My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

英語ニュースで波乱の2011年を振り返る

2011-12-31 15:46:17 | 7. その他ビジネス・社会

2011年も本日で終わりかと思うと感慨深い。2011年は地震があった日本にとってだけでなく、世界中にとって波乱の年だった。

東日本大震災では、津波と地震がたくさんの町を破壊し、多くの方が亡くなっただけでなく、たくさんの日本人の心に傷を残し、経済にも甚大な影響を与えたと思う。そして何より、取り返しのつかない原発事故を引き起こした。今までは、原発が枯渇する石油資源を救う安全なエネルギー源であると信じていた人も多かったのではないだろうか。しかし取り返しのつかないコストを孕む手段なのだということを知った。フクシマの一部の土地は、将来にわたって人が住めないところも出来てしまった。

一方、世界を見渡せば、チュニジア、エジプト、リビアでインターネットを発端とした民主化運動が起こり、長期独裁政権が次々と倒された。アラブの春。インターネットによって情報はフラットになると長いこと言われていたが、実際にはリアル世界の秩序を覆すほどには至らず、影響力が小さいか、既存メディア同様、既得権益者が一方的に情報を流すツールだった。本当にフラットになって、このような革命のきっかけになったのは、携帯電話や回線等のインフラが整い、タブレット端末やネット接続可能な携帯などのデバイスがそろい、フェースブックやTwitter、Youtubeなどのアプリケーションがそろったからだと思うと感慨深い。インターネットというメディアが政治を変えるためのプラットフォームとして、本当に根付き始めたのが2011年だったのだと思う。

ビン・ラディンが死に、ジョブズが死に、金正日が死んだ。ビン・ラディンの死は、10年前の同時多発テロの痛みを受けたアメリカ人にとっては避けて通れない報復儀礼だったのだろう。その裏にある政治的な駆け引きも含め、民主党になっても、やっていることが結局変わらないアメリカの国際政治の進め方を考えさせられることになった。

ジョブズの死は、圧倒的なユーザビリティによって、テクノロジーをより多くの人に渡すことの大切さを思い知らされた。デジタル・デバイドという言葉がある。これを生むひとつは貧富の差であるが、もうひとつはユーザビリティであった。Apple IIIにより、それまで技術オタクのものだったPCは一般の人々のものになり、iPadによって若い人たちのものだったテクノロジーは、赤ちゃんからおばあさん・おじいさんまで楽しめるものになった。そしてiPhoneの普及により、世界中の人たちが同じアプリを、同じデバイスを使えるようになった。彼の死後は誰がその役割を担うのか。でもジョブズの功績の意味合いを十分に分かっている天才たちが、おそらく受け継ぐのだろう。

ギリシャやイタリアが破綻しかけ、ユーロは一時は崩壊の危機に迫られた。2000年に開始してからヨーロッパ統合の象徴としてその領域を拡大してきたユーロは、10年もしないうちにその存在意義を問われることになった。ヨーロッパ国内では、移民の増加で一般の人々の職が奪われ、東の安い地域から安い製品が次々に流入したなど、この10年の変化の意義が問われた。メルケルやサルコジが強硬な態度を崩さないことによって、何とか政治的な安定が得られているような状況であった。11月の危機的な状況は何とか免れたものの、まだ来年もユーロの動きから目が離せなそうだ。

この1年で、世界の秩序の一部は大きく変わり、人々の心も大きく変わったのではないだろうか。世界でも波乱万丈だった2011年を振り返るニュースをいくつか紹介したい。日本語のものは余りいいものが無かったこともあり、英語のニュースソースからご紹介。

Reuter: Year in Review 2011
http://www.reuters.com/subjects/2011-year-in-review

ロイターが選んだ、世界を揺るがせた2011年のトップニュース25を、インタラクティブなメディアでご紹介。写真をクリックすると、それぞれ英語の解説が出る。日本からは、地震とオリンパスがノミネート。アラブの春、ビン・ラディンの死、金価格上昇、オキュパイ・ウォールストリート、ユーロ危機など、様々なニュース。そういえば、イギリスとブータンではロイヤル・ウェディングがあったんですよね。

Al Jazeera: Our Top Stories of 2011
http://www.aljazeera.com/indepth/spotlight/aljazeeratop102011/

