はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part95 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2017年01月15日 | しょうぎ
≪8八金図≫  ~香車ロケット2号作戦~ 後手「7六と」の変化

 終盤探検隊は、来るべき≪亜空間最終一番勝負≫に備え、研究準備をしているところ。
 『香車ロケット2号作戦』は、はたして「先手勝ち」につながる作戦なのか?


    [世代宇宙船バンガード号]
――<船>、その歴史、その機械と設備、<船>を建造し、初めて動かした人々、それらの人々の<地球>における歴史――地球とは信じられないほどのものだった。その奇妙な場所では、人々は内がわではなく外がわに住んでいる住んでいるというのだ。
 ヒョウは、なぜかれらが落ちてしまわないのだろうと、ふしぎに思った。

 忘れ去られてしまったほどの昔、ジョーダン財団にやとわれた機械設計技術者たちは、その<旅>が、予定されていた六十年という長さを超えることがあっても、損耗してしまわないような――損耗しようがないような<船>を設計することを求められた。そしてかれらは、求められて以上のことを求められた。主推進エンジンと補助機械を設計するときには、<船>の中で人々が生活していけるようにするため、ほとんどを自動的に動くようにし、(以下略) 
 
 こういった仕事(アクション)においては、摩擦はその意味を失い、摩耗と腐食は姿を消した。そのため、反乱がおこって現場技術員がすべて殺されたあとも、<船>はまだ光をともし、空気は新鮮で温度を保ち、エンジンはいつでも動くように待機しながら、宇宙を突進していたのである。                                                                   (ロバート・A・ハインライン著『宇宙の孤児』より )


 このハインライン著『宇宙の孤児』の初出は1941年で、ハイラインの小説デビュー3年目、34歳である。 
 現実世界は、まだ日米開戦前の時期で(日米開戦は1941年12月)、まだ「核分裂」のことは物理学者しか知らず、エンリコ・フェルミが中心となって世界初の原子炉シカゴパイル1号(CP-1)の設計・実験の段階であった。

 この小説に出てくる<宇宙船バンガード号>(バンガードは先鋒、前衛の意味)は、「恒星間世代宇宙船」である。どういうことかというと、遠い星(恒星)をめざして、宇宙船の中で生活し、出発した時の乗組員は老いて死んでしまっても、その宇宙船の中で生まれ育った二世代目、三世代目の子供たちが、目的の恒星にたどり着くようにという計画で設計された巨大な<宇宙船>なのである。
 超空間ジャンプ(ワープ航法)などが発明されない世界でどうしても外宇宙へ行きたいなら、現実的にはこういう発想になるだろう。
 おそらく、その全体は円錐形を基本としていて、回転の遠心力によって「重力」をつくり、円錐の外壁の“内側”に人々は住み、そこには「農場」もある。それほどの巨大な“円錐”である。
 推進力ははっきりとは記されていないが、<転換炉>によって、「質量」をすべてエネルギーに変えることができるようだ。
 <宇宙船バンガード号>が地球を出発したのは、どうやら22世紀のことらしい。この巨大宇宙船は宇宙空間において、60年をかけて、ジョーダン財団によって建造された。
 目的地は、「プロキシマ・ケンタウリ」で、これはわれわれの「太陽系」から最も近い距離にある恒星で、その距離は4.25光年。「プロキシマ・ケンタウリ」にある惑星に住めそうだと確信があって、飛び立ったのであろうか。
 ところが、計画通りにいかず、途中、宇宙船内で激しい“内乱”が起き、科学者や技術者など重要人物はほとんど死んでしまう。“中の人”はほとんど科学素人ばかりになり、やがて「科学」は宗教のようなものになっていった。「科学者」という職についた男が、物理学の入門書を解説し、ニュートンは愛を説いたのだ、などと言い出す始末である。
 時が過ぎ、次世代、三世代目になると、もう“中の人々”は、地球を知らず、それどころか自分の住んでいる世界が<宇宙船>であることも知らず、宇宙(星空)を見たこともない人間ばかりになって―――
 それでも<世代宇宙船バンガード号>は「ケンタウリ」をめざして進んでいく。
 という設定の物語。

 面白いことに、現実の2016年8月、恒星「プロキシマ・ケンタウリ」を公転する、“地球に似ている(かもしれない)惑星”が見つかったと、ヨーロッパ南天天文台によって発表されている。 この惑星は、「プロキシマ・ケンタウリ惑星b」と呼ばれる。
 「ケンタウリ座」はどうやら“二重星”であるとわかってきたのが17世紀。これは望遠鏡の発展による。それは「アルファ・ケンタウリ」と呼ばれることになった。
 この「アルファ・ケンタウリ」の近くに、もう一つ恒星が発見された。1915年のことで、発見者はイギリス人ロバート・イネス。(その星は少し温度が低い恒星なのでアルファより暗く、そのために発見が遅れた)
 ということで、この「プロキシマ・ケンタウリ」も加えて、“三重星”であるとみられている。(“みられている”としたのは、異論もあったからだが、今ではほぼ確定的らしい)
 “二重星”の「アルファ・ケンタウリ」から、ずっと離れたところ――太陽と冥王星の距離のおよそ400倍――に、「プロキシマ・ケンタウリ」があって、これが“二重星”の周囲を50万年以上の時をかけてゆっくりとまわっている。そういう状況から、現在では(あと数十万年の間ずっと)、「アルファ・ケンタウリ」(二重星)よりも、「プロキシマ・ケンタウリ」のほうが、地球に近い。よって、地球に最も近い距離にある太陽以外の恒星は、「プロキシマ・ケンタウリ」のほうであり、それを公転する惑星が最近発見されたというこということなのであった。
 つまり「プロキシマ・ケンタウリb」は、“最も地球に近い惑星太陽系外の惑星”なのである。
 念を押しておくが、こっちは現実の話で、小説の話ではない。そして、「ケンタウリ」は、南半球の星座で、日本では見ることができない。

 小説のほう――『宇宙の孤児』の<バンガード号>は、ついに目的地「ケンタウリの惑星」に到着し、“彼ら”はそこに降り立つのであった。


≪7六と図≫
 『香車ロケット2号作戦』の3九香に対し、6六と、9七玉、7六と(図)と進んだところ。
 前回の報告では、「7七と」を探査し、“先手勝ち”の結論を得た。この結論には我々は自信を持っている。
 しかし正直なところ、これから報告する「7六と」以下の展開については、変化が多く、“結論に自信あり”というところまでは、調べきれていない。変化が多いのである。
 だがそれでも、「結論」までは出したいと思う。

 「7六と」に、9八角、8七桂成、同角、同と、同玉、7五桂、9七玉、7八角、8八金と進む(次の図)

≪8八金図≫
 ここまではこれがお互いに最善の応酬と思われ、変化の余地がないところ。
 ここでしかし、後手に選択肢がある。次の2つである。
  5六角成
  6七角成
 (4五角成は、6五歩、同銀、5七桂があって後手悪い)

 この2つの手の後の展開を、探査していく。 


≪5六角成図≫
 5六角成(図)。 我々の考えでは、ここでの最善手は5七歩(次の図)である。
 (7六桂も有力だが、6五銀とされると、その後の先手のよい指し方がわからず、形勢不明)

≪5七歩図≫
 この「5七歩」には、[鷲]4五馬と、[鷹]6七馬とがある。

≪鷲の図≫
 [鷲]4五馬。
 ここで先手は2六桂。それには“3三玉”がおそらく最善と思われるが、まず「3五銀」(次の図)とした場合について、触れておこう。

鷲図01
 3五銀、同香、同馬、4一銀、4二金、5一竜、3三玉、3九飛(次の図)

鷲図02
 先手良し。 (以下、4四玉に、5二銀成、同金、同竜とする)

鷲図03
 2六桂に、“3三玉”(図)としたところ。
 対する先手の次の手が悩ましいところ。(選択肢が広い。しかしすぐに良くなる手もない)
 我々の選択肢した手は、“8二馬”(次の図)である。

鷲図04
 以下4四玉に、7三歩成とする。
 7六歩、7八歩、6六歩、3七桂、4六馬、3四桂、6七歩成、4五銀(次の図)

鷲図05
 4五同馬、同桂、同玉、7二馬(5四桂なら8三と)、4六玉、3七飛(次の図)

鷲図06
 次に3五角の一手詰。4四銀引で後手はそれを防ぐが、先手は3六馬、5五玉、4七飛と後手玉を追う。
 以下、5四桂と抵抗するも、3七角、6六玉、5九角、5五銀左、4五馬、6五銀、4八角(次の図)

鷲図07
 4八角は、次に5六歩、5七銀、同角、同と、7七金以下の“詰めろ”。 先手勝ちとなった。
 この変化は、先手の馬が7二馬から使えたのが勝因となった。

鷲図04(再掲)
 先手の“8二馬”まで戻って、ここで7四歩(先手7三歩成を指させない)と手を代えてみる。 
 以下3四桂、4四玉に、4六歩(次の図)

鷲図08
 ここで“4六歩”と打つ。
 さて、後手はこれを、銀で取るか、馬で取るか。

 まず4六同銀には、先手5六銀がある。以下、馬を逃げても勝ち目がないので、後手は5七銀成とし、4五銀、同玉で、“入玉”をねらう。
 先手は3七角(次の図)

鷲図09
 5六玉、5九角、4八銀、6四馬、同銀、2六飛(次の図)

鷲図10
 図以下は、4六角、6一竜、6三歩、6六金、4七玉、4六飛、5八玉、4八角となって、先手勝ち。

鷲図11
 今度は“4六歩”を、同馬(図)の場合。
 これには、4二桂成という手がある。同銀なら3四飛、4五玉、5四銀で後手玉詰み。 なので4二同金と取って、3四飛、4五玉、7二馬、5四桂、3一飛成(次の図)となる。

鷲図12
 このような、後手玉が“入玉”を計ってきたときに、5七に打った歩が、たいへん有効になっているのがわかるだろう。
 さて、この図、後手玉に3四竜までの一手詰がかかっているが、受けが難しい。3三歩は、3四銀、4四玉、4五歩、同馬、同銀、同玉、4二竜で寄ってしまう。3六歩もあるが、3四銀、4四玉、4五歩、3五玉、4三銀成から攻めが続く。
 だから後手はここで、“5六銀”と、非常手段で勝負に出る。
 以下の想定手順は、5一竜左、5七銀成、3七銀(次の図)

鷲図13
 以下2四馬なら、3六竜、5五玉、4二竜で、5六馬には、4二竜左、同銀、3六銀、5五玉、3五竜で、先手勝ち。

 [鷲]4五馬は、先手良しとなった。

≪鷹の図≫
 「5七歩」に、[鷹]6七馬(図)の場合。
 ここは2六桂と打つ。後手は3三玉。
 そこで先手は選択肢が広いところだが、3四香と決めて、4四玉に、7三歩成としてみる(次の図)

鷹図01
 これには同銀が本筋だが、取らずに7六歩と攻めるとどうなるだろうか。

鷹図02
 そこで先手6八歩がある。同馬なら、4八飛で、王手馬取りだ。だからこれは取れない。
 後手は6六馬。
 以下、3七桂、5四銀、7一馬、6二歩、7八歩、(次の図)

鷹図03
 ここで7三銀と手を戻すことになる。 以下、7二馬、6四銀引と進む(6四銀上は4五銀、同銀、同馬、5三玉、5四銀、4二玉、2二飛で後手負けになる。6四銀引なら6六の馬筋が2二まで通って受かる)
 さらに、8五歩、同金、9四竜と先手は攻め、8四金、同竜、同歩、4六飛(次の図)

鷹図04
 先手勝勢。

鷹図05
 よって、7三歩成は、同銀(図)と取る。
 そこで先手は、6一竜とし、後手の応手を見る。
 6二歩には7二竜で銀取りの先手になる、6二銀右は8二馬があって後手損。
 だから、6二銀左引。6筋の歩は攻めに使いたい。
 そこで先手は、6八歩(次の図)

鷹図06
 ここは後手が悩むところで、ここで<p>6六馬と、<q>5八馬とが有力と見て、その2つを調査することにする。
 (他に、<r>7六馬は7七銀で<p>6六馬と同じになる。<s>5七馬は7六歩が打ててで先手良しとみる)

 <p>6六馬には、7七銀と打ち、6五馬に、7六歩。
 そこで後手が何を指すかだが、4五玉(入玉ねらい)が最善と思われるところだが、それには1五飛(次の図)という好手がある。

鷹図07
 この1五飛がなければ、先手は大変だったかもしれない。
 この将棋、先手は8四馬や5二竜という大駒を切る手をどこでどの順で出すかがポイントとなる。
 この1五飛に、4六玉なら、8四馬、同銀、4八金とする(次の図) 

鷹図08
 これでだいたい後手玉は捕まったようにみえる。とはいっても、先手は持駒なし。まだわからない。次に5二竜と金を取るつもり。
 ここで後手はどうするか。3五角くらいしかないようだ。(4七馬には5二竜、同歩、3七金打)
 3五角には、先手は7五歩。 これには7六歩があるが、同銀、同馬、5二竜、同歩、3七桂(次の図)

鷹図09
 以下、6六銀に、4五金、3六玉、3五金、2七玉、2九歩で、先手勝ち。

鷹図10
 1五飛に、5四玉(図)の場合。
 8四馬、同歩、4五金、6四玉、7五歩、2八角、6七桂、7六歩、同銀、同馬、5五金、5三玉、7七銀(次の図)

鷹図11
 以下、7七同馬、同金、1九角成、7四歩、6四銀、3五角、4四銀、同角、同歩、5四銀のような展開が予想されるが、後手玉を下段に落とし、先手勝勢である。

鷹図12
 6八歩に、<q>5八馬とした場合。この手はちょっとぼんやりした手だが、とりあえず先手の7六歩を打たせない意味がある。
 ここで先手7四歩がよい。同銀と同金があるが――
 同銀なら、8二馬、6四歩、5六銀(次の図)

鷹図13
 先手良し。(7四歩に6四銀上も同じように8二馬で先手が好調)  

鷹図14
 7四同金には、3七桂(図)と桂馬を使う。
 ここで3六馬には、3三香成という好手がある。(同桂なら3四飛の王手馬取りがある)
 よってこの図では5三玉くらいだが、以下、8三馬、8七歩、6五銀、6四金、8九金、6八馬、7三馬(次の図)

鷹図15
 7三同銀に、5四銀(これを同金は、同玉、4五金、5三玉、5四飛以下詰み)、4二玉、2二飛、3二角、同香成、同歩、3四桂、3三玉、5二竜となって、先手勝ち。

 どうやら7八金に、4五角成は、先手勝てそうだ


≪6七角成図≫
 7八金に、6七角成とするとどうなるだろうか。実はこれが強敵。
 先手は2六桂と打ち、3三玉に、<1>6八歩(次の図)

≪虎の図≫
 ここで後手が何を選ぶか。 6八同馬は、3四香、4四玉に、4八飛があって後手まずい。
 次の3つの手が有力と見る。
  [虎]5六馬、[豹]6六馬、[猿]5七馬

 [豹]6六馬は、3六飛と打つ手がぴったりで先手が良くなる。
 [猿]5七馬は、3四香、4四玉、7三歩成、同銀、7六歩で、これも先手が良さそう。

 [虎]5六馬が最有力(次の図)。

≪虎の図≫
 以下、3四香、4四玉、7三歩成、同銀、7六歩(次の図)と進むと次の図。

虎図01
 6七歩、6一竜、6二銀左、3七桂(次の図)

虎の図 6七歩の変化
 3七桂(図)が好手になる。以下、6八歩成、7五歩、7六歩に、5三歩(次の図)

虎図02
 5三同金は7四歩があるので、5三同玉。
 そこで4五銀。6五馬に、7二飛と打ち、6四馬に、5四桂がきびしい。
 これを後手は同馬と取るしかなく、同銀、同玉、8四馬、同歩、7三飛成(次の図) 

虎図03
 7三同銀は6五角以下詰み。先手勝ちになった。

 ここまでは先手順調だったが―――

虎図04
 戻って7三歩成に、素直に同銀がまずかったのではと、後手が反省し、やり直す。
 7三歩成に、7六歩(図)。
 ここで8三ととしたいのだが、それは8七歩で先手悪い。
 だから<E>3七桂とするが、7七歩成が後手の好手で、同金に、6六銀(次の図)

虎図05
 以下、予想される手順は、6六同金、同馬、9八銀、5五玉、4五飛、5四玉、6一竜、6三歩だが、そこで先手の攻めが止まる。後手には7七馬(詰めろ)がある。後手良し。

虎図06
 7六歩に、<F>8五歩(図)ならどうだ。
 8五同金、9四馬、7七歩成、同金、6六銀(次の図)

虎図07
 これもどうやら後手ペース。6六同金、同馬に、そこで4七飛という手があるが…
 以下、5五玉、8七歩、8八金、9八銀、8四歩(次の図)

虎図08
 まだ勝負はこれからだが、形勢は、やや後手良しと思われる。

 どうやら7三歩成に、7六歩で、後手良しになるようだ。
 これは困った。≪虎の図≫はでは、後手良しなのか?

虎図09
 今度は先手が“やり直し”だ。
 上では4八歩、5六馬に「3四香」としたが、「3四桂」(図)としてどうか。
 これには後手は2九馬と勝負する。以下、4二桂成、同玉、2二飛、3二桂、同香成、同歩、2一飛成(次の図)

虎図10
 “雰囲気”としては先手良しなのだが、ここで後手に4四銀上とされて、どうやら先手苦戦である。
 4四銀上に、6三銀は、6五馬、5二銀成、同歩で、後手良し。
 4四銀上に、7六桂はどうか。以下、
 7四馬、8四桂、同歩、9四馬、9五歩(次の図)

虎図11
 7四馬~9五歩の攻めが厳しい。後手良し。
 9五同馬には、8三桂、9四馬、9五歩があって、受けが利かない。

≪虎の図≫(再掲)
 つまりこの図は、“後手良し”という結論になった。

 すると、『香車ロケット2号作戦』も駄目ということになってしまう―――。
 なんとかならないか。ほんとに≪6七角成図≫は、先手に勝ち筋がないのか。

 ということで、我々は考えた。

≪熊の図≫
 先手はさらに2手手を戻し、<1>6八歩に代えて、<2>4五歩と代えてみる。それがこの≪熊の図≫である。
 このままでは後手は4四玉と出ることができず、それはまずいので、後手は4五同馬と歩を取る。
 そこで7三歩成とする。
 これを 同銀なら、3四香、4四玉に、7四歩と打つ。
 以下、同金、7六歩、6七桂成、8三馬、7七歩、3七桂(次の図)

熊図01
 4六馬に、9四竜、8四歩、4八飛(次の図)

熊図02
 先手良し。

熊図03
 7三歩成を 、素直に 同銀は先手良しになった。そこで今度は、後手は7三歩成に、7七歩(図)とする。
 対して7九歩では、7三銀で後手良し。
 しかし、3四香、4四玉の後、そこで7六銀という手がうまい(次の図)

熊図04
 7三銀なら7五銀がある。
 7八歩成には、同金だ。同馬に4八飛(王手馬取り)がある。6八歩を打たないでおくことで、この7八同金の手が生じたのである。
 そこで後手は、4六銀として、次に7八歩成を狙う。
 先手は7九歩と受け、以下、6七桂成に、8三と、7四金、4八馬(次の図) 

熊図05
 4八馬として、後手玉の“入玉”を許さない。
 5八金、3八馬、6六成桂、8七銀、7五金、8四と、7六成桂、7四と、8七成桂、同金、7六銀、7五と、8七銀成、同玉、7五銀、5六銀(次の図) 

熊図06
 先手優勢だ。

 ついに我々は「解」に辿り着いた。
 2つ目の「解」、すなわち「先手の勝ち筋」である。


≪3九香ロケット2号図≫
 『香車ロケット2号作戦』、成功である! 


                       『終盤探検隊 part96』につづく
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終盤探検隊 part94 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2017年01月11日 | しょうぎ
≪3九香ロケット2号図≫

 今回の研究テーマは、この図、『香車ロケット2号作戦』。


    [外宇宙へ]
 デュケーンはエンジンの燃料室のほうえちらと眼をやった。出発のときは、燃料室には銅シリンダーが一本挿入してあったのだが、今は空っぽである。彼はそれからノートブック、鉛筆、計算尺をとりだし、計算した。数分間かかった。
 (中略)
「どう解釈していいのか見当がつかない」と彼はドロシイのほうへ静かに言った。「動力がぴったり四十八時間全開していたのだから、われわれは太陽から二光日以上は離れていないはずだね。ところが観測してみると、二光日以上離れていることは確かなんだ。太陽から一光年かそこら以内らしい恒星が数個、それから星座がいくつか見えたからね。それでいて、ぼくのよく見知っている恒星も星座も一つも発見できない。だからこの船は四十八時間、たえず加速がついていたのだ。ぼくたちは地球から二百三十七光年ばかり離れたどこかに漂っている。君たち二人は一光年といってもわかるまいが、大体六千兆マイル――六千マイルの百万倍の距離なんだ」
 ドロシイの顔からさっと血が引いた。(中略)
「じゃあたしたち、もう絶対に帰れないわね?」
                                         (エドワード・E・スミス著『宇宙のスカイラーク』より )


 小説『宇宙のスカイラーク』は、SF小説の歴史においては重要な小説で、作者E・E・スミスがこれを書き上げたのは1920年頃だが、そのときはどこもこれを採用してくれる出版社がなく、1928年になって、ヒューゴー・ガーンズバック創設の<アメイジング・ストーリ-ズ>誌上で発表され、SFマニアの間で大評判となった。彼らは、「こんな小説を待っていたんだ」とばかりに狂喜したのである。

 “X金属”の発見によって、それを触媒にして、銅の質量をすべてエネルギーに転換できるとわかった。(すべて、というところが重要で、たとえば核分裂や核融合から取り出すエネルギーは、質量の1パーセントにもならない。) しかも“X金属”は触媒として働くものなので、それ自体はまったく減らない。質量をエネルギーに変換するのは「銅」の質量なのである。100%の変換なので、無駄なもの――つまり放射能――も出ないわけである。
 この小説の主人公リチャード・シートンは、その“すごい発見”を使って何をするか信頼できる友人と考えた結果、「宇宙船をつくろう!」、ということになった。
 いくつかの理由があって、宇宙船を2機つくることにした。一つは偽物で、もう一つは本物(といっても、両方とも宇宙へ飛び立てる)で、本物の宇宙船にはシートンの婚約者が「スカイラーク号」と命名した。「宇宙船」をつくることも秘密裏だったが、「スカイラーク号」をつくることはさらに“極秘”だったというわけだ。
 シートンは天才でスポーツ万能で見た目もよかったが、同じくらいの能力をもつ天才が彼の身近にいて、デュケーンというが、シートンと決定的に違うところは、デュケーンは悪いことも平気でできるというところである。(アンパンマンとバイキンマンみたいなものか)
 その“悪”のデュケーンは、シートンの“X金属”と宇宙船建造のことを知り、うらやましくてしかたがない。
 ある日とうとうデュケーンは、シートンの「宇宙船」を乗っ取り、衝動的に宇宙へ。(なりゆきでその宇宙船内にはシートンの婚約者ドロシイらもいた)
 しかしそれは“偽物”で、本物の「宇宙船スカイラーク号」は別にあったのだ。シートンとその友人は、「スカイラーク号」で、デュケーンとドロシイらの乗った宇宙船を追うべく、飛び立つ。
 ところがなんと、その2つの宇宙船は、「太陽系」を飛び出し、光の速度をも超えて、とんでもない彼方まで。 やがてエネルギー源の「銅」もすべて使い切ってしまう……。
 さあ、たいへん。

 というような話。
 この「宇宙船スカイラーク号」は、SF小説史上、はじめて「太陽系」から飛び出して「外宇宙」を冒険した宇宙船なのである。
 その全体の形は、球体である。 シートンの婚約者のドロシイがこれに「スカイラーク」と名づけたのだが、
  ドロシイ「考えられる名前は一つしかないわね。“スカイラーク”はどう?」
  シートン「それ以外にないよ。完璧な名前だ!」
 なぜ球体ボディの宇宙船に「スカイラーク(ひばり)」で、それが“完璧な名前”なのか、謎である。

