My Life After MIT Sloan

組織と個人のグローバル化から、イノベーション、起業家育成、技術経営まで。

世界のマクロ経済指標の変化が超わかりやすいアプリ-GapMinder

2010-06-02 14:17:59 | 4. マクロ経済学

これはMITの先生に教えてもらったサイト。
世界の国々のマクロ経済指標の変化がひと目でわかる、という優れものアプリ-GapMinder
http://www.gapminder.org/world/

あらゆる経済学のサイトの中でも、特に優れている、ということで近年注目を浴びているサイトだ。
経済指標の歴史がすぐ分かる視認性の良さだけでなく、見た目にも美しく、さらに遊んで楽しい、素晴らしいサイト。
超オススメ。
あ、でも1度見ると1時間くらい遊んじゃうと思うから、覚悟して望むように(笑)
でもこのサイトで遊んでいるだけで、マクロ経済について色々なことが学べる。
(更にその年に何が起こったかを調べるためのWikipediaがあれば万全)

いろんな種類の指標があるのだが、ここでは一番メジャーな、縦軸に平均寿命を、横軸に一人当たりGDPをとったグラフをご紹介。
平均寿命はその国の国民の健康状況を表していると言えるし、一人当たりGDPは経済状況を表している。
時代の変化によって、その二つがどのように変わってきたかを追っていくことが出来る。
表示したい国はいろいろ選べるんだけど、ここではアメリカと日本を選んでみる。

■ 日本とアメリカの200年の歴史を比べてみる。

黄色がアメリカ、赤が日本だ。
当時、日本人の平均寿命は35歳、アメリカ人は40歳と、どちらも大変低かったことが分かる。
マルの大きさは人口を表していて、実は1800年当時だと、アメリカより日本の人口の方が多いわけだ

薄いマルで書かれてるのは他の国々。
ちなみに赤い大きなマルは中国、青い大きなマルはインドだ。
国とかは右側のバーで選ぶことが出来る。

さてここから、日本開国の1954年まで50年間、時計の針を進ませてみる。

この50年間、日本は経済状況(横軸=一人当たりGDP)も健康状況も何も変わってない。
度重なる飢饉に加え、鎖国のため、経済が完全に煮詰まっていたことが分かる。

一方、アメリカは北部を中心に産業革命を向かえ、劇的に一人当たりGDPを伸ばしている(横に伸びてる)。
平均寿命は40歳のままだ。
当時はまだ新生児の致死率が高く、平均寿命を下げていたのだ。

アメリカでずっと一定だった平均寿命は、19世紀後半から劇的に改善。
20年で10歳も平均寿命が延びるまでになる。
(ちなみに一度平均寿命が落ちてるのは1919年、世界大戦の直後である)

もう一つ劇的なのが、開国後の日本の経済成長だ。
1954年まで50年間止まっていた一人当たりGDPが、次の50年で約2倍に。
日露戦争と第一次世界大戦の2度の"勝利"を経て圧倒的に飛躍。
と、同時に平均寿命も改善してきた。

この年、1929年は奇しくもペニシリンが発見されて、世界の平均寿命が延びた年だが、
同時にアメリカを中心に世界恐慌を向かえた年でもあった。

1944年、敗戦に近づいた日本は経済成長が完全に止まり、平均寿命が40歳にまで落ちている。
多くの若者が戦争に行って死んだためである。
一方、同じその頃、アメリカは着実に経済成長し、国力を蓄えている。
平均寿命も65歳からほとんど変わっていない。つまり戦争で余り人が死んでないのだ。

マクロ経済学的に見て、これだけ2国に差があるのを見ると、敗戦した理由が分かる気がする。

そして日本の敗戦。
1945年の日本の一人当たりGDPは1900年頃のレベルにまで落ち、平均寿命も30歳まで落ちている。

それから10年、アメリカと平和条約を結ぶ頃には、日本は圧倒的な回復を果たした。
平均寿命が65歳まで伸びているのは、戦争が全くなくなったのと、医療技術の普及が大きいのだろう。
経済は戦前レベルに回復した程度だが、健康状態(平均寿命)は圧倒的に回復した。

一方、この頃のアメリカは、低成長に苦しんでいる。
朝鮮戦争に40万人を越えるといわれる大量の兵士を送り、国内の産業が停滞していたのだ。

そして1964年。
この10年間で、日本の経済は信じられないほどに伸びている。
イトヘン(繊維)・カネヘン(鉄鋼)景気、戦後に生まれたベビーブーマーが「金の卵」として労働力に寄与。
1960年の「所得倍増計画」通り、
所得(一人当たりGDP)は5年間で倍増、10年で4倍近くに成長した。

一方でアメリカは低成長を続けている。
アメリカの経済を支えていた製造業が、鉄鋼に始まって造船、機械工業に至るまで、
次々と日本企業に押しやられ始めたのはこの頃だ。

そして1970年代。
日本の所得(一人当たりGDP)は倍増を続け、ついにアメリカに追いつくか?というところまで押し上げている。
日本人の平均寿命がアメリカを越えたのもこの頃だ。

アメリカの低成長は続く。
エズラ・ボーゲルが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を出したのはこの頃だ。
アメリカは、重化学工業にとどまらず、自動車から電機産業に至るまで、日本の新興企業に追いつかれ、追い越されていた。

1980年代に入っても、アメリカがほとんど成長していないのに、日本が成長、と言う状況が続く。
日本はこの頃からバブル景気だった。
平均寿命も、5-6歳ほど高くなった。

