子供の頃…
小学生になるずっと前だと思う
故郷の田舎で菜の花を栽培していた時期があった
今みたいに菜花として青い葉を採取するためではなくて
菜種油の原料として種を採取するために栽培していた
田舎の花は今頃よりもまだ1ヶ月くらい遅い時期だと思う
雪が溶け ようやく野山が色付き始め
やがて畑の土が起こされ里山の匂いが変わる
何よりも土が新たに命を得たように存在感を持つ
そんな地面のエネルギーの匂い
今までシンと鎮まり止っていた空気がゆっくりと動き出し
だんだんと力強く地上を揺るがす風になるような
そんな波動のように伝わっていくエネルギーの匂い
次々と色鮮やかにバトンを手渡す花々が菜の花に辿り着く
可憐で無邪気な幼子のような花の姿は天真爛漫と言う言葉がよく似合う
こぞっておしゃべりに夢中になっている純真無垢な子供のようで
屈託のない眩しいほどの黄色は寒さで縮こまっていた背中を押してくれる
そんな視覚に語りかける言葉に引き寄せられ無防備に花に近付いて行く
咽返るほど独特で濃厚な匂いは油膜のように鼻腔に張り付く
観賞的な存在ではなく生活に染み付いた菜種油の匂いだった
ふとそんな故郷での記憶が蘇った
敷き詰めたビニールシートの上で
秋に刈り取りカラカラに乾した菜の花の種房を叩く
零れ落ちた種がシートをうずめていく
そんな映像とリンクしながらあの頃の菜の花の匂いを思い出した
子供心にある菜の花は今よりもずっと生活臭かった
答え
ただ一本の道の先に
ぼんやりと浮かぶ
ありきたりの未来に見える
よくある
当たり前のようによくある
ありきたりの未来に見える
君の前にある答えは
その辺の誰もが通る道の先に
ぼんやりしてたって現れる
ありきたりの未来に見える
君も知らない本当の意味は
君が細胞分裂を始めた時から
DNAの塩基に組み込まれて…
連鎖を続けてきたものの最後の形でありながら
新たな世界を構築していく未知なる力
君を待つものはとてつもなく大きい
君の受け継ぐものはとてつもなく尊い
君の存在は細く細く限りなく細く小さくとも
決して誰にも引き千切ることなど出来ない
強く逞しく未来に続くもの
だから信じてる
この世界は君を必要としている
皆さんに支えられ今日も元気です。いつも応援ありがとう。
ボクの道
ボクに夢があるなら
それを叶えるチャンスや
いつか努力を才能に変える契機や
そのために必要になる可能性という発見が
そこいら中に転がっているのは分かってる
それ自体が輝いているわけじゃないから
どれも容易くは目に見えないだけで
足元の石ころみたいに転がっているのは分かってる
未熟なボクはそいつを両方のポケットに
無心で詰めればいいことくらい
頭ではわかっているんだ
どれが正しいかなんて
まだまだ選りすぐる力がないから
そいつを詰められるだけ詰めればいいことくらい
頭では分かっているんだ
どれがボクの未来に重要で必要なのかなんて
見極めることなんかできないことくらい
頭では分かっているんだ
なんの変哲も無く無造作に転がっている
夢を叶えるチャンスがそんなものだってことくらい
言われなくたって分かってる
人間ってよくできたもので
そんなものを片っ端から拾い捲って
チャンスや可能性だらけで重たくなったって
それを担いで歩むくらいの体力は
気付かないうちに付いてるもので…
必要なかったものを捨てるのは後でいい
夢が叶ってからでも遅くないことくらい
ボクだって………わかってる
でもどうしても蹴飛ばしちゃうんだ
たくさんの誰かが置いてった石ころ
拾うことに躊躇してしまうボクの勇気
蹴飛ばすばかりの虚飾に囚われたボクの勇気
蹴飛ばすと夢はどんどん遠退いて行くのに…
目の前の石ころを拾ってポケットに詰める
それを並べて敷き詰める
少しずつ長く延びて行く
それがボクの道
そんなことくらい言われなくたって
ずっと初めから頭では…
本当は全然分かってない未熟なボク
目の前が開けた
ボクの夢に続く道を作って行くのがボク
時閑
街はクリスマスと師走の慌しさを帯びる
華やぐイルミネーションを待ち侘びて
いつもより派手目のファッションで浮き足立つ男女
陽が落ちれば遺伝子に組み込まれた恋しさが疼く
(恋人同士とは言い切れない彼と彼女)
人は高揚の世界しか見えていなくて
目先に繰り広げられる瞬間的なフラッシュのようで
路傍の静寂が閉じ込められた空間は
人の健気さも愚かさも呼吸のように取り込んで
見えなくなる遠くまで繋がっているのに…
時間の隙間に同化するように存在する
風の通り道に取り残された秋を隔離する
見失いそうなほど僅かな
けれどゆったりと落ち着いた空間を隔離する
そして束の間静かに溶け込み
やがて私も人なりの世界に滲むように帰る
気付かないという『普通』
或いは
気付いた幸福というもう一つの『普通』へ