 私たちは、この宇宙にはたくさんの「銀河」があって、私たちの「太陽系」を含む円盤型のおおきな「銀河」(天の川銀河)があり、そのとなりに「アンドロメダ星雲」と名づけられた銀河があることを知っている。
 人類がこのことに気付いたのは、約200年ほど前のこと。
 ウイリアム・ハーシェル(1738-1822 天王星の発見者として有名)は、望遠鏡で見えるすべての星について、その明るさと、「星の明るさはその星との距離の2乗に反比例して減少する」という法則とによって、星の位置関係をまとめてみた。もちろん恒星の大きさによって明るさは違うのでもあるが、距離の大きさから考えれば、恒星の大きさの違いなどそれほどのものではない、ということで。
 そうしてわかったことは、私たちは「円盤状」の銀河の中にいるということである。
 また、うすぼんやりとした「星雲(ネビュラ)」の存在はそれ以前から気づかれており研究者もいた。その代表者がフランスのシャルル・メシエで、彼は「星雲」を調べ、その天体マップをつくった。それは「メシエカタログ」と呼ばれており、アンドロメダ星雲(カタログ番号M31)ももちろん記載されている。メシエがこれを発表したのは1774年だが、まだこのときは、私たちの「天の川銀河」自体が発見されていなかったのである。
 どうやら、宇宙の星の分布は均等ではなく、「星々のかたまり」があることがわかってきたのであった。
 やがて望遠鏡が発達し、さらには1838年にドイツのフリードリヒ・W・ベッセルの白鳥座61番星の視差測定のアイデアによって、地球と星との絶対距離の計算方法の突破口が見つかるなどして、「天の川銀河」の大きさなど、19世紀にいろいろと解明されていった。
 とはいえ、実は「アンドロメダ星雲」はずっと「天の川銀河」の内部の星々だという意見のほうがずっと根強く、現在のような“外にある星雲だ”という結論に落ち着いたのは、1929年にアメリカのエドウィン・P・ハッブルが「アンドロメダ星雲」と地球との距離を発表して以後のことである。
 そのころになると、“宇宙(の星々の距離)はなぜ広がっているのか”というのが天文ファンの重大テーマになっていたのであるが。 

 そして『宇宙のスカイラーク』が登場し、以後、宇宙の話は「銀河」にまで物語を広げ、SF小説は1930年代~50年代の(内容的な意味での)黄金期を迎えたのであった。


≪8四金図≫
 前々回終盤探検隊レポートでは、この≪8四金図≫から、4一飛(新・黒雲作戦)、そして前回レポートでは3九香(香車ロケット1号作戦)を調査した結果を発表した。
 しかし結果はどちらも、「後手良し」と出た。
 先手をもっている我々終盤探検隊にとってはこれは残念な結果である。 最良の結果がでれば、後手番を持つ«主(ぬし)»との≪最終一番勝負≫に使うつもりだ。

 この図から、実はもう一つの候補手がある。 8六歩だ。

≪8六歩図≫
 ここで後手の手番。最善手は何か。
 ソフト「激指」は、「5六と」としているし、その後の我々(終盤探検隊)の検討を加えても、それは同じである。
 よってここは「5六と」で進めていくことにする。

 そこで3九香――――

≪3九香ロケット2号図≫
 ここで3九香と打つのが、『香車ロケット2号作戦』である。 この作戦の成否をこれから調べて行きたい。
 以下は、6六と、8七玉、7五桂、9七玉となる。
 “9七玉”とこの位置で頑張るのがこの作戦の特徴で、そこが前回の『香車ロケット1号作戦』との違いである。
 
 さて、そこで後手は2通りの手段がある。 <A>7七とと、<B>7六とだ。
 

≪7七と基本図≫
 <A>7七と(図)。 これに対して、先手は9八金と受ける。(ここは9八角もあるところで、9八金で先手勝てなければ、その後は9八角を検討しなければならない)

7七と図01
 9八金(図)と受けた。
 後手の手番だが、ここは8七桂成(8七と)と行くのが最善と思われるのだが、まず3三桂の変化を確認しておきたい。

変化3三桂図a
 3三桂(図)。 以下3四香、4二銀、3八飛(次の図)となる。
 3八飛に3二歩は、4一銀で、先手良し。

変化3三桂図b
 後手はここで6五銀とする。見た目以上にきびしい手で、次に7六銀とすれば8七に利いて“詰めろ”だ。
 これに対しては、3三香成、同銀、2五桂(4五桂)と攻めるのが最善。
 以下、4四銀引、3三桂成、同銀、3四歩(次の図)

変化3三桂図c
 3四同銀に、同飛だと、逆転負け。8七桂成、同金、同銀成、同玉、7五桂、7八玉、6六桂以下、詰まされる。
 3四同銀に、5五角と打つのが、先手のねらいで、4四桂に、7七角とと金を払う。
 以下、6六歩に、4五銀(次の図)

変化3三桂図d
 4五同銀なら、3三銀、1一玉に、8四馬と金を取って、先手勝ち。
 図からの予想手順は、3二香、3四銀、同香、同飛、3三銀だが、冷静に3八飛で、先手優勢である。


7七と図02
 どうやら、8七桂成(8七と)が後手の最善手である。
 8七桂成、同金、同と、同玉、7五桂、7八玉、6六歩(次の図)

7七と図03
 6六歩に6八歩と受けると、8七金であっさり先手負けが決まってしまう。
 ここは3四香と走る。
 以下、6七歩成に、8九玉(次の図)

7七と図04
 そこで後手がどうするかだが、〔肩〕3三桂は、4五桂で駄目。
 〔脇〕4二金も、5一竜、4一金打、同竜、同金、3七飛、4二飛、6三角(詰めろ)は、先手良し。
 よって、ここは〔腕〕4二金打(次の図)が最善とみられる。

4二金打図01
 以下、8八銀(後手の8七桂成と7七とを受けた)、6六銀、3七飛と進む。
 先手は、3七飛(図)と攻防に飛車を打った。
 ここで後手は緊急を要する。たとえば6五銀のような手だと、8四馬、同歩、3二金で先手が勝つ。
 だから後手は7七銀成、同銀、同と、同飛、6六歩と勝負してくる。と金を消すのはもったいないが、先手の飛車を3筋からそらすため、しかたないのだ。
 6六歩には、先手6八歩。後手は6九金(次の図)

4二金打図02
 6八金~6七歩成が後手のねらい。しかしそれを受けて5七銀では、6五銀で後手良し。
 3七飛と指したいが、この手は詰めろではないので、6八金で後手がよい。以下、3二銀(これが金だったら先手勝ちだったのだが)と攻めても、7八銀、9八玉、8七桂成、同飛、同銀成、同玉、3二歩である。

 だが、ここで先手に“絶好打”がある。

4二金打図03
 6三銀(図)。
 この手が絶好手で、一気に先手が優勢になる。
 次の5二銀成が“詰めろ”になるので、6八金は間に合わない。といって、4一銀と受けても、5二銀成、同歩、3七飛で、先手勝勢になる。(金と銀が入れ替わることで、3七飛が詰めろになっている)
 だから、後手6七歩成、同歩、4一銀なら、(先手3七飛がないので)後手もすぐには負けないが、5二銀成、同金、7八金とすれば、後手のねらいだった6八金の攻めがなくなっており、後手からの有効な攻めがなく、明確に先手優勢となる。

 結局、後手は6三銀を、同金とするくらいしかないのだ。
 すると、5一竜、4一銀、3七飛。 そこで後手1一玉が勝負手だが…

4二金打図04
 ここははっきり先手優勢だが、もう少し続けてみよう。先手がどうやって“勝ち”までたどり着くか、勉強だ。
 後手の1一玉は、早逃げで、“詰めろ”から逃れたところ。
 この手には、7八玉とするのが最も勝ちやすい手だ。金が入れば、2二金、同玉、4二竜以下の“詰み”が後手玉に生じる。
 7八玉、6八金、同玉、6七歩成、5九玉、2二銀、4八玉(次の図)

4二金打図05
 後手は2二銀として、穴熊城を再生させた。
 先手の方針としては、玉を安全な2八まで移動させて、それから3二金のような手で攻めていくことである。
 5六歩、3九玉、5五銀、4七歩、5七歩成、2八玉(次の図)

4二金打図06
 さあ、ここで手番が先手なら、3二金で、先手の勝ちがほぼ決まる。
 後手は非常手段で、4七と。 同飛に、5六歩、3七飛、4六銀。 飛車を目標にしながら、先手を惑わしてきた。3筋で飛車を安定させては、3二金で後手勝てない。
 3六飛、4七銀不成、2六飛(次の図)

4二金打図07
 2六飛として、今度は1五桂が先手のねらいになった。
 4四銀、3二歩成、同歩、1五桂、3三歩、3一金(次の図)

4二金打図08
 2三桂不成、同銀、2一金以下の“詰めろ”をかけて、先手勝勢。

 それにしても、この図は面白い図である。
 もともと、この将棋は「先手三間飛車美濃囲いvs後手中飛車左穴熊」の将棋だった。
 それが闘ううちに、先手玉は3五~4五~5四と遊泳し、9七まで行ったかと思うと、また2八まで戻ってきた。そして後手の穴熊も復活。いわば「相還元玉将棋」である。(しかも総手数は約200手)

 このように、先手が勝った。しかし結論はまだ早い。
 今のことを反省して、後手にも工夫の一手があるからだ。

4一金図01
 〔腕〕4二金打とする手に代えて、この図のように、〔肘〕4一金打とするのである。
 これなら、先ほどと同じように進んだとき、6三銀がないというわけだ。(6三銀には同金と取って続く5一竜がないので)

4一金図02
 「4一金型」に対しては、同じように途中まで進んで、(6三銀に代えて)3五桂(図)と打つ手が最善手とみられる。
 ここで後手の有効手は、(u)6八金と、(v)4四銀とがある。

 (u)6八金が一番指したい手だ。 それには、先手2四銀(図)と攻める。

4一金図03
 2四銀(図)には同歩だが、そこで8四馬。「2三」をこじ開けてから、金を取る。“詰めろ”だ。
 後手は1四銀と受ける。先手は7五馬(次の図)

4一金図04
 “眠っていた馬”が働いてきた。7五馬(図)以下、同銀、同飛、2三銀打、1五歩と進む(次の図)
 (なお、この図では後手6七歩成も考えられるところで、その変化は後で確かめる)

4一金図05
 7五同飛となった瞬間、後手玉には2三銀以下の“詰めろ”になっていた。それを後手は2三銀打と受けたのだが、そこで先手は1五歩(図)と攻めたのである。
 先手はすべての駒が働いてきた感じがあり、感触はとても良い。ただし相変わらずの“裸玉”である。
 6七角、9八玉、3四銀、1四歩、同歩、2六桂(次の図)

4一金図06
 2六桂(図)はやはり“詰めろ”。これを後手2三香と受け、それには7七金。
 以下、5六角成に、5七銀(次の図)

4一金図07
 先手勝勢である。

4一金図08
 今の手順の3四銀に代えて、6四銀としたのがこの図。飛車を攻めてきた。
 これには1四歩(次の図)

4一金図09
 後手がここで7五銀と飛車を取れば、1一銀、同玉、2三桂不成、2二玉、1三歩成、同桂(同香なら1一銀、2三玉、1二角、同玉、2二金まで)、3二歩成、同歩、1一角、2三玉、3三金、同歩、同角成までの、“詰み”。
 よって飛車は取れないので、3四角成(香車を取った)だが、それには1五桂(次の図)

4一金図10
 後手1四銀は、2三銀で詰む。受けがなくなったようだ。
 7五銀、2三桂右成、同馬、同桂成、同玉、5六角(次の図)

4一金図11
 3三玉なら、2二銀、4二玉、3三角以下詰むので、3四桂(香)と受ける手になるが、1一角、2二桂、4五銀とせめて、先手勝勢。

4一金図12
 3四角成に代えて、3四銀(図)の場合。 
 これは1三歩成。 これを同香は、同香成、同玉、1四香、同玉、2六桂以下詰むので、3三玉と逃げる。
 それには2三桂成(次の図)

4一金図13
 これを同銀は、4五桂と打って、以下4四玉に、4六銀で、先手勝ち。
 といって、4二玉と逃げるのは、3三銀、同桂、同成桂、同玉、2二角、4二玉、3三銀、5三玉、4四金(次の図)

4一金図14
 図以下、6三玉には5五桂で、6二玉なら7三歩成、同銀、7一竜以下、後手玉は“詰み”。

 以上のように、この変化は先手勝ちになる。

4一金図15
 手を戻して、途中、7五馬に、(同銀ではなく)、6七歩成(図)とした場合はどうなるのか。
 これには2六桂(詰めろ)とし、2三銀打、1四桂と進む(次の図)

4一金図16
 これを「同歩」と、「同銀」とがある。
 「同歩」には、1一銀と打ち、同玉に、2三桂成、2二桂(2二銀なら3二銀)、4五角(次の図)

4一金図17
 この4五角(図)が、2二成桂、同玉、3二金以下の“詰めろ”になっていて、先手勝勢。

4一金図18
 「1四同銀」(図)の場合は、ここで5六角と打つのがよい。これは3二金以下の“詰めろ”になっている。
 よって後手は1一桂と受けるが…

4一金図19
 それには3二銀(図)とする。
 以下、同歩、同歩成、同金、同香成、同玉、1二角成(詰めろ)、3一銀、3三歩、同桂、2一金(次の図)

4一金図20
 これも“詰めろ”(3一金、同玉、2二銀、4一玉、3二金、同玉、2一馬以下)
 先手勝勢。

 6七歩成の変化は、このように、結局後手は7五の馬も、7七の飛車も、どちらも取る余裕が与えられないまま寄せきられた。

4一金図21
 さらに手を遡(さかのぼ)って、先手の3五桂に(v)4四銀(図)なら、どうなるか。(これまでは後手6八金以下の変化を調べてきた)

 これには、5三歩と打つ。
 対して、<イ>同銀右引と、<ロ>4二金寄が考えられる。

 まず<イ>同銀右引は、8四馬と馬を切り、同歩に、7五飛。(この中段の飛車の位置がとても良い)
 そこで後手がどうするかだが、6八金では、2三桂成、同玉、1五桂から、後手玉が“詰み”。
 よって後手は4五角と王手で打って―――

4一金図22
 9八玉に、3四角として、香車を取る。
 そこで先手4六桂。 5六角と逃げると3四角だし、4五角は3七桂がある。
 したがって後手は3三銀と受け、3四桂、同銀、5六角で、次の図である。

4一金図23
 このラインを制して、先手が優位に立ったようだ。4五香(桂)なら、同飛でよい。
 なので、後手は5六角に3三銀だが、以下、2五銀、3五銀、同飛、4四銀上、3四銀打(次の図)

4一金図24
 3二金の受けは、2三銀成、同金、同角成、同玉、4一角、3二角、2四金、2二玉、3三飛成以下詰み。
 したがって受けるなら1一桂だが、3三銀成、同銀、3四歩、3二香、3三歩成、同香、3四銀打、3二銀、6一竜のように指して、先手勝勢。

4一金図25
 先手の5三歩に、<ロ>4二金寄の場合。
 これには、4三桂成と成捨てて、同金に、9二竜と引く(次の図)

4一金図26
 後手に適当な受けがない。4二桂は6三角で後手困る。
 そこで3二桂と受けるが、6三角、4二金上、3二歩成、同歩、5四桂(次の図)

4一金図27
 先手優勢である。 


7七と図2(再掲)
 『香車ロケット2号作戦』で、<A>7七との後を調べてきたが、この図のように「9八金」と受けて、先手良し、が結論である。
 今回調査した変化は、9筋の先手の竜と馬がよく活躍して、先手にとって気持ちの良い展開が多かった。今のところ、『香車ロケット2号作戦』はたいへん有力という印象である。


 しかしまだ、調査は半分。 後手<B>7六とがある。 

≪7六と基本図≫
 <B>7六とに対して、<A>7七との場合と同じように9八金と受けるのは、先手悪い。それは次のようなわけである。

7六とに9八金の変化図
 <B>7六とに9八金なら、後手は3五桂として有利になる。以下、7三歩成に、6六銀として、この図である。次に7七銀成(不成)がきびしく、後手良し。この図で7八歩としても、7七歩がある。


[参考 7七と型の場合]
7七と参考図01
 なお、<A>7七との場合、先手の9八金に、3五桂(図)と受けるのはこれは後手うまくいかない。それについて以下に述べておく。
 3五桂には、7三歩成とする。これを同銀は、3五香、同銀、3四桂、3三玉、1一角、3四玉、5五角成で、先手良し。
 よって7三歩成は取らず、6六銀と出るが、そこで先手7八歩(次の図)

7七と参考図02
 これを同とは、6三とで先手良し。また8七とも、同金、同桂成、同玉で、この場合次に先手2六桂が急所になるため後手が悪い。
 よって、7八歩には、7六と。
 そこで先手は6三と。後手6七桂成(次に7五銀上とする狙い)には、7二飛(次の図)

7七と参考図03
 この7二飛(図)は、次に5二飛成(詰めろ)が第1の狙いなので、後手6二歩と受ける。
 以下、5二と、7五銀上、8七金打(次の図)

7七と参考図04
 これで、先手勝勢になっている。
 (「7二飛、6二歩」を入れたのが繊細な、大事なところで、これをなしに単に5二となら、同じに進んで、8六銀、同金、同と、同玉、7五銀、9七玉、8六金、8八玉、7七歩、同歩、7六歩以下、先手が悪い。7二飛が打ってあるこの図なら、今の攻めは不発に終わる)

 こういうわけで、<A>7七との場合は、先手9八金に、後手3五桂は無効なのである。


7六と図01
 さて、<B>7六との研究に戻って、つまりここでは先手9八角(図)の一手。
 対して7六のと金を取られてはいけないので、6五銀が考えられるが、それは3四香で、はっきり先手良し。
 また図で8五桂という手もあるが、同歩、同金、8八玉、6六銀、3四香の展開は、やはり先手が良い。

 だからここで後手は8七桂成(8七と)がほぼ必然手になるのである。
 8七桂成、同角、同桂成、同玉、7五桂、9七玉、7八角(次の図)

7六と図02
 つまりここまではほぼ変化の余地がない。問題はこの後だ。
 まずこの図では、先手8八金がおそらく最善手。
 それに対して、後手の候補手は3つ。「4五角成」と、「5六角成」、それから「6七角成」だ。

 しかし4五角成には、6五歩、同銀、5七桂があって、以下、先手良しになる。

 ということで、この図から、先手8八金に、そこで後手は5六角成か、または6七角成、この二択。
 さあ、そこから先の形勢が問題だ。

                       『終盤探検隊 part95』につづく
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終盤探検隊 part93 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2017年01月09日 | しょうぎ
≪3九香ロケット1号図≫

 我々終盤探検隊(先手を持っている)は、来るべき≪亜空間の主(ぬし)≫との「最終決戦一番勝負」に備え、研究を続けている。
 図の「3九香」の「香車ロケット」で勝てるかどうか。それが今回のテーマである。


    [一九九九年一月 ロケットの夏]
 ロケットの夏。人々は、しずくの落ちるポーチから身を乗り出して、赤らんでいく空を見守った。
 ロケットは、ピンク色の炎の雲と釜の熱気を噴出しながら、発信基地に横たわっていた。寒い冬の朝、その強い排気で夏をつくりだしながら、ロケットは立っていた。ロケットが気候を決定し、ほんの一瞬、夏がこの地上を覆った……                                                 (レイ・ブラッドベリ著『火星年代記』より )



 レイ・ブラッドベリ『火星年代記』は、1950年にその初版本が発行された。
 つまりこの小説が書かれたのは1940年代だが、すると「ロケット」はまだ夢物語の時代である。ブラッドベリは20代の青年だった。

 1940年頃、「ロケット技術」が世界で最も進んでいたのは、ドイツ国である。(それまではロシアではツィオルコフスキーが、アメリカではゴダードが個人的に「ロケット」を実現化したいと頑張っていたが)
 世界大戦後、その最先端のドイツの科学者と科学技術を分け合った(取り合った)のが、アメリカ合衆国とソビエト連邦共和国である。ドイツで科学が世界一進んでいた理由は、19世紀後半から物理や化学を「教育」に取り入れて、国民全体で高める政策を進めたからである。19世紀までは、イギリスでもフランスでも、「科学」は時間をたっぷり持っている大金持ちの“趣味”でしかなかった。貧乏人が「科学」を学ぶ体制はドイツ以外では整っていなかったのである。
 ドイツの押し上げた「科学力」を土台に、「ロケット」が実現に向かって進み始めたのが1950年代で、それを進めたのがアメリカとソ連。ソビエト連邦のスプートニクが世界で初めて人工衛星を打ち上げ軌道に乗せることに成功したのは、1958年のことである。
 そのおよそ10年ほど前に、書かれた物語がこの『火星年代記』である。

 この話は、1999年1月から始まっている。この時に出発したアメリカ合衆国の「ロケット」が、火星に初めてたどり着く。
 以後、間をおかず次々と「火星探検隊」が火星に行くが、だいたいは先住民、すなわち火星人に殺されてしまう。
 ところが、探検隊の地球人がもたらした水疱瘡が原因で、火星人はほぼ全滅してしまう。しかし数少ないが生き残った火星人もいた。
 やがて地球人の火星移住が流行となり、火星に地球人の植民市がいくつもつくられ、繁栄する。
 生き残っていた少数の火星先住民たちは、ついに滅びてしまう。
 ところがその地球人の「火星移住ブーム」も一時的で、火星に移住した地球人たちはほとんど地球に戻ってしまう。それが2005年のことである。

 そうして、20年間、火星は忘れられていた。火星は、廃墟の街になった。
 そんな火星に、2026年の10月に、また新たな地球の家族が“火星人”になるために、「ロケット」に乗ってやってきた。――――というところで、この『年代記』は終わっている。
 この設定では、2026年に、「ロケット」は、“家族”でも手に入れられて火星まで乗って行けるような身近なものになっている。キャンピングカーのように。

 「ロケット」に固有の名前をつけず、すべて「ロケット」と呼んでいるのが、文学的に、なんとも面白い効果をつくっている。
 どんな技術をつかった「ロケット」なのかも説明されない。

 にもかかわっらず、年月ははっきり記されている。
 この物語の作者レイ・ブラッドベリは2012年まで生きたようだ。


<香車ロケット1号作戦>

≪8四金図≫
 この図から、前回は4一飛(新・黒雲作戦)を調査した結果は、残念ながら、後手良しと出た。
 今回のレポートは、もう一つの候補手“3九香”についての調査報告である。 

≪3九香ロケット1号図≫
 この作戦を、『香車ロケット1号作戦』と呼ぶことにした。
 ここで、後手がなにを指すかだが、次の3つの候補手がある。
  〔木〕3五桂
  〔林〕4二銀
  〔森〕7五銀

3五桂図01
 〔木〕3五桂には、同香、同銀に、3四飛(次の図)がある。

3五桂図02
 これは先手良しになる。
 以下一例は、3三桂、3五飛、7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、7六銀(次の図) 

3五桂図03
 7六銀で先手玉には“詰めろ”がかかったが……
 3四桂、3二玉、2二金、4一玉、8六角(次の図)

3五桂図04
 8六角(図)が“詰めろ逃れの詰めろ”で、先手良し。
 6七となら、3一金、同玉、5三角成、同金、5一竜以下“詰み”。
 角道を遮る7五香はあるが、これは先手玉への詰めろになっていないので、8四馬と質駒になっている金を取って、先手が勝ち。

 この通り、〔木〕3五桂は先手良し。


4二銀図01
 〔林〕4二銀と受けるのはどうか。
 これに対しても3四香は、今度は先手が悪くなる。
 7五銀、7七玉、8五桂、8八玉、7六桂、9八玉、3三銀(次の図)

4二銀図02
 これが後手の狙いで、これは後手良しになる。後手に香車が入ると、9七香、8九玉、7七桂不成以下、先手玉が詰んでしまうのだ。

4二銀図03
 この場合は、すぐの3四香がまずかった。4二銀には、5三歩(図)が正解手である。
 5三歩には、後手は2つの道がある。一つは(1)5三同銀引とする手。もう一つは(2)7五銀から攻める手である。
 
 まず(1)5三同銀引。 これには、3四香と走って良い。銀をバックさせたので、先手の玉がその分安全になったからだ。
 3四香に3三桂と受けた場合は、先手8五銀として、“入玉”ねらいで先手良し。

 3四香に3三銀は、以下、同香成、同桂、3四銀(次の図)となる。

4二銀図04
 6四銀上、4一角、7五銀、7七玉、3二香、2四銀(次の図)

4二銀図05
 これで後手玉は“受けなし”になった。 1一桂には、3三銀直成、同香、3四桂以下、詰みである。

4二銀図06
 先手5三歩に、(2)7五銀と攻めてきた。
 これには7七玉しかないが、後手は8五桂、8八玉、7六桂、9八玉まで決めて、そこで5三金と手を戻す(次の図)とどうなるか。