こちらが現在だ。
日本は失われた20年と言うけれど、経済成長の面からは、本当に失われたのは2000年代に入ってからのように見える。
特にこの数年は、一人当たりGDPが減少するまでに至っているようだ。

歴史を振り返りながら、Gapminderを見るだけで、2国のかなりのことが分かる。

■ BRICの歴史。

面白いので、同じことをBRICの国々にやってみる。
赤が中国、青がインド、黄色がブラジル、そしてオレンジがロシアだ。

このグラフも1800年から始まってるが、移民のおかげで着実に成長してるブラジルはさておき、
インドと中国の平均寿命が延びるにとどまっている。

ちなみにロシアが上がったり下がったりしてるのは、恐らくロシア革命のせいだ。

これが第二次世界大戦が終わるころ。
ブラジルの着実な経済成長と、圧倒的に平均寿命がのびる中国とインド。

これが近年になると、中国もインドも横に伸びている(=経済成長している)
日本とアメリカは離れた右上の方にいるが、追いつかれるのは時間の問題だ。

昼にTwitterでも話題になっていたが、ソビエト崩壊後のロシアはヒドイ。
平均寿命が縮むだけではなく、国民の経済状況も悪化している。

■Energy consumption
このグラフの横軸と縦軸は変えることが出来る。
縦軸を一人当たりのエネルギー消費量、横軸は一人当たりGDPのままにしてみた。
これで、どの国が「効率が良い」か分かるはずだ。

とりあえず、日本とアメリカ、環境に厳しいことで有名なドイツ、そして中国をと取り上げてみた。

日本は1970年頃までエネルギー消費を増やしつつ、経済成長もしている。
それが、石油ショックからエネルギー消費増加がぴたっとやみ、一時は現象まで至っている。
ドイツは日本とほぼ同等レベルだね。

それにしても2008年の中国の平均エネルギー消費者って、1965年の日本とほぼ一緒なのだね。 
これから、日本と同じレベルの成長を遂げたら・・・世界のエネルギー市場はどうなるのだろうか?
としばし考えつつ。

こんな感じで、色んな指標を学びつつ、ツールを使うと面白いです。

(追記)コメント欄で教えてもらいました。このGapminderの創設者の一人による講演。
Hans Rosling shows the best stats you've ever seen|TED.com
http://www.ted.com/talks/lang/eng/hans_rosling_shows_the_best_stats_you_ve_ever_seen.html

これを見ると、Gapminderの色々な使い方のエッセンスや注意点が分かります。
国連や様々な国際機関やNGOなどが集めてタダで手に入る統計を、集めてアニメーションを加えるだけでこんなにも面白い分析が色々出来るのが素晴らしいと思います。
1960年代の世界では、アジアと南米の貧困がアフリカ以上に問題だったのに、
その後アジアと南米は飛躍的な発展を遂げて、アフリカだけが取り残されていること。
インターネット普及率と豊かさ(一人当たりGDP)には相関があり、見方によってはインターネット普及率が豊かさを引っ張っているように見えること。
だから、One Laptop Per Childのような運動が大切だ、ということなど。
(そしてこの議論はいまだControversyだということも)

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5 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (裏目の鶏)
2010-06-02 14:41:39
おもしろい。
このプロットは動きが伝わりやすくていいですね。きれいですし。寿命と一人当たりGDPだけでこれだけおもしろいエントリが書けるわけですから、別の話題もいくつか書いてほしいなぁ。
返信する
GapMinder (どぃさん)
2010-06-02 17:36:19
はじめまして。
GapMinderについては、Hans Rosling氏のプレゼンが非常に分かりやすいです。私はこれを見て感動しました。

Hans Rosling shows the best stats you've ever seen|TED.com
http://www.ted.com/talks/lang/eng/hans_rosling_shows_the_best_stats_you_ve_ever_seen.html

このような膨大な情報を個人が気軽に扱えるようになるのは素晴らしいことですね。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-06-02 22:20:49
70年代あたりで世界からどんどん取り残されていくロシアに泣きました。革命やら粛清やら戦争やら、あの人たちいろいろと苦労しすぎですよ…
返信する
有難うございます (Lilac)
2010-06-03 00:53:11
@どぃさん
ご紹介有難うございます。早速追記で紹介しました!
早速見て分かったのですが、これって創設者の方の一人なんですね。
これだけ沢山のタダの情報が実は世の中にはあふれていて、それをこうやって全てリンクして、アニメーションをつけるだけでこんなに意味のある情報になるなんて・・
Hans Roslingも言ってるように、このリンクしただけの情報が世の中では売られてますからね(笑)

しかもこのムービー、分析に必要な色々な注意点やTipsが全て埋め込まれていて秀逸でした。
凄く面白かったです。

@裏目の鶏さん
是非色々遊んで分析して、そちらのサイトでもご紹介ください!

@ロシア
いや本当にロシアの状況はひどいですね。
Twitterでも書きましたが、モスクワの女の子達の一番人気の夢は「コールガールになること」
コールガールになれば、お金が手に入るだけでなく、少しでも有力な人たちに近づいて、安定して暮らせるからだそうで・・。

民主主義とは、機会均等、機会が誰にでもAvailableであるということとリンクされていることが非常に重要なのだと思いました。
返信する
私は和訳を見ました (@kumakawa)
2010-06-04 22:06:27
>GapMinderについては、Hans Rosling氏のプレゼンが非常に分かりやすいです。私はこれを見て感動しました。

私も感動した1人です。
非常にわかりやすくて、心が動かされました。

和訳を公開してくださっている方がいますので、URL欄に挿入しておきますね。
返信する

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