昨日、少し時間があったので、MBAの授業に関する過去記事を整理。
15.535 など、MIT専用のタグと、授業名をつけて、検索しやすくしました。
是非MITを志望してエッセイを書いてる人などは、利用していただけたら幸いです。
で、忘れないうちに、今学期受けていて、とても面白かったのに、一度もブログに登場しなかったAccountingの授業について。
この授業の正式名称は、Business Analysis Using Financial Statements。
初日の授業に行ったら、先生が二人いた。
お二人とも、Charles River Consultingという、有名な会計コンサルティングファームから来た現役のコンサルタント。
うち一人は、現役のコンサルタントをやりながら、Wharton、Sternなどファイナンスに強い学校を初めとして、Harvard、Kelloggなど、20以上のトップビジネススクールで教鞭をとってきたベテランだ。
毎年違う学校で教えるんだけど、今年はSloanで教える、ということらしかった。
で、この二人の話が初日から躍動感があってとても面白かったので、履修することにした。
どの授業でも、「いや教科書にはこう書いてあるけど、実際のところは、こう」という話がたくさん埋め込まれている。
中でも、私が一番印象に残ったのは、記事タイトルのとおり
「DCFなんてね、実際には余り使えないんだ。頻繁に使うのはやっぱりマルチプルなんだよ。」
という言葉と、それに続く授業だった。
意味不明?
あ、ごめん。
ファイナンスにおける、Valuation(企業価値評価)の話です。
ファイナンス系のお仕事をすると、企業のM&Aとか、事業の評価とか、このValuationを行うことが多々でてくる。
マルチプル、というのは企業の規模や株価などから、既に企業価値が分かっている他企業との比で、価値を求める方法。
一方、DCF(Discounted Cash Flow)法、というのは、企業・事業が生み出す将来のキャッシュフローを予測して、それを企業・事業のリスクに応じて割り引いて(discount)、価値を求める方法だ。
ビジネススクールというのは、大概どこもそうだが、教える側も教わる側も、このDCFがやりたくて仕方ない。
ファイナンスにおける企業価値評価の万能の方法だと勘違いしてる人すら、学生にはいる。
まるで、DCF教の教祖と信者という感じだ。
なぜなら、DCFというのは、まだ方法論としては不完全な方法なので、教える教授の側には、これを研究している人がたくさんいる。
そして、DCFが最新の、より科学的な方法だと信じてるわけだから、教授は教えたいのだ。
また、学生の方も、なんか複雑でかっこいい方法だし、
投資銀行やコンサルティングファームなどの人気業界がこぞってこれを使うので、習いたくて仕方がない。
一方で、「マルチプル」というのは良く使われるやり方ながら、簡単なので、わざわざ習おうとする人は少ない。
こんなDCF礼賛な状況のビジネススクールで、「DCFなんて実践のファイナンスでは使えない!」と言い切るのはすごいことだ。
そして、その言葉だけでなく、私が以前からDCFをやっていて疑問に思っていたことがいろいろと授業で議論されて、とても気持ちの良い授業だった。
何故、DCFが実践で使えないか、というと理由はこうだ。
実際にファイナンスをやってる側では、企業の価値を計算するときなど、時間があと1日もない、などということも多々ある。
そういうときに、手間がかかり、情報がたくさん必要となるDCFではなく、マルチプルを使うほうが、現実的なやり方なのだ、というのが彼らの主張だ。
実際、投資銀行などで、買収先の企業価値を評価するときは、ゼロから計算するDCFなどより、直近の同じ業界の買収案件などの方が意味を持つ。
DCFもやるけど、途中いくつも仮定を置くときに、いくらでも都合の良いように仮定を置くことが出来てしまうから、あくまで「補足資料」的役割なのだ。
メインにはならない。
授業では、時間がない中で、どうやってマルチプルの精度を上げるか、という実践な話に入る。
そして、DCFを否定するだけではなく、逆にどんな時に、どのようにDCFを使うべきか、ということもちゃんと扱ってくれた。
例えば、企業と長い時間かけて、努力目標などを議論していける場合は、仮定がたくさん置けるDCFの方が適している。
DCFのなかで、何が「バリュードライバー」になるかを議論し、企業価値をあげるための戦略立案につなげていくことが出来るのだ。
これは私にはとても納得がいく話だった。
実は、私の勤めているコンサルティングファームは、それこそDCF教を最も熱心に布教してる企業で、DCFのバイブルともいえる本もたくさん出している。
コンサルティングのプロジェクトでも、当然メインで使うのはDCFだ。
(だからファイナンスバックグラウンドじゃない私も、DCFだけはよく出来た)
ただし、その場合、「都合の良い仮定が置ける」投資銀行とは状況が大分違う。
なぜなら、将来のキャッシュフローを予測するために必要となる、将来の収益成長率や原価率、レバレッジ率などといった数値は、「仮定」ではなく、「目標」や「バリュードライバー」となるのだ。
実際のプロジェクトでは、成長率や原価率などのレバーをいろいろに変えながら、クライアントさんを交えて話し合う。
「この原価率を仮定すると、将来の事業価値はこれだけになりますが、そもそもこの原価率とこの成長率って両立可能ですかね?」
