最近、TAをやってる授業の中間発表が近くなってきたため、学生のチームと面談をやることが増えてきた。
私が直接頼まれて相談に乗ることもあるが、大体は先生とチームとの面談に私も参加する、という感じ。
先生がチームをどう指導するかを見てると勉強になる。
昨日は、先生の指導を見ていて、ひとつはっとさせられたことがあったので、メモっておく。
起業や企業経営にも役に立つ話だと思う。
昨日面会したチームの中にひとつだけ、明らかに問題を抱えているチームがあった。
軍隊出身の真面目なアメリカ人がリーダーっぽくやってるチームなのだが、
チームメンバーの一人が忙しいことを理由にほとんどミーティングにも参加せず、貢献もしないのだという。
更に、授業で与えられた課題を元にテーマを設定したが、非常に難しく、難航しているという。
その軍隊出身のリーダーは、メンバーがちゃんと参加しないことでチームの風紀が乱れており、
それがチームのやる気をなくしている。
諸悪の根源はそのやる気のないチームメンバーではないか、と考えていた。
これに対して、先生は、余りにもその人がやる気が無いなら、チームとして彼を追い出しても良い、
というオプションを示しながら、テーマそのものをチームのメンバーに合わせて変えてしまったらどうか、という提案をした。
彼等が考えていたテーマは、ある新技術の製造に関する話だった。
確かに、その技術は製造がよく問題視されている技術なので、その問題設定は良く分かる。
でも、チームの話をよくよく聞くと、製造に関わったことがあるのは一人しかいないのだ。
チームメンバーの多くの人のバックグラウンドが、デザイナーだったり、ソフトウェアエンジニアだったりしている。
だったら、製造ではなく、その技術を使ってどうプロダクトデザインするかをテーマにしたらいいのではないか、と先生は提案した。
また、やる気の無いチームメンバーの人は、実は似た技術で実際に会社を立ち上げようとして忙しいとのことだった。
だったら、その技術を使ってどのようなビジネスプランが考えられるか、というテーマを取り入れれば、
彼もやる気になって参加するのではないか、と先生は提案した。
チームの能力や興味が計画に合わないなら、チームを変えるのでなく、
テーマを変えて、チームのやる気を出し、力を最大限活用できるようにすればいいのではないか、と言う話だ。
同じ事を、いくつもの起業経験のある有名なシリアルアントレプレナーからも聞いたことがある。
起業するときは、一度一緒にやろう、と誓い合ったチームを変える、というのは難しい。
それこそ目的のためにメンバー交代などしたら、チームの良い雰囲気が壊れてしまう。
そういうときは、チーム全員が最大限力を発揮できるように、起業時のやり方や事業計画などを変えてしまう柔軟性が重要になる、そうだ。
起業で最も大切なのは、戦略や技術ではなく「人」だ、とその人はいっていた。
自分と気のあう、一緒にいるとやる気の出る人をまず見つけ、チームを組み、
そのチームの力を発揮させられるようなテーマを見つけるべきだ、というのが彼の考え方だった。
軍隊などの大組織やスポーツチームなどでは、ミッションや計画あらかじめ決まっている。
そのミッションに対して、仮にチームメンバーの能力や性格が合わないなら、メンバー交代をしてでも、
ミッションを果たすことが大切になってくるだろう。
ところが、起業時のメンバーだったり、MBAの学生のチームだったりすると、そのチームを維持することがとても大切になる。
会社で新事業を立ち上げる、とか小さな部署で何かやる、というときも同様だ。
一度チームを組んだら、そのチームのやる気を出させ、全員の力が発揮できるようにすることが成功の鍵になる。
仮に最初に立てた計画がチームの能力や性格に合わないなら、計画自体をチームにあわせて変えてでも、
ひとつのものを作り上げる、ということが非常に大切になってくるというわけだ。
最終的に達成すべき目的を大局的に見て、それ以外はチームを最大限活かせるように、柔軟にものを考える。
大組織にいる人間は、意外と忘れがちだろう。
起業に興味がある人や、チーム運営に悩んでる人には参考になる視点かもしれない。
日産のゴーン氏は
人員削減をすると、社員と築いてきた信頼や絆、その社員を教育するのにかけた時間、労力が無駄になる。
人員削減は、どうしても選択の余地がないときだけにやるものである。
とおっしゃてました。
規模の有無に関係なくチームの大切さは普遍的なんだなと思います。
なるほど「人」の大切さは確かに大企業でもいえることですよね。
恐らく軍隊とかでもチームは重要で、ミッションは変えられないけどどう遂行するかはチームにあわせて柔軟に変えるべきなんだろうな、とも思いました。
>Kentoshoさん
それはいい話ですね。
そうすることでチームメンバーの力が引き出せることが出来ますよね。
組織運営のお話やMITのお話がとても興味深く、よく拝見させていただいています。今回もなるほど、と思いました。
チームメンバーの存在を否定すると、そこで思考が止まってしまい、役割や課題の調整など、問題解決へのアプローチに思いが至らなくなるということなのですね。
実際の組織でもそうやって身動きできなくなってるグループをたまに見掛けます。
メンバーの問題行動解決にあたっては、人間ではなく行動に焦点をあてることがチームのパフォーマンスのためにも大事だと再認識させていただけたお話でした。
今回も興味深く役立つお話をありがとうございました。これからも楽しみに拝見させていただきます。
私は、今年か来年、MBA受験を目指して現在TOEFL/GMAT勉強中の者で、本ブログのTOEFLのテクニックや実際のMBAの授業など、大変有益な情報にいつも感謝してます。
さて、一点MBAについて質問です。
「MBA2年間で生活費学費等の出費が2000万必要だが、トップMBAの場合奨学金がつくので学費の心配はない」とAG○S等でよく聞くのですが、実際の私費および社費のMBA生の方々は、それぞれどのくらいの費用を事前に工面されているものでしょうか?
生生しい話で恐縮ですが、コメント頂けたら幸いです。
コメント有難うございます。
そう、メンバーの問題行動は、意外と本人に合わせてあげることで解決するんだと思います。
北風と太陽みたいですね。
これからもおもしろいのがかけるように頑張ります。
>カンデラさま
トップMBAだと学校での学費免除獲得は留学生は通常非常に難しいと思います。
留学生だと米国で1年経たないとローンも組めませんし。
でも、フルブライトとか伊藤財団とか日本から海外留学に支援してる団体はたくさんあるので、当たってみるのがいいと思います。
どれくらいの費用を事前に工面するのが普通か、というのは正直分からないです。
人によってかなり事情も違いますし、ブログで具体的な額などは正直書きづらいです。
日本企業の社費なら留学中も給料をもらえるそうなので、ゼロでもいいんじゃないんでしょうか?
私費だと、2年間の学費に加えて、生活費を加えて準備すべきだと思います。
夏休みにインターンをやったり、TAなどをやればより余裕が出てくると思いますが、これをマストとした設計にするのは不安だと思います。
具体的な額は書きませんが、その辺りを元に計算されてみたら良いかと思います。