4二銀図07
 ここで先手は待望の3四香。以下、3三桂には、同香成。
 これを同玉は1一角で先手勝勢になるので、3三同銀だが、そこで先手は6二飛と王手(次の図)

4二銀図08
 3二歩なら、5一竜で、後手玉は"詰めろ"。そして先手玉は6二飛が受けに利いていて、"詰めろ"を逃れている。
 5二金には、同飛成、同歩、3四桂(次の図)

4二銀図09
 3四同銀に、1一角から“詰み”である。先手勝ち。

4二銀図10
 というわけで、後手は攻め方を変える。 6六銀左(図)。
 8八玉に、7六桂、9八玉、7七銀成と“詰めろ”で迫る(次の図)

4二銀図11
 結論から言えば、この図は(正しく指せば)先手勝ち。
 8九金か7九金でも勝てるが、ここは3二歩成からの勝ち方を紹介しておく。
 3二歩成、同歩(同玉は3四香、3三桂打、7九金、5三銀、3三香成、同桂、3四桂で先手良し)に、5五角と打つのである。
 以下、3三銀、7七角、8五桂、5五角(次の図)

4二銀図12
 ここから、[a]4四銀と、[b]5六とを考える。

 [a]4四銀は、3四香、5五銀、3二香成、同玉、3四飛、3三角、4一銀(次の図)

4二銀図13
 詰んだ。先手勝ち。

4二銀図14
 今度は、[b]5六と(図)。
 これには3一銀と打ち、同玉、5二歩成で次の図。

4二銀図15
 9七銀、8九玉、2二玉、3四香。
 そこで5五と(角を取る)は、3一銀以下詰みがあるので、後手は1四歩とする。
 しかしそれも、3三香成、同桂、1一銀(次の図)

4二銀図16
 やはりこれも“詰み”。 1一同玉に、3三角成、同歩、2一金、同玉、3二銀以下。(図で1三玉は、2二銀打、2四玉、3三角成、同歩、2五飛以下)

 以上の調査から、「後手〔林〕4二銀も、先手良し」と結論する。

 ここまで、「3九香」と打った先手の「ロケット」の威力が十分に発揮されている。


7五銀図01
 〔森〕7五銀が、どうやら後手の最強手である。
 7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、7六桂、9八玉、7七銀成。
 そこで上でやったように3二歩成、同歩、5五角で先手良しに思えるが(〔林〕4二銀のときはそれでうまくいったが)、3三歩、7七角、8五桂、5九角、6八との進行は、先手苦戦である。
 だから、7九金(次の図)と受ける。

7五銀図02 
 先手が7九金(図)と受けたとき、手を渡された後手がどうするか。
 <ア>3五桂と、それから<イ>8六桂という手がある。

7五銀図03
 <ア>3五桂(図)と受けたが、この場合、先手がすぐに3五同香、同銀、3四飛と攻めていくのは、金を受けに使ってしまっているため後手玉への詰めろになっておらず、8五香と打たれて、後手優勢となる。
 ではどうするか。

7五銀図04
 ここは5五角と打つのがよい。
 後手6七となら、3二歩成、同玉、2二飛、4一玉、3二歩、同歩、2一飛成、4二玉、8四馬で、これは先手勝ち。
 だから後手は何か工夫をしなければならないが、8八成銀、同金、4四銀が、その“工夫”。 この4四銀に、7七角なら、6七とで、これは後手良しになる。

7五銀図05
 しかし後手の4四銀には、5四飛(図)がうまい切り返し。
 これに対して、後手は適当な手がなく、この図は先手優勢である。
 ソフト「激指」はここで後手最善手は3三銀としているが、その手には3五香で先手が良い。
 図で5五銀なら、どうなるのか。
 それは5二飛成(取ると詰み)、3三玉、5一竜左で、先手勝勢である。

 <ア>3五桂は、先手勝ちになった。

7五銀図06
 戻って、<イ>8六桂(図)で勝負する手がある。以下、同歩、同銀。
 (図で9七玉で先手良さそうにみえるが、8八桂成、同金、同成銀、同玉、7六銀は、先手悪い)
 さて、この“詰めろ”をどう受けるか。8八歩では、同桂成、同金、6七とで、後手勝ち。

7五銀図07
 8九飛(図)と受けるのが正着となる。
 この手に対し、8八桂成は、同飛で受かっている。(同金だと後手勝ち)
 すなわち、8八桂成、同飛、同成銀、同金、6八飛には、2六桂(詰めろ)で、先手優勢だ。
 ここで6九金という手がある。(6八ともあるが、だいたい同じ進行になる)
 6九金には、2六桂(4六桂)と攻め合う。 以下、7九金、3四桂、3三玉、1一角、3二玉、2二角成、4一玉、8六飛(次の図)

7五銀図08
 8八桂成、同飛、同成銀、同馬、6八飛、2二銀(次の図)

7五銀図09
 2二銀(図)と打って後手玉に“詰めろ”をかけて、先手勝ちになった。
 ここから6二金と粘る手があるが、3一銀成、5二玉、6四歩、同飛成、5五桂で、後手玉はたすからない。

 <イ>8六桂には、同歩、同銀、8九飛という受けがあって、先手良し。

 以上により、〔森〕7五銀は、先手良し」と結論が出た―――すると、この『香車ロケット1号作戦』は成功で、終盤探検隊は2つ目の「先手勝ち筋」を得たことになる。
 しかし、ほんとうに「先手良し」なのか。
 我々の調査に、“穴”はないのか―――?

 よく調べた結果、“穴”はあったのである。
 後手の「好手」が見つかった。


6六銀右図01
 〔森〕7五銀、7七玉の後、6六銀左に代えて、「6六銀右」とする手が発見されたのである。“左”ではなく、“右”で行くのだ。
 この手の意味は、「7五」に空間をつくるということである。これによって、7五桂と打つことができるというわけだ。(5五銀を残すことで先手の3二歩成、同歩、5五角の狙いも消している)
 それで、形勢はどうなるだろうか。
 
 6六銀右に8六玉は、8五桂があって、先手悪い。(以下、7六金、7七桂成、同金、同銀不成、同玉、8五桂…)
 よって、6六銀右の後は、8八玉、7六桂、9八玉、7七銀成、9七角(次の図)のように進む。

6六銀右図02
 後手7七銀成に、上と同じように7九金と受けると、7五桂と打たれ、すると7八角くらいしか受けがなく、それには6七とが“詰めろ”(8八桂成以下)で先手負け。
 図は、<カ>9七角と工夫して受けたところ。(ほかに<キ>7九角も有力でこれは後で調べる)
 後手はここでも7五桂だが、これには8六金と受ける(次の図)

6六銀右図03
 先手は良いタイミングで、7五金、同金、同馬を決行したい。それがこの9七角~8六金の受けの狙いである。(ただし、すぐにそれを決行するのは、後手8八金から詰まされてしまう)
 ここで後手は6七と。これは詰めろではないので、先手は3四香とロケットを走らせる。これは3二飛からの“詰めろ”だ。
 よって後手は3三桂とそれを受け、先手は3八飛(次の図)

6六銀右図04  
 (y)3八飛。 これも後手玉への“詰めろ”なので、後手は3二歩とそれを受ける。
 3八飛と打って、「8八」への受けの利きを増やしたので、“ねらいの7五金”を決行する。
 7五金、同金、同馬。
 しかしそれでも後手は8八金と打ってくる(次の図)

6六銀右図05
 8八同角、同桂成、同飛、同成銀、9七玉、7八飛(次の図)

6六銀右図06
 7八飛(図)は、“詰めろ”(8七成銀以下)。
 先手8六玉なら、8七成銀、8五玉、7五飛成、同玉、5七角以下、詰み。
 図で抵抗するなら、7六金だが、それも6八角と打たれて、先手負けである。

 この図で3四の香が盤上から消えれば3四桂から後手玉が詰むのだが…。
 後手玉に詰みはない。しかし図で、3三香成に同歩なら、3一銀、同玉、5三馬から詰みがある。だが、3三香成に同玉で、詰みなしである。

 この順は、先手の負け。

6六銀右図07 
 (z)3六飛。 (y)3八飛と打つ手に代えて、ここに飛車を打った。
 後手3二歩に、8四馬と金を取り、同歩に、3三香成、同歩、3一銀、3二玉、2二金、4一玉(次の図)と、後手玉を追い込む。

6六銀右図08
 先手に後手の「7七の成銀」が手に入れば、それを3二に打って…。しかし現状、角を後手に渡したので、先手玉に後手8九角からの詰みがある。
 そうしたことを踏まえて、この図で先手に2通りの候補手が考えられる。 7六飛と、8九桂だ。
 まず、7六飛は、同成銀、同金、6八飛(次の図)

6六銀右図09
 これは先手玉が詰んでしまった。8八合、8九角、同玉、7八飛成、9八玉、8七桂成まで。また8八角とするのも、8九角、9七玉、8八飛成、同玉、7八角成以下。

6六銀右図10
 戻って、8九桂(図)と受けるのはどうか。
 これには後手8八角がある。7七桂なら、9七角成~7九角で、先手玉詰み。
 よって、8八角に7五金(9七角成~7九角に8六玉と逃げる意味)としてみるも、8六香(次の図)がある。

6六銀右図11
 8六同歩なら9七角成~7九角、8六同角なら、9九角成から“詰み”。
 
 これでどうやら、<カ>9七角以下は、「先手の負け」が確定である。


6六銀右図12
 <キ>7九角と受けた場合。
 やはり後手は7五桂。先手は8六金(次の図)

6六銀右図13
 ここで後手の指し手がむずかしい。
 たとえば6七とは、3四香、3三桂、同香成、同玉、3五飛で、先手良しになる。また、6八とは、3四香、3三桂、3七飛、4二銀、7七飛、7九と、7六飛…、これも先手良し。3三玉は3七飛だし、6六銀は、3四香、3三桂、3六飛がある。
 どうやら後手の最善手は、6九金である。

6六銀右図14
 前図より、6九金、3四香、3三桂と進んだところ。
 ここで9七角と、8四馬が、先手の候補手となる。(3九飛、4四銀引、6九飛は、6八とで、先手敗勢)
 
 9七角に、後手は6八金。(次に7八金が狙い。この手に代えて6八とは3三香成、同玉、3七飛から、7七成銀を取られ、後手悪い)
 先手は3八飛と打つ。
 対して後手3二歩なら、先手が勝てる。8四馬、同歩、3三香成、同歩、3一銀、3二玉、2二金、4一玉、6八飛、同と、4二金まで。
 したがって、後手は4四銀引と受ける。
 以下、先手4五歩に、後手7八金(次の図)

6六銀右図15
 7八金(図)で先手玉に“詰めろ”がかかった。
 7八同飛、同成銀、7六金、8九飛、7九桂、6八と(次の図)

6六銀右図16
 6八と(図)は詰めろではないが、後手玉にも詰めろがかからない。
 4四歩、7九と、8六金打、8五桂、同金右、同金が予想されるが、後手勝勢である。

6六銀右図17
 「6六銀右図14」に戻って、8四馬(図)とする手を検討する。
 以下、同歩、3三香成、同玉、3五飛、3四香、2五桂、4二玉、3三銀、4一玉、5五飛、8八桂成(次の図)となる。途中、3五飛に4四玉は4五金がある。この変化のために、先に8四馬から金を入手したのだ。

6六銀右図18
 5五飛で銀を取り、次に5三飛成が先手のねらいだが、後手は8八桂成(図)。
 これは8八で清算して、6六角の“王手飛車取り”が後手の意図だ。
 それはまずいので、8八同角、同成銀に、9七玉とする。
 しかしその手には、8七桂成、同金に、6四角があった(次の図)

6六銀右図19
 こちらから“王手飛車”である。
 以下、8八玉、5五角、9七玉、6四角打、8六歩、9九角成、9八金、8九馬、2一銀、3二香、2二銀成と進んで、次の図。

6六銀右図20
 後手玉は、3三桂打、同香、3二銀打以下、“詰めろ”がかかっている。
 なので後手は4二銀とそれを受ける。
 以下、7三歩成、6八飛、8八銀(8八桂は7六歩が詰めろで後手良し)、7三角、9四竜、1九角成、3三歩、同香、3二歩、5五馬(次の図)

6六銀右図21
 後手7六歩(詰めろ)が入れば、はっきり後手優勢になる。
 9五竜、6五香、9二竜(5三桂以下の詰めろ)、6二歩、5四桂(3一歩成以下詰めろ)、6三金(次の図)

6六銀右図22
 これで後手勝ちになった。
 この6三金は、“詰めろ逃れの詰めろ”になっており、ここで先手6二桂成には、8八馬引からばらして、7八金、同玉、6七と以下、先手玉が詰む。
 3一歩成には5二玉である。


6六銀右図01(再掲)
 以上の探査の結果、先手の『香車ロケット1号作戦』は、後手の7五銀、7七玉、6六銀右(図)という巧妙な攻め手があって、「後手良し」―――が結論となった。



[補足]  結論は以上の通りなので以下は蛇足になるが、『香車ロケット1号作戦』の調査研究の補足として付け加えておく。

4二銀図03(再掲)
 これは、〔林〕4二銀に、先手が5三歩と歩を打ったところ。
 この場合も、7五銀、7七玉に、6六銀右があるわけだ。この変化はやっていなかった。
 
4二銀図17
 ところが調査の結果、この場合は、6六銀右は不発となる(つまり先手良しになる)とわかった。
 これはその調査結果である。
 ここで8八玉なら、7六桂、9八玉、7七銀成、7九金、7五桂で先手悪い(7七銀成に9七角の受けもやはり7五桂で後手良し)
 また、図で8六玉も、8五桂、7六金、7七銀不成、同金、同桂成、同玉、8五桂で後手良し。
 ところが、図で7六玉として、先手良しになるのである!

4二銀図18
 ここで8五桂は詰めろになっていないので、5二歩成で先手優勢。先手玉には6五~5四という逃走ルートもある。後手の銀が4二にまで引いた形なので、6五~5四の道があるのだ。
 また5三金は考えられる手だが、3四香、3三桂、同香成、同玉、1一角、2二桂、4五桂、4四玉、5三桂成は、先手良し。
 よって、後手はここで6四桂と打つことになる。これには8六玉しかないが、そこで8五桂としばってくる。
 これを先手は7八飛と受けるのだ。

4二銀図19
 これで先手良しというのだから……。これを時間のない実戦で読み切って指せれば達人のレベルである。
 6四に一枚桂を使わせたことで、後手の攻めの力をこの場合は弱くしている。
 ここで6七となら、3四香、3三桂、8四馬、同歩、9四竜、7八と、9五玉と“入玉”作戦で先手良し。
 したがって、この図で後手は、7七銀不成、同飛、同桂成と攻めてくるのが考えられる。
 それには5二歩成とし、以下、7六飛、9七玉、3三銀、5一竜として、後手玉には“詰めろ”がかかっている。

4二銀図20
 しかし後手は適当な受けがないので、9五歩(図)。
 先手3一竜、同玉、3二歩から、後手玉は“詰み”。

 つまり、〔林〕4二銀の変化では、「6六銀右」は有効手とならない

6六銀右図22
 ところで、これは、〔森〕7五銀の変化で、7七玉、6六銀右に、「7六玉」とした場合。
 それには図のように、8五桂で、この場合は後手良しなのだ。「5三銀型」なので、7五銀、6五玉、6四銀左引の“詰めろ”になっているからである。
 したがってこの変化では、「6六銀右」が有効となるのである。


 もう一度結論を示しておく。

≪3九香ロケット1号図≫
  〔木〕3五桂 → 先手良し
  〔林〕4二銀 → 先手良し
  〔森〕7五銀 → 後手良し

 これが結論となる。 後手の手番なので、〔森〕7五銀を選び、7七玉、6六銀右以下、後手良しとなる。


 さて、「1号」があるなら、もちろん、「2号」がある。
 次回は、『香車ロケット2号作戦』を検討調査する。

                       『終盤探検隊 part94』につづく
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終盤探検隊 part92 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2017年01月03日 | しょうぎ
≪8四金図≫

 終盤探検隊は「先手」を持って、そして≪亜空間の主(ぬし)≫が「後手」を持って、我々は≪戦争≫を繰りひろげてきた。この≪亜空間戦争≫は、何度でも手をさかのぼってやり直しができるという、特殊ルールで、そのために「終わりがない」戦いであった。
 我々と≪ぬし≫は、このたたかいに決着をつけるため、≪最終一番勝負≫を行うことと決めた。

 その“決戦の日”はまだ先だ。
 今回の報告は、その決戦に向けての準備としての「研究」である。


    [さすらいの山の古老]
古老は書き、いった。

 もしも はてしない物語が
 自身をその中に含むなら
 この本の中の世界は
 亡びてしまうのだ
 
幼ごころの君は答えた。

 いいえ、もしもかの勇士が、
 わたしたちに加わるなら、
 新たな命が芽生えましょう。
 今こそかれも、心を決めるでしょう!

「まことに、おそるべき方じゃ、君は!」古老はいい、書いた。「最初からまたはなすということは、終わりなき終わりじゃ。われらははてることのないくりかえしの環にはまることになる。そこから逃れるすべはない。」                                          (ミヒャエル・エンデ著『はてしない物語』より )



 M.エンデ著『はてしない物語』(『ネバー・エンディング・ストーリー』として映画化もされている)は、少年バスチアンが、古本屋で見つけた本を読むうちに(その本のタイトルが『はてしない物語』)、その本の物語の中で必要な人物となって、本の中に入っていく話である。
 上に切り取った場面は、その本を書いた古老と、本の中の物語の“中心”である幼ごころの君との会話であるが、本来出会ってはいけない二人である。そうせざるを得ないほどの大ピンチが本の中の世界(=ファンタージエン)に訪れていて、幼ごころの君は、それを救うのは“かれ(かの勇者)”しかいないと言うのである。
 “かれ”とは、この本を読んでいる少年、バスチアンのことであった。
 バスチアンは“勇者”として迎えられ、ヒーローとして大活躍。前半はそういう話。
 しかし活躍して自信を得たのはよいが、そのうちにバスチアンは自分を見失い(性格も自己肥大してしまい顔も姿も変わる)、本の中の世界(=ファンタージエン)から現実世界に戻れなくなってしまう。
 ある日ハッと気づき、戻りたい、どうしたら現実世界に戻れるのだろう―――というような話が、後半部である。

 何かに“感情移入”することは楽しいことである。しかし夢中になるあまりいつの間にか、帰り道がわからなくなるようなことは、実はだれもが何かしら経験することである。
 時にそれは危険な旅になることもある。

 我々のこの≪亜空間の旅≫も、そういう危険な旅だったようである。
 棋譜の観測者であった終盤探検隊は、“感情移入”して先手番に肩入れしていたら、いつの間にか「先手番」をもって闘う立場になっていて、この≪亜空間戦争≫から抜け出すことはできなくなっていたのである。
 唯一の脱出方法は、「勝つこと」である。


≪夏への扉図≫
 この図から、3三歩、同銀、3四歩、同銀、9一竜、5九金、6六角、5五銀引、9三角成、9四歩と進むのが、我々終盤探検隊が≪亜空間の主(ぬし)≫を相手につくってきた“定跡”である。
 
≪9四歩図≫
 後手の9四歩(図)に、そこで、3三歩、3一歩、4一飛と進めば、これが先に終盤探検隊が成功して勝利の雄叫びをあげた『黒雲(くろくも)作戦』である。この道で「先手勝てる」と信じている。
 
 さて、ここではその道ではなく、この≪9四歩図≫から、「3三歩、3一歩」の後、“9六歩”とし、すると後手は先手の8五玉からの“入玉”を阻止するために8四金(次の図)と金を打つのがほぼ必然手となる。

≪8四金図≫
 ここで我々は、新たな二つの有力手を試したいと考えている。
 一つは、4一飛。 もう一つは、3九香だ。
 (すでに「勝ち筋」を一つ見つけてはいるが、もっとよい道があればそれに越したことはない)


<新・黒雲作戦>

≪4一飛図≫
 『黒雲作戦』は、「3三歩、3一歩」のすぐあとに「4一飛」と敵陣内に飛車を打ち込む作戦であったが、その飛車打ちを保留して、「9六歩、8四金」の後に、“4一飛”(図)はどうだろうか、というのが以下の研究テーマである。
 ここでのこの、“4一飛” を、『新・黒雲作戦』と呼ぼう。

 先手の9六歩に、後手が8四金としたのは、先手の8五玉からの“入玉”を阻止するためだ。先手を持つ終盤探検隊は、この「8四金+9四歩」の後手の壁を見て、どうやら“入玉”は無理と悟り、ここは先手自信なしと以前は一旦あきらめた図なのであった。
 しかし、落ち着いて考えてみると、この場面で8四金と打つのは、後手としてもそれほど嬉しい手ではないだろう。後手も“しかたなく”打ったという面がある。実際、先手の9六歩には、8四金以外の選択肢がない場面なのだ。
 だから、先手も強気に考えて、“後手に8四金と持駒の金を使わせた”として、そこで4一飛から敵を倒す(つまり攻める)という考え方もありなのではないか。あの“8四金”を質駒にする展開がより望ましい。
 『黒雲作戦』のときの4一飛は、“攻めるぞとおどして入玉する”というような意味合いが濃かったが、今度の『新・黒雲作戦』は逆に、“入玉するとおどして金を使わせて敵玉を攻める”という思想の飛車打ちなのである。

 具体的に、指し手を見ていこう。
 図の“4一飛”は、3一飛成以下の“詰めろ”である。したがって後手は何か受けなければいけないが、どう受けるかというところ。
 考えられる手は、次の4つ。
  〔鉄〕4二銀
  〔銅〕3三玉
  〔錫〕3二桂
  〔鉛〕7五銀
 4つめの〔鉛〕7五銀は受けの手ではないが、先手玉をある程度王手で追ってから、後で受けようという意味である。
 我々は、検討の結果、後手の最強手順は「7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3三玉」であると、判断した。その解説をする前に、〔鉄〕4二銀でどう進むのか、それをまず示しておきたい。これもほぼ互角の闘いである。

≪4二銀図≫
 〔鉄〕4二銀と、後手が指したところ。
 後手としては、理想的には、4一に打った先手の飛車を取って、それを攻めに使いたい。だから、4二銀の後は、3三桂として3二玉~4一玉、または3三銀~3二玉~4一玉、それから3三玉~3二玉~4一玉もあり、この3通りのどれかを実現させたい。いずれにしてもあと3手の手数が必要である。
 それが無理なら、7五銀として、7七玉に、6六銀左や6五桂などで玉を下段に追い込むことをねらいとするのが後手の立場である。 

4二銀図01
 4二銀と引いた場合、5三歩(図)が手筋となる。次の5二歩成が“詰めろ”になるので、ここでは後手は放置できず、しかし取るなら、5三同銀引しかない。
 すると先手は7三歩成とと金がつくれる。
 以下、6四銀引、7四金、7五歩、8六玉、7三銀、同金、7四桂(次の図)

4二銀図02
 7四同金、同金、8五銀(次の図)

4二銀図03
 後手から7六金、9七玉、8五桂と攻められては負けなので、先手8五銀(図)とその攻めを受けた。8四金打なら、7四銀、同金、2六桂、3三銀、6一角と攻めていける。
 しかし8五銀にも、7六金と後手は打ってくる。
 7六金、同銀、同歩。そこで先手は攻めに転じる。
 2六桂、3三銀、5四歩(次の図)

4二銀図04
 この5四歩(図)で、代えて3四桂は、同銀なら3九香で先手勝てるが、3二玉とされるとどうも不利である。
 ここは図の5四歩が最善手と思われる。
 対して後手6四銀と出たいが、それは4二銀で後手玉に“必至”がかかる。6二銀は、3四桂で先手良し。
 よって4二銀右と引く。
 そこで3四桂。これを同銀は、6三銀で先手良し。
 したがって後手3二玉。

4二銀図05
 そこで6一銀(図)が決め手となる。先手優勢。
 4一玉なら、5二銀成、同玉、6二金、同玉、5三金、同銀、7一馬以下“詰み”。
 6二金には、5二金と打つ。この手は、4二金以下の“詰めろ”になっており、5二金を同歩も、同銀成で、先手玉は詰まないので、先手勝ちだ。(5二同銀成を同金なら、3一飛成、同銀、4一角まで) 

 〔鉄〕4二銀は先手良し、と結論したい。


≪4一飛図≫(再掲)
 「〔鉛〕7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3三玉」がおそらく後手の最善の手順である(次の図)