こうやって決めた成長率や原価率は、もはや仮定ではない。
クライアントさんの企業が達成すべき目標となる。
一度それを達成する、と決めたら、じゃあどうやってその収益成長やコスト率を達成するべきか、という戦略の話になる。
当たり前だけど、他社との比で求める「マルチプル」ではこういう話はできない。
一方で、企業の売り買いをすることが目的の投資銀行の場合は、お客さんと成長率やコスト率について握る必要は無いわけで、もっと客観的に、他との比較でマルチプルを使うわけだ。
このように、業界や目的に応じて、企業価値評価でメインで使う方法が大分違ってくるわけだ。
自分が当たり前だと思って使ってきた方法の意味を、客観的に判断できるようになった、と言う意味で、とても役に立った授業だった。
以前は不動産投資ファンド、現在ではM&Aの仕事してますが、似たような考えを持ってます。
ただ、DCFという手法そのものを否定するのは少し違う気がしてます。
他にもコメントされてる方いますが、まず評価対象会社と「類似」している上場会社はほとんど見つかりません。それでも根拠が脆弱とは分かりつつも類似企業として選定してマルチプルを算出しているのが実態です。似てない会社のマルチプルの方が多分に怪しい存在な気がします。
次に、fair valueの算出にDCFを用いることそのもののが違うのではないかと最近思ってきました。
そもそもDCFという手法は投資の評価に主眼がおかれていたと思うのです。つまり、投資する当事者にとっての価値評価であり、fair valueなんてものを算出する為のものではなかったのではないかと。不動産ファンドでは、投資期間中のCFとexitバリューの査定(決め込み)が終わったら、自らが望むIRRになるようなgoing-in valueを算出するという評価手法が一般的かと思います。WACCとは割引率の考えが基本的に異なります。fair valueなんてものは投資する人によってさまざまであるはずなのに、fair valueを求めようとすること自体がおかしいのかと。まぁ、そうは言っても、実務上なんらかの拠り所が必要なんですがね・・・
基本DCFで価格概算、協議、waccや営業利益成長率を動かして価格調整。
の流れが多いですね。
参考までにマルチプルは挙げますが。
ビジネスモデルや株主構成の似ている上場企業なんて、
滅多にないですし。
現実のM&Aは経営陣同士の相対取引です。
『この上場企業orディールが似てますね~』
なんて納得してもらえないですよ。
当方、外資系のIT企業に就職していたのですが、二度ほどオフィスをクローズすることがあったので、『企業価値評価』に興味を持つようになりました。他の方のコメントも拝読させて戴き、それがまた実際の現場でどんな風に扱っているのかを知って、非常に勉強になりました。
御礼を一言言いたく、コメント欄を使わせて戴きました。ありがとうございます。
>企業価値と価格は別物って事が大事かなと思いました。
そうですね、所謂市場価格というのは、市場がどう見ているか、であって、大切ではあるけれども、企業の価値自体ではない、というある程度の突き放しが経営者には大切だと思います。
>CAPMのβなんかも怪しすぎる。。。
個人的にはベータはまだいいんですが、一番イヤなのは、企業によってはTerminal Valueの寄与がすごく大きくなってしまうことかな。
それをAnnuityで求めたり、結局マルチプルを使ったりして、せっかくベータを細かく求めたのに、TVのSensitivityの方が大きいんじゃないか?となることがありますね。
かといってTVの寄与を小さくするためにForecastを20年とか引き伸ばすのも意味ないですしね・・
>不確実性が高い時にはDCFなんて使えない
そんなことはないですが(DCFよりマルチプルのほうが時勢の影響を受けやすい)、不確実性の高い分野でDCFを使うのは一般的に困難、というのは確かだと思います。
特に半導体など、キャッシュフローが安定しない業界ではDCFの信頼性は非常に低くなり、事業の戦略を論じる意味合いでも、意味なくなったりします。
マルチプルはあくまで価格に着目している。
一方DCFは将来CFに着目して内在的な価値に着目している。価格に着目しているがDCFはその因数のボラティリティに問題がある。
少しブレただけで事業価値の変動が大きくなったりする。
CAPMのβなんかも怪しすぎる。。。
そもそも企業価値、すなわち会社をいち金融商品とするならば、将来どれだけのキャッシュを生むかがポイントになりますよね。そう考えるとDCFの考え方はしっくりくるかなと。
特にその企業のバリュードライバーやら企業分析を徹底しないといけない、というのはある意味健全だと思います。
バフェットの投資術にも通ずるものがありますし。
でも現在のように不確実性が高い時にはDCFなんて使えないですよね~
安易に締めくくると企業価値評価でも理想と現実があるのでしょうか。
まったくその通りです。
MITはファイナンスを掲げている学校なので、看板授業のCorporate Financeはベテランの先生が教えますが、MBA全体ではPhDを取ったばかりの先生がファイナンスを教えるところも多々あるかと思います。
こういう方は実際DCF命ですからね・・・
>企業価値評価 - 会社の同僚から借りっぱなしになっている分厚い本、、、、!
