう少しPrice Discriminationの考え方を導入し、
例えば国立大学でも私立同様の150万くらいに学費を上げて取れるところから取り、
学費免除も大幅に増やす、という方が国民のためじゃないかなあと思ったりするのであった。
だって、例えば東大って確か親の平均年収が1,200万円とからしいから、こういうところからはじめるのも手ではないか?
もちろん、ちゃんと学費免除がたくさんあります、ってことを明確に知らしめる必要はある。
でないと、「学費高い」と思ってしまって大学を諦めてしまう人が増えてしまうのは問題だから。
(あとは教育ローンの充実だね・・・)
日本の高等教育戦略による話なので、一概に何がいいとはいえないものの、
これを以ってトントンにするなら、経済的に困ってる人がより学校に行ける仕組みになるわけだし、
たとえ余るようなことがあるなら、それこそ国家予算を別のところに投入できるだろう。
格差が広がってるからこそ、こういう考え方がもっとあってもいいはずだ。
まあ、東大が学費上げたら、優秀な学生がハーバードやMITに流れちゃった、なんてことが起きたらショックだけどね(笑)
それにしても、約束を1時間過ぎてるのにYEまだ帰ってこないよ・・・
もうドア開けっ放しにして寝るかね。
と思ったら、帰ってきた。寝れる。
私はオーストラリアのUniversity of Sydneyで大学院生をしていますが、オーストラリアでは、
”取れるところ”=”留学生”
という考え方がはっきりしていて、もう国として留学生から金を取っちゃおうという考えかたをしています。とある先生に聞いたんですが、農業、鉱物資源、観光とならぶ産業の柱として留学生向けの教育産業を掲げているそうです。(まあこの場合は語学学校という意味合いもかなり強くなりますが)
年間の学費は、University of Sydneyの場合(大学院のマスターコース、1AUD=80円換算)
domestic student : $17000ぐらい=136万円ぐらい
international student : $27000ぐらい=216万円ぐらい
です。
(MBAは今サイトを見たところ1年半の合計で84000AUDみたいです。たけー!
http://www.firstemba.usyd.edu.au/ )
しかもdomestic studentは、入学金の何万円かを払うとそれ以外の学費を国が一度肩代わりをして、学生は卒業後に税金や年金のような感じで少しずつ国にローンを返すような仕組みになっているそうです。利子の扱いがどうなのかはちょっとわかりませんが。で、年収が一定額を満たさない場合はこの学費の返済は猶予してもらえる、なんて気が効いたシステムまであるようで。このシステムのおかげでオーストラリアの国民は、ある程度、親の経済状況に左右されず希望者は進学の機会が与えられる、という環境です。
これで優秀な学生が集まるかどうかはわかりませんが(これだと結局は大学の質が問われるのでしょうが)、少なくとも日本でこの間の選挙でよく聞いた「高校の授業料無料化」よりはこのオーストラリアのシステムのほうが良いような気が個人的にはしています。
で、ぼったくられている側の留学生としては、あぁ、あの新しいビルも僕らのtuition feeで建てたのね、なんて思ってしまいます。留学生のmajorityは、親がチョー金持ちの中国人(”チョー金持ち”ってのは僕の先入観ですが当たってると思います)と、国がじゃんじゃん奨学金を出している中東(特にサウジアラビアが多いらしい)になります。彼らは痛くもかゆくもないんだろうなぁ。もっとも最近のUAEなどは違うのかもしれませんが。特に中国人の数は本当に多くて、うちの大学のEconomy, Accounting, Finance, international business系の大学院生はその7~8割が中国人という状況です。当の彼ら自身が、オーストラリアに来てクラスメイトの8割が中国人ってどういうこっちゃ?!と言っています。。。
と、自分のブログでいつか書こうと思っていたことを思わず書いてしまいました。ははは。
では、試験とレポートがんばってください。
http://d.hatena.ne.jp/akamac/20081226/1230300500
これを多いと見るか少ないと見るか……
上のページにも書いていますが、そもそも日本の国立大学って30年前は授業料数万円でしたよね。取れるところから取って授業料免除で還元、といいう状態に移行している最中なんではないかと思います。授業料免除が増える前に授業料だけ上がってしまったのではないかと……。免除の最低枠は文科が決める話なので、東大京大みたいなところが独自財源で免除枠をもっと増やすべきなんでしょうね。
うーん、それは違う種類の「取れるところから取る」なんでしょうけど(笑)
老人に取り返す能力が無いことを見越してやってるところがひどい、というか。
学費も病院も、一律にチャージしてるから許されるのであって、「この人は文句言わないだろう」って人から取ってたら詐欺ですよ~
>Nさま
留学生からここまでハッキリと取るのはすさまじいですね。
そのオーストラリアの仕組みはすごいです。
「学生皆育英会」みたいな感じですね。
だから昨日の記事を読んで、「きっと今日も更新してる」と思ってました。
現実逃・・・ではなく気分転換もほどほどに・・・
Nさんへ
”取れるところ”=”留学生”
英語教育は国家的成長産業
というのは英連邦に共通する気がします。(本家がイギリスというべきか)。
http://wileyeconomicsfocus.wordpress.com/2009/11/27/price-of-students-dreams/
トップ大学以外は価格差別戦略が成功しないようです。
お久しぶりです。入れ違いにコメントしてしまいました。
正確なデータを有難うございます。
>移行している最中
ええ。
確かに国立大学の授業料はインフレ指数以上に増えてきてますが、移行期間長すぎですよね・・・。
それに「単に教育・研究にお金がかかるようになってきたから」増やしてるだけで、経済学的に考えて動いてるように思えないのが気になります。
>東大京大みたいなところが独自財源で免除枠をもっと増やすべきなんでしょうね
その時、免除枠を増やすだけだと税金投入につながるので、まずは取れるところから取ることを考えないと・・・
>clonidineさま
ご明察です(笑)。
>現実逃・・・ではなく気分転換もほどほどに・・・
ハイ!
>Unknownさま
ええ、Price discriminationは独占市場での価格戦略ですからね。
トップ校以外では、選択肢が色々ありますので、Competitive market(競争市場)になります。「そんなに取るなら安い方を選ぶ」となって、Discriminateできない、というわけですね。
競争が存在する場合にはfinancial aidのようあthird-degree price discriminationはしないと一方的にコミットするほうが大学にとっては有利ですね。お店が値引きに応じなかったり、セールを行わなかったりするのがこれに当たります。
結局、クレジットカードの付帯の保険で払ったんですけど。こっちはこっちで、全面全額サポート。別の驚きがありました。。。
コメント&解説有難うございます。
そうか、Price Discriminationって価格差別って訳すのか、という別の驚き。
>Caericさま
でも一銭も払わずに済んですごいというかよかったですね。
そういえば500万請求された友人も、最初の250万くらいまでに落とすのはあっさり行ったが、そこから100万まで値引きするのが大変苦労した、と言っていた記憶があります。
(もしかしてその40万も交渉すればもっと下げられた?)
つまり、
1)最初は「そんなに払えない」と声を上げるかどうか
2)苦労してでも交渉するかどうか
ちゃんと段階をもうけてPrice Discriminateしてるのがすごいですよね。