≪3三玉図≫
 図の3三玉に代えて3三桂は、8四馬と金を取った手が後手玉の“詰めろ”になっていて先手良しになる。
 だから3三玉だ。
 後手は7六桂と打つ手を保留している。これは場合によっては、7六銀と銀を使うことも含みにしている。
 ここで先手は、(1)1一角と(2)3一飛成と2つの手がある。
 (1)1一角とする手をまず見ていくと、これを2二桂と受け、以下3一飛成、4四玉、2二角成、3三歩、6一竜、6二歩、2一竜は、先手良さそう。
 ところが―――

変化1一角図1
 (1)1一角に、3二玉(図)と引かれる手がある。これが好手で、この図は先手不利である。
 先手には、3一飛成、同玉、8四馬という勝負手がある。8四馬を同歩なら、2二金以下後手玉が詰むが、しかし8四馬に2二桂と受けられて、9四馬、7六桂、9七玉、8九飛(次の図)となって―――

変化1一角図2
 先手負けである。(9五歩としても、9九飛成、9八香、8八桂成、9六玉、9八竜、9七金、同竜、同玉、8七成桂となって、以下先手玉は詰み)

≪3三玉図≫(再掲)
 したがって、この図では(2)3一飛成と攻めることになる。後手は4四玉(次の図)

≪4四玉図≫
 この“中段玉”をどう捕まえるか。(「激指」評価値は[-240])
 “中段玉”は捕まえにくいが、しかし先手には四枚の大駒がある。

 <r>4六金、<s>2六角、<t>4六香が候補手。
 以下順に見ていく。


変化4六金図01
 <r>4六金(図)には3三桂(3三歩も有力)。 以下、6一竜、6二歩、3八香(次の図)

変化4六金図02
 後手はここで8五桂。以下、3四香に、7六銀(次の図)

変化4六金図03
 先手玉はまだ詰まないように見えるが、実は“詰めろ”がかかっている。7七銀左成、8九玉、9七桂打、同香、同桂不成、9九玉、9八香、同玉、8七銀成以下。
 よって先手は、3三竜、5四玉として、取った桂馬を7九桂と受けに使う。
 対して後手は7七桂成、9八玉、7五桂(次の図)

変化4六金図04
 後手勝勢。

変化4六金図05
 3八香に代えて、2六角(図)はどうだ。
 3五歩、4五歩、同銀、3五金、5五玉、3三竜、7六桂、9八玉、3四歩(次の図)

変化4六金図06
 後手に金を渡すと先手玉が詰む。なので先手2五金。つらいがここはしかたがない。
 しかし7七銀成、8九香に、8八桂成、同香、7六桂と迫られて―――(次の図)

変化4六金図07
 “受けなし”になった。後手勝ち。

 <r>4六金では、どうやら先手に勝ちはない。


変化2六角図01
 <s>2六角(図)と打って、3五歩に、5九角と金を取るのはどうだろう。
 後手は6五桂と打つ。このままだと、7七桂成、同角、7六桂以下、角がタダ取りされてしまう。
 先手は4九香(次の図)。 王手。

変化2六角図02
 これを4五桂と受けてくれれば、4六歩で先手有望になる。
 後手は持駒の桂馬は攻めに使いたい。よって、4九香には4五銀と受ける。
 以下、6一竜、6二歩、2六角、7七桂成、9八玉、3三桂(次の図)

変化2六角図03
 3五角、5五玉、4五香(3三竜は4四銀がある)、7六銀、8六金、8五桂(次の図)

変化2六角図04
 先手は適当な受けがなくなった。後手勝ち。

 <s>2六角も先手勝てない。


変化4六香図01
 <t>4六香。 どうやらこの手が先手の最強手。
 4五桂と受けるのは、2六角、3五歩、6一竜、6二歩、6五金で、形勢不明(互角)。
 4六香には、後手5五玉で勝負。後手はなるべく二枚の桂馬を攻めに使いたい。
 当然先手は3四竜と銀を取る。
 以下、7六桂、9八玉、7七銀成(次の図)

変化4六香図02
 ここで(1)4五竜とするか、あるいは(2)7九銀と受けるか。

 (1)4五竜、6六玉、5五角、6七玉、7七角、同玉、7九銀、6六桂(次の図)

変化4六香図03
 この図はわずかながら後手が良いようだ。
 8八銀打と打つのは、同桂成、同銀、6八玉、7九金、5八玉、7五竜、同金、同馬、7八銀、6六馬、7九銀不成、同銀、6七歩…、やはり後手良し。 
 8九銀と受けると、5六角、8八金、同桂成、同銀直、6七玉、7五竜、同金、同馬、2九角成(次の図)

変化4六香図04
 やはり少し後手寄りの形勢だ。

変化4六香図05
 戻って、一旦(2)7九銀(図)と受けてみる。 

変化4六香図06 
 後手は6六玉(図)が最善手と思われる。
 そこで先手がどうするか。
 3五竜と、4三香成を考えていく。(4五竜は6七玉で後手良しがはっきりする)

 3五竜は、5五角や6五金を狙うと同時に、場合によっては3八竜のような活用を考えている。6七玉なら3八竜だ。
 とりあえず6五金と打つ手がきびしいので、後手は6四銀上とそれを受ける。
 以下、6一竜、6二歩、4三香成、同金、5一竜、8五桂(次の図)

変化4六香図07
 8五桂(図)と打たれて後手優勢になった。 後手玉に対する有効な攻めがありそうで、ない。
 今の手順、4三香成のところで他に良い手があればというところだが、形勢を先手に引き寄せるほどの手はないようだ。例えば6七歩、同玉、3八竜は、6八桂成と応じて、やはり後手が良い。

変化4六香図08
 戻って、4三香成(図)が有効な攻めで、同金、同竜は、次に4六竜と引く手を見て、先手有望となる。
 よって、後手は8五桂。これでどうなるか。
 対して先手5二成香は、同歩で、その時に8八桂成以下、先手玉が“詰めろ”になっていて、後手良し。

変化4六香図09
 なので、先手は8九角と勝負手を放つ。
 対して6七となら、3六竜、5七玉、4七金、5八玉、5六竜となって、これは先手良しになる。
 後手は4三金が正着。同竜は9七香の一手詰。
 なので先手は3六竜だが、5六香、6一竜、6四歩、4七金(次の図)

変化4六香図10
 4七金(図)で、後手玉に“詰めろ”をかけた。これが先手8九角のねらいだが…
 8八桂成、同銀、同成銀、同玉、7七桂成、9八玉、7八銀(次の図) 

変化4六香図11
 7八銀(図)で、逆に“詰めろ”をかけられた。これは後手優勢がはっきりした。
 それにしても、四枚の飛車角に囲まれても、それに負けないこの後手玉の強靭さよ。「参りました」と言うしかない。

 <t>4六香も先手は勝てなかった。


≪4一飛図≫(再掲)
 この「9六歩8四金型」での「4一飛」(新・黒雲作戦)は、7五銀、7七玉、6六銀左、8八玉、3三玉と対応され、先手が勝てないようだ。
 8四金と後手がここに金を打った後の4一飛は、先手の9三馬を5七馬と引く手がなくなっているので、後手3三玉から“中段玉”にされると捕まえるのが難しくなる。後手としては、なるべく持駒の桂馬を受けに使わないで、玉を捌いてかわすのが最良の応手となった。

 『新・黒雲作戦』は不発に終わった

 
 次回は、上図の4一飛に代えて、“3九香” と打つ攻めを調査してみよう。


                       『終盤探検隊 part93』につづく
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終盤探検隊 part91 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2016年12月30日 | しょうぎ
≪煙7四角図≫

 我々終盤探検隊は、≪亜空間の主(ぬし)≫を相手に、≪亜空間戦争≫をたたかっている最中だ。
 ついに我々は求めていた「先手の勝ち筋」を見つけた、と思った。
 しかしこの≪亜空間将棋≫は、どちらかが望めば、時をさかのぼって(指手を戻して)、また闘いのやり直しができる―――そういう法則の特殊空間なのである。
 ≪ぬし≫は、またも手を戻してきたのであった。

 この将棋、もしかしたら、“終わりがない”のではないのか?


    [閉じこめられた可能性]
 頭(こうべ)をめぐらすと、いま、結晶星団が南東の地平をはなれ、青白くもえながらのぼってくる所だった。
 十四個の輝く恒星を、整然とした“神の檻”……そして、その中央に閉じこめられ、あらゆる物理観測を翻弄し、嘲笑し、拒絶する“謎の暗黒”……。
 今夜、アイは、その中心に挑むことになっていた。

 よくきた……わんわんひびく、奇怪な笑うようながいった。……よく来てくれた。宇宙開闢(かいびゃく)以来、このン・ンヘ――宇宙の封じ目へ来てくれたのは、お前がはじめてだ……。
「なにものだ?」と、アイはしめつけてくるエネルギーにもがきながらさけんだ。「ここで何をしている?」
 われわれは閉じこめられた可能性だ……と、「声」は嘲笑するようにいった。     
                                  (小松左京著『結晶星団』より)



≪夏への扉図≫
  【あ】5八同金  → 形勢不明
  【い】3三歩   → 調査中   
  【う】7三歩成  → 後手良し
  【え】9一竜   → 後手良し
  【お】6五歩   → 後手良し
 この≪夏への扉図≫から「先手の勝ち筋」を見つけることが、我々の課題となっている。
 ここで【い】3三歩を選択する。以下、同銀、3四歩、同銀、9一竜、5九金、6六角と進む。そこで後手が[炎]5五銀引と受け、9三角成、9四歩、3三歩、3一歩、4一飛と進むのが、我々がやっと発見した「先手の勝ち筋」である。

≪黒雲の図≫
 すなわち、この図である。

≪6六角図≫
  [炎]5五銀引  → 先手良し
  [灰]3三歩   → 先手良し 
  [炭]4四銀   → 先手良し
  [煙]4四歩   → 先手良し?
 しかし、それに至る前、先手「6六角」(この図)のときに、後手が [煙]4四歩とする変化を、≪ぬし≫は選び直してきたのだった。「こうしたらどうやって勝つんだ?」という挑戦である。
 その≪戦い≫も、一度は我々の勝利となったのであるが…
 [煙]4四歩以下、9三角成、8四金、8五金、7四歩、8四金、」同歩、同馬、8三歩、7四馬、7五金、同馬、同銀、8五玉、8四銀、9四玉、7四角と進んで次の図となる。

≪煙7四角図≫
 ここで7六角と打って、先手良し―――ということで、ここから先には進まなかった。最初の闘いでは。

煙図01
 「7六角」(図)と打つ手。この手が絶好にみえる。後手玉への“詰めろ”であり、後手の狙いの「9三歩、同竜、8五銀以下の攻めを防いでいる。
 だから後手はここで3二歩と打つしかない―――と思ったのが、我々の思考の誤りであった。
 たしかに、ここで3二歩なら、9三金として、先手良しだ。

 だが、≪ぬし≫は、次の手を示し、再チャレンジしてきたのだ。

煙図02
 「7六角」に、9三歩、同竜、同銀、同玉と、あっさり先手玉の“入玉”を許すというのが、我々の考えの盲点を突いていた。その後に、3二歩と受けるのだ。
 問題は、その後にどうなるか、どちらが勝つか―――ということである。

 9三歩、同竜、同銀、同玉、3二歩、8二玉、7七飛、7五飛、2九角成、7三歩、6五歩(次の図)

煙図03
 これはソフト「激指」は、「互角」と示しているが、“先手が勝ちきれるのか?”と考えると、それはちょっと自信がない。 先手玉のみ“入玉”しているのだから、先手の負けはないとは思うが…。 

煙図04
 やり直しだ。どうやら後手3二歩の次、先手は3三歩(図)が最善の手のように思われる。これを同桂は、なんと2一金、同玉、4一飛から“詰み”がある。
 よって、後手は3三同玉と応じるしかなく、以下想定手順は、3一飛、4五歩、3二角成、4四玉、2一馬、4三金(次の図)

煙図05
 こうなる。この図は、さて、先手は“勝てる”のだろうか?
 この後手玉を捕獲するのは相当苦労しそうだし、また“相入玉”になった場合を考えると、先手の大駒は2枚(=10点)、確保できている小駒(持駒)は10枚、合計20点。この将棋のルールは24点法なので、あと4点取れば先手に負けはない。それは簡単に実現できそうだ。しかし、“勝つ”には、あと11点、すなわち小駒を11枚確保しないといけない。それができるだろうか?
 やはり「持将棋引き分け」が、可能性として大きいと思われる。

 『黒雲作戦』によって、我々は「勝ち筋」をついに見つけた、と大いに喜んだ。であるから、もはや「引き分け」では、不満である。我々は、“勝ちたい”のだ。

煙図06
 もう一度、“やり直し”だ。
 「7六角」では勝ちきれないようなので、その手に代えて、「8六香」(図)ではどうだろう。
 以下、9三歩、同竜、同銀、同玉、2九角成、8二玉、6五馬(次の図)

煙図07
 これもやはり、“勝ちきる”のは難しそうに見える。7三歩でと金をとりあえずつくりたいが、7一歩(同玉なら6二銀でやっかい)と防がれる。7二歩は、5五馬とされ、先手が悪そう…。
 ということで、どうも先手玉は“入玉”したのだけど、まだ安全ではなく、なかなか敵を攻めていけない状況である。

 困った…。もしかして、これは先手に“勝ち”がない道に入っているのだろうか。
 そうだとすると、『黒雲作戦』の局面にまで持っていけないので、せっかく見つけたと思った「先手勝ちの道筋」が、まぼろしとなってしまう…。

 だからなんとしても≪煙7四角図≫は“先手勝ち”にしなければいけない。
 見つけるのだ! “勝ち”の道を!

煙図08
 その願いが天に届いたか、我々は、「勝ち筋」を見つけることに成功した!
 後手7四角に、「9二金」(図)と打つのである。冷静になってみれば、当然こう指すところである。
 「7六角」や「8六香」で、なぜ先手が良い結果を得られなかったかといえば、9三歩以下、先手の竜と後手の銀との交換になり、先手後手の大駒(飛車角)の数が2対2になってしまったからである。
 だから、“先手は竜を敵に渡さず入玉する”という条件をクリアーする必要があったのだ。後手に大駒を2枚持たせてはいけない。
 この「9二金」なら、その条件をクリアーできるのだ。

 図以下は、2九角成、8六香、7四馬、7二飛が予想される手順(次の図)

煙図09
 6三馬、7三歩、同銀、8三香成、7四銀、8二金(次の図)

煙図10
 7二馬、同成香、7九飛、9三玉、6三銀、6五角、3一歩、8三角成、3三玉(次の図)

煙図11
 この図は、はっきり先手が勝てるとまでは言えないが、しかし勝ちが十分見込める図になっていると思うのである。

 よって、≪煙7四角図≫は、「9二金」で先手良し、を結論とする。

≪6六角図≫
  [炎]5五銀引  → 先手良し
  [灰]3三歩   → 先手良し 
  [炭]4四銀   → 先手良し
  [煙]4四歩   → 先手良しが確定

 これで、この図は「先手良し」が確定したことになる。
 (しかし奴はそれを認めるだろうか)


 我々――終盤探検隊――は、やっと手に入れた優位、「先手の勝ち筋」を失わずにすんだことに、とりあえずホッとした…。

 しかし、心の底で、もやもやした不安が沈殿していた。
 ここまで我々は「先手の勝ち筋」を見つければ、それでこの≪戦争≫はおわりなのだと思ってがんばってきた。
 ところが、求めていたそれを手に入れた瞬間に、悟ったのだ。 相手が「参りました」と負けを認めない限りは、この戦いは無限に続く可能性があるのだと。こっちが「これで先手が勝ちだ」と言っても、敵が「いやちがう、ここからもう一度やり直そう」と言って、無限に抵抗してきたらどうなるのだ。
 我々の探してきた「先手の勝ち筋」は、何も意味がなかったのではないか―――。

 実は少し前、奴――≪亜空間の主(ぬし)≫――は、我々に話しかけ、ある提案を持ちかけてきたのだった。
 その提案とは、「最終一番勝負でこの闘いの決着をつけようではないか」という提案だった。その時に我々が思ったことは、「自分が不利になったとたんにそれを言い出すなんて、ずるいやつめ」ということだった。その提案をだからその時は無視した。返事をせず、スルーしたのだった。

 しかし、ここにきて、我々は悟った。このままでは、終わりがないと。
 奴の提案は、まともな意見だったのだと。



 「一番勝負」で決着をつけよう。


                       『終盤探検隊 part92』につづく
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終盤探検隊 part90 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2016年12月26日 | しょうぎ
≪6六角図≫
 
 この図から後手5五銀引に、9三角成。そこで9四歩が後手の最強手だったが、終盤探検隊はついに“解”を得たのである。「3三歩、3一歩、4一飛」。(これを『黒雲作戦』とした)
 探求の結果、この道は、「勝利」へとつづく道であると我々は確信した。
 ずっと苦しい闘いだったが、ここにきてはじめて先手番を持つ我々終盤探検隊が敵に対して優位に立ったのだ。

 ところが―――我々が闘う相手、≪亜空間の主(ぬし)≫が、まだあきらめない。 時を巻き戻して、また“別の手”を繰り出してきたのだ。


    [超時空間]
「――人間が、三七世紀、はじめて亜空間航行を達成し、同時にはじめて、長年の宿願である時間旅行を達成した時、“超越者”のルールは、すでにそこにあった。われわれの旅行は、“超越者”の僕(しもべ)と名のる未来人たちによって、きびしく監視され、制限されてきた。」

果てしなき流れの果てには、なにがあるのか?
突然、アイは、上昇をはじめた。――滔々と流れ行く超時空間に、直交する方向へ向かって。
とまれ
階梯概念が指示した――だが、彼は、それにさからって、上昇をつづけた。     
                                  (小松左京著『果てしなき流れの果てに』より)



≪6六角図≫
 ≪亜空間戦争≫は、多重並行世界(パラレルワールド)の戦争なのだ。
 たとえ負けても、手をさかのぼってまた何度でもやりなおせる。
 ≪主(ぬし)≫は、この≪6六角図≫まで手を戻し、ここからまた戦おうと言っている。
 ≪主(ぬし)≫は、“3三歩”と、彼の見えない指で着手してきた。

≪3三歩図≫
 [炎]5五銀引  → 先手良し
 [灰]3三歩
 
 この後手が3三歩と打つ形は、後手の玉が閉所に閉じ込められたようなところもあり、直感的には、「先手に勝ちがある」と我々は感じていた。だが、直感ではそうであるのに、ソフトを駆使しても、なかなか“先手の正解”にたどり着けず、我々は少々焦った。そんなはずはない…、と。
 そうして、ようやく答えを見つけることに成功し、安堵した。答えは一つではなく、複数あるようだった。
 たとえばここで(G)7二飛と打つのもその答えの一つ。(7二飛以下は、6二歩、7三歩成、7五歩、8六玉、6七と、の手順が予想される)

 しかし我々が以下に紹介するのは、まず(H)9三角成とする手順である。

3三歩図01
 [灰]3三歩に、(H)9三角成。
 そこで後手の有力手は、〔1〕8四金と、〔2〕9四歩の2つがある。

 まず〔2〕9四歩(図)から。(この場合はこちらのほうが簡単なので)
 ここで先手は8二飛と打てばよい(次の図) 

3三歩図02
 この手は、3二金、同玉、5二飛成以下の“詰めろ”になっている。 なので後手は6二歩と受ける。
 そこで“8三飛成”とすれば、先手玉の8五玉からの“入玉”はもう遮る手段が後手になく、あっさり先手の優位が確定である。

3三歩図03
 そういうわけで、後手は先手(H)9三角成に、〔1〕8四金(図)が優る。
 この8四金には、今までも見てきたように、先手は8五金と道をこじ開けに行く。以下、7四歩、8四金、同歩、同馬と進む。そこで後手<a>8三歩(次の図) 

3三歩図04
 (先手6六角に)[炎]5五銀引のケースでは、ここで先手は8五玉(以下、8四歩、9四玉)しかなかった。(その時の分かれは「互角」だった)
 しかしこの場合は先手にここで「7四馬」の選択肢がある。[炎]5五銀引の時には7四馬には8四金があってダメだったが、この場合は、8四金なら5二馬として、この手が後手玉の“詰めろ”にもなっているので、先手の攻めのほうが早い。後手が3三歩を打って玉を狭くしているためにそういうことになったのである。

3三歩図05
 しかし、7四馬には、この図のように、「7五金」という手があって、これが警戒すべき手だ。同馬、同銀、同玉だと、6四角で、“王手竜取り”になってしまう。
 だから先手は、7五同馬、同銀、8五玉と銀を取らずにかわす。以下、8四銀、9四玉となり、そこで後手は7四角(次の図)

3三歩図06
 この7四角も見かけ以上に手ごわい手で、たとえば先手が油断して3二歩などと攻めの手を指せば、痛い目に合うことになる。すなわち、3二歩に、9三歩、同竜、8五銀、9五玉、9四歩、同竜、同玉、9二飛、9三香、9二桂(次の図)

3三歩図07
 これは先手大失敗の図である。

3三歩図08
 よって、戻って、7四角には、8六香(図)と、受ける必要がある。
 このまま8四香と銀を取れれば先手優勢がはっきりするので、後手もあばれてくる。
 9三歩、同竜、同銀、同玉、8四歩、8三銀、2六角成、4一金(次の図)

3三歩図09
 4一金と、先手に待望の攻めの手番が来た。
 これを後手は3一桂と受ける。以下、想定される手順は
 7四歩、3五銀引、7三歩成、1九馬、7四歩、6九飛、5四歩、4二銀、7五角(対して6四歩なら6三とがある)、6四馬、同角、同飛成、7二飛(次の図)

3三歩図10
 後手玉の脱出ができないし、受けづらく、先手優勢である。
 6二歩には、6三歩がある。 また9一香には、8二玉、6一竜、8一金で、後手の攻めは続かない。

3三歩図11
 戻って、<a>8三歩に代えて、<b>7三金(図)と打ってきた場合。
 これには9三馬とする。以下、8四歩、8六玉、8三桂(次の図)

3三歩図12
 ここで8二飛と打つ手がある。上でも出てきたが、これは5二飛成以下“詰めろ”である。なので後手は、7五銀、9六玉の後、6二歩と受けるが、そこで先手は8三飛成、同金、同馬と二枚替えだ。この場合は馬を残すほうが入玉しやすい(角を渡すと後手5八角があるから)
 8二飛~8三飛成があることは、後手はわかってはいても、先手の“入玉”を防ぐには8三桂しかないのである。
 そして、9三歩、7九香で、次の図となる。

3三歩図13
 9三歩は同馬と取ってもよいが(同竜は8一桂が生じる)、図の7九香で後手の銀を取ってしまうほうがわかりやすい。
 以下、6九飛なら、7五香、6六飛成、8六銀でよい。先手優勢。
 先手の“入玉”は決定的となった。しかしもはや“入玉”せずとも、先手玉の安全がよりはっきりしてきたら、4一銀のような攻めを決行すればよい。

 これで、<b>7三金も先手良しだ。


≪3三歩図≫
 以上より、[灰]3三歩は、9三角成とし、後手〔1〕8四金と〔2〕9四歩のいずれも先手優勢になる。

 これで、[灰]3三歩は「先手良し」、が決定した。
 我々が勝利したのだ。



 しかし、またも、時は巻き戻され、同じところ同じ場面まで盤面が戻されてしまったのである。
 ここから、また“新たな次の戦争”の始まりだ。

≪6六角図≫
  [炎]5五銀引  → 先手良し
  [灰]3三歩   → 先手良し

 また、ここで、[炭]4四銀には、5三歩で、先手良しである。
 “敵”(ぬし)が新たに出してきたのは、[煙]4四歩であった。(次の図)



≪4四歩図≫
 [灰]3三歩のときは直感的に「これは先手勝てる」と感じたが、この[煙]4四歩の図はまったく先が見えない気がした。急所は、どこだろう?

 たとえば9三角成、9四歩、3三歩、3一歩、4一飛と、[炎]5五銀引に対して行った指し方(黒雲作戦)を採った場合……、3三桂、9六歩、8四金となって―――

参考図a
 この図になる。しかしこの場合は“後手良し”になってしまうのだ。4三に空間が空いているために後手玉が広くなっていて、そのために8四馬からもう一枚金を補充しても、それでも後手玉は詰まないのである。
 これが後手番の《主(ぬし)》の狙いだったのだ。

 となると、先手(我々)は、また別の攻め筋を採用しなければいけない。

≪9三角成図≫
 まず、9三角成とする。
 そこで後手の手は、やはりここでも2つ、〔1〕8四金と〔2〕9四歩がある。

≪8四金図≫
 まず、〔1〕8四金。
 以下はやはりさっきと同じように、8五金、7四歩、8四金、同歩、同馬、そして<a>8三歩と進みそうだ。
 (この<a>8三歩ではやはり<b>7三金もあり、それは後でやる)

4四歩図01
 ここで7四馬が通るかどうかが一つの山になるが、この場合はOKだ。

4四歩図02
 7四馬に後手8四金なら、この場合も5二馬が後手玉の“詰めろ”になっているし、5二馬を同歩でも詰む。その詰み手順を確認しておくと、3二金、同玉、3一飛、4三玉、3二角(次の図)

4四歩図03
 以下、3三玉、5四角成、2四玉、1五金、3五玉、3六香まで。

4四歩図04
 さて、7四馬まで戻って、したがって後手はここでも図の7五金しかない。
 同馬、同銀、8五玉、8四銀、9四玉、7四角、7六角(次の図)

4四歩図05
 7四角まで、[灰]3三歩の時とまったく同じ進行になる。違うのは後手の陣形だ。それによって、結果がどう変わるか。
 今回は、そこで7六角がある(図)。
 後手玉に“詰めろ”をかけつつ、8五にも利かせ、後手の狙いの9三歩、同竜、8五銀と防いでいる。後手は3二歩と受けるが、これによって、先手は“もう一手”を指すことができる。
 すなわち、後手3二歩に、9三金と打って、先手良しとなる。
 (しかしこの見通しは甘かったことが、後になって明らかになった)

4四歩図06
 (<a>8三歩に代えて)<b>7三金(図)の場合。
 以下、9三馬、8四歩、8六玉、8三桂、7六歩(図)

4四歩図07
 [灰]3三歩の時より後手陣が攻めにくいので、ここは8二飛と打つ前に、図のように7六歩として、後手の7五銀の進行を阻止しておくほうが良いようだ。
 この図で、後手の有効な手がはっきりしない。ということは、ここは先手が少し模様良しかもしれない。
 後手7五歩として、その後を見ていこう。以下、8二飛(5二飛成からの詰めろ)、6二歩、8三飛成、同金、同馬、8五飛、9六玉(次の図)

4四歩図08
 すんなり先手玉が“入玉”できれば、先手良しになる。だから後手も必死でそれを阻止してくる。だが後手の持駒は桂と歩だけ。
 7六歩、8六金、3五飛、6五歩(次の図)

4四歩図09
 先手優勢だ。 6五同銀なら、3六香。 6五同飛は、同馬、同銀、2六桂。

〔1〕8四金は「先手良し」で確定。



≪9四歩図≫
 さて、〔2〕9四歩だが、これが難敵。
 ここで「3三歩、3一歩、4一飛」の『黒雲作戦』の攻めは、この場合は通用しないと先ほど述べた。また「3三歩、3一歩」だけでも利かしておこうという考えはあるも、3三歩を“同玉”(次の参考図)とされたときも、先手がいいのかどうかわからない。

参考図b
 この図は形勢不明。 この場合は3三玉が攻めにくく、たとえば3一飛、3二歩、1一角、4三玉のようになると、すこし先手が悪いかもしれない。後手玉には4三玉~5四玉という脱走経路があるのである。

≪8六角図≫
 しかし、我々はソフト「激指」の力を借りて、この難局を乗り切っていくことができたのである! (どうやらよい流れが我々終盤探検隊のほうに来ている!!)
 後手の9四歩、「8六角」と打つのだ! これが絶好打なのだった。
 この角は「7五」と「9五」に利いており、後手がなにも対策をしなければ、先手は8五玉とし、以下9五金、同角、同歩、9四玉のように、“入玉”が確実になり、先手良しだ。
 したがって、ここは後手は8四金しかないところ。

≪6五歩図≫
 そこで6五歩(図)だ。 7五銀なら、同角、同金、同馬で、圧倒的に先手良し。5五銀上とするのも、7二飛、6二歩、7三歩成で先手良しだ。
 お互いにとって、ここが勝負どころである。 後手の有力な候補手は次の4つ。
  <k>6五同銀
  <l>7四金
  <m>7四歩
  <n>7二桂

 それらの手を一つ一つ、先手を持つ我々は潰していかねばならないわけだ。

参考図c
 ところで、[炎]5五銀引のときには、この8六角~6五歩は通用しない。この図は、「5五銀引型」で、この攻めを敢行し、先手の6五歩に、後手“5六と”とした場面。
 これは次に後手からの6六とで詰まされるので、先手は7七玉だが、以下、6六銀、8八玉、7六桂、9八玉、7五銀上(参考図d)

参考図d
 以下、5九角に6八歩。 これは後手良し。

4四歩図10
 先手の6五歩に、<k>6五同銀とする変化は、以下同玉、7四金、6六玉、6四桂、4一銀(図)が想定される。この図、先手玉はほうっておくと6五桂と打たれて受けなしになってしまう。
 4一銀は後手玉への詰めろだから後手はこれを3一歩と受ける。(4二金、5一竜、4一金、同竜は先手良し)
 そこで先手は7九香が良いようだ。7四の金を取られてはいけないので、後手は6五歩とし、7七玉に、8五金と、金を出てくる。
 しかしこれは“足りない攻め”で、先手は5二銀成、同歩、4一飛と攻めることができる(次の図)

4四歩図11
 4二銀打と受けても、6四角で先手勝ち。
 したがってこの図では後手3三玉ということになるが、3一飛成、3二歩、4一竜左、4三銀、2五金、3四銀打、6四角、2五銀、4六角となって、やはり先手勝勢となる。

4四歩図12
 <l>7四金とする変化は、以下、6四歩(銀を取った)、8四桂(王手)、7七玉、8五金となって、この図となる。
 この図を見ても、後手の4六銀が働いていないので、後手の攻め駒が不足気味なのが感じられるだろう。とはいえ、現実は“角取り”になっていてこの角は逃げられない。
 先手はここで、9四馬と馬を活用する。7六金と出る手を防いでいる。
 そこで後手6五桂は、6六玉と逃げて、先手が良い。以下、角を取る8六金には、7五玉と、曲芸のような玉さばきで、先手玉は捕まらない。
 9四馬には、「激指」は6七とを推奨しているので、その変化を追って行こう、
 以下、6七と、同玉、8六金、同歩、4九角、7七玉、6五桂、8八玉で、次の図。

4四歩図13
 9四角成、同竜、6六角、9八玉、7七桂成、8九金(次の図)

4四歩図14
 以下、7六桂に、8七金と受けて、これで後手の攻めは止まった。
 後手の攻めが止まれば、3三歩、3一歩、6五角のような攻めで、先手が勝ちになる。
 後手<l>7四金も先手良しと判断する。

4四歩図15
 3番目の候補手<m>7四歩(図)。
 これには当然先手は6四歩だが、そこで7三桂が後手のねらいの手。次に8五金とするつもりだ。
 先手は5九角と金を取りながら、角を退避させる。
 以下、8五金、7七玉、6五桂、8八玉、6八と(次の図) 

4四歩図16
 この図はまだ、どちらが良いのかわからない。
 6八とを同角は7六桂がある。 次に後手は7六桂、9八玉、7七桂成が指したい手だ。
 先手は4一銀と攻めるような手もありそうで、迷うところだが、我々終盤探検隊は、ここでの最善は6六馬ではないかと判断した。(6六馬、5九と、6五馬は先手良し)
 以下の想定手順は、7六桂、9八玉、7五金(先手6五馬は許せない)、4一銀、3一歩、3三歩、同桂(次の図)

4四歩図17
 図の3三同桂に代えて「同玉」もあるが、1五角、2四歩、5六馬、7七桂成、8九金は先手良し。
 ここで先手はまた迷う。5六馬、7七桂成、8九金で先手良しかもしれない。
 ただし我々が追及して見つけた勝ち方は、次に示す別の手だ。 

4四歩図18
 3二香(図)と打つ。歩があればもちろん歩でよいところだが、ないので、3二香だ。これを同歩なら、5二銀成(詰めろ)で先手勝ち。後手が角を得ても、まだ先手玉は詰まない。
 よって後手は4二銀と受ける。以下、先手は4四馬。
 そこで後手5九と(角を取る)なら、3一香成、同銀、3四馬で、後手玉に3二金以下の“詰めろ”がかかっていてそれで先手勝てる。
 後手は7八とのほうが厳しい手になる。先手は5二銀成。次の図となる。

4四歩図19
 5二銀成(図)を同歩は、2一金、同玉、3一香成、同銀、1一飛以下の“詰み”。
 実はこのままでも後手玉には“詰めろ”がかかっている。その手順は、2一金、同玉、3一香成、同銀、3二金(次の図)

4四歩図20
 3二同玉(同銀は3一飛、同玉、5一竜)、4二飛、同銀、同成銀、同玉、4三歩、同銀、5三金以下。
 (途中4二飛に2一玉は、3二金、同銀、5一竜、3一金、3二飛成、同玉、4二成銀以下)

 だから前図から後手が指すとすれば、8八桂成、同馬、同と、同玉と先手の馬を消して、そこで5二歩くらいだが―――

4四歩図21
 それには4一竜(図)で先手勝勢。

 後手<m>7四歩も先手良しと決まった。 

4四歩図21
 さあ、残るは第4候補の<n>7二桂(図)だけだ。これを勝てばこの難局をクリアーできる。
 <n>7二桂に、6四歩だと、同桂、7七玉、6六歩、3三歩、6七歩成、8八玉、3一歩は、先手苦戦。どうやら簡単に後手に6四歩、同桂からあの桂馬を捌かせてはいけない。
 ということで、この図では、3三歩と手裏剣を投げ入れる。
 これを同玉は3一飛、3二歩、2一飛成で、先手やや良し。(同桂は後で示す)
 後手は3一歩と受け、先手は3九香と打つ(次の図)

4四歩図23
 この3九香に3五桂は、後手の攻め駒が減り、9二飛で先手良しになる。
 また、4三銀も、同じく9二飛で先手良し。
 3四銀取りを放置して、7四歩が有力手だが、6四歩、同桂、7七玉、6六歩、8八玉、6七歩成、3四香、3三桂、3六飛(次の図)

4四歩図24
 これも先手良しだ。

4四歩図25
 よって、先手の3九香に、3三玉が最強手ではないかと思う。
 対して先手は6一竜(図)と竜を活用する。この手の第1の意味は、7二竜と桂馬を取ることである。と同時に竜を戦場へと接近させた。
 後手はここで7四歩。次に7五銀を見せて、先手に6四歩を強要する手だ。
 すなわち、この図から7四歩、6四歩、同桂と進み、先手はこれを同角と取る。以下、同銀、同竜で、次の図。

4四歩図26
 このとき、後手玉には、先手2五桂からの“詰めろ”がかかっており、この図は先手優勢である。細かいところだが、先手が3九香と打った手で、3八香だったら、この図の場面で4九角で王手香取りになるところだった。だから香車は3九から打つのが正解ということになる。

4四歩図27
 戻って、後手の7四歩の手で、他の手を探してみよう。図の4九金はどうか。3九の香車を取りに行く手だ。
 以下、3四香、同玉。
 これで後手に香車が入ったので、7五香と後手から打つ手ができた。それは困るので、先手は6四歩と銀を取る、以下、同桂、同角、同銀、同竜、6七角、7七玉(次の図)

4四歩図28
 この場合も先手優勢で、実は後手6七角を同竜と取って、同とに、5六角から後手玉に“詰み”があるようだ。とはいえ、その“詰み”は変化が広いので、見送った。この図の7七玉でも、先手が勝てる将棋だ。
 ここでたとえば後手6二香なら、先手は2五銀と打ち、同玉なら、4四竜で寄り、3三玉と逃げれば、4一飛と“詰めろ”をかけて先手勝ち。

4四歩図29
 最後に、先手の3三歩に、同桂(図)と応じるとどうなるかを見て行こう。
 先手はここでも6一竜がよいと我々は考えた。以下、7四歩、6四歩、同桂、7七玉、6六歩、1一銀(次の図) 

4四歩図30
 この1一銀が狙いすましたかっこいい手だ。同玉なら、3一飛と打って、2一銀に、3二金で“必至”をかける。
 また1一銀に3一玉は、8四馬と金を取って、2二金以下後手玉“詰み”。
 よって後手は3二玉と逃げることになる。
 そこで5四香と打つ。かっこいい手の第2弾だ。これを同銀は、2二飛、4三玉、5二竜から“詰み”。
 後手も攻める。6七歩成、8八玉、7六桂打、9八玉、7八と、9六歩(次の図) 

4四歩図31
 9六歩で、先手は“詰めろ”から逃れている。
 なお、後手の7六桂打で、単に7六桂と跳ねると、8六の角が5三にまで通って、後手玉に2二飛、4三玉、5三角成という“詰み”が生じてしまう。だから“桂打”と打った。
 ここからは仕上げだが、4三玉に、5三香成、同金、7一馬と、あそんでいた馬を使う。5二歩に、5三馬(次の図)

4四歩図32
 5三同歩に、4二飛、5四玉、6四竜以下、“詰み”。(詰み手順は省略)

 <n>7二桂も先手勝ちと確定した。

≪9四歩図≫
 これで後手の有力手はすべて潰したので、この図、≪9四歩図≫は「先手良し」、が結論となる。


 もう一度戻って≪6六角図≫…

≪6六角図≫
  [炎]5五銀引  → 先手良し
  [灰]3三歩   → 先手良し 
  [炭]4四銀   → 先手良し
  [煙]4四歩   → 先手良し

 [炎]5五銀引には(9三角成、9四歩の後)、「3三歩、3一歩、4一飛」(黒雲作戦)と指し、[灰]3三歩には8二飛、[煙]4四歩のときには「8六角、8四金、6五歩」という攻めで、先手良しになると解明されたのであった。

 なんと気持ちの良い結論だろう!!!

 ところが―――――


 またまた奴―――≪亜空間の主(ぬし)≫―――は、時を巻き戻して再勝負を挑んできたのである。「お前の勝ちはまだ認めないぞ」ということだ。

(再掲)
 この図はすでに見てきた図だ。
 ≪6六角図≫から、4四歩、9三角成、そこで〔1〕8四金と後手が応じ、以下、8五金、7四歩、8四金、同歩、同馬、8三歩、7四馬、7五金、同馬、同銀、8五玉、8四銀、9四玉、7四角と進んで、先手が7六角と打ったところだ。

 ≪亜空間の主(ぬし)≫はこう言った。
 { お前たちは勝ったつもりでいる。だがほんとうにそうだろうか。たしかにこの図で私は先ほどは負けたと思ったので投了した。7六角に、3二歩、9三金…たしかにそれはこっち(後手)がわるいか…}

 {だが、この図で“9三歩”だとどうなる? }

 { さあ、もう一勝負だ } 嬉しそうに≪主(ぬし)≫がそう言った。


 嫌な感じがした。この勝負、勝っても勝っても、終わりがない闘いなのではないか。

≪9三歩図≫


                          『終盤探検隊 part91』につづく
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終盤探検隊 part89 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2016年12月24日 | しょうぎ
 我々終盤探検隊は、今、『黒雲(くろくも)作戦』を実行中である。
 “4一飛”と打ちこんで、局面を妖しくしていくというこの作戦、今のところ、うまくいっている。
 その4一飛に、後手が4二銀と応じたらどうなるのか―――それが今回のテーマである。
 それには、図のように、8二竜とする。これはこのまま次に4二飛成となれば、先手が勝つが―――


    [イスカンダルのスターシャ]
〈……とうとうやってきましたね……〉
 ススムたちは、あわててあたりを見わたしたが、人影はおろか、風ひとつ吹いていない。
「あなたは、あなたはいったいどなたですか……?」
〈……わたしはスターシャ。イスカンダルのスターシャはわたしです……〉
「おお、スターシャ! どこにいるのです! どうか姿を見せてください!」
〈地球人よ……。わたしには、あなた方がいう意味での姿というものはありません。ですから、そのように捜してもむだなことです。〉
「……それはいったい、どういう意味ですか……?」
 スターシャのことばは、たしかに不可解なものだった。ススムは、困惑したように雪の顔を見た。
〈……わたしは、こおイスカンダル星の地下深くにはりめぐらされている、コンピュータなのです……〉
「そ、そんな馬鹿な……!」
                                (小説『宇宙戦艦ヤマト』石津嵐著 豊田有恒原案 より)



 この豊田有恒原案の『宇宙戦艦ヤマト』のストーリーは、本筋であるアニメ版と結末がかなり異なっていてショッキングな内容である。
 美女スターシャは、イスカンダル星人によってその星の地下につくられたコンピューターであり、そのスターシャが「自分を守れ」という最優先至上命令に従って、デスラーをつくり、部下たちをつくった。つまり「ガミラス星人」の軍団をつくりだしたのはスターシャであった。
 そうしたコンピューター・スターシャの行動を危険と感じたイスカンダル人たちは、そのプログラミングをカットしようとした。それを見て、「スターシャを守る」ために存在しているデスラーたちは、イスカンダル人に襲いかかり、とうとうイスカンダル人を全滅させてしまったのだった。それが地球年で100年ほどまえのこと。
 それをきっかけにコンピューター・スターシャは不調に陥り、デスラーたちはつぎつぎと侵略の歴史を重ねて、ついに人間の住む地球へ……、ということなのだった。
 だから彼女(スターシャ)は、地球人を呼んで、自分を破壊してもらおうと考えたのだった。そうすれば、デスラーたちの「スターシャを守る」という存在理由もなくなり、彼らの侵略も止まるというのである…
 しかも冷酷にも、放射能(反陽子爆弾による汚染)で苦しむ地球を元の姿には戻せないから、あなたたち(人間)自身を改造して生きる、それしか道はない、という。

 このストーリーは、結局ボツになったわけだが、「SF小説」的には、こちらのほうがより面白い。しかし、お茶の間のTVとしては、後味の悪すぎる結末と言える。採用されなかったのも無理はない。「美女」が自分を殺してくれという結末では……。

 この話の設定は西暦2199年。すでに人類は「亜光速エンジン」を開発済みで、冥王星まで7時間で航行可能だ。(すごい速さだ)
 そんなとき、ガミラス・デスラー軍団の攻撃が始まった。これが地球人類と異星人のファースト・コンタクトになる。
 スターシャの助けによって、人類は「ワープエンジン」を手に入れ、イスカンダル・ガミラスの二重連星のある(大マゼラン星雲の方向)、往復29万6千光年の距離を、1年かけて行ってこようというのが、「宇宙戦艦ヤマト」の計画であった。
 (このあたりの設定はTVアニメも小説版も松本零士の漫画版もすべて同じ)
 それにしても、“美女”の言葉をこうも簡単に信用してホイホイ近づいていくこの作戦、いかがなものか。デスラーの仕掛けたハニー・トラップだと主張する人間が一人もいないのは、解せないことである。 もっとも、ガミラスの圧倒的攻撃力を受けて、他になにも手段もないとすれば、結局、「やるしかない」のであるが。

 この小説版では、地球上は、ガミラス軍の「反陽子爆弾」で攻撃を受けて壊滅状態、となっている。(TVアニメ版は「遊星爆弾」)
 「反陽子」とは何か。
 そう不思議なものではなく、1955年にカルフォルニアの加速器(実験用の設備)によって、実験的には確認されている。
 この世界の物質の「原子」は、「陽子」と「電子」から成っているが、「陽子」のほうが「電子」よりも1850倍大きい(質量的に)。ところが、ふしぎなことに、「陽子」と「電子」は、まったく逆向きのしかし同じ強さの電荷(プラスとマイナス)をもっていて、それで安定してくっついている。
 1932年に「陽電子」が発見された。「電子」と同じ大きさ(質量)で、電荷がプラスのもの、それが「陽電子」。 それは今となっては簡単に見つけられるもので、ただ、この世界(われわれの住むこの宇宙)にはなぜか「電子」のほうが数が多く、したがって「陽電子」は生まれた瞬間に「電子」と反応して“対消滅”して消えてしまう。だからそれまで見つからなかったのである。
 それなら、「反陽子」も存在するのではないか―――物理学者がそう考えるのは、当然のことであった。「反陽子」、すなわち、「陽子」と同じ質量で電荷がマイナスの粒子である…。
 この宇宙は、なぜか「陽子」と「電子」が多く残って、それが「物質」を形勢している。この世(宇宙)は、なぜか“非対称”だったのである。(つまり「反陽子」よりも「陽子」の数が多く、「陽電子」よりも「電子」の数が多かった。宇宙がゼロからはじまったというなら、なぜ“同数”ではないのかという疑問が残る)



≪黒雲の図≫
 4一飛―――『黒雲作戦』―――。 (この図の「激指」評価値は[-289])
 前回、これに対する後手の応手 〔砂〕3三玉、〔土〕4二金打、〔石〕3三桂、を調べた。 その結果は先手にとって悪くなかった(後でまとめる)

 今回は、「後手〔岩〕4二銀」との勝負である。
 



≪8二竜図≫
 〔岩〕4二銀には、「8二竜」(図)が最善手で、ここでは、“これしかない”ところだ。
 「8二竜」は、次に4二飛成、同金、同竜となれば、先手勝ちだ。

 後手の応手は、次の4つ。
   〔ラ〕6二歩
   〔リ〕3三銀
   〔ル〕3三玉
   〔レ〕3三桂

 我々(終盤探検隊は先手を持っている)は、これら4つの応手をすべて粉砕しなければならない。

6二歩図1
 〔ラ〕6二歩(図)と打つ手には、8三竜とする。そして後手3三銀に、8五玉(次の図)

6二歩図2
 “入玉”ねらいである。 入玉はほぼ確実だが、形勢はどのようになるか。
 図から、予想される進行は、3二玉、4二歩、同銀、同飛成、同金、9四玉、7九飛、8一竜(次の図)

6二歩図3
 もう少し進めてみよう。 ここで7四飛成は8四金があって、後手の攻めは止まる。よって9九飛成とする。 
 9九飛成、8三玉、9七竜、9四歩、5二金、9二玉、4四銀、6五歩(次の図)

6二歩図4
 以下、5三銀、7三歩成、5六と、7一金のような進行が予想されるが、これは玉が“入玉”して安全になり、飛角三枚を有している先手が勝勢であろう。


3三銀図1
 〔リ〕3三銀。 この手には、5一飛成が利くかどうかが重要な分かれになる。(ここでの8三竜はうまくいかない)
 5一飛成、8四桂、8六玉、7五金、7七玉、4二金、4一金、6二歩(次の図)

3三銀図2
 図の6二歩は、同竜に、5三銀と受けようという意味。
 先手は3一金。後手は1四歩と端から脱出を図る。以下、2一金、1三玉、3六桂。
 3六桂は(2二角までの)“詰めろ”なので、それを後手は3二金と受ける。そこで先手は6二飛成。
 そこで後手は攻めに転じる。 6六銀、8八玉、7六桂、9八玉、7七銀成、8九香、9五桂、7九角(次の図)

3三銀図3
 これで後手の先手玉への“詰めろ攻撃”は止まった。先手勝ちの図である。


 並べた順序から言えば、次は〔ル〕3三玉だが、〔レ〕3三桂のほうが結論が簡明なので、まずそちらから。

3三桂図1
 先手8二竜に、〔レ〕3三桂(図)としたところ。
 先手狙いの4二飛成は、同金、同竜、3二金で、弾き返されてしまう。
 しかし、我々の調査結果では、どうやらそれでもそれを決行するのが最善と出た。(ソフト「激指」はそれで先手が不利と見ていたのだが)
 4二飛成は、同金、同竜、3二金、5一竜、7八飛、8六玉(次の図)

3三桂図2
 飛車を後手に渡したが、持駒の金を受けに使わせたので、後手の攻めも厚くない。
 どうやらこの図は、先手優勢のようである。
 6五銀、8五銀、6六銀左、4二金と進んで、次の図。

3三桂図3
 4二同金なら、1一角から詰む。よって、ここは粘るなら後手は1四歩とでもするしかないが、それも、6六馬、同銀として、3二金、同玉、4二金、2二玉、3一竜、1三玉、2二銀、2四玉、4六角以下、“詰み”である。
 〔レ〕3三桂は、4二飛成以下、先手良し。


3三玉図1
 〔ル〕3三玉。 この手が後手の最善手だろう。
 この手は先手の4二飛成の攻めを受けつつ、次に3二玉~4一玉で、飛車を取ろうという意味。

3三玉図2
 先手は7三歩成(図)。
 そこで後手の手番だが、まず<h>3二玉からやってみよう。
 後手3二玉に、先手は5三歩(これを同銀上は5一飛成がある)。 以下、同銀引、8三馬、4一玉、8五玉(次の図)