最近第4版が出て、そっちは2冊になってしまいましたが訳がベターだと訳した人が言ってましたので(笑)是非そちらも見てみてくださいませ。
そうですね、 以前 MBA in A Boxという本に Riskの高いインフラ企業(Fiber Broad Band Network)等は 株発行にて資金調達を行い Patientな株主の下で事業を行う (資本コスト15%?)、Riskの少ない事業は 借り入れPortionを増やすとの説明がありました。
MBAでの合宿で Serious Gameがあり 株価はどうすると上がるのか Coachに聞いたところ ROICを高めろとのことで ROICが60%ぐらい迄上がり 20チーム以上の中で優勝しましたが 設定はビール会社、他社とのRegionalなMarketShareを分析、設備投資と広告のTimingをManageするという内容でしたので 少ない投資でReturnが上がれば(ROIC)株価が上がるという内容でした。
現場で経営する人間はROIC重視、PERを上げたい経営陣は インタンジブルAsset(ブランド、人材教育、戦略)に投資する、M&A時の企業価値はDCFも含めたPER,PERからのValuation算出Plus Premiumで計算とのことで 今回の教授のDCFは使えないとのコメントは Business Analysis Using Financial Statementsクラスでは DCFのみを教えるべきですが M&Aの現場ではPER等が使われているという Realityを説明してくれたとのことと思います。
今回のTopicの DFCは使えないに戻ると
PHDを取得したばかりのCorporateFinanceの教授は時間内にDCF等を詰め込んでを教えるのが仕事で DCFは使えないという Rule of Thumb的な話は聞けないと思いますので 実務経験豊かな先生の話は臨場感があって面白いですね。
Corporate FinanceのM&AのCaseStudyはDFCのみにて分析する内容で、PERなどという話は出てきませんでした。
都合でM&Aのクラスは半分聴講することとなり定型的にM&Aを勉強する為にStanfordのExecutive Programに行きましたがPMI等の話しばかりでValuationの話が無く やはりValuation等M&Aにかかわる内容はコンサルやInvestment Banking等の実務経験者が講師のクラスがお勧めです。
DCF,鶴亀算
PER、 連立方程式? という感じでしょうか?
企業価値評価 - 会社の同僚から借りっぱなしになっている分厚い本、、、、!
長期的な会社の企業価値を如何に上げるかという 全社一体となった長期戦略が重要ですね。
勉強不足だったので、コメント有難うございます。
もうちょっと動きを見てみます。
WiFiとWiMAXの日本の動きは・・・正直全然分からない。
年始に日本に帰ったときにちょっとその辺の動きを読んでみるです。。
ネットでも情報は色々探せますが、そこに行って話をして感じるというのは全然違うんですよね。
>Betterworldさま
前のコメントで書き忘れましたが、
>Blog Ranking Top おめでとうございます!