Al Jazeera English

アルジャジーラはいわずと知れた、アラブ系の独立系メディアだ。どの国でもメディアはいろいろなしがらみがあり、そのしがらみに沿って報道するとマスゴミと化すわけであるが、アルジャジーラはそういったしがらみが無いこともあり、「え、そんなの報道されるの」というものまで映像で報道される。最近では、カダフィが殺害直前に連れ去られるところまで報道された。特に米系メディアでは偏向しがちなアラブ系、アメリカや中国等の国際関係などのニュースで真実を知りたい人向け。

2011年のトップストーリーは、アルジャジーラにとってはやはり、チュニジアやエジプトの革命であり、バーレーン、シリア、イエメンなどで続いた民主化運動だった。日本の津波、ノルウェーのテロ、アフリカの飢饉なども忘れずに報道されている

 

WSJ: Years in Photos 2011
http://graphicsweb.wsj.com/documents/YEARINPHOTOS11/Photos-of-the-Year-2011.php#o=0&q=&x=&y=&p=0

ウォール・ストリート・ジャーナルからは2011年に人気が高かった写真を解説付きで紹介している。1月から順に写真を振り返ると、本当にいろんなことがあったと実感する。

ウォール・ストリート・ジャーナルのUS版には、日本の地震・津波特集のページがあり、今でも更新がある。最近は、福島での撤去作業や未だ解決しない義援金問題、野田内閣になって何が変わったかなど、米国から見た客観的な視点で、詳しい記事が載っており、英語の勉強以上に非常に参考になる。
http://online.wsj.com/public/page/earthquake-tsunami-japan.html



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2 Comments

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Unknown (Mac SE/30)
2012-01-01 02:27:42
Apple II, not III :)
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よき年に (freedom)
2012-01-01 18:55:22
あけましておめでとうございます。今年は良い年になればと思います。みんなで言い続けましょう。言霊が実現してくれるかも。このブログも長期の休止がなければうれしいです。
確かに昨年は様々なことが起きてめまぐるしかったなぁと思います。でも震災のインパクトがあまりに大きくて他のことは些細なことに思えてしまいます。
事故の結果とはいえ、原発がなければエネルギー供給ができなくなると思わされてきましたが、電気料金から徴収した累積で数千億円にものぼる原発推進宣伝費による効果だったことが明らかになってしまいました。今年の2月には国内の原発は全て停止してしまうのに実際には大きな問題が起きなかったのですから。関西電力エリアでは原発依存度が50%以上だったのになんとかなっているのはすごいことです。九電のやらせを行った人が実は原発反対派でここまで見越してやったのであれば社会を変えた変革者ですね(あれがなければなし崩しに再稼動していた可能性は大きいでしょう)。平成の坂本龍馬ですよ。人類にとって原発がなくて困るのは京都議定書が反故にされてしまうことくらいですよね。将来は太陽光に期待するとしてもコスト問題があるので、近々は環境省に省益ではなく人類のために地熱発電を許可してもらいたいものです。
アラブの春は本当にインターネットを発端としたのかな?Twitterのツイートによるコマーシャル効果で思い込まされているように思います。マスコミも乗っかりましたからね。4000年前の記録にも残る歴史上何度も起こっている民衆暴動の一種にしかすぎないのではないでしょうか。しかも民主化の結果は自由化ではなくイスラム原理主義への保守化ですから自由から見れば明らかな後退なのは残念なことです。

ちなみに、Apple IIIは後のLisaやMacintoshにつながる当時画期的なユーザビリティではありましたが、あまりにも高価で(アメリカで4000ドル、日本では正規輸入はされなくて技術オタクショップで100万円以上していたと思います(国産PCは20万円前後だった))。だから一般の人々のものになったとは言いがたいところもありますね。Apple IIはまさに技術オタクの至宝でインターフェースやプログラムの知識がなければ普通の人では使えるものではありませんでしたからApple IIIと言いたいところですが、巨大な損失を出し、ジョブズ氏がAppleから追い出される遠因になったものでもあり、確か一昨年Appleが作った酷い製品のNo.1に輝いていたと思いますからAppleファンからは物議になるのでしょう。一般のものになったのはジョブズ氏が数々の失敗から学びピクサーで成功してAppleに復活したiMacからかもね。
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