『嫁洗い池』 芦原すなお
先日、紹介した『ミミズクとオリーブ』シリーズ第二弾!!
相変わらず、楽しく、美味しそうな作品です。
そもそも、表紙が美味しそう!!
この表紙を見て、誰が「うむむ、これは推理小説であるな!!しかも、かなりのシリアスで巧妙なトリックを描いてあるに違いない!!」などと思うでしょうか?
前作の『ミミズクとオリーブ』の表紙と比較して、作品の雰囲気をより上手く(そして、より美味く!!)伝えています。
この表紙は、表題作である『嫁洗い池』の冒頭の部分で、主人公である“僕”が妻の伯母さんが郷土である香川の美味しい肉を送ってくれたので、妻と二人でガーデン炭焼き大会を開こうとしていたら、友人である河田警部が現れて、パクパクムシャムシャと食べられてしまい、「コンチクショー!!」となるシーンです。
しかも、その「コンチクショー!!」には、お酒の恨みも含まれているのです。
ビールを愛する皆様ならば、「うんうん」と頷かれると思うのですが…
何か特別なことがあった時に、冷蔵庫もしくは冷凍庫にグラスを入れて、キンキンに冷やしたそれに注いで飲む一杯目のビールの格別なこと、言葉では言い表せません!!
それをですねぇ…
突然来訪した河田警部は、“僕”が“僕”のために冷やしておいたグラスで勝手にビールを飲んでしまうのです!!
自分を“僕”の立場に置いて想像してみたら、もう許せません!!
ハンカチを口にくわえて、「キーッ!!悔しいー!」と叫んでしまいそうです。
そのやり取りを作中では…
(河田警部が登場する前に、冷えたグラスで飲むビールの重要さをひとしきり説明しておいて…)
河田警部 「カンパーイ」(と一人で言ってあっという間にグラスを干す)
“僕” 「ああ、貴様。それはぼくが冷凍庫で冷やしておいた方のグラスじゃないか!」
河田警部 「ああ、いい塩梅に冷えてるよ。よく気がつくね、お前は」
“僕” 「そのグラスはぼくが楽しみに…」
河田警部 「二杯目からはどれで飲んだって同じだ」
“僕” 「今飲んだビールを返せ」
河田警部 「ああ。あと小一時間もしたら返してやるよ。下からね。あっはっは」
“僕” 「貴様…」
(ここで、奥さんからたしなめられちゃって、この話題は終わり)
ってな感じです。
こんな感じで事件の概要についても話すから、なかなか話は進まない。
『まだらの猫』という話を抜粋すると…
河田警部 「事件の場所は吉祥寺の駅から十分ほどのところにある高級住宅街です」
“僕” 「歩いて十分か、自転車で十分か?」
河田警部 「なんとも断らない場合は徒歩に決まってる」
~中略~
河田警部 「被害者は中堅の商社の会長、亜島丁三郎、八十七歳です。」
“僕” 「おお、亜島商事か」
河田警部 「お前、知ってたのか?」
“僕” 「いや、別に」
河田警部 「じゃあ、黙っててくれよ」
てな感じです。
このやり取りが軽妙で絶妙で楽しくて仕方ないのです。
そして、相変わらず料理の描写が美味しそう!!
読んでいると口の中に涎が溜まってきます。
『まだらの猫』に出てくる料理や食材の数々だけで…
エボダイの干物、干し海老、アラメ(ひじきと似た海草の一種)、ヒャッカ(春野菜の一種)、ヒャッカと豆腐を炒め煮した『雪花』、豆腐と揚げの甘辛く似た『兄弟煮』、三つ葉のお吸い物、小さめのイリコをインゲンや揚げやレンコン、ニンジンなどと炊き込んだご飯である『イリコ飯』
さらに、それぞれの料理や食材をどう美味しいのか、どう料理したら美味しいのかを、事細かに描写するのです!!
あぁ、美味しそう…
“僕”と奥さんのほのぼのした夫婦仲も健在です。
『まだらの猫』において、“僕”が吐血いたします。
病院に検査に行った後、“僕”は「死んでも、まぁ仕方ないかぁ…」みたいな内容を拗ねた調子で述べます。
すると、奥さんが静かな声で、
「どうして」
「どうして、そんなことが言えるの?」
と“僕”を直視してのたまうのです…
そして、“僕”は正座に座り直して自分のわがままと愚かしさを猛烈に反省するのです。
僕はその描写を読んで、「あぁ、なんか良いなぁ…」としみじみ思いました。
出来うるならば、平山あやのような可愛い方(昨日、バックダンサーズ観たから)とそんな仲になりたいものです。
あら?
やっぱり、今回もいまいち、まとまりのない文章になっちゃったなぁ…
まぁ、“百聞は一見に如かず”と申しますし、読んでみてくださいな。
みっちゃんに薦めたときに「でも買わなくていいからね」と言っておきました。
ついつい図書館で何回も借りてしまうのです。
まぁ、借りて読めば十分かもね~