応援有難うございます。
昨年来の動きをご存じないかもしれないのでお知らせです。
ウィルコムは事業再生ADR手続きを進めておられますが、当初来年1月に予定していたADR成立の賛否を問う債権者集会を2月に延長するよう要請していたなんて危機的なことがつい先日もニュースになっていました。
来年2月以降も存続できるのかどうかの状況なので、ユーザーがウィルコムを選択することも躊躇され、早く先が見えるようにならないとよけいに苦しくなっていくでしょう。日本では今、堀江氏がいなくてもWiFiとWiMAXが混在して(競争して)(WiFi経由のWiMAXなんてことしている人やフルノートを屋外で歩きながらでも使う人が出没したりしています)普及しつつある状態なのでやり方によっては再生する可能性も大いにあるとは思います(音声通話の部分で利益を得るのはもう無理なのは明らか)。カーライルが手放したイーモバイルとUQ WiMAXがうまくやっているので急がないと終りますが。
>Micheal Porter教授は ROIC以外の目標は戦略として無意味
ROIC至上主義は、短期視点になりがちなので本当は問題なんですけどね。
このあたり、DCFやROICの意義についてValuation/和訳「企業価値評価」という本でよく議論されてるのでご覧ください。
実際には何を企業の指標にするかは、本来、企業の存在意義によって違うと私は思っています。
しかし前コメントでFreedomさんが指摘してるように、株主至上主義の世の中であることを前提として皆議論してるわけですが。
Too niceだった、と批判されてますが、私はカーライルのウィルコムMBOのようなものを個人的には応援してます。
DCFは Corporate Financeのクラス、 Comparableを使ったValuationは M&Aのクラスの範囲です。
どの業界でも企業価値を武器に業界の再編を仕掛ける会社が勝ち残る時代にて MBA取得後 Investment Bank等で日本企業のGlobal M&A戦略に関与しないと 企業価値の高いBRICの会社に伸び悩んでいる先進国の企業が買収されてしまう時代になりそうです、、、
Micheal Porter教授は ROIC以外の目標は戦略として無意味と指摘してます。
http://www.porterprize.org/
Pls see Jan 9 2009 posting
http://www.isc.hbs.edu/pdf/20081205__Porter_Prize_Presentation.pdf
Blog Ranking Top おめでとうございます!
まあ多少の違いはありますが、基本的には同じことを言ってる?と思いました。
・短期的な売買利益を目指した需要増や一時的な市場の間違った評価(これをFreedomさんは人気と言ってるのかな?)によって決まることがある、時価総額を目的として経営を目指すのは間違ってると思う
ということですよね?
それを、私は同じ企業価値でも、時価総額ではなく、DCFで求められる長期的な事業の価値を挙げようと経営を行うべきじゃないの?と言ってる訳です。
Freedomさんは「旧来の日本型の経営」と言ってますが、「企業価値経営」とこれの二つは長期的な利益を目指すと言う意味で似たところもありますが、「日本型」は明確な目指すべき指標がない(あるいはとにかく売上げ、みたいな指標を置いてる)というところで、ちょっと違うかな、とは思います。
私は企業価値経営派、ですけどね。
ただし経営において、どういう分かりやすい指標を置くべきか、は企業理念によっても違い、一概には言えない。
また「株主価値を目指すべきか」というのは、まだまだ議論の的。アメリカでも近年大きく疑問視されてますよ。
>将来生み出すキャッシュフローの3年後、5年後、10年後(1年後でもいいか)まで覚えておいて下さいね
ちょっと言葉たらずだったかもしれませんが、当時は任天堂の方が将来生み出すキャッシュフローがずっと多いと「市場が」認識していただけのこと、と言う意味です。
決して市場が正しいとは限らない、というのがポイントです。
また、二つ目に、前のコメントに書いたように、市場が考える長期的な価値が間違ってる、というだけでなく、短期的な売買益を目指す投資家による需要増で、株価が上がります。
この二つから、時価総額は企業価値を必ずしもあらわしていないので、企業の価値を計るのには不適切、ということです。
その二つを「人気」という一言で言うのなら、そうなのかもしれず、私のコメントは、それを詳しく解説しただけだ、と受け取ってください。
もちろん一致しませんが、企業価値を表す唯一の指標が時価総額なので時価総額によって評価するのでしょう。
日本が金融ビックバンを実施して、株価至上主義の英米型の資本主義を国是として受け入れた以上、時価総額で企業を評価する即ち株価を如何に上げるかの経営をすることになったでしょう。(GM発祥の街フリント出身の映画監督は新作映画のキャンペーンで来日し旧来の日本型の政治及び経済の素晴らしさを説いておられましたが。)