3三玉図3
 もう何度も出て来た“入玉”ねらいの8五玉。
 6四銀引、7四歩、7九飛、8四玉、9九飛成、9三玉(次の図)

3三玉図4
 8一歩、同竜、3二玉、3七香、3五桂、同香、同銀、3四桂(次の図)

3三玉図5
 これは先手優勢である。

3三玉図6
 では、先手の7三歩成に、<i>8四金(図)と応じるとどうなるか。“入玉は許さない”という手だ。
 これには6三とがある。以下、5六と、1一角、2二桂、7七玉(次の図) 

3三玉図7
 先手勝勢である。

3三玉図8
 先手7三歩成に、<j>7三同銀(図)という手があった。
 これは同銀に8一桂と打つという意味だ。さて<j>7三同銀に先手どうする?
 考慮の結果、ここは1一角、2二桂、7三竜が最善の対応ではないかと、我々は考えた。(これ以外では苦しくなるのだ。) 「1一角、2二桂」で桂馬を一枚使わせ後手の攻めを細くしている意味がある。 

3三玉図9
 当然後手は8一桂と打ってくる。これには8五玉として、7三桂に、9四玉(次の図)

3三玉図10
 しかしこの変化は、場合によっては大駒を三枚敵に渡すことになるかもしれない。盤上の4一飛と1一角は動けない。さあ、形勢はいかに。
 9二歩、同馬、3二玉、4二飛成、同金、6七飛、7四歩(次の図) 

3三玉図11
 6二飛成、8二金、6四銀、8四銀、6三金、8一馬、7九飛、9二玉(次の図)

3三玉図12
 9九飛成、3七香、9七竜、9三歩、3三桂、3四香、2一玉、2二角成、同玉、5四桂(次の図)

3三玉図13
 こうなると少し先手が良いようだが、先手は大駒が8一の馬一枚だけというのが不安ではある。
 この<j>7三同銀の変化は、「互角」としておきたい。

3三玉図1(再掲)
 ということで、今のところ、後手のこの〔ル〕3三玉に対しては、7三歩成、同銀以下、「互角」の形勢と出ている。
 しかし7三歩成のところで、8三竜はないだろうか。以下それを検討してみよう。


3三玉図14
 後手の〔ル〕3三玉に、8三竜としたところ。 “入玉”作戦だ。
 3二玉、8五玉、4一玉、9四玉、6九飛(次の図) 

3三玉図15
 先手は4一の飛車はすんなり渡し、その間に8五~9四玉。 まだ三枚の大駒が先手にはある。
 ここで7三歩成としたくなるが、それは同銀、同竜、8一桂がある。
 よってここは8二馬とする。以下、7四歩、9三玉、9九飛成、9二玉、9七竜、8一玉(次の図) 

3三玉図16
 ここで後手7三金なら、8六竜とし、9八竜に、6五歩で先手好調。
 ここでは後手6三金打からの展開を見ていく。6三金打、3九香、7三銀、7一馬、6二銀、6一馬、3三香、1一角(次の図)

3三玉図17
 先手優勢。
 
 どうやら、〔ル〕3三玉には、7三歩成より、8三竜のほうが良いようだ。

≪8二竜図≫
 以上の探査の結果、≪8二竜図≫は、「先手良し」と決まった。


 前回からのながれをまとめるとどうなるのか。

 
≪夏への扉図≫
  【あ】5八同金  → 形勢不明
  【い】3三歩   → 調査中      
  【う】7三歩成  → 後手良し
  【え】9一竜   → 後手良し
  【お】6五歩   → 後手良し

 この≪夏への扉図≫から、3三歩、同銀、3四歩、同銀、5九金、6六角、5五銀引、9三角成、9四歩まで進んだ時、“3三歩”と打つ。

≪3三歩図≫
 3三歩に、3一歩。 そして―――

≪黒雲の図≫
 ここで、“4一飛”(図)と打つのが、今回の作戦――黒雲(くろくも)作戦――である。
 この“4一飛”は、3一飛成、同玉、3二金までの、“詰めろ”。
 後手はそれを受ける必要がある。候補手は次の4つ。
  〔砂〕3三玉   → 先手勝ち
  〔土〕4二金打  → 持将棋引き分け?
  〔石〕3三桂   → 先手有利
  〔岩〕4二銀   → 先手有利

 こうしてまとめてみると、〔土〕4二金打の分かれが、引っかかる。これさえなんとかすれば―――この変化を「先手有利」にすれば、この『黒雲作戦』は成功となるではないか。
 ということで、もう一度〔土〕4二金打を検証してみよう。
 ≪亜空間≫の戦争は、時を戻して、何度でもやり直しの利く特殊空間―――パラレルワールドなのだ。

≪4二金打図≫
 この後手4二金打の図から、戦争の“やり直し”である。
 〔土〕4二金打、8五玉、4一金、9四金、7七飛、8三玉、7四飛成、9二玉、4六銀、3九香、3五桂(次の図)

4二金打図a
 “前回の戦争”では、ここですぐ3五同香と桂を取り、以下、同銀直、7二歩、5五銀上、7一歩成、3三玉と進んだ。それで先手優位は確かと思えたのだが、結局は、“相入玉”となって、持将棋引き分けになりそうな図に至ったのである。

 それは、この図での3五同香がよくなかったのではないか。この手はすぐに決める必要はなく、後でも取れる。後回しにするほうが、後手はやりにくいのではないか。
 と、考えて、我々はここで7二歩をあらためて選んだ。 それで、どうなったか。

 7二歩、4二銀、7一歩成、3三銀、7二と、5八金、6二歩(次の図)

4二金図b
 7九竜、3五香、同銀引、6一歩成、2九竜、6二と寄、3二金、5二と、同歩、6二と、9九竜、5二と、1九竜、2六桂(次の図)

4二金図c
 先手優勢。これは先手が勝ちやすい将棋だ。

 先手が怖いのは、後手が“相入玉”をめざしてきた場合である。
 今度は後手が修正してくる。

 「4二金打図a」より、7二歩、5五銀上、7一歩成、6六歩、7二と、3三玉(次の図)

4二金図d
 今度は、後手が「5五銀上~6六歩」と“入玉”の下準備をしてから、3三玉としてきた。
 これに対しては、1一角、2二桂、3五香、同銀引(同銀上には4五桂)、3七桂(次の図)

4二金図e
 と、遊んでいたこの桂馬を活用する手がある。
 以下、3二金、4五桂打、4四玉、5三桂成、同金、5一竜、5二歩、4一銀(次の図)

4二金図f
 先手優勢。 こうなれば先手の三枚の大駒が働いてくるので、後手玉を捕まえられそうだ。

4二金図g
 さらに、後手は、時を戻して、手を代えてきた。先手3七桂に、4四歩(図)だ。
 以下、2六桂、同銀、同歩、3二金、2五桂、4三玉、6一竜、6四銀上(この手で6四銀引には、8三銀、7六竜、6三歩と指す)、3三歩(次の図)

4二金図h
 以下、3三同桂、同桂成、同玉、6二とが予想され、先手優勢である。
 こうした変化も、後手玉に入玉される可能性をゼロにはできないが、最善を尽くせばきっと後手玉を捕獲できると信じる。

 よって、この分かれ―――後手〔土〕4二金打―――は、「先手良し」となった。

≪黒雲の図≫
  〔砂〕3三玉   → 先手勝ち
  〔土〕4二金打  → 先手有利
  〔石〕3三桂   → 先手有利
  〔岩〕4二銀   → 先手有利

 こうして、ついに我々は見つけたのであった。 待望の、「先手の勝ち筋」を!!!


 ついに来た―――、歓喜の時が―――――――――!!!!!!!――――――?


 その時! 我々は聞いたのである。 奴の―――≪亜空間の主(ぬし)≫―――の声を。

 それは、我々をあざ笑う声だった気もするし、「ついに来たか」という呟きだった気もするが、はっきりと聞き取れたわけではない。しかし、たしかにあれは、我々と盤をはさんで対峙するこの姿の見えない“敵将”の初めて聞く「声」であった。

 だが、この≪亜空間世界≫はパラレルワールドなのだ。
 負けても負けても、時を巻き戻して、また≪戦争≫は新局面から繰り返されるのだ。
 ≪主(ぬし)≫は、またしても、時を巻き戻してきたのである。



                            『終盤探検隊 part90』につづく
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終盤探検隊 part88 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2016年12月21日 | しょうぎ
≪黒雲の図≫

 “4一飛”と打ちこんだこの闘い方を、我々(終盤探検隊)は、『黒雲(くろくも)作戦』と呼ぶことにした。
 合戦で、劣勢になり、どうにも打開手段が見つからない時、黒い雲がもくもくとやってきて、雨を降らせ、運よく打開する―――そういうイメージで「黒雲」としたのである。
 この“4一飛”は、3一飛成以下の“詰めろ”だが、後手はこれをどう受けるか。


    [アートマンと暗黒星雲]
《《 釈迦から弥勒にいたるアートマンの系譜にヤマトタケル、お前があらわれたのが地球時間で千六百年前。
そしてお前は暗黒星雲をここまで遠ざけて地球を救い、別の持空間でもう一度われにあうことを約束した!
時は来た! さあ! 決断を下す時だ! お前とともにこの暗黒星雲はどこへでも行くであろう。 》》
「わからない、わからない! なぜそんな必要があるんだ。 ぼくにどうしろというんだ!」
                                  (諸星大二郎作 漫画『暗黒神話』より)


 諸星大二郎『暗黒神話』は、1976年『週刊少年ジャンプ』に発表され、連載された。連載としてはわずか6回で完結する話なのだが、中身が濃密である。当時の読者は、あまりに密度の濃い内容に圧倒され、そして惹き込まれていった。
 「お前とともにこの暗黒星雲はどこへでも行くであろう」の“暗黒星雲”とは、オリオン座の方向にある有名な馬頭星雲のことで、馬の首の形をしている。そしてこの物語の中では、この馬頭星雲は“スサノオ”であり、主人公武(=ヤマトタケル)の意のままに従う存在となっている。
 「參は猛悪にして血を好み…」という文章が『暗黒神話』の中にくり返し出てきて、スサノオの凶悪ぶりを表現しているが、これは作者諸星大二郎のつくった文とのことである。「参(しん)」というのは、オリオン座のことで、これは中国での呼び名。

 『古事記』の中で伝えられるスサノオは、イザナギ神が、黄泉の国から脱出して日向において禊をしたときに最後に生んだ三貴神の一人で、アマテラス、ツクヨミと共に生まれた。アマテラスは高天原(たかまがはら)を、ツクヨミには夜の国を、そしてスサノオは海をおさめよと命じられた。
 アマテラスが太陽、ツクヨミが月だとするなら、スサノオは「雲」であろう。(なぜかそのように述べている書がほとんどないが)
 「雲」は海からやって来る。スサノオは父イザナギに「海をおさめよ」と言われていたにもかかわらず、陸にまでやってきて雨を降らせたり、日を照らすアマテラスを隠したりして、秩序を乱す。スサノオが泣くと雨が降るのである。雨は人々に恵みをもたらすこともするが、降りすぎるとやっかいだ。
 スサノオはまた出雲でヤマタノオロチを退治するのだが、その怪物の尾の中から出て来た大刀が“天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)”である。出雲の「雲」、そしてこの刀の名前から、スサノオが「雲」の神であることは、明らかである。“叢雲”とは、雲がたくさん群がるという意味だし、“出雲”とか“八雲”も同じような意味である。
 

≪夏への扉図≫
  【あ】5八同金  → 形勢不明
  【い】3三歩      
  【う】7三歩成  → 後手良し
  【え】9一竜   → 後手良し
  【お】6五歩   → 後手良し

 我々――終盤探検隊――はこの図から「先手の勝ち筋」を探しているが、まだ見つかっていない。
 いま、【い】3三歩の道を進んでいる。
 3三歩、同銀、3四歩、同銀、と進む(次の図)

≪3四同銀図≫
ここで[]7三歩成と、[]9一竜が先手の候補手。しかし[]7三歩成(白波作戦Ⅲ)は、前回の調査の結果、「後手良し」が確定した。

≪9一竜図≫
 ということで、[]9一竜(図)。 これが今回のテーマであるが…。 
 後手陣が「3二銀型」の時、9一竜について調べたが、それは「後手良し」だった。
 今回は「3四銀型」である。その分、後手陣にスキがあり、そこに「先手の勝ち筋」を探している我々の期待がかかる。

 この9一竜のねらいの基本は、先手玉の“入玉”である。
 ところが、この図から、5九金、6六角、5五銀引、9三角成、9四歩、9六歩、8四金と進んでみると――――(次の図)

≪8四金図≫
 やはり“入玉”は完全に封じられてしまっている。(この手順中、9四歩が好手で、これは「3二銀型」の時にすでに解説している)

 
 先手はもう一工夫必要だった。
 ―――そこで『黒雲(くろくも)』の登場である。


〈黒雲作戦〉

 ≪9一竜図≫から、5九金、6六角、5五銀引、9三角成、9四歩まで進んだ時、“3三歩”と打つ。

≪3三歩図≫
 『黒雲作戦』はまず、ここで“3三歩”(図)の手裏剣を飛ばす。
 これには「3一歩」と受けるのが正着となるが、ほかに「同桂」や、「同玉」も一応ある。
 それらの手にはどう指すのが良いのであろうか。まずその確認をしておこう。

変化3三同桂図1
 “3三歩”を「同桂」には、先手に二つ勝つ手があって、一つはこの3二歩(図)。
 これは放っておくと3一角なのだが、同玉も1一飛があってダメ。となれば、後手は4二銀しかない。
 そこで先手は4一飛。これも詰めろなので、後手は3一歩とするが、同歩成、同銀に、5四香(次の図)

変化3三同桂図2
 これではっきり先手優勢。 対して5三桂は無意味な受けで、1一角、3二玉、3一飛成、同玉、2二銀以下、後手玉“詰み”。

変化3三同桂図3
 3三歩、同桂には、9六歩(図)でも、先手が良くなる。
 この図、後手が何もしなければ、8五玉から“入玉”する。だからこの図では8四金としたいところ。
 しかし8四金は、同馬、同歩、4一飛で、次の図となって―――

変化3三同桂図4
 先手玉は詰まず、後手玉は“詰めろ”で、しかも受けなしである。

変化3三同玉図1
 では、先手“3三歩”に、「同玉」だとどうなるか。これには3一飛と打つ。
 後手は4四玉か、3二歩だが、ます4四玉には―――

変化3三同玉図2
 4五歩(図)がある。同銀なら3五金があり、同玉には3六角があって寄り。(5四玉には3四飛成)

変化3三同玉図3
 3一飛に3二歩とした場合は、1一角、2二桂、5七馬(図)が幸便な駒運び。
 以下、6五桂なら、2一飛成、5七桂成、2二角成、2四玉、3九香で先手優勢。
 4四玉の先逃げなら、たとえば2二角成、3三歩、9四竜、8四金、9二竜のような指し方で、先手良し。

 そういうわけで、後手は(先手3三歩に)、「3一歩」と受けることになる。

≪黒雲の図≫
 そうしておいて、“4一飛”(図)と打つのが、今回の作戦――黒雲(くろくも)作戦――である。
 この“4一飛”は、3一飛成、同玉、3二金までの、“詰めろ”。
 後手はそれを受ける必要がある。候補手は次の4つ。
  〔砂〕3三玉
  〔土〕4二金打
  〔石〕3三桂
  〔岩〕4二銀
 しかし〔砂〕3三玉は、上で見てきた「3三歩に、同玉」の時と同様の順で先手良しになる。すなわち、3一飛成、4四玉、4五歩、同玉、3六角、の順である。

 では、〔土〕4二金打はどうか。

4二金打図1
 〔土〕4二金打と後手が金を打ったところ。
 対して、先手は同飛成とするのではなく、8五玉が正着。もともと4一飛と打ったのは、この飛車を犠牲に、“入玉”するという狙いであった。後手が持駒の金を使ったので、“入玉”が可能になった。
 8五玉、4一金、9四玉、7七飛(次の図)

4二金打図2
 8三玉、7四飛成、9二玉、4六銀、3九香、3五桂、同香、同銀直(同銀引は5七馬がある)、7二歩、5五銀上、7一歩成、3三玉、1一角、3四玉、2二角成、6六歩、2一馬、4五玉、1二馬、3二金(次の図)

4二金打図3
 一例だが、こういう展開になる。どうやら先手は負けはなさそうだが、後手玉の“入玉”を阻止するのも難しく、“相入玉”になりそうだ。うまくいけば、「点数勝ち」も望めるが、その可能性は低そうに思う。“持将棋引き分け”が濃厚だろう。


≪3三桂図≫
 〔石〕3三桂(図)。 これでひとまず詰みを防ぎ、3二玉から飛車を取りに行くのが後手のねらい。

≪9六歩図≫
 対して、先手は9六歩(図)がその対策である。
 この手は、「次に8五玉から入玉するぞ」という手である。後手が(u)3二玉なら、8五玉だ。
 その順が本筋だが、その前に、(v)8四金、(w)8四歩でどうなるかを見ておこう。

 (v)8四金なら、先手の『黒雲作戦』のねらいにハマる。8四金は、同馬と取る。
 以下、同歩なら、1一角、3二玉、3一飛成、同玉、2二金、4一玉、3二金打で詰むというわけだ。
 つまり『黒雲作戦』は、4一に飛車を打ち込むことによって、8四金を打たせないようにし、8五玉からの“入玉”を実現させようという作戦なのだ!
 8四金、同馬に、3二玉の場合は、5一竜(次の図)とする。

変化8四金図
 このケースでは飛車を渡してもまだ先手玉は詰まないので、これで先手の勝ちが決まる。

変化8四歩図1
 (w)8四歩という手もある。これは、同馬に、7二桂と打って、この桂で先手の入玉を止めようという意図だ。
 8四歩、同馬、7二桂、5七馬、3二玉(次の図)

変化8四歩図2
 しかし7二桂には、5七馬で、先手良し。後手は3二玉(図)と飛車を取りに来たが、これにはやはり5一竜でよい。以下、7五金、6七玉、5一金、同竜と進んで、次の図。

変化8四歩図3
 後手玉には“詰めろ”がかかっており、先手勝ち。

≪3二玉図≫
 どうやら先手の“入玉”を防ぐのは難しいようなので、後手は(u)3二玉を選んでこの図。

変化8五玉図01
 もちろん先手は〈イ〉8五玉(図)。
 (ただしこの手に代えて〈ロ〉4二歩も有力で、その変化は後で見ていくことにする)
 8五玉以下の想定手順は、8四金、同馬、同歩、9四玉、4一玉、9三玉、5四角(次の図)

変化8五玉図02
 この5四角は、8一桂と打つねらい。
 先手はここで、3九香と打つ。そこで後手は7四歩。(すぐに8一桂と打つ変化は後で)
 そこで先手はあわてず(つまり3四香は指さず)、8一角と角を合わせるのがよい。以下、同角、同竜、5四角に、7二歩。
 さらに、3六桂、同香、同角、2六桂、2五銀、3四歩、4四銀、3七桂(次の図)

変化8五玉図03
 これは先手良し。

変化8五玉図04
 7四歩に代えて、8一桂(図)の場合。このほうが先手にとって厳しそう。
 先手は9二玉と逃げる。後手の狙い筋は9三飛だが、すぐに9三飛は、8二玉、9一飛、同玉で、これは先手にとって都合がよい。
 なので後手は、9二玉に、7四歩。今度は9三飛、8三玉に、7三銀があって、それだと先手の竜はタダ取りされてしまう。
 よって、7四歩には、8三金と受ける。
 そこで後手は<1>7一桂と、<2>9四飛とが有力。

変化8五玉図05
 まず<1>7一桂(図)。 以下、7二歩、8三桂、8一竜、6二金、8二金、6一金打、7一歩成、7三銀、9四桂(次の図)

変化8五玉図06
 8一角、同と、7五桂、8三金、4四銀引、8二桂成、6九飛、3四香、9九飛成、2一角、3九飛、3三香成、同飛成、1二角成(次の図)

変化8五玉図07
 これは「互角」。 ただし、先手に負けはなさそうだ。

変化8五玉図08
 途中まで戻り、<2>9四飛(図)だとどうなるか、見ておこう。
 9三金打、同飛、同金、同桂、3四香、4四銀引、8三銀(次の図)
 
変化8五玉図09
 6二銀、2二飛、7一桂、7二角(次の図)

変化8五玉図10
 これは先手が良さそう。

 こうして総合的に見ると、後手は「変化8五玉図07」を選ぶことになり、「形勢互角」が結論となる。


変化4二歩図01
 先手は「互角」が不満なら、あるいはこの〈ロ〉4二歩のほうを選ぶべきかもしれない。調べてみよう。
 この図は、後手3二玉に、〈ロ〉4二歩としたところ。
 ここでまず考えられる手は<a>4二同銀。 他には<b>8四歩、<c>8四金があるが、<c>8四金は同馬と取られ、先手持駒が「角金金」になると、後手玉が2二金、同玉、1一角以下詰んでしまうのではっきり先手良し。

 <a>4二同銀から考えよう。
 以下、同飛成、同金、そこで8五玉だ(次の図)

変化4二歩図02
 やはり先手は“入玉”をめざす。先ほどと比較して、先手にも後手にも持駒が多くなっている。
 後手8四金に、同馬、同歩、9四玉で、玉の“進撃”は止まらない(次の図)

変化4二歩図03
 以下の予想手順は、4七角、9三玉、7四角成、8三銀、6三馬、3九香、7四歩、9二玉(次の図)

変化4二歩図04
 図以下、3六桂なら、6一竜、6二歩、7二角で、先手優勢。この分かれは先手が良いようだ。

変化4二歩図05
 戻って、先手8五玉に、7九飛(図)と手を変えたところ。(先ほどは8四金とした)
 この手には、8三馬とすれば“入玉”できる。
 以下、7四歩、9四玉、9九飛成、9三玉、9六竜、9四歩(次の図)

変化4二歩図06
 先手は“入玉”できたし、大駒も三枚持っているので、先手良し。
 後手陣が、4二飛成で飛車を切って銀と交換したことで、その分薄くなっているのも大きい。

変化4二歩図07
 さらに戻って、後手が(<a>4二同銀ではなく)<b>8四歩(図)としてきた場合。
 これは先手同馬ととり、7二桂に、5七馬。

変化4二歩図08
 後手は6六歩(図)。 次は7五金、7七玉、6五桂のような狙いがある。
 しかしそこで先手に好手がある。

変化4二歩図09
 6三金(図)だ。 同金では3一飛成~5一竜で玉が詰んでしまうので、これは取れないし、次に5二金とする手がきびしい。
 ただし、6三金には、6二金打がある。しかしそれには、5一竜、同金、同飛成(次の図)

変化4二歩図10
 先手優勢である。
 どうやら〈イ〉8五玉よりも、〈ロ〉4二歩のほうが先手にとって良いようだと判明した。


≪3三桂図≫(再掲)
 以上の探査の結果、後手〔石〕3三桂には、9六歩、3二玉と進み、そこで先手〈ロ〉4二歩以下、「先手良し」、と結論する。


≪4二銀図≫
 さて、「4一飛」に対する後手の手段は、〔岩〕4二銀(図)を残すのみ。

≪8二竜図≫
 後手4二銀には、先手8二竜(図)がある。
 この後は、次回に。

                       『終盤探検隊 part89』につづく
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終盤探検隊 part87 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2016年12月18日 | しょうぎ
 「先手の勝ち筋」の発見が、我々の、終盤探検隊の目的である。
 しかし「必ず答えが一つある」と御約束の詰将棋とは違って、この場合は答えが存在しないかもしれない。それが現実というものの冷徹さで、それがもたらす虚無感と闘いつつ、前進しなければならない。
 「勝ちがある」と信じて―――。

 ところで、我々は、この《亜空間戦争》の“姿の見えない敵”のことを、「主(ぬし)」と呼ぶことに決めた。


    [東中学出身、涼宮ハルヒ]
 ここまでは普通だった。真後ろの席を身体をよじって見るのもおっくうなので俺は前を向いたまま、その涼やかな声を聞いた。
「ただの人間に興味はありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
 さすがに振り向いたね。
 長くて真っ直ぐな黒い髪にカチューシャをつけて、クラス全員の視線を傲然と受け止める顔は、この上なく整った目鼻立ち、医師の強そうな大きくて黒い目を異常に長いまつげが縁取り、淡桃色(うすももいろ)の唇を固く引き結んだ女。
                                  (谷川流著『涼宮ハルヒの憂鬱』より)