>これは人気ではなく、任天堂の将来価値(将来生み出すキャッシュフロー)がソニーのを上回ったというだけのことでしょう。
将来生み出すキャッシュフローの3年後、5年後、10年後(1年後でもいいか)まで覚えておいて下さいね。結果をみてみましょう。一時の人気かどうかわかります(既に市場では・・・人気だったのか?)。
ソニーはゲーム屋さんではないし、エンターテインメントにシフトしたとはいえ、研究開発の蓄積は全く違いますからね。キヤノンなんかもそうですが表にでていないものがいかに多くあるか(小銭を稼ぐ必要がない)ということも企業価値ということでは考慮がいるでしょう。将来価値ということでは任天堂もソニーも人材がスピンオフしていく企業として有名なのはマイナス要因ですが。
別に実際の売り買いがなくても、文中に書いたとおり、企業価値を上げることを目標とした経営があってもよい。これを企業価値経営と呼ぶわけです。
>Freedomさま
>実際に売買された価格が正しい価格
M&A視点で事業の価値を算出する場合はそうですね。
だから記事中にも書いたとおり、投資銀行などは実際の直近の売買価格を重視するわけです。
ですが、企業価値を経営に生かすという考え方なら正しい価格は売買される価格ではなく、DCFが重要になる、と言う話です。
>N天堂がSニーの値段を上回ってしまったことがあるのも価格では人気が実力を凌駕する
セオリー通りなら、これは人気ではなく、任天堂の将来価値(将来生み出すキャッシュフロー)がソニーのを上回ったというだけのことでしょう。
また時価総額は必ずしも、企業の長期的な価値を反映しておらず、短期的な売買を想定した需要と供給で決まってる部分もあります。
これはマルチプルで対象企業を選ぶ際に問題になる点ではありますが。
>商売の世界でも現場はグローバルだなと思ってしまいました
まあC国の人は歴史的にシビアですよね。
特に華僑vs漢民族は・・・
そういう意味では昔からグローバル化してると言えなくもありません。
でもそもそも客観的な価格が算出できるかどうかはかなり困難でしょう。出来るだけ高く売りたい売り手と出来るだけ安く買いたい買い手の綱引きの中で価格は決まるでしょう。
売り手も買い手もある程度の客観性が知りたいので、投資銀行やコンサルタントに計算させるのでしょうが、どちらかの依頼では少なからず恣意性が入り込んでしまうし、Lilacさんの先の記事にもあったようにその業界が黎明期、成長期、成熟期、停滞期のどこにあるかを想定するだけでも客観性ということではかなり難しい要素はあるでしょうね。
またN天堂がSニーの値段を上回ってしまったことがあるのも価格では人気が実力を凌駕することもあるということもありますよね。
私の知人の企業経営者は売買話があった時には、本人が最低価格だと思っている価格の4倍を提示されるので(資金繰りに窮して売らなければならない状況ではないのでこの値段なら売っても良いというスタンスだということもある)、結構ふっかけるんだなと思っていましたが、先日のNHKスペシャルの中国マネーについての番組で、アメリカのメーカーをめぐって中国企業の仲介の中国の投資銀行とアメリカ在住の中国人投資家が争い、投資家が買収に成功したが、数ヵ月後技術が欲しい中国企業が交渉し投資家が買収時のだいたい4倍の価格を提示していたので商売の世界でも現場はグローバルだなと思ってしまいました。もし短期間に4倍差で売買が成立するならば企業の本来価値を適正に算出するのはかなり困難だと言わざるを得ないですね。だからDCFもマルチプルも経営者にとっては一つの目安に過ぎないということですね。
話は飛びますが、上記の番組の中で、中国の投資銀行がアメリカ在住の中国人投資家に買収争いに負けたのは、中国政府の許可が必要でその審査に時間がとられてしまいアメリカ企業であり中国政府の許可の必要のないアメリカ在住の投資家に負けたように描かれていました。事実だとすれば、同じ中国人どうしの争いであっても民間の問題だと国益に反しても政府が足を引っ張るのはどこかの国と同じなんだなということがわかって面白かったです。
なるほど。私は不動産は門外漢ですが、常識的に考えればキャッシュフローの変化が予測しやすい不動産にはDCF的にNPVを求めるやり方は適してるでしょうね。
不動産の場合、Cost of capitalってDebtの利息だけですよね??その他コストも予測可能だし。
ただしDCFが真価を発揮できるのは、記事にも書きましたが、やはり企業や事業のValue driverやKey performance Indexと直接結び付けられるところだと思いますね。
「この指標が達成できないと、NPV(もしくは事業価値)がこんなに下がってしまうんです!」と一瞬で分かるところですね。
企業の場合には、成長率の不確実性はより大きいですし、企業規模の変動よりも収益の変動の方が大きそうですから、DCFで価値を評価するのは余計に難しいそうですね。
というわけで前置きが長くなりましたが、今DCFを使って投資するならデトロイト圏の不動産です。人口の変動も成長率も極めてゼロに近く、不動産価格の下落ほど所得や家賃は下がっていません。リスクを取れる投資家には大変お得だと思います。