 このSF小説は、中高生が読むときっと面白いだろうし、大人が読んでも、中高生の時のような気持ちで読めば、面白く読めるだろう。
 涼宮ハルヒという高校一年生の少女が、「宇宙人」、「未来人」、「異世界人」、「超能力者」と自分は友達になりたい、と願って、そうしたらいつのまにか望みどおりになっていたのだが、本人はまったく気づいておらず―――という設定。彼女は実は“世界(宇宙)の中心”で、彼女が望むことはすべて現実となるのだった。彼女がそう望めば、宇宙さえも消滅してしまう…。宇宙人や未来人は、その“中心”を見張るために、彼女に気づかれないよう、高校一年生の平凡な男女の姿の使者を送りこんでいるのだった。たとえば「宇宙人」は、地味で読書好きの女子だが、実は“宇宙の情報統合思念体から派遣された対人間用インターフェイス”なのであった。
 かれらは、涼宮ハルヒのきまぐれによってこの宇宙が消滅させられてはかなわん、と見張っているというわけだ。
 このばかばかしい設定が面白く、そしてSF的な描写が迫力があるので、最後まで一気に読者を運んでしまう。(この涼宮ハルヒのシリーズは二作目以降はその“迫力”はなくなって「おもしろ学園もの」になっていくが、それはまあそういうもので、しかたがない)

 “涼宮ハルヒ”という存在は、“遊びの中心点”ではないだろうか。
 
 昔、少年漫画で「ケンカもの」が流行った時代があった。そのころは漫画の中だけでなく、現実世界で、子供たちの間で、「親分(ボス)と子分」という関係づくりが流行った。おそらく全国には数えきれないほどの子供の「親分」と「子分」がいたはずである。その「現実」のほうが先にあり、漫画はそれを反映していたにすぎない。
 あれは後にして思えば、「親分(ボス)」を中心とした遊び集団づくり、という遊びだった。現実の小学生の中で「親分(ボス)」になるのは、漫画のように決してケンカが強い、乱暴者とは限らなかった。「親分」は、勝ち取るものではなく、自然発生的に選ばれるものだった。なんとなく、子供たちは遊びの中心となる「親分」を求め、それにいちばんふさわしいと思われる人物をそこに坐らせた。
 子供が10人も集まると、何をして遊ぶか、意見がまとまらなくなる。しかしいったん「親分」が「かくれんぼをやろう」と決めたら、もうだれも異論を言わない。「親分」がそういったのだから、それは正しいのである。「かくれんぼなどつまらない」と思っていた者も、いったんやると決まったなら、楽しまなきゃ損だ。それなら、かくれんぼをより楽しくするアイデアはないかと考え、それを「親分」に提案する。「それはいい考えだ」と「親分」が採用してくれるとうれしくなって、もっといいアイデアを出そうとまた考える。
 そうやってかくれんぼを始めてみたら、「かくれんぼってこんなに楽しかったか」と思うほどに夢中になって遊んだ。やっぱりこの「親分」といると楽しい―――。
 遊びがハチャメチャになり、最初は楽しかったのが、いつの間にか「悲しい」ものになりそうになった時、いちはやく察して「親分」が言う。「やめだ」。「親分」は正しく導き、その遊びを終了させる。親分は冒険の旅(あそび)に出た船の進路を決定する重要な船長なのである。
 「親分」という“遊びの中心点”をつくって、子供たちはダイナミックな「遊び空間」を創りだしていたのだ。


≪夏への扉図≫
  【あ】5八同金  → 形勢不明
  【い】3三歩   
  【う】7三歩成  → 後手良し
  【え】9一竜   → 後手良し
  【お】6五歩   → 後手良し

 我々――終盤探検隊――はこの図から「先手の勝ち筋」を見つけたい。それが我々の闘い――≪亜空間戦争≫――である。
 これから進む道は、【い】3三歩である。
 3三歩、同銀、3四歩、同銀、と進む(次の図)


≪3四同銀図≫
 ここで[]7三歩成と、[]9一竜が先手の候補手となる。
 今回は、[A]7三歩成の道を進む。 そしてこれを、『白波作戦Ⅲ』とする。
 “Ⅲ”なのは、ⅠおよびⅡがあるからで、それはすでに検討結果が出ている。

白波作戦Ⅰ
 『白波作戦Ⅰ』は、後手「3二銀型」に対する「7三歩成」である。
 これは「後手良し」が結論。

白波作戦Ⅱ
 『白波作戦Ⅱ』は、後手「3二銀3三桂型」に対する「7三歩成」。
 これは3三桂と桂をはねた形が後手に不利に働き、「先手良し」になると前回レポートで確定している。

≪7三歩成図≫
 そして後手「3四銀型」に対しての「7三歩成」が、『白波作戦Ⅲ』。 
 この図から「先手の勝ち筋」が発見できるかどうか、それが今回のテーマである。

 この「7三歩成」に、5九金、7四金という進行が予想される(次の図)

≪7四金図≫
 ここから、〔X〕7三銀、同金、6四銀、7四飛と進んで、次の図となる。
 その順が、ソフト「激指13」の示す最善手順だが、後手番のこの図では他にも有力手がある。
 〔Y〕7五歩、〔Z〕5五銀引である。
 そういう手もあるということをふまえて、〔X〕7三銀、同金、6四銀、7四飛(次の図)を本筋として、これからその道を進もう。

≪7四飛図≫
 図の「7四飛」に代えて、“7四金”もあるが、これは『白波作戦Ⅰ』(後手3二銀型)の時と同じく、8四桂(同金、同歩、同竜、7二桂)で、“後手良し”。
 よって、先手は「7四飛」と打って、この手に期待をかけた。
 『白波作戦Ⅰ』の時は、この「7四飛」に対しては、7五歩、8五玉、9四金、同飛以下、これも“後手良し”になったが―――

7四飛図1(7五歩の変化)
 後手「3四銀型」の場合は、同様に進んで、結果が逆になる。
 この図から、後手7三銀として“後手良し”というのが3二銀型の『白波作戦Ⅰ』であったが、この場合はこの図を見てもらうとわかるが、7三銀には、“3四飛”がある。この手が後手玉への“詰めろ”にもなっており、“先手良し”である。

 そういうわけで≪7四飛図≫で、(1)7五歩はこの場合は“先手良し”だが、(2)5五銀引はどうなるか。

7四飛図2(5五銀引の変化)
 (2)5五銀引には、5三歩(図)がある。この変化も、「3二銀型」と「3四銀型」の違いがはっきりと出て、「3四銀型」のために先手有利に働く場合が多い。それをこれから確認していく。
 図で、後手の最善手はおそらく〈マ〉8四桂と我々は考える。
 
 他の手――たとえば〈ミ〉7五歩や〈ム〉6二桂という手――も有力ではあるが、先手の5二歩成が後手玉への“詰めろ”になるので、後手のの攻めは届かない。
 具体的にその“詰み”を見てもらうために、〈ム〉6二桂(次の図)以下の手順を確認しておこう。

 7四飛図3
 先手7四飛、5五銀引、5三歩に、〈ム〉6二桂と打ったところ。
 これがなかなかの手で、先手同金なら、同金で、それは後手良しとなる。だからここで5二歩成が後手玉への“詰めろ”になっていなければ、後手勝ちになるところだった。
 ところが、この図から5二歩成、7四桂、4四角(次の図)と進んで―――

7四飛図4
 後手玉は“詰み”。 4四同歩(同銀)に、3一銀、同玉、5一竜以下。

7四飛図5
 「7四飛図2」まで戻って、7四飛、5五銀引、5三歩に、〈マ〉8四桂が後手の最有力手と考えられる。以下、8五玉(8六玉は7三銀、同飛成、8四金と進み後手良し)、9四金、8六玉、7三銀、同飛成となって、この図である。
 後手は先手5二歩成の前に先手玉を追いつめなければいけないが、ここでは7四歩、同竜、6二桂という手段がある。その6二桂に、先手は6五竜とするのが良い。5五の銀取りになっている。
 そこで6七と(同竜なら6六歩で後手良し)には、先手9六歩(次の図) 

7四飛図6
 後手は攻め続ける。8五金打、同竜、同金、同玉、6五飛、7五歩、6四銀、5二歩成。
 先手待望の“5二歩成”がここで入った。
 こうなると後手はもう先手玉を詰めるしかないが…
 7五飛、8六玉、7六飛、9七玉、8八玉、7六桂、8九玉(次の図)

7四飛図7
 詰まない。 よって、先手の勝ち。

7四飛図8
 今の手順の、7四歩に代えて、6六銀(図)ならどうだろう?
 ここでも9六歩が良い。以下、後手7五桂が“詰めろ”だが、7六銀と受ける手があり、どうやらこれで受かっている。
 以下、7六同桂、同玉、5五金(6五玉と逃がしては後手いけない)、8六玉、8四銀、5二歩成(次の図)   

7四飛図9
 やはり5二歩成が入り、先手が勝ちになった。
 図で7三銀(竜を取る)に、4四角から後手玉は“詰み”。

7四飛図10(8四桂の変化)
 (1)7五歩も、(2)5五銀引も“先手良し”になった。
 それでは第3の手、(3)8四桂(図)はどうだろうか。(似たような図をすでに検討したが、上で検討したのは5五銀引、5三歩、8四桂という展開で、違いに注意)
 この(3)8四桂には、8五玉と逃げる。(8六玉と逃げるのは7五金で後手良し。8五玉に7五金には同飛、同銀、7四玉で入玉できる)
 8四桂、8五玉、9四金、8六玉、7三銀、同飛成、7四歩、同竜、6二桂、7一竜行(次の図)

7四飛図11
 この場合は、先ほどのケースと違い、5三歩がまだ入っていない。よって、7一竜と入り、次に3一角(同玉なら5一竜以下詰み)からの寄せを狙う。
 図から、7四歩(詰めろ)に、3一角、3三玉、1一角、2四玉、6五銀、3五玉、9六歩、6六歩、6四角成(次の図) 

7四飛図12
 先手の攻めの方が早い。 6七歩成には、5三歩で先手良し。
 先手優勢。

 これでどうやら「7四飛」以下、“先手良し”で確定か――――と思ったが、そうではなかった。

7四飛図13(後手8五金の変化)
 いまの手順の途中、7四歩のところを代えて、8五金打(図)が、どうやら後手の最有力手段。(あまりに“俗手”だし、ソフト「激指」もこの手を第3候補手としていたため、この手の調査が遅れた)
 図以下の手順は、7七玉、7六金、同竜、同桂、6六角(次の図)

7四飛図14   
 後手に飛車を持たれていると、先手玉はもう相当に危ない。図の6六角が攻防の手。
 以下、5五桂、7六玉、7八飛、7七歩、6七と、7五角(次の図)

7四飛図15
 7五角(図)は、次に3一銀を狙っている。
 7七飛成、6五玉、6六と、6四玉、8五金、7三玉、7五竜、8二玉、6四角、7三歩、同角、7一玉、6四角、7二金(次の図)

7四飛図16
 「角」を犠牲に、先手玉はついに“入玉”を果たした。
 この図の形勢判断ははっきりせず、「互角」と評価するしかなさそうだ。
 先手は駒数が少ないので、もし“相入玉”になった場合、点数では優位には立てそうになく、ここから小駒を10枚くらい取って、やっと“持将棋引き分け”になる。その点では少し先手に分が悪い。
 しかし先手玉はすでに入玉を果たしており、後手がここから入玉するのはそう容易というわけでもない。後手は持駒が歩しかなく、先手の勝機も十分にある図である。
 ソフト「激指13」の評価値は[ -157 互角 ]

 そういうわけで、≪7四飛図≫以下の評価は「互角」(形勢不明)、を結論とする。

 先手が勝ちまではいかなかったが、「互角」の結論を得たのは、我々(終盤探検隊)としては、大きな収穫である。
 しかし…、まだ、問題が残っている。後手にはまだ、“有力な選択肢”が残っているからである。


≪7四金図≫(再掲)
 さてこの図は、いま探査してきた≪7四飛図≫の、4手前の図。(ここから〔X〕7三銀、同金、6四銀、7四飛で≪7四飛図≫になる)
 後手の“有力な選択肢”というのがこの図での、〔Y〕7五歩、および〔Z〕5五銀引である。
 以下、〔Y〕7五歩についてまず簡単に触れ、〔Z〕5五銀引について詳しく説明したいと思う。

後手7五歩図1
 ここで〔Y〕7五歩と打つ。
 これには8六玉と逃げるが、以下、9四歩、9六歩、9三桂(次の図)

後手7五歩図2
 後手の9四歩~9三桂が好着想。次に後手に7六金と打たれてはいけないので、ここで先手7七歩だが、それには7六歩(次の図)

後手7五歩図3
 後手の持ち駒は「金桂」で、先手の持ち駒は「飛角角」。 先手にも可能性のある図とも思えるが、ソフト「激指13」の評価は[ -570 後手有利 ]で、後手寄りに傾いている。
 図以下を調べてみると、先手良しになるケースも多く出てくるのだが、ここで先手最有力とみられる8三竜には、後手8五歩、9七玉、6七ととし、以下、7六歩、6五銀、7五金、6六銀という展開で、“先手苦しい”というのが今のところのこの図への我々の評価になっている。


後手5五銀引図1
 そして〔Z〕5五銀引(図)だが、結論から先に言えば、どうもこの〔Z〕5五銀引によって“後手良し”というのが我々の出した結論である。残念ながら、これを打ち破る道を発見できていない。(「激指13」はこの図を、[ -96 互角 ]と評価)
 ここで(ヤ)3二歩という鋭い手もあるが、4二銀と応じられて、その後に良い手段がない。
 (ユ)6五歩もある。以下、7五歩、8六玉、6五銀…、あるいは先手の勝ち筋がそこに潜んでいるかもしれないが、我々の調査では見つけることはできていない。

 ここでは、終盤探検隊は、先手の最有力手は(ヨ)8三竜だと判断し、その手を以下調査していくこととする。

後手5五銀引図2
 (ヨ)8三竜、7一桂、3三歩、3一歩、8二竜、8四歩(次の図)
 「3三歩、3一歩」の交換はだいたい後でも入る場合が多いが、早めに打っておくことで後手に一歩多く歩を使わせた。 
 
後手5五銀引図3
  ここで、<p>8四同竜と、<q>8六歩が有力手。
 <p>8四同竜、8三歩、同と、6二桂(次の図)

後手5五銀引図4
 ここでの後手6二桂(図)が好手。
 続いて、7三と、7四桂、同と、8三歩、8五竜(次の図)

後手5五銀引図5
 こうした変化の時、後手に余分に手段をあたえないよう後手を歩切れにさせた。
 先手は飛車角四枚を持ち、後手は金銀八枚を持っているという凄い戦いだ。どちらが勝つか。
 5六と、2六桂、6六と、8六玉、2五銀、3七飛(次の図)

後手5五銀引図6
 後手に5六と~6六とと、じわっと攻められて、先手は3七飛(図)が攻防の手。3七に打ったのは受けの意味で、3五飛や3九飛では、7六金と打たれ、同竜、同と、同玉、6五銀、同玉、6六金、7五玉、7七飛という攻めで先手玉が寄ってしまう。この3七飛はその最後の7七飛を打たせないための受けだ。そして金が入れば3二金と打って後手玉を詰ますことができるが…
 4二金、8二角、9四金(次の図)

後手5五銀引図7
 ここで9四金と、後手はいつでもあった“切り札”をここで出す。
 5五竜、7六金、9六玉、5五銀、3二歩成、同歩、5五角成、3三歩、7三角、2六銀(次の図)

後手5五銀引図8
 2六の桂を取って、後手は次に8四桂と打つつもり。 この図は、先手と後手の玉の安全度に差がありすぎる。

 こんな感じで、<p>8四同竜以下はどうも先手勝てない。

後手5五銀引図9
 竜を引くと、後手玉への攻め味が弱くなってしまう。では、<q>8六歩(図)とするのはどうか。竜は8二に置いて、攻めに使うつもり。
 後手は5六と。
 そこで先手の候補手は、〔a〕6七歩と、〔b〕8四金。

 まず〔a〕6七歩。 
 これは後手の6六とを防いだ手なのだが、6七同とと取られる手が先手にとって一番困る手になる。(同玉は6五銀で先手が悪い)
 以下、8四金に、9四歩(次の図)

後手5五銀引図10
 この9四歩が、どうやら後手の好手になっている。(この9四歩に代えて7五金なら6七玉で先手良し)
 先手は“あわよくば入玉”と目論んでいるのだが、この9四歩でそれを防がれる。もしここで先手8五玉なら、そこで7五金と打って、9六玉、9五歩、8七玉、6六銀で後手良し。
 図以下の進行例は、7四金、8四歩、同竜、7二歩(同とは8三歩)、8三と、6六と、8五玉、6五銀、7五金、8三桂、同竜、6四銀引(次の図)

後手5五銀引図11
 結局、この変化も、先手は攻められっぱなしで捕まってしまうことになった。
 先手負け。

後手5五銀引図12  8四金
 戻って、後手5六とに、〔b〕8四金。
 以下、予想手順は、7五金、8七玉、6六と、4一角(次の図)

後手5五銀引図13
 先手はもう入玉はきっぱりあきらめ、“9八玉”と引いて闘う覚悟を決め、4一角(図)で勝負。このほうが、可能性はありそうだ。
 図以下は、7六と、9八玉、3三桂、5二角成、同歩、同飛成、3二桂、4一飛、1四歩(次の図)

後手5五銀引図14
 1一角、1三玉、3一飛成、8七角(次の図)

後手5五銀引図15
 以下、8九玉に、8八歩、同玉、6九角成となって、残念ながら、先手が一手負けになっている。
 後手玉は3三角成の一手が入れば必至なのだが…、先手玉への“詰めろ”がほどけない。

後手5五銀引図16
 戻って、5二角成と攻める前に、7七歩(図)と工夫する。
 同とに、7八とと打って―――これを同となら―――(次の図)

後手5五銀引図17
 3二歩(図)で先手勝ちになる。
 これを同歩なら、5二角成、同歩に、2一金、同玉、7一竜以下の詰みがある。
 したがって3二歩には4二銀だが、それには6二とで先手が勝てる。

後手5五銀引図18
 それなら―――ということで、7七歩、同と、7八歩に、7六ととした場合。
 この場合は、5二角成以下、上で書いた手順で攻めていくと、この図になるが、この場合だと逆に“先手良し”になっている。今度は後手の8七角~6九角成がないので、先手玉に詰めろをかける手がないから、3三角成のほうが早くなっているのだ。

 それなら、これで“先手勝ち”なのか―――?

後手5五銀引図19
 いや、残念ながらそうはならなかった。
 7七歩には、後手6六銀(図)で、後手優勢だ。以下、7六歩、同金で、次に7七銀成が“詰めろ”になる。それを7八歩と防いでも、7七歩と合わせられ、先手勝てない。先手は飛角しか受け駒がないし、後手は6、7、8筋に歩が使えるので、どうにもならない。
 
 結論。5五銀引に(ヨ)8三竜、は、先手勝ちがない。


[今回のまとめ]

≪7三歩成図≫(再掲)
 この図、7三歩成以下(白波作戦Ⅲ)を調べてきた。
 以下、5九金、7四金と進んで―――

≪7四金図≫(再掲)
 この図になるが、ここから〔X〕7三銀、同金、6四銀、7四飛なら、「互角」の勝負。
 しかし、〔Y〕7五歩、または〔Z〕5五銀引で、先手自信なしが終盤探検隊の結論である。ここで手の選択権利が後手にあるのが、先手にとって痛いところだ。

 『白波作戦Ⅲ』は不発。


 「先手の勝ち筋」は、いまだ発見できていない。



                       『終盤探検隊 part88』につづく
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終盤探検隊 part86 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2016年12月15日 | しょうぎ
 ≪亜空間≫で我々が闘っている、“敵”とは誰だろう。
 我々が――終盤探検隊が――「先手番」を持ち、“敵”が「後手番」を持って、対峙している。
 その“敵”とは―――?


    [エスパイ]
そのときのぼくは、ショックのあまり、自分のいる場所を見失いそうだった。
二十世紀の科学者の粋をあつめた人工衛星の中で、地上はるか数十キロの空間を、時速三万キロでとびながら対決した、“敵”の正体が――。
「ソ連首相暗殺計画」という、おそろしく現実的な国際陰謀にまきこまれ、世界中の暗殺組織をむこうにまわして、その中核へとせまりながら、ついにつきとめた“敵”の正体が――。
そんなバカなことはあり得ない!
                                  (小松左京著『エスパイ』より)


 小説『エスパイ』は、1964年から大人向け漫画雑誌に小松左京が連載した小説で後に映画化もされた。「エスパイ」とは「エスパー」と「スパイ」とを合わせた、小松の造語である。
 日本では1960年代に、映画や小説では「スパイブーム」で、たとえば丹波哲郎や千葉真一が出ていて大人気だったTVドラマ『キーハンター』が始まったのは1968年だし、この前年10月から放映されていた子供向けの『ウルトラセブン』も、多分に「スパイもの」の香りがしていたストーリーであった。また、さいとうたかをの漫画『ゴルゴ13』も同じ1968年に始まっているようだ。
 “米ソ”が「ロケット競争」をしていた頃だ。
 しかし英米の「スパイブーム」はおそらく日本より10年くらい早く、1950年代と思われる。「水爆競争」が過熱し、「放射能」という言葉に過剰に踊らされていた。北半球はそのうち核戦争のために放射能で住めなくなるから、できるなら南半球へ移住した方がよい、などと大人がまじめに議論していた時代である。
 1938年に、ウランに中性子線を当てると妙なことが起こる、そのからくり―――すなわち「核分裂」―――が判った。と同時に第二次世界大戦がドイツからはじまった。「核分裂fission」と言う命名者は、物理学者オットー・フリッシュであったが、オースリアのウィーンでユダヤの家系に生まれ、戦争が始まった時、彼は33歳で、デンマーク・コペンハーゲンにいた。戦争でデンマークは住みづらくなり、イギリスへ移ったが、所有していたピアノを置いていくしかなかった。
 イギリスも戦争で忙しいし、フリッシュは外国人だ。科学者は皆、戦争のために(たとえばレーダーや暗号などの)研究をしていたが、フリッシュのような外国人に重要な研究を任せるわけにもいかない。敵国ドイツのスパイかもしれないし。そういうわけでフリッシュのような、外国からやってきた物理学者はやることがなく暇だった。暇なのでフリッシュは気になっていたあの「核分裂」の“問題”について考えることにした。
 “問題”とは、「核分裂の連鎖反応は実現可能か」という問題のことだ。当時の大御所物理学者たちは「それは無理だ」と言っていたが、ほんとうだろうか。もし「連鎖反応状態」がつくり出せたら、核エネルギーは現実的になるし、核爆弾だってできてしまう。
 フリッシュの実験と考察の結果は、「核分裂の連続連鎖反応は実現可能である」だった。製造は困難だが、でも理論的にはできる、というのがフリッシュの結論だった。
 これは報告しなければいけないと、その研究をイギリスに提出した。
 その報告は、やがてアメリカにも渡った。しかし当初のアメリカ上層部は、その核エネルギーなどという夢物語をあまり現実的に考えられず、フリッシュの報告はアメリカを動かす引き金にはならなかったようだ。
 しかし、イギリスは動いた。科学者を集め、原子爆弾の製造の研究をせよと命じた。イギリス本島は戦争状態で落ち着いて研究できる環境にないので、同盟国のカナダに拠点を移し、そこでこのイギリスの研究者チームは原子爆弾の研究をはじめた。動き始めたのはこのようにアメリカよりもイギリスが先だったが、イギリスの研究はなかなか進まなかった。
 実はこのイギリスの原爆研究チーム、ほとんどが外国人だった。イギリスの研究者の重要人物のほとんどは、本土でもっと必要に迫られた軍事研究をしなければならず、したがってカナダに集められたこの研究者たちは、ほとんどが、ドイツなどから避難してきた外国人だったのである。優秀な人物も多かったが。フリッシュもそのメンバーだった。
 この多国籍軍のイギリス原爆研究班は、やがてアメリカの原爆研究チームに合流する。イギリスは一旦自国の原爆製造を休止し、とうとう本気を出したアメリカの、その応援サポート部隊になったのである。そういうわけで、イギリス人でもアメリカ人でもないオットー・フリッシュも、このアメリカのロスアラモスでの「原子爆弾製造研究」に参加し携わり、そしてそのような境遇の科学者は彼だけではなかった。他に何人も外国人研究者はそこにいた。
 ところが、このイギリスチームの「多国籍研究者」などの中に、“ソ連のスパイ”がいたのである。フリッシュではない。正確なところはわからないが、少なくとも判っているのは、クラウス・フックスというドイツ生まれの物理学者は、ロスアラモスの原爆研究に参加し、大戦後にスパイ容疑で告発され、そして本人もそれを認めたということである。フックスは共産主義者であり、ソ連へイギリスの軍事研究情報を流していたという。フリッシュは彼がスパイだなんて思いもしなかったと述懐している。
 当時のアメリカが外国人に対して少し警戒心に欠けていたということはあるかもしれない。しかしたとえばウクライナ出身のジョージ・ガモフ(物理学者)は、ロスアラモスには呼ばなかった。ソ連のスパイと言う可能性を排除できなかったからである。
 “スパイ”が盗んだ情報は、たとえばこんな情報である。
 プルトニウム型原子爆弾は、ウラン型とは別の問題があった。「プルトニウム型」では、「連鎖反応」を一定時間持続させなければならないとわかり、ところがふつうに爆発させるとそれができず、連鎖反応は起こらず、したがって爆弾としては不発である。そこでアメリカ研究チームが考えたのが「爆縮」という技である。そのプルトニウム爆弾の中に、TNT火薬をうまいぐあいに配置し、TNT火薬の内側に向けた爆発力のよって、爆弾が飛び散るのを防ぐべく強引にしばし圧縮するという技である。そのために計算し、考えつくされた最初の火薬のデザインを「爆縮レンズ」という。これは天才数学者達の計算機を使わない何か月にもおよぶ思考(計算)で編み出された緻密なデザインであった。
 こうした技が、スパイによってソビエト連邦へ横流しされたのである。
 このように「スパイ戦争」ではソビエト連邦が一歩先を進んでいたが、大戦後、英米はそれに負けぬよう対抗し、その意識が一般人にまで及び、「スパイブーム」をつくっていったということかもしれない。こういう空気の中では、スパイをやっている人の中では、「スパイをやっているオレ、かっこいい」というような意識もおそらくあっただろう。 


≪夏への扉図≫
  【あ】5八同金  → 形勢不明
  【い】3三歩   
  【う】7三歩成  → 後手良し
  【え】9一竜   → 後手良し
  【お】6五歩   → 後手良し

 我々――終盤探検隊――のこれから進む道は、【い】3三歩である。


≪3三歩図≫
 もしも後手が、 3三歩を手抜きして5九金なら、3二歩成、同銀、3三歩(次の図)となって―――

変化A図(3三歩に5九金)
 先手優勢となる。
 図から、3三同桂には1一飛、3三同玉なら1一角、2二桂、4五金である。

≪3四同銀図≫
 したがって、≪3三歩図≫から、3三同銀、3四歩、同銀と進むのが我々が考える「本筋」で、この図になる。
 これが、【い】3三歩の本筋の進行で、この後先手は「7三歩成」とするか、あるいは「9一竜」か…。

 しかしその前に、3三歩を「 同桂 」(次の図)だったらどうするのか―――という問題がある

≪3三同桂図≫
 これが今回のレポートのテーマである。 もしもこの「 3三同桂 」で先手が悪いのであれば、上の≪3四同銀図≫を調べても意味がない。だから終盤探検隊の望みとしては、「この≪3三同桂図≫の分かれは先手良し」ときっちり確定させておきたい。(そうでないと次へ進めない)

 この≪3三同桂図≫で、先手はどう指すのがよいだろうか。
 3つの有力手段がある。
  〔E〕5八金
  〔F〕3四歩
  〔G〕7三歩成
 (他に〔H〕9一竜もあるが、それは5九金、3四歩となって〔F〕と合流する)


〔E〕5八金

5八金図1
 〔E〕5八金は、以下、同と、9一竜(図)と進む。
 この9一竜は必要な手で、この手で他の手――たとえば3四歩――だと、8四桂と打たれて先手がいっぺんに不利になる。(9一竜の後に8四桂には、8五玉、9四金、8六玉で、これは「9四金を打たせた」ということで、逆に先手が良い)
 ここで7五金、7七玉、3四歩が、おそらく後手の最善の対応(次の図)

5八金図2
 先手は今「飛角角金金香歩2」と強力な持駒をもっているので、3四歩を打って3三歩成とする手で後手玉は一気に“詰み”となる。なので後手がこの図の「3四歩」を打つ以外の手は、先手が勝つ。
 しかし「3四歩」と桂頭を受けて歩を打ったこの図はどうもここからは先手の勝ちがない―――と判断し、終盤探検隊は一旦はこの道の調査を打ち切ったのであった。ところが、その後、この先の展開で先手に“好手”を発見したので、それをぜひ紹介したい。

 まずこの図で、先手は3五歩と歩を合わせる(次の図)

5八金図3
 以下、6五桂、8八玉、3五銀(次の図)

5八金図4
 「6五桂、8八玉」を決めてから、「3五銀」としたのは、単に3五銀だと6七玉のような手があって、その変化を消した意味があった。しかし実はそれが後手の失敗になろうとは…。正解は「単に3五同銀」だったのだ!(この理由は後で説明する)

5八金図5
 後手の3五銀に、6三角(図)と打つ手があった。この手は、終盤探検隊が見つけた。(つまりソフト「激指」はこの手を10個の候補手として示していないということ)
 どうやらこれで、この局面は“先手勝ち”になっているのである!

 6三角の手では、6一角のような手はよくある“筋”であるが、それはこの場合4二金とかわされて次の手がない。それで、6三角と打った。4二金なら5一竜があるのが6一角との大きな違い。
 この6三角を同金と後手は取りたいだろう。しかし6三同金、5一竜、4一桂、5二飛となると、はっきり先手優勢である。

 では図から、7六桂、9八玉、7七桂成だとどうなるか。先手は8九香と詰めろを受け、そこで8六金、同歩、6三金で次の図だ。

5八金図6
 先手玉は、次に8七角、同香、8八桂成までの三手詰めだ。
 後手玉に“詰み”はあるか? あれば先手勝ちになるが…
 答えを言うと、後手玉に“詰み”はない。しかし、“先手勝ち”になるのだ。
 その手順は、3一角、同玉、1一飛、2一角、5一竜、4一角、5二金(次の図)

5八金図6
 これで“先手勝ち”。 後手に「角」を二枚受けに使わせたので、先手玉が安全になったからだ。
 この図で後手2二玉も、2一飛成、同玉、3一金以下詰み。


 さて、戻って、では先手「6三角」に、この図のように「4一桂」と受ける手はどうなるだろうか。
 それには5二角成、同歩、6一飛と行く。これは3一角以下の“詰めろ”だ。
 よって、後手は1四歩。 先手は1五歩(詰めろ)、同歩、1四歩(同香なら3一角、同玉、1二金)、4五桂、4一飛成、同銀、1一角(次の図)

5八金図7
 1一同玉は2一金、同玉、4一竜から詰むので、3二玉と逃げるが、それも詰みがある。3三香、同角、2二金(次の図)

5八金図8
 2二同角、同角成、同玉、1一角、同玉、2一金、同玉、4一飛成…、以下の“詰み”である。



 このように、「6三角」という好手があって、今の変化は“先手勝ち”。
 ところが、「5八金図3」まで戻って、先手「3五歩」を、後手が“単に3五同銀”(次の図)とすれば、事情が変わるのだ。

5八金図9
 ここで先手はどう指すか。それが問題だ。
 ここであの「6三角」を打つとどうなるのか。
 それは同金と取られ、5一竜、6六角、7八玉、4一桂となるが、この形だと“後手良し”となるのである。これが先ほどとの大きな違い。
 図で6七玉が見えるが、それは6六桂と打つ手がぴったりで、やはりこれも“後手良し”。

 ということで、“早逃げ”の8八玉が最善かと思えるが…
 8八玉、7六桂、9八玉、6八と、6三角(次の図)

5八金図10
 さあ、この形での「6三角」はどうか。
 この図で重要なことは、後手の駒台に「桂」が乗っていることである。6五桂と7六桂、二枚の桂馬を打つ場合との違いはそこである。この違いが後で形勢を分ける。
 「6三同金」と図で角を素直に取ると、5一竜、4一桂、4二歩、7八と、3一角、3一同玉、1一飛、2一角、4一歩成(次の図)

5八金図11
 2二玉、2一飛成、同銀、3二金、同玉、3一と…、以下後手玉“詰み”。
 これは、“先手勝ち”になった。
 
5八金図12
 戻って、先手「6三角」に、6三同金とはせず、「7八と」(図)が後手の正解手である。
 これで先手玉に詰めろがかかったので、先手は8九香と受ける。
 そこで6三金と角を取る(次の図)

5八金図13
 これで“後手勝ち”が確定である。この場合、後手の持駒に「桂」が一枚あることが大きい。これがなければ、さきの変化にあったように、この図から3一角、同玉、1一飛、2一角打、5一竜、4一角、5二金の順で先手勝ちになるところだった。角を受けに二枚使ったので後手の勝ちがその場合はない。ところがこの図では「桂」があるので、5一竜には「4一桂」と受けることができ、これで「角」を使わないですむ、それによって、この図から「8八桂成、同香、8九角」の先手玉の“詰み”が残り、この詰みを伸ばす手段が先手に無い。


 以上の探査研究により、〔E〕5八金コースは「後手勝ち」とわかった。
  


〔F〕3四歩

3四歩図1
 〔F〕3四歩と先に打つ。次の3三歩成がどれほど後手に利いているか。
 この場合は〔E〕5八金コースの場合との大きな違いは、金が持駒に一枚少ないということである。
 しかし5九の金を取らせる代わりに、「一手」多く先手が指せるということになり、その「一手」で3四歩と先着したのである。
 図以下、5九金、3三歩成、同銀、9一竜と進んで、次の図。 

3四歩図2
 上のケースでも出てきたが、この9一竜は、後手に8四桂と打たせないための必要手。
 ここで後手に選択肢がある。
  〔カ〕7五金、〔キ〕7四歩、〔ク〕4二銀右、の3つ。

 〔カ〕7五金は、これがいちばん最初に見える手と思うが、どうだろうか。
 7五金、7七玉、6五桂、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成、3四桂(次の図)

3四歩-3五金図01
 二枚の桂で後手は先手玉に“詰めろ”をかけた。
 しかし図の3四桂が先手用意の“返し技”。以下、3四同銀、1一角、同玉、3一飛(次の図)

3四歩-3五金図02 
 2一角、3三角、2二桂、7七角成(次の図)

3四歩-3五金図03
 これで先手優勢。

3四歩-3五金図04
 後手のやり直し。7六桂の王手に代えて、今度は7六金(図)と攻める。
 次は7七桂成とねらっているが、まだ詰めろではない。
 先手はどうするか。
 ここはやはり同じ攻め―――3四桂~1一角~3一飛でよい。

3四歩-3五金図05
 同じように攻めて、今度は3二金(図)と打って、後手玉は“必至”である。

 このように、「3四桂以下」の先手の攻めがたいへん強烈である。この攻めは後手が「金」を持っていると受かる。後手は7五金と金を使ったので、この「3四桂以下」の攻めが炸裂したのだった。

3四歩-3五金図06     3五金~4二銀右
 少し手を戻して、途中で、図のように「4二銀右」受けた場合。
 この場合は4一角と打つ。“詰めろ”だが、これを3二歩と受けると、5二角成がある。
 よって後手は3一歩と受けるが、それには2六香がある(次の図)

3四歩-3五金図07
 「2三」に火力を集中させれば、後手はひとたまりもない。2四桂と受けるのは、同香、同銀、3四桂、3三玉、4五金で“いっちょあがり”である。

3四歩-3五金図08   3五金~6二銀
 手はあるもので、先ほど4二銀右としたところを代えて、「6二銀」とそっちに銀を引いたのがこの図である。
 4二銀右のときと同じく4一角と打つと後手のわなにハマってしまう。4一角は、4二金とされ、先手まずい。4一角と先手に打たせないための「6二銀」という工夫であった。
 ここは4五桂と打って、寄せの“仕込み”をしておく。
 後手は攻めてくる。6五桂、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成、8九香(次の図)

3四歩-3五金図09
 後手は4二金と受け、3筋を強化(ほうっておくと3四歩がきびしい)
 しかし持ち駒の多い先手には攻めがある。1一角、同玉、3一飛、2一角、3三桂成。

3四歩-3五金図10
 先手勝ち。

 後手〔カ〕7五金は、“先手勝ち”と結論する。

3四歩-7四歩図01 7四歩
 〔カ〕7五金で勝てなかった後手は、〔キ〕7四歩(図)と工夫する。これは次に7五銀と出ようという手だ。

3四歩-7四歩図02
 対して先手は2五桂(図)と打つ。(代えて3四歩もあるが、その後の変化が多く、我々の調査は結論まで出せていない)
 後手はねらいの7五銀。
 これに対して、先手は<a>8五玉と<b>7七玉と、二択である。
 まず<a>8五玉だが――――

3四歩-7四歩図03 8五玉に6四銀
 実を言うと、先手が2五桂と打った時、後手玉には“詰めろ”がかかっていたのである。(その“詰み”は後で出てくる)
 ところが、この図の後手「6四銀」はその詰みを逃れつつ(5三の脱出口が開いたため)、先手玉に詰めろをかける“詰めろ逃れの詰めろ”なのだった。先手玉には後手8四歩以下の詰みがある。
 この図は、先手が苦しい。

3四歩-7四歩図04
 後手7五銀に対する先手の正解手は、<b>7七玉だった。後手は「金桂桂」と持っていて、なんだか詰まされそうな気もするが、大丈夫、詰まない。6五桂には7八玉と逃げて、詰まない。以下6六桂、8九玉、7七桂成となって、先手玉はほぼ必至だが、先ほども言ったように、後手玉には“詰めろ”がかかっているので、先手が勝ちになる。
 その“詰み”の手順は、まず2一金から入って―――(次の図)

3四歩-7四歩図05
 2一同玉、3三桂不成、3二玉、4一角、3三玉、1一角(次の図)

3四歩-7四歩図06
 2四玉、2三角成、同玉、3三飛(次の図)

3四歩-7四歩図07
 こういう“詰み”である。

3四歩-7四歩図08
 こんな具合に後手玉が詰んでしまうので、その前に後手は受ける必要がある。それで6五桂と打つ前に4二銀右としたのが、この図。
 上でもあったように、この場合も4一角が有効(次の図)

3四歩-7四歩図09
 3一歩なら、3六香、3五桂、同桂、同銀、3四歩と攻めていけばよい。以下3四同銀は、2一金、同玉、3三桂打以下詰み。
 ただしこの場合、後手は金を持っているので、3一金の受けがある。その形でどういう攻防になるか、それを確認しておこう。
 3一金、3三桂成、同銀、5二角成、6五桂、8八玉、7六桂、9八玉、7七桂成、8九香(次の図) 

3四歩-7四歩図10
 8九香で後手の攻めは止まった。後手はここで5二歩と手を戻す。
 そこで後手玉に“詰み”があるのだった。
 3一飛成、同玉、1一飛(次の図)

3四歩-7四歩図11
 元々、後手玉は「穴熊玉」だった。だから「1一」に空間があり、その空間を利用して後手玉を寄せるのはたいへんに気分の良いことである。
 1一飛に4二玉は3一角があるし、2一に合駒は何を合いしても、4一金、同玉、2一飛成、3一合駒、3二金、5一玉、7三角以下、わりとわかりやすい“詰み”である。

 〔キ〕7四歩も“先手勝ち”だ。

3四歩-4二銀右01
 〔ク〕4二銀右。 もっと早い段階で――つまり先手から2五桂が来る前に――4二銀右とした場合。
 やはり先手4一角と打って行き、後手は3一金と受ける。
 以下、5二角成、同歩、6一飛、6七角、8六玉、9四桂、9五玉、7五銀(次の図)

3四歩-4二銀右02
 先手が6一飛と打った時には、後手玉には“詰めろ”がかかっていた。その詰みは、3四桂、同銀、1一角という筋で、後手はそれを受けつつ、6七角と打ったきたのである。
 この図では、今は逆に、先手玉に“詰めろ”がかかっている。8四銀、9六玉、8五角成の三手詰めだ。
 先手は8五香と打って、それを受ける。
 後手は8四歩。先手、同香。そこで後手、8六桂(次の図)

3四歩-4二銀右図03
 後手の細い攻めをふりほどけば、先手の勝ちがはっきりする。
 この図では8五桂でもよいが、3四桂がもっとわかりやすい。同馬と取らせて、先手玉を安全にして、3二歩と攻める。

3四歩-4二銀右図04
 3二同玉だと、4一角からかんたんに詰んでしまう。よってここは1四歩と逃げ道を開くくらいしか手がないが、3一歩成で“先手勝勢”である。。

4二銀右図01 
 さて、もっと前―――先手3四歩と打ったところ―――に手を遡って、そこで「4二銀右」(これまでは5九金以下の展開を調べてきた)としたのがこの図。これを調査しよう。
 ここでは3三歩成、同銀右とすぐに桂を取るのもあるかもしれないが、先手のより戦いやすい指し手は何かを考えたい。
 後手は4二銀右と受けを強化した。その分、盤面左半分の、後手からの先手玉への“圧力”は減少した。
 そこを衝いて、6五歩と打つのが本筋ではないかと思う。5三銀や5五銀上なら、7三歩成だ。
 よって、6五歩には、5九金、6四歩が予想される。
 そこで先手は6六角と打つ、次に3三歩成が厳しいので、後手は5五桂と受ける(5五金の受けなら、8八角と引いておく。金を打ってくれると7五玉からの入玉がラクにできる)
 そこで8三竜(次の図) 

4二銀右図02
 先手は“入玉作戦”である。
 図以下の想定手順は、5六と、3九角、3八歩、8四角、7一桂、7四竜、8三金、同竜、同桂、8五玉(次の図)

4二銀右図03
 飛車は敵に渡したが、“入玉”は確定的。玉を安全にしてから、思いっきり攻めればよい。
 3三歩成を決めないのは、こういう流れになった時、3三玉からの後手の“中段玉”あるいは入玉狙いを警戒したからだった。


 以上の調べにより、〔F〕3四歩は「先手勝ち」と結論する。

≪3三同桂図≫(再掲)
  〔E〕5八金   →後手良し
  〔F〕3四歩   →先手良し
  〔G〕7三歩成
 「3三歩、同桂」の次、手番は先手。なので、〔F〕3四歩を選べば先手良しの道を進めるわけで、したがって、この図の形勢判断は「先手良し」となる。
 結論はすでに出たので、〔G〕7三歩成については省略してもよいのだが、面白い手も出てくるので、大雑把に紹介しておこう。


〔G〕7三歩成 (白波作戦Ⅱ)

≪7三歩成図≫
 『報告part83』で、我々は『白波作戦』と名付けて、7三歩成以下の戦術を調べた。
 その時と今回と、何が違うかといえば―――

参考図(白波作戦Ⅰ)
 これがその『白波作戦』の図であるが、この図で「3三歩、同桂」が入っているケースが、これから調べる戦術である。後手3三桂型に対する7三歩成を『白波作戦Ⅱ』としよう。

 『白波作戦Ⅰ』は失敗に終わったが、『白波作戦Ⅱ』はどうだろうか。 

 ≪7三歩成図≫からの指し手の本筋は、(先手7三歩成に)
 5九金、7四金、7三銀、同金、6四銀、7四金となる(次の図)

≪7四金図≫
 ここで後手が何を指すかだが、『白波作戦Ⅰ』(後手2一桂型)の時は、7四金には、8四桂と打たれ、以下、同金、同歩、同竜、7二桂で、“後手良し”と結論した。
 ところがこの図で8四桂は、結果は逆に出る。“先手良し”になるのだ。
 図で後手8四桂には、同金で、その瞬間3四桂からの“詰めろ”が後手玉にかかるので、後手はこれを同歩とは取れず、それで先手優位の将棋となるのだ。
 ほとんどの変化で、後手陣の「3三桂型」は、先手にとって得な結果になる。しかし「先手良し」を確定するためには、後手の指し手の選択肢の全てをチェックする必要があるわけだが、今のところ、この図から後手が有利になる順は見つかっていない。
 〔サ〕8四桂以外では、後手の有力な指し手は
  〔シ〕5五銀引
  〔ス〕6三歩
  〔セ〕7三桂
  〔ソ〕7五歩
  〔タ〕7三金
 これくらいだろうか。以下、順に触れておくとしよう。

7三歩成-5五銀引図01
 〔シ〕5五銀引。 ≪7四金図≫は後手の6四の“銀取り”がかかっているので、後手が5五銀引とするのは自然。しかしその手は、この図の「5三歩」が破壊力のある手で、はっきり“先手良し”になる。これを放置すれば、5二歩成が後手玉の“詰めろ”になっているし、同金は5一竜がある。5三同銀と取るのが無難に思えるが、それは先手の玉が安全になるので、3四歩と打たれて、先手に攻めの主導権が渡ってしまう。
 というわけで、〔シ〕5五銀引は“先手良し”。

 〔ス〕6三歩も、同じく5三歩で、“先手良し”になる。

7三歩成-7三桂図01
 〔セ〕7三桂。
 これも同金と取って、取った桂を3四に打てば簡単に―――と思いきや、そうならない。7三同金に、8四桂と打たれ、これはあやしい変化になる。
 この〔セ〕7三桂には、6四金と銀を取るほうがよい。それには8五金、7七玉、7六歩と、先手玉は下段に追い落とされてしまうが、以下、8八玉、6七と、7三金、7七歩成、9八玉、3四歩、2六桂、4二桂、6四角(次の図)

7三歩成-7三桂図02
 変化の一例だが、このようになって、後手がつらい展開になる。図の6四角は“詰めろ”である。

 また〔ソ〕7五歩は、8六玉とかわしてこれも“先手良し”。

7三歩成-7三金図01
 〔タ〕7三金。
 この後手7三金と打つのが一番の強敵かもしれない。しかしそれも、7三同金と素直に取って、同銀に、そこで先手に素晴らしい手が出番を待っている(次の図)

7三歩成-7三金図02
 美しさを感じるこの飛車打ちで、“先手良し”が決定的になる。
 次に5二飛成が先手のねらいだが、これを受けるのが難しい。5三桂と受けても、同飛成、同金、3四桂以下後手玉は詰んでいる。
 8四桂は6四桂と王手で桂を打つ手も、3四桂ねらいで、“同飛”と取られてしまう。
 また、3一歩と受けるのは、それでも5二飛成で、同歩なら、1一角以下の詰みがあるので、受けになっていないのだ。 
 だから図で後手が粘るとすれば、4一金と打つくらいだが、それは粘るだけ、3四歩から攻められる。

 図から、後手7五歩、8六玉、9四歩の展開を最後に紹介しておく(次の図)

7三歩成-7三金図03 後手7五歩~9四歩
 逆転のねらいを秘めた勝負手である。この9四歩のねらいがぼんやりしているように見えるところに味がある。
 勝負手といっても、先手優位は間違いないので、意味が分かってしまえば対処は簡単。
 この手は、5二飛成に、7六金と打って、8五玉に、8四歩と突くねらいである。こうなると、先手は同竜しかない、というわけである。
 対処方はいくつかあるが、ここはあっさり敵の望みをかなえるのが、実はわかりやすい勝ち方。

 図から、5二飛成、7六金、8五玉、8四歩(次の図)

7三歩成-7三金図04
 8四同竜、同銀(竜を取る)、同玉、5二歩(2つめの竜を取る)、4二銀(次の図)

7三歩成-7三金図05
 3一歩、7三玉、6九飛、6四歩、6八飛打、6三金、7一桂、5一角(次の図)

7三歩成-7三金図06
 先手勝ち。

 結論、〔G〕7三歩成(=白波作戦Ⅱ)は、「先手良し」。


≪3三歩図≫(再掲)
 さあ、これでこの図での、「3三同桂は、先手良し」、が確定した。(めでたし、である)
 〔F〕3四歩、または〔G〕7三歩成以下、先手が有利になる。
 また、図の3三歩を同玉と取るのも、1一角、2二桂、4五金で先手良し。

 よって3三歩は「同銀」と取るのが、後手の本筋となるわけだ。
 以下、3四歩、同銀で、次の図。

≪3四同銀図≫
 これが新たなテーマ図になる。
 ここから7三歩成はどうか。 また、9一竜はどうか。


 次回のテーマはこの図での「7三歩成」。 『白波作戦Ⅲ』である。



                       『終盤探検隊 part87』